舟木一夫
「夕笛」
また、妻にからかわれた。「いつも、懐メロね!」言い返した。「いい曲は今も昔もええんや!」買ってきたのは、舟木一夫さんの夕笛が収録されているミニCD。私にも青春などというものがあったとすれば、まさにこの時代だろう。舟木さんの「高校三年生」はよく流行った。かたわらでは、ビートルズが大活躍の時代。しかし、私は舟木さんの「夕笛」そして「北国の街」。この二曲が好きだった。今でも時折聞いている。ただ、カセットから今流行りのデジタルオーディオに変わっただけ。「夕笛」を聞くと、もちろん時代は異なるが、ある意味で、一途は想いとはこんなものか、という気がする。愛とは、恋とは、打算的なものではなく、敢えて書かせて頂くならプラトニックなものでもいいのではないだろうか。ましてそれが初恋ならば、同世代の頃を思い出す。私も気が弱かったものだ。女子学生と話すのも苦手というどうしょうもない性格。おかげで、中学の時の初恋らしきものは完全なる片想いに終わった。ただその方の面影がこの歌を聞くと時々蘇る。それはいつも「花の横顔」。私は老いた。しかし、想い出の横顔はまだ十代。まさに、花の横顔。その方のお顔を、これが最後と遠くから見つめてから、早、半世紀弱の時が過ぎた。そんな時代遅れの親爺が寄せる、舟木一夫さんの「夕笛」に秘めた青春のかけら。まあこれも、今となっては宝だろう。
千葉県/彷徨さん(60~64歳 男性)