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LOVE SCULPTURE (Deluxe Edition)_img
COCP-35815-6
¥2,940(税込)
直枝政広による『LOVE SCULPTURE』セルフ・ライナーノート

※PDF バージョンはこちら(▼) pdf[pdf:173KB]
プリントして切りとっていただければ各CDジャケットに収納できるサイズになります

 11年前の日記を読むと1999年8月5日に名前を「直枝政太郎」から本名の「直枝政広」に戻したとある。アルバム『Love Sculpture』制作時のムードは奇跡的に当時のWeb日記の中に残っていた。今読むと文体が若いし、写真の顔もどこか違う。険しい10年が後にずっと控えていたのに、随分とにぎやかでお気楽な日々のようにも映るのだが…。
 音楽も手当たり次第に聴きまくっていた。まだ出て間もなかったAlex Chilton『Loose Shoes and Tight Pussy』(後のトリオ編成時、その礎となった盤)だったり、Elephant6関連だったり。気分はどこかNew Wave再び、という印象だ。ぼくは『Love Sculpture』が'00年発表の作品だったことをすっかり忘れてしまっていた。'99年作品という印象がやけに強いのは先行発売されたマキシ・シングル「リアル・マン」があるからだろうか。
 すでに内面では河が氾濫していた。それも大洪水だった。あの頃、日記は推敲を重ねてまとめてUPされたし、だれにも迷惑のかからぬよう慎重に書いていた(今でも日記は言葉を寝かしてから更新するけれど)。文面上は明るいのだけど、その裏道に通じる入口は逐一封じ、消してきた。ダーク・サイドはいつも心の中に地下水道として流れていた。それは大蛇のようなうねりをもってぬめり、恐ろしいほどの長さをもってずるずると這うように続いていた。
 自分の名前を本名に戻し、責任をしっかりと自分自身で負うこと。それが自己に対する批評として浮び上がってきた。日常は決して浮かれてばかりではなかった。バンドもその見えない道を懸命に掘り続けようとしていた。それぞれのメンバーが自分の将来について考えていることも知っていた。話し合わなければならないことはたくさんあった。でもそのきっかけはもう少し後になって訪れた。
 2002年2月。ぼくたちは分岐点にいた。"2/14 とにかく好きな、心落ち着く場所を探して歩こうと思ったら。地下鉄日比谷駅を降りて日比谷公園噴水の前のベンチにいた…"あの日、ぼくはすでにどこへ行こうとしているのか自分でもさっぱりわからなくなっていた。
 『Love Sculpture』は前作同様、ウエケン(上田健司)にプロデュースを依頼した。制作は'99年の秋からはじまっていたが、曲集めに時間もかかり年越え。日記を見ると完成直後からすぐにキャンペーンに入っている。プロモーション準備期間もほとんどない状態で発売されたことがよくわかる。
 「幻想列車」におけるあの叫びは『ジョンの魂』で言うところのプライマル・スクリーミングのようなものだった。情念が叫びと化した歌はもうひとつ、バンブルビーから出た『墨堤夜景』収録「墨堤にて」がある。あの記録は永遠に残るのだろうか。そしてまたいつかその時の気分を今と同じく"昨日のこと"のように思い返すことになるのだろうか。あの夏、ぼくは河の結界の真ん中で一枚の写真を撮影した。意外にもそれまでに見た夜明けのうちで、もっとも美しいと思えた景色だった。
 ぼくは鍼灸とハーブオイルで身体を清め続け、毒出しと格闘していた。当時は施術のために下北沢に通い、その街をよく歩いたものだが、記憶をいくら辿ってみてもたいていその街にいる時はどんよりと曇っていたか、もしくは夜。汗を滲ませながら地下鉄で眠り、その間だけはすべてを考えなくてすんだのだ。
 '99年から'09年の半ばまでは地獄だった。正直なところ、その10年間の様々な出来事を振り返ることはもうやめにしたいのだ。「魔」はいたるところに存在する。そんなことはあえて知らなくてもいいことなのに、あえて考えずにはいられないほど軸のような物が捩じれ、しかも何かが大きく狂っていた。
 不穏な湿った暗雲が近づいている予兆は『Love Sculpture』の豪奢なサウンドの隅にもいくばくかの黒ずんだ滲みとなって表れ出していた。ぼくの考えるアレンジは刺々しくなる一方だった。言葉や歌詞の大部分は内面に敷き詰められた紙ヤスリの上を転がってからポトンと床に落ちた。なけなしの力を振り絞って、歌い込めそうな「センチメンタル」を書き下ろしたが、その産み落とされた歌詞の意味するところの真意を得たのは後にギター1本で歌ってみてからだ。歌の中で自分が助けを求めていた。身体の中ではいつも波が押し寄せては消えていった。歌を歌う以上、消し去ることができないものだらけで、大抵はそんなやっかいな痛みだったりする。
 制作にあたって、前作同様、録音のためのリハーサルはない。Home Demoとそれぞれの構成譜面作りが最終のプリプロだった。現場で考えながら一発録音というスタイルは定着しつつも、上田禎がこのアルバムにおいてますます重要なアレンジメントを担当、まるでサーカスのような演奏を音符で指定されることもあったが、メンバーたちは冷や汗をかきながら必死にがんばっていた。彼のペンによるアクロバッティングなアレンジは「恋するために僕は生まれてきたんだ」「リアル・マン」「壊れた船」などで確認できる。
 はっぴいえんどのカヴァーは『風街ミーティング』という松本隆トリビュート・ライヴ(非常にテンションの高い良い演奏なので映像のDVD化を希望)をきっかけに「せっかくいい演奏ができたのだから」とほぼ記念品のように1発録音、別ミックスや未発表曲を収録したアナログ盤『Love Sculpture 2』に収録された。今回はそのアナログ盤オンリーだった楽曲も収録されており、本作のレアリティは一段と充実した。納得のリイシューだ。

 

"Home Demo覚え書き"

 8tr MTR最後の時代。そのカセット作品の極北「ぬけがらとかげろう」Home Demoはそのままずばり完璧な内容だ。おそろしく良くできている。つまり、この時期の手応えが後の宅録ソロ『Hopkins Creek』('00)へとつながったというわけだ。
 曲の原型を聴いて驚かれるのはおそらく「壊れた船」と「蜘蛛のブルーズ」だろう。前者はアシッド・フォーク。ソロで聴けるジェリー・ガルシアっぽいクリアなフレーズは例のビザール・ギターの音。あらためてリミックスをしてみてようやくこの曲の面白さに気付いた次第だが、『booby』収録「ダイアモンド・ベイ」同様、自信あるデモ・トラックとなった。後者は小島麻由美にも通じる"歌謡ロック"として提示。今聴くとこのHome Demoのアレンジの方がアルバム・ヴァージョンよりも歌謡性のエグ味が強く、且つ数段色気があって面白いと思える。
 「きみのために運をつかいはたそう」はボツ曲とはいえなんとも憎めない曲。NRBQあたりをかなり意識したアレンジで自信満々で提出も採用されず。カーネーションの場合、循環コードは却下されがちだったが、今回、ここに置くことができて今はちょっとホっとしている。そういえば、この曲は数年前に直枝政広&ブラウンノーズで初めてライヴ演奏した。


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