モーツァルトが生まれたのは、今からちょうど250年前。しかし、その音楽は、時代
を超えて人々に愛されています。
子どもからお年寄りまで、またクラシックファンの人もそうでない人も、幅広い層に
受け入れられている、
彼の音楽の魅力とはなんでしょうか。
巷には、モーツァルトを聴くと頭が良くなるとか、牛のお乳の出が良くなったとか、
モーツァルトの音楽の効能について
さまざまなことが言われていますが、たしかなことはいえません。
ただ、モーツァルトの音楽を聴くと、良い気分になることは、感情をめぐる科学的な
研究でも指摘されています。
また、最近の神経科学の研究によると、クラシックの旋律は、他の音を聴いたときよ
りも、
脳のさまざまな領域にあるニューロンを同時に活性化
させる働きがあるそうです。
こうしたことを総合すると、モーツァルトの音楽を聴くことが私たちの心を生き生き
とさせ、子どもたちの
心の発達にも好ましい影響を与える、ということはいえそうです。
お母さんからよく訊かれるのは、「どんな時にどんな曲を聴かせると良いのです
か?」という質問です。
たしかに、モーツァルトを聴くことが心や頭の発達に影響がありそうだ、といわれれ
ば気になるところです。
でも、音楽を聴くことは非常に個人的で個別的なことです。同じ曲でも、ちょっとし
た気分の変化で、感動することもあれば、
煩わしく感じられることもあり、簡単に決めつけることはできないのです。
ただ、乳幼児にとって望ましい音楽体験は、できるだけお母さんと一緒に音楽を聴
くことだと思います。
つまり、ただ音楽を聴くだけでなく、共感する大人が側にいて、子どもたちが豊かな
感情を経験することが重要なのです。
有名な曲であれば、お母さんが一緒に口ずさんであげるのもいいですね。中には、特
定の曲が気に入って、その曲ばかりかけて
もらいたがる子どももいると思いますが、それもかまわないと思います。
もちろん食
事や遊んでいるときのBGMとして、ずっと流して聴くのもよいでしょう。どのような聴き方であっても、その子どもに
とって好ましい体験であれば、
充分な意義があるのだと思います。
永岡 都(昭和女子大学助教授)
※ライナーノーツより抜粋。
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