Five plus Twenty
SPECIAL LONG INTERVIEW
with 加藤ひさし&古市コータロー
interview : 荒野政寿 (CROSSBEAT)
【前編】
5 years ago:『ロック教室』~『東京虫BUGS』
- 荒野:
- 今から5年前、『東京虫BUGS』が生まれる前には『ロック教室』というアルバムがあって。あのプロジェクトで外部の血を入れて、他のソングライターとのコラボがあった後のアルバムということで、コレクターズの長い歴史の中でも大きな変わり目といえる時期だったと思うのですが。
- 加藤:
- 『ロック教室』作ったときに伊藤銀次氏にも言われたんだよね。「よく加藤くん、あの企画を許したね」って。それまでは「100%加藤ひさしワールドしかやらなかったでしょう?」って。かつて銀次さんと仕事したときも、銀次さんの提示したアイデアを「いや~ちょっとそれは...」って言って、なんか自分のことばかりやってたからね。よくぞこんなに他人に曲を書かせて...いや書いてもらって、こういう企画アルバムに乗ったね、ってビックリされたのよ。ただ、あれは20周年の企画としては面白いからっていう理由もあったんだ。だから逆を言うと次のアルバムはもう「100%加藤ひさし!」みたいなソングライティングの世界が発揮されたアルバムを作りたいな、っていう意欲を駆り立てられた。そういう流れだったよね、『ロック教室』から『東京虫BUGS』にかけてというのはね。
- 荒:
- で、やっぱり歌詞に関する変化っていうのが当時印象に残っていて。まず「たよれる男」。あの歌詞が生まれるにあたって、ご自分の中で作風が変っていく、ふっ切れていくキッカケは何かあったんですか?
- 加:
- あった。すごくあった。それはやっぱり...もう何度も言うけれど、「世界を止めて」が売れてから結局「世界を止めて」を超えるラヴソングみたいなものを、やっぱりずっと期待されてて。でも面白いもんでね、殺人犯の時効と一緒でさ、10年くらい過ぎるとみんな忘れるね。そこで「次!」っていうときに、なんかすごい面白いモンを作りたい、って思ったのね。例えば元ブルーハーツの甲本ヒロトくんを歌詞に入れたりすることによって、皆が「エーッ?!」て言うようなものになるんじゃないかと思ってね。あの曲が出来たときはもう、自分が変った感じがしたね。
- 荒:
- 例えば「新しいロック」「古いロック」っていう感覚もだんだん時代とともにお互い横並びっていう感じになってきて、新旧が重要でなってきたと思うんですけど。いわゆる「ツェッペリンぽいリフ」だったりとか、そういうハードロック的な要素ってそんなに表に出してなかったじゃないですか、コレクターズの曲では。それが『ロック教室』の「Thank U」くらいからなんとなく強くなってきて。
- 加:
- うんうん、出てきたね。お里が知れてきたね(笑)。
- 荒:
- よりダイナミックなロックバンドになってきたなとライヴを観ていても感じたんですけれど。
- 加:
- なんかやっぱり、カッコいいギターリフっていうか、例えばキンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー」とか、あとレッド・ツェッペリンなんかいっぱいあるけどね、「ブラック・ドッグ」とかね。アレにはもう誰もかなわないもんね。
- 古市:
- まぁギターロックでリフは最強だね。
- 加:
- やっぱりロックンロールって歌詞の内容とかよりも、リフのカッコよさ?の方が全然重要なんじゃないかって...改めて思ったかなぁ。それまではXTCとかばかり聴いてたりすると、歌詞の内容や深さだったり、ヘンテコなアレンジだったり、誰もマネできないようなことだったりっていう部分がカッコいいって思ってたし。今でもそう思ってるところはあるんだけど、まぁ両方あると更にいいよね、やっぱりね。
- 荒:
- そういったリフ主体のロックンロール・ナンバーが増えてきたことと、ライヴの本数が多くなって、よりライヴ映えする楽曲が求められる状況でもあったということは関連しているんですか。
- 加:
- 関連してる、やっぱり。シンプルで、みんなが手を挙げたりとか、「オイ!」とか「ヘイ!」とか言えるような曲ってやっぱりライヴで受けるんだよね。例えば『青春ミラー』の中の「今が最高!」っていう曲は自分の中じゃアルバムの何曲目に入っていても構わないような、すごく軽い気持ちで平凡なダンス・ナンバーとして作ったんだけど、ライヴで演ったら最初からすごくウケてね。で、サビの「今が最高だ!」って歌詞をみんなが歌い出しちゃって。これはロックンロールのルーツって言うかエネルギーと言うか、そんな風に感じてね。だからライヴっていうのはデカかった。実際本数もやってたしね。
- 荒:
- 確かにこの辺を境にいろいろなフェス、今まであまり交わっていなかったようなバンドのイベントに呼ばれたりして、活動の幅も、作風の幅が広がるのと同時にどんどん広がっていった時期という気がするんですけれども。
- 加:
- あとコータローくんとやっているポッドキャスト「池袋交差点24時」とか。自分たちの活動とか、音楽を作る上でのスタイルに影響を及ぼすくらいのことになっちゃったよね。
- 古:
- うん。だから結構いろんなイベントに呼ばれるようになったんですよ。お声が掛かるっていうかね。
- 加:
- 今までコレクターズっていうと「少し頭が固い連中」っていうか、本当に名前の通り「殻に籠った連中」「めんどくさい奴ら」みたいなイメージがあったと思うんだ。でもライヴに来てる連中はボクとコータローくんのステージでのMCを聞いてて、曲とは違うバカな面白さっていうか、それには気付いてたと思うんだけど。ポッドキャストとか、ボクがNHKの「ロックの学園」に出ておもしろおかしく授業をやったりしたことが、やっぱり世の中の人に認知してもらうにはすごく早いんだよね。ライヴに来なくたって「ロックの学園」はNHKで放送されるから全国津々浦々みんな観ちゃうし。ポッドキャストだってi Tuneでトップの方にいっちゃうから、「一回聴いてみよう」って。で、そういう連中が聴くと「あれ?こんな人たちだったの?じゃあライヴにも行ってみよう!」っていう風になるし。そういうのがやっぱり自ずとアルバムにも影響してきたかな。
『東京虫BUGS』~『青春ミラー(キミを想う長い午後)』
- 荒:
- そこからまた新しいお客さんが入ってきて、実際動員もすごく増えてきた中で『青春ミラー』をリリースします。『BUGS』から『青春ミラー』って年数でいえば結構空いていますが、以外とブランクを感じさせなかった印象があるんですが。
- 加:
- そうなんだよね。結構空いているんだけど、ライヴの本数がすごく多かったから。あとオーディエンスも「CDを買うよりライヴを楽しむ」みたいな風にシフトしてきたから、前みたいに「CDリリースがこんな空いちゃったよ」みたいな危機感は感じなかったんだよね。気がついたら2年やそこら経っちゃってたっていう感じ。
- 荒:
- で、『青春ミラー』のタイトル曲を阿部さん小里さんが最初に聴いたときに、すごくインパクトがあったと。体がゾクゾクするような感覚をそこで味わって、「これだけ長く続けてきて、まだこういう曲が出てくるんだ」ってビックリしたと言ってました。あの曲は加藤さんの中でどういう風に沸き上がってきたものなんですか?
- 加:
- 面白いもんでね、ボクは最初に曲を書いて後から詞をつけるっていうパターンがほとんどなんだけど。「青春ミラー」に関しては100%ではないんだけど、最初からもうAメロの歌詞とサビの頭くらいの歌詞とメロディは全部出来てたの。きっかけとしてはね、イベントだったけど武道館でライヴをやることができて...もちろん憧れのホールじゃない?武道館って。4曲くらいしか演奏しなかったんだけど、あのステージに立って歌いながら「ここにピッタリ合うようなスケールのデカイ歌を書きたいな」と思ったんだよね。それがずっと頭にあって。で、「青春ミラー」の途中のギターだけになるところとかの...ライティングの感じとかまで頭の中で想像出来るのよ。多分、矢沢永吉の武道館ライヴとかさんざん観てるからいろいろなイメージが湧くんだろうけど。武道館のステージにコータローくんがひとりになってディレイのギターを弾いている、そしてドラムが入ってきて、オレが歌い出すところとか、その辺をイメージして作ったんだよね、実はね。
- 荒:
- アルバムとしてのテーマの自由さは『BUGS』以上に広くなったような気がします。「twitter」みたいな曲から「エコロジー」みたいな曲、どんなテーマでもどんな曲調でもコレクターズに成り得るんだという、その可能性が広がったことがアルバムの力強さにつながった印象があるのですが。
- 加:
- そうだね。ただ自分の中ではね、「たよれる男」がかなりインパクトのでかい曲だったし、すごく好きな歌だったの。それが逆に『青春ミラー』を作るとき足かせになって...前に陥った「世界を止めて・続編現象」みたいな、それにちょっと悩まされたんだよなぁ。で、「エコロジー」が書けたときはホッとしたかな。また違う意味で「はみ出しソング」が出来たっていうか。誰も書けないような曲が出来たからね。