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Discography | ディスコグラフィー

「静」のアルバム。 〜動を選ぶか、静を選ぶか〜 脱ジャズへ

ILLUME

COCB-53546 ¥2,940(tax in) 2006/06/21 Release

「動」のアルバム。 〜動を選ぶか、静を選ぶか〜 よりジャズに

MOMENTUM
2006.3.31.16:30
COCB-53547 ¥2,940(tax in) 2006/06/21 Release

アキコ・グレースの「静」と「動」

 2006年、今年も予断を許さない一年としてレコード業界は始まった。1998年の約6,000億円をピークに年々市場規模を縮小し、昨年度は4,000億円を下回っている。今年の3月、単月で久々に業界は前年比を上回ったと聞いたが、配信の成長というビジネス・モデルの変化がある以上CDの本格的な復調は難しいかもしれない。そんな市況の中にあっても音楽制作は続けなければならない。というより、続けて行きたい。新しい作品が次代を切り開くと同時にさらに次の時代への財産となっていくはずだからだ。ジャズはクラシックには及ばないものの、他のジャンルに比べれば歴史が長い。SPの時代からLP、CDへと記録メディアの盛衰を乗り越えて今なお新旧多くの作品が聴き継がれている。それは何故だろうか? それはジャズの本質が「変化」にあるからではないかと思う。1947年のチャーリー・パーカーの「ドナ・リー」を60年近く経った今、アキコ・グレースや矢野沙織などの新世代の担い手となるアーティスト達が取り上げた時、そこには必ず「変化」という新鮮さがある。アキコ・グレースのように聴くパートによっては全く違った曲にも聴こえるようなインプロヴィゼーションを加え、言わばリプロダクト・アートにしていくことも出来るし、また、パーカーと同じアルト・サックスを吹く矢野沙織のように原曲のスコアへのオマージュとして、その感性の新鮮さで現代版に甦生させることも可能だ。どちらもジャズの魅力を伝えている。端的に言ってしまえばアドリブの幅広さがジャズの懐の深さでもあり、時代を超えて引き継がれていくジャズの強みの一つになっているのだと思う。

 さて、そろそろ本題に入りたい。今回のテーマは"アキコ・グレースの「静」と「動」"だ。「静」と「動」というのは、かなり大きなテーマだと思うので、ちょっと構えてしまうかもしれないが、アキコ・グレースというピアニストの幅の広さに着目してみたいのだ。その前に、アキコ・グレースについて、簡単におさらいをしておこう。アキコ・グレースのデビューは2002年1月11日。ナンバー・ワンの祈りを込めて1.1.1.のゾロ目にこだわったものだった。初期の制作ヴィジョン通り、ニューヨーク3部作を録音し、SJ誌ゴールドディスク、ジャズディスク大賞のニュースター賞と日本ジャズ賞、文化庁芸術祭優秀賞など、NY3部作は快進撃を続け、J-ジャズ界に新風を巻き起こして来たと言っていいと思う。そして、その後は「和ジャズ」、「北欧サウンド」と新境地を模索して来た。「北欧」のことについては、JAZZ TOKYOにも寄稿があるので宜しかったらご拝読頂ければ幸甚である。2004年9月、アキコ・グレースがオスロでのレコーディング・ツアーから帰国した頃、日本のジャズ・ピアノ市場は、トップ・ピアニストのポジションを伺う群雄が割拠する正に戦国時代を迎えていた。リスナーにとっては楽しい時代とも言えるだろうが、制作サイドにとっては、次の一手に一考を要することになった。欧州は3部作のヴィジョンを持っているが、時はジャズ・ピアノ激戦時代だ。そこでなにか明確な違いをアピールしていかなければならない。ところがそうなると「3部作」というイメージの固定化では逆に差別化はしずらくなってきた。ここにも「変化」が必要になってきたのである。実は、デビュー前、アキコ・グレースとは、10年のヴィジョンを話し合っていた。彼女の目標とするアーティストの一人に芸大の先輩でもある坂本龍一さんがいる。「目標」と言ったが、それは直接サウンド・メイクを指すものではなく、アーティストとしての存在感ということではないかと思う。そこに一つ言えることは、実はアキコ・グレースは、単にジャズ・ピアニストに留まることを望んではいない、ということである。デビュー前からこのことは確認済みだった訳だが、敢えてジャズにこだわって来た。そこに最も固めるべき地歩があったからに他ならない。当然本人もそう思っていたはずだ。そして、それはある程度固められただろう。本来は、もう少しじっくりとしたステップ・バイ・ステップが理想的だったと思うが、前述の通りの激戦時代である。今、時は「変化」を求めている。そう感じた。そして、いつか使って見ようかと思っていたアイデアが急に近くなったのである。ジャズ・ピアノからの脱却。かつて、自分がロックにたずさわっていた頃、パブリック・イメージ・リミテッドのジョン・ライドンと接点を持つ機会があった。コロムビアがリリースしていたからである。当時は宣伝マンとしてであるが。そして、ビル・ラズウェルの名をそこに見つけていた。しかも、坂本龍一とも仕事をしていたのである。そして、ビル・ラズウェルは何よりもハービー・ハンコックの「ロックイット」をプロデュースしたことで知られる、ジャンルを超えたクロスオーバー・サウンドを得意とする奇才なのだ。おそらく坂本龍一にも新境地を拓いたに違いないと思っていた。アキコ・グレースがターニング・ポイントを迎えたときこそ、起用してみたい人物だった。それが、5年も早くやってきたと言える。やはり時代の流れは早まっているのかもしれない。果たして、ビル・ラズウェルは、興味を示すのか、どんな音になるのか、不安はいろいろあったが、アルバムの出来が全てを語っていると思う。苦労も多かったがその分素晴らしいものになっているはずだ。ニューヨークのスタジオでスタインウェイのアコースティック・ピアノを弾き、かつ、そこにフェンダー・ローズを全編にオーバー・ダブさせたサウンド。想像しつつも、やはり想像を超えていたのだろう。繰り返し聴くうちにそのクオリティーの高さが分かって来る。確実に新境地を拓いた新作『ILLUME(イリューム)』(="光る"の意)は、アキコ・グレースの「静」の部分を表現している。
しかし、「変化」にはリスクも伴うものである。新たな音楽性の創造を求めて、ビル・ラズウェルにプロデュースを委ねたが、前衛的なイメージも強く持っているラズウェル氏の起用は同時に冒険でもあった。果たして、アキコ・グレースの今のファンが納得するかどうかは正直かなり不安だった。彼女のファンも楽しめつつ、新たなリスナーにも広がりの持てる企画が理想的だったのである。しかし、ラズウェル氏のプロデュースするサウンドがアンビエントな世界に通じるものでジャズからいい意味で逸脱(=脱ジャズ)していく作品となるであろうことは容易に想像出来た。それならば、全く正反対の方向性を持つ作品をもう一枚作ったら、アキコ・グレースの両面が同時にアピール出来るのではないだろうかと考え、「脱ジャズ」に対比する「よりジャズ」をコンセプトにしたものを作ろうと企画したのが、ライブ録音方式によるアルバム制作だったのである。ジャズの録音と言えば、そもそもは何処かで誰かのいいライブがあればそれを収録しに行ったものだと思う。スタジオのブースに楽器毎にそれぞれ別々に入って録音するという方法はあとから生まれて来た訳で、ジャズ本来の持つ即興性の醍醐味はライブにこそあると言っていい。それがもう一枚の作品を「よりジャズに」をコンセプトにして、あえてライブ録音方式を取り入れた理由だ。そして、もう一枚のアルバム『MOMENTUM(モメンタム)』は、アキコ・グレースの「動」を表現するものとなったのである。

 2枚同時発表の持つ意味の中に込められたアキコ・グレースの「静」と「動」。ジャズの多様性と即興性が生んだどちらも新しいコンセプトを持っている。聴いて頂けば、どちらも必ず楽しめると思うので、楽曲の解説は専門誌や評論家の方々に譲って、ここではアーティストの有り様をお伝えしたつもりである。是非、今後の活動にもご注目を願う。

2006年6月
菰口賢一

 


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