Copyright 2003 Columbia Music Entertainment, Inc.
All rights reserved.ご意見・ご要望・ご質問はこちらへ



オリジナル・サウンドトラック
『ロッカーズ』
9.3 in stores

DVDシングル
「可愛いアノ娘」
9.3 in stores
 

"ついにザ・ロッカーズを出現させる時代がきた? このスピードについてこれるか!"

...ロッカーズと聞いて僕が真っ先に思い出すのは、ファースト・アルバム『フー・ザ・ロッカーズ』(80年)のLPのタスキに踊っていた、このキャッチ・コピーである。マジな話、これほどロッカーズなるバンドの本質、そして、その登場時に於ける意義を100%伝えた、イカしたコピーなんてないだろう。
 近年では、日本のビート・パンクの始祖として、数多くの若手バンドから熱烈なリスペクトを表明され、J-Rock史を語る上で欠かせない重要バンドとしての地位をモノにした感のあるロッカーズ。ともあれ、彼らがデビューした時代を考えてみてもほしい。なんたって1980年だ。ヒット・パレードにロック・バンドが顔を出すことなんて、まず皆無も皆無。運良く、テレビ出演を果たし、それなりに売れたバンドに対しては、"商業主義に屈した裏切り者"なる烙印が公然と刻まれてしまう、そんな状況だったのだ。
 よく言われるように、果たして、ロッカーズは、進みすぎたバンドだったのだろうか? 登場させるには時期尚早だったのか? コピーとは裏腹に、当時のリスナーと音楽シーンは、ついてこれなかったのか?
 確かに、そのポップなメロディとビート感、そしてスピード感(なんたって、あの歴史的なファースト・アルバムは、寺院の本堂にて、僅か3時間でレコーディングされたのだ!!)、そのいずれもが、"もし彼らが今という時代にデビューしていたならセンショーンを巻き起こすことは確実"だったことを、予想させるものである
。アイドルや演歌、砂糖菓子すれすれのニュー・ミュージック全盛だった、あの時代に、彼らのビート・ロックが参入するスペースなどなかったのも事実。そういう意味では、彼らは明らかに"今"という時代に聴かれるに相応しいバンドといえるかもしれない。
 けれども僕は、80年という時代にロッカーズが出現したということの意義、それを心から最大限に尊重したいのだ。2年という僅かな活動期間の中、時に苛立ち、時にカッコ悪さを見せながら、そして時に失速しつつ、最後には不本意ながらも空中分解せざるをえなかった彼ら。しかし、短いながらも、彼らが辿った軌跡は、どんなに成功したロックンロール・バンドのサクセス・ストーリーよりも誠実であり、輝いて見えてならない。

 今秋(9月末)公開される、話題の映画『ROCKERS』は、ロッカーズのヴォーカリスト、リーダーであった陣内孝則による初監督作品である。脚本は斉藤ひろし、出演者としては中村俊介、玉木宏、上原美佐ら、豪華なメンツで固めている。
 映画そのものは、もともと陣内が98年に上梓した半自伝小説「アメイジング・グレイス」(幻冬社)が、プロットとなっている。映画ということで、当然、若干の脚色もされてはいるが、本編そのものは陣内と盟友、故谷信雄とのロックンロールに賭ける夢、両人の友情がテーマで、それは小説と同内容だ。
 映画の内容について、あえてここで細々と触れる必要もないと思う。ただ、すべてのロックンロール・フリーク必見の作品であることは言うまでもない。涙だって笑いだって ある、リアリティーもある、そしていくらかのハッタリだって、そしてロックンロール・ドリームだって、そのすべてがここにはあるのだ。近年まれに見る、最高のロックンロール・グラフィティーだと断言しよう。
 さて、同映画のサウンドトラック盤、これもまた映像同様に重要な役割を果たしたものとなっている。全23曲。エンディングに流れる名曲「涙のモーターウェイ」こそ、ロッカーズのライヴ音源が使用されているが、それ以外はすべて今回のサントラ用に新たにレコーディングされたものがほとんど。ロッカーズとは同じく"めんたいロック"ムーヴメントを牽引した、ルースターズのメンバーからなる、あのロックンロール・ジプシーズが最大限の協力をしてるのも、ファンならずとも見逃せないところだ。陣内役の中村俊介やRyojiをヴォーカルに、ロッカーズやルースターズ時代の代表曲を、まさに79年の博多の熱き一夜を想わせるグレイトな演奏で披露。そして映画の後半部でのコンテスト・シーンでは、ゴーグルエースやヘッド・バンカーズらも登場するわけだが、そこらあたりもバッチリ収録されており、これまたファンにとってはなによりのプレゼントとなるに違いない。
 『ROCKERS』こそは、すべてのロックンロール・フリーク必見の映画である。この映画を観てスピリットを感じたら、サントラ、そして最高のロックンロール・ノベル「アメイジング・グレイス」へと進んでいただきたいと思う。


 最後になるが、谷さんが僕の友人のバンドのサポート・ギタリストをやっていたこともあり、その亡くなる半年前だかに2度ほど飲む機会があった。「もう一度、陣内さんと一緒にやってくださいよ」と、酔いに任せ無責任に言った僕に対し、谷さんは微笑を浮かべながらこう呟いたものだった。「うん、きっとそのうち、いつかは
ね」。
 僕には、ファンからの根強い待望論をよそに、陣内さんが、なぜ、ロッカーズ再結成を封印してしまったのか、その理由が痛いほどよくわかる。「アメイジング・グレイス」の最後は、陣内さんのこんな言葉でしめくくられていた。

  ”いつかまた、必ずおまえに会える。
   バンドを組もうぜ。
   ロックンロールをやろう。
   夜空に一発、派手な花火があがるような、そんな曲を書こう。
   その日まで.....。”

 きっと、『ROCKERS』は谷さんのいる世界でも封切られるに違いない。「ジンさん、オレ、こんなカッコよくなかとよ」.....はにかみながらも、でも、まんざらじゃなさそうな、あのシャイで人懐っこい表情が浮かんできそうだ。


 陣内さんを始め、今回、この映画を中心としたすべてのプロジェクトに関わったすべての人たち、そして谷さんに心から感謝の言葉を贈りたい。"Thanks! TH eROCKERS!! Thanks All The Rock'N'Roll People!!"

2003.9.3 小松崎健郎/TAKEO KOMATSUZAKI


オリジナル・サウンドトラック『ロッカーズ』
COCP-50741 \3,000(incl. tax)

ROCKERS「可愛いアノ娘」
COBA-50746 \1,500(incl. tax)