Five plus Twenty
SPECIAL LONG INTERVIEW
with 加藤ひさし&古市コータロー
interview : 荒野政寿 (CROSSBEAT)
【後編】
- 荒:
- 全体に歌詞はすごく年齢的な、50代ならではの奥深さみたいなものがあって(笑)「フリーハンド」なんかもすごくいいですよね。ストーリー性のある曲もあるし、「マネー」みたいな、ちょっとコトバ遊びっぽい感じだけれどもドラマがあったり。
- 加:
- 今回の「マネー」はコータローくんが歌った中でもかなり異色なんだよな。かなりポップ・チューンだよね。
- 古:
-
- うん。
- 荒:
- どんな人物像をイメージして?
- 加:
- いや、オレはいつもコータローくんの曲は本人のイメージなの。「青春ノークレーム ノーリターン」もそうだし、「ハッピー&ラッキー」もそうだし、「ELEPHANT RIDE」もそうだし...。だからコータローくんがいつも言っているようなことを歌詞の中に練り込んで。「金で買えるものだったら働いて買えばいいじゃん」みたいな、「金で買えないんだったら...頑張るしかねぇじゃん」みたいな、そういう感じを入れるんだけどね。
- 荒:
- 加藤さんの持っているポップさが蓄積されているものとして「ハッピーカメラ」とかはエジソンライトハウスとか、もっとR&Bっぽい要素が入っていたりとか...
- 加:
- うん、そうだね。結局「ハッピーカメラ」は最後まで詞が書けなくて、6月4日に台湾ライヴに行ったときもまだ詞が書けてなくて。「支離熱裂」で1回出来てしまったイメージを自分の中で取り払っても、その次のイメージって湧きにくいんだよ。ギターソロとかもそうでしょ?
- 古:
- まぁそうだね。最初のイメージは強いもんね。
- 加:
- それと一緒で、もう何を歌っていいか全然わからなかったのね。で、台湾から帰ってきたら旺福(WON FU)のギターの小民からメールがきて、「ライヴすごい楽しかった。自分は今からっぽだ、楽しさも全部使い果たしてしまった。でもいまみんなで撮った写真をデジカメで見ているんだけれど、時間は過ぎていくけど写真の中のボクたちはずっとハッピーだね」と。それがすごいヒントになってね。で「いいじゃん!それをモチーフにして歌詞書いてもいい?」ってメールしたら「全然OKだよ」って言ってくれて。それで1日で書きあげたよ。
- 荒:
- 今までのコレクターズがやってきたことがちょっとずつ要素として入っていながら、手法としては「フリーハンド」の打ち込みの部分とか、新しい要素と古い要素を上手く取り混ぜた形でまたちょっと違うコレクターズを見せているなぁという印象が全体としてあったんですけれど。
- 加:
- 「コレクターズってこれだよな」っていう形はもう、ローリング・ストーンズじゃないけど、やっぱり出来上がってるもんね。だからもうコレクターズのカッコいいところを最大限に出していく、そういうアルバム作りをみんな望んでいるだろうし、自分もそれが楽しくなってきたね。前はいくらかでも幅広くとか、ちょっと挑戦していくような部分が多かったけど、「スタイルとしてのコレクターズ」っていうのを増幅させていくっていう、そういう作業の方がオレたちにはピッタリなんじゃないかな。例えばさ、エアロスミスにしても「ドロー・ザ・ライン」のあのリフみたいな曲が聴きたくなるじゃない?新作が出てきてもさ。ストーンズにしてもTHE WHOにしてもね。「無情の世界」や「無法の世界」の第二弾でもいいし。
- 荒:
- 改めて全曲通して完成してみてアルバム全体の印象はいかがですか?
- 加:
- ひとつ言えるのは『青春ミラー』とも『東京虫BUGS』とも色の違うアルバムになったね。でも、今はそれでいいと思ってる。...なんかこう完成型が見えないんだよね。スタジオに入ったときから。初期の頃は「こうしよう、ああしよう」っていう青写真がかなり良く出来てて、そこにみんなで向かって作業していく感じだったけど、今はそこまでやっても楽しくない。少し出っ張ったり、トラブルもあったり、そっちの方が今は面白いかな。
- 荒:
- そして今回も吉田仁さんのプロデュースです。
- 加:
- 仁さんとはもう本当に付き合い古いじゃない?93年からだから...
- 古:
- もう20年近くだね。
- 加:
- でもいろんなプレイヤー、いろんなプロデューサーと仕事してきたけど、『東京虫BUGS』くらいからの仁さんのエンジニアリングとかジャッジとか、もう恐ろしいくらいだね。自分でも震えるくらい素晴らしい。実は『青春ミラー』のときもそうだったけど、さらに今回の『地球の歩き方』ではコーラス・ワークのバッキング・ボーカルのフレーズは、オレがちょっと足した部分もあるけれど基本的には全部仁さんが作ったの。そのラインがとてもオレじゃ作れないラインなんだよ。そこで歌っているとハモっているのかよくわからないラインなんだけど、1行づつ録っていって合わせてみたらホントに絶妙でね。しかもそのエディットが神技で。ビートルズの伝記本とかフーのその手の本を読むと、例えばビートルズだったらジョージ・マーティンだったり、フーだったらグリン・ジョーンズだったりとかがさ、テープのどこを切ってどうしてこうしてああなったとか。ストロベリーフィールズは2テイクをくっつけたとか、今でも信じられないような話が書いてあるけど、仁さんと仕事をしていたら、それは本当の話だね!だから初めて「自分が知っている、思い描いていたプロデューサー/エンジニアっていうのがこの人なんだ、こういう人なんだ」って初めて思ったよ。ある時はフィル・スペクター、ある時はジョージ・マーティン、ある時はグリン・ジョーンズ、スティーヴ・リリーホワイト、ありとあらゆるプロデュース・ワークの最たる感じ。逆に言うと仁さんがいなかったらコレクターズのCDが成立しないんじゃないかと思うくらい(苦笑)。とてもセルフ・プロデュースではできない感じになっちゃったねぇ。
- 古:
- 確かに。特に今回すごいよね。
- 加:
- 仁さんも多分面白がってやってるんだと思うんだ。コレクターズの今の実力に対して「どうだ、ここまで出来るか」っていうところもあってやってるんだと思うんだけど、それが大体同世代でキャッチボールをやれてるっていうのが、何よりレコーディングの中で楽しい作業だね。もちろん歌詞へのダメ出しも含めてね。まあ恐ろしい監督ね。「吉田仁恐るべし」だよ。
お互いの20(25)年
- 荒:
- コータローさん、加藤さんのコンビの20年、新体制になってからここまで本当に山あり谷ありだったと思うんですけれども、お互いの変化はどのように感じますか。
- 加:
- 出会ったときは「コータロー」って呼んでたのに最近「コータローくん」って呼ぶようになったから、多少オレが弱くなったんじゃないかな(汗)。
- 古:
- (微笑)まぁあんまり変ってないんじゃない?でも特にこの10年はオレ個人のことよりもバンドのことを考えているね。コレクターズが今日ひとりでも多くお客さんを取りたいとかさ。ライヴで成功していきたいってことが第一としてあるの。自分のプレイってのはその次にあるから。その意識は特にこの10年強いね。
- 加:
- 確かにね。オレがコータローくんを見てて感心するのはね、まぁオレが天然なのかな?って思うんだけど、例えばステージに立って歌ってるとき、オレ照明のこと一切気にしたことない。っていうか分かんないんだよ。ところが本編が終わってみんなでステージ下がるでしょ。その時コータローくんが必ずオレに「今日はサス来るの遅かったねぇ」とか「あそこでピンクはないよなぁ」とか、そういう自分のプレイ以外の部分を事細かに観察してるのよ、この人。それは偉いなと思って。オレは「いつサス来た?」みたいな(苦笑)。だからコータローくんはそこで客の入りの感じとかも全部見てるんだろうなと思って。なんていう曲がウケてて、どこの流れが良かったとかね。オレはそんなの気にしたことがない。カウントが出たら歌う。
- 古:
- お客さんが入れ替わってるからさ、最近。「青と黄色のピエロ」演ってさ、「ウワァー!」って90%まで盛り上がるはずが、60%ぐらいだったりするんだよね。でもそういうデータって(頭の中に)入れておかないとさ。そのかわり「バグズ」はウケた、みたいなさ。
- 荒:
- 一個のショウとして演出も含めてしっかりしたものを見せるんだという意識にどこかで完全に変ってきたということですよね。
- 加:
- そういう意味ではプロ意識はどんどん年を取るごとに深くなっていくね。バカをやるにも計算してバカをしてる。そうじゃないとただの学園祭みたくなっちゃうからさ。
- 古:
- バランスなんだよ。ちゃんと入り込む部分ももちろんあるし。現場監督じゃないんだからさ、ちゃんと自分もプレイして楽しみたいしっていうバランスはいま良く取れてる気はするけどね。だからギタリストとしてよりは、バンドマンというかステージに立つ人間としてはプロフェッショナルな人間でいたいと思うね。そこは憧れるというかね。
- 荒:
- コータローさんからみた加藤さんの変化っていうのはどうですか?人として、表現者として両方の面で。
- 古:
- いや、変ってないね、全然。25年、いっさい。ソングライターとしては、変っていくのが当然だと思ってるから、そういう意味では根本は変ってない気がする。いまだに「ロボット工場」みたいな曲を持って来たら、そっちの方が不自然でしょう、やっぱり。時間が経ちつつ、コレクターズ・テイストがありつつ新しいものを書くのが自然っていう。そういった意味で変ってないと思う。
- 荒:
- バンド全体の絆がすごく今しっかりしてるなぁっていう。本当に揺るぎないものになっている感じがします。この後またなにかあってもずっと続くだろうっていう。
- 加:
- まぁ〜、貧乏な限りそうだろうね(笑)だって夫婦だって、ねぇ?お金があると離婚しちゃうもんね。コータローくんねぇ?
- 古:
- まぁ〜そうね。
- 加:
- バンドもギリギリぐらいだと続くんだよ。だからストーンズとか偉いよね。ホントに。
- 古:
- 偉いねぇ。
- 荒:
- この後アルバムを出して、野音に向けて進んでいくワケですけれども。今年の野音っていうのはどんな場所になりそうですか?
- 古:
- いや、今年25(周年)っていうのもハンパだし、なんか記念というよりは、記念ではあるんだけど、流れの中のライヴとしてみれればいいなとは思ってる。
- 加:
- そうだね。場所が野音になったっていうライヴ。それに尽きるかな。そこで何をでっかくやるっていうことでもないし...。
- 古:
- うん、あまり構えたくない。だから。
- 加:
- そういう場所でもないもんね。これが東京ドームでやりますって話になってきて「サクセス・ストーリー・情熱大陸」みたいになってるんだったらオレたちもここでさんざん熱く語るけど。目頭熱くしながらね。そういう場所じゃないからね。それよりはオレたちがやっているロックの面白さのようなものが3000人に本当に伝わるような、そういうステージにしたいだけだね。今のコレクターズの「この感じ」っていうのをね。
END