・・・ここに聴く難曲の数々も、彼女の手にかかると実に楽しく優雅に、踊り出したくなるような雰囲気を醸し出している。 昔からトランスクリプションが好きだった。コンクールや学校のレッスンではこうしたジャンルの作品は敬遠されがちだが、「自分の音楽を作りたい」と願う彼女にとって、これらの作品は自分自身を解放させてくれ、自由に歌うことができ、精神を高揚させてくれるもの。「悦子」の「悦」は、悦楽、喜悦、満悦、愉悦の「悦」。まさにこれらの作品は聴き手の心に大いなる悦びをもたらしてくれる。そして、別世界へと運んでくれる。「さあ、一緒に歌いましょう。リズムを刻んで、からだを動かして。踊りましょうよ」 広瀬悦子のこんな声が聞こえてきそうだ。 これらの作品を聴くと、「ピアノは1台でオーケストラの役目を果たす」と称されるのがよく理解できる。彼女の指からはさまざまな楽器の音色が次々と生まれ出て、ピアノの奥深さを思い知らされる。何度聴いても、至福のときを過ごせる、夢の世界に遊ぶことができる。広瀬悦子は「自分の音楽」で、私たちに愉悦のときを贈ってくれるのである。
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