1923年。一旗揚げることを夢見て祖国を後にし、済州島から大阪に渡ってきた金俊平。腕のいい蒲鉾職人であった俊平は、やがて自分の蒲鉾工場を立ち上げて成功する。しかし金銭へのあくなき執着から、やがて高利貸しへと転じる。何度も直面するままならない境遇を、強靭な肉体と知恵でたくましく生き抜く俊平。しかしその並外れた凶暴さと強欲さは、彼の家族さらには周囲の人間たちをも巻き込み、数奇な運命へと導いていく。生涯誰にも心を開かず、凄まじいまでの孤独の中に生きた男は、その果てに一体何を見たのか?
第11回山本周五郎賞を受賞し、驚愕をもって迎えられた梁石日の最高傑作「血と骨」が、監督・崔洋一のメガホンにより遂に映画化された。信じるのは自分の肉体のみであり、人間の持つ常識や道徳の欠片すらもたない欲望の化身、金俊平と息子・正雄との壮絶な対立と葛藤。そして夫の呪縛の中で子供を守り、凛として生きる女・英姫の波乱に満ちた一生。戦中・戦後に生きる人々のありのままの姿が、ユーモラスかつ神話的豊饒を持って活写される。すさまじい人間の業と、連綿と受け継がれる血の繋がりを描くこの映画は、圧倒的な生命力に満ちた金俊平の壮絶な生き様と相まって、登場人物のみならず観る者をも巻き込んでいく。
更に、特筆すべきは美術セットのリアリティ。2000平米に家屋22棟、当時の大阪・朝鮮人集落を再現したオープンセット、蒲鉾工場そして看板、小道具の細部にいたるまでの徹底的なこだわりは圧巻である。
主人公、金俊平を演じるのは、俳優に専念しての映画主演は14年ぶりとなるビートたけし。そして英姫役に鈴木京香というこれ以上ないキャストの上、新井浩文、田畑智子、オダギリジョー、松重豊、國村隼ら実力派俳優が加わった。
構想6年。共同脚本に鄭義信を迎え、『月はどっちに出ている』以来の梁、崔、鄭のトリオが再結集し、満を持して放つ、崔洋一監督渾身の一作。この秋一番の話題となることは間違いない。
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