1996年6月、サンフランシスコのゴールデンゲートパーク。2日間に渡り、20組のアーティストと10万人のオーディエンスを集める歴史的なロック・コンサートが開催された。
「チベタン・フリーダム・コンサート」と名付けられたこのコンサートは、ビースティ・ボーイズのアダム・ヤウクがチベットの人々に起こっている問題を世界へ広く知らしめるために企画したものだ。「チベットに自由を!」という呼びかけに賛同した豪華な出演者たちと巨大観衆は、シリアスなチベット問題を心に留めながらも、慈善興行という枠を越えたエキサイティングで情熱的なロック・フェスを作り上げた。その話題はロック界だけにとどまらない世界的ニュースとなり、予想を遥かに越
えた成功は、チベットへの支援とともに翌年以降の「チベタン・フリーダム・コン
サート」へとつながっていった。
本作はこの第1回チベタン・フリーダム・コンサートの全貌を映し出す劇場映画作品である。まず冒頭でチベットの歴史的背景が綴られる。17世紀から実質的に非武装国となったがゆえ、他国からの攻撃を受けることとなったチベット。中国による侵攻で
は多くの犠牲者が出た。「それはチベット文化の破壊だった」とも語られる。自由を求めるチベット民衆に対する中国の圧制の様子、デモを行って中国軍に捕らえられた人々の証言など、近年の状況を生々しく映し出す映像が収められている。
本作の主軸となるのはコンサート。こういったチベット問題を世界中に提議すべく立
ち上がったアーティストの迫力とメッセージに満ちたパフォーマンスが収録されている。ビースティ・ボーイズはじめ、ビューク、ベック、レット・ホット・チリ・ペッパーズ、ソニック・ユースなど現在のロック・シーンを代表するアーティストたちの
ステージを中心に、舞台裏の様子やインタビューも織り交ぜながら描いていく。このコンサートへ向うアーティストたちの意思と充実した演奏内容、そしてこのコンサー
トの発するメッセージ、一方のオーディエンスの見せるロック的な盛り上がりとメッセージへの反応、それらを対比して捉えている点も、この音楽映画の魅力と深みを増
している要素である。R.E.Mのマイケル・スタイプは、こう語っている――「これは素晴らしい映画だ。観ている途中3度も泣いた。」
(C) 1997 The Milarepa Fund