NIPPON COLUMBIA 100th Anniversary-COLUMBIA
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WACKY PACKAGES (Deluxe Edition)_img
COCP-35817-8
¥2,940(税込)
直枝政広による『WACKY PACKAGES』セルフ・ライナーノート

※PDF バージョンはこちら(▼) pdf[pdf:1420KB]
プリントして切りとっていただければ各CDジャケットに収納できるサイズになります

 このアルバムはカーネーションにとっての初めてのライヴ盤だ。音源は『EDO RIVER』発表前の94年の1月と4月の渋谷クラブ・クアトロ公演で収録されている。録音はA-DAT。それをデジタル48chのマルチに移植してミックス。最終的にアナログのハーフをマスターとした。その録音はフライング・パブリッシャーズの石井康則氏で、ミックスは牧野"Q"英司氏が担当した。メトロトロンから徳間時代までの主要なレパートリーを、新しいリスナーに向けて紹介できたという意味でもかなり重要な作品だ。何度目かのバンドの節目にあったとはいえ、ここでは何ひとつ迷いのないシャープな演奏が聴ける。この威勢の良さはとても誇らしい。
 『天国と地獄』発表後には(もちろん所属事務所などない中で)こんなに贅沢なメンバー(※)を揃えて毎回ライヴをやっていたのだった。その苦境の中、大きな編成のライヴ制作がどうして成り立っていたのかは謎…。当時のカーネーションはゲストのみなさんの好意とやる気にほぼ支えられていたということだろう。評価がなかなか伴わなかった時代を何とか超え、この『Wacky Packages』ではアップ・グレードした旧曲をもってそれまでの10年近い歴史を追うようにまとめられたわけだから、これはとてもラッキーな出来事だった。
 矢部くんのキレ満載のドラムス、温かなグルーヴを包み込んだ大田くんのベース、音色もそのイメージもいつも的確な棚谷くんのキーボード、堅実ながら毎回ワイルドに変貌し続けた鳥羽くんのギター。それぞれが立ち止まることなく闇雲に進化し続けた瞬間の素晴らしい記録がここにある。バンドという化け物は経験値という自信をこつこつと積み重ねてみてはじめて成り立つものだ。『Wacky Packages』は正直で真っすぐな一枚と言えるだろう。
 このアルバムは会場のレスポンスを極力抑えたミックスが特徴だが、そのせいもあってどことなく一連のグレイトフル・デッドのそっけないライヴ盤(ぼくはそのすべてが大好き)に似た感触もある。Line収録音中心のタイトな音像ゆえ、全体がフラットにまとまっているからそれはそれで飽きのこない仕上がりとも言えたのだが、今回のリマスタリングでは音像が一層クリアに、しかも演奏の深みや立体感が増した。特に矢部くんのナイフのような切れ味で迫り来るリズム、その快感を今一度お確かめいただきたい。
 『Wacky Packages』というタイトルは当時MIDIでサニーデイ・サービス担当のA&Rだった渡邊文武くんのアイデア(ちなみに『EDO RIVER』収録曲の英語タイトルも彼が意訳してくれていた)。彼にこのライヴ盤のタイトルを相談したのか、単なる雑談だったのかは忘れたけど「子供の頃にコレクションしていたものに"ワッキー・パッケージ"というパロディ物のワッペンがあって…」という話を聞き、そのままあのジャケット・コンセプトに繋がったのだ(その話はカーネーションの自主制作冊子『Wacky Packages』に詳しいが長い事絶版中)。彼の貴重なコレクションの中からニッチな宇宙物の一枚を選び、それを耳鼻咽喉科(そして初期カーネーション)のドラムス徳永雅之に精密な模写を依頼(顔は誰かに似せているけれど…)。ブックレット内のアーティスト写真は同じく耳鼻咽喉科のSAXだった丹羽望の家でセットを組み撮影、小物の奇妙な楽器も全部彼が制作したものだ。いまだにあのギターはぼくが保存している。写真はぼくにフランク・ザッパを教え込んだ張本人、Z大学で同期だったバンド"連続協奏組合"のヴァイオリニストであり、写真家でもある森田亮が担当した。

(※)
大野由美子(Buffalo Daughter):Moog, Keyboards
美尾洋乃:Percussion, Violin
ロベルト小山(The Thrill):Sax
"...Thanks!"

 

「ライナー・ノーツを書き終えて…」"

 95年1月22日、バンドは阪神・淡路大震災の5日後、心斎橋クラブ・クアトロにいた。パルコ館内では「○○さん、○○は◯◯にいます。◯◯は元気です」という被災者の消息や連絡先を繋ぐFM放送のアナウンスがずっと流れていた。そんな非常事態の中、さすがにギュウギュウの満杯とまではいかなかったけれどお客さんはたくさん集まってくれたし、やっぱりぼくらはいつもどおり懸命に演奏した。それがマナーだと思っていた。
 ライヴ後、楽屋に届いたアンケートに書かれた「今日は歩いて帰ります」「友人が来るはずだったけど被災して来れませんでした」というコメントを読んだ。その傷を思うと言葉がなかった。 何があってもライヴで踊りまくりたいと思ってくれるお客さんがいる限り、カーネーションはなんとかやりくりしながら、車や切符の手配をする。あの頃とはすっかり見た目の違うバンドなのかもしれないけれど、活動が長い分その共有できるありったけの記憶は全部連れていくつもりだ。…でも、ぼくはいつかそれすらも忘れるほどに、もっともっとスピードをあげなきゃとも思っている。やる以上は、あのクアトロの時のようになりふりかまわずやることがマナーなんだし。

 カーネーション・ファン、そしていろいろな音楽が好きで好きでたまらないうちに今日ここに辿り着いた人たちへ。
 自分が好きだと思える音楽を懸命に伝えてください。思う存分カーネーションの音楽を楽しんでください。じゃぁ、また。会場でお会いしましょう。


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