1991年4月LAで、X JAPANがまだ2ndアルバム『Jealousy』をレコーディングしている際中に突然、<VIOLET UK>の構想は生まれた。
「バンドじゃできない音楽をやりたい!」
 そして14年半の歳月を経た2005年9月22日、VIOLET UKがようやくその全貌を現す。制作10年というとんでもない時間を費やしたYOSHIKIの「超完璧主義」も怖いが、それだけの価値がある「誰も聴いたことがない音楽」がそこにはあった。
 LAで作られ続けた楽曲は300曲を超え、18000テイクも重ねられた尋常じゃない楽曲もある。その中から厳選された、まさに究極の一品なのだ。 最新音楽テクノロジーの粋を結集した、バンドにもスタイルにも囚われないノンカテゴライズ・ミュージック。複数の外国人女性ヴォーカルやラップがフィーチュアされたかと思えば、アナーキーなテクノ・パンクも展開される。勿論YOSHIKI十八番の「綺麗なメロディ」も健在だし、と同時に毒や憂いも全編に溢れている。
 そういう意味では、世界観自体は実はX JAPANの延長線上に間違いなくある。しかし、90年代後半からの著しい音楽テクノロジーの進化が、YOSHIKIの世界観をより正確に精緻に具体化させたのだ。聴こえてくる全ての音が、YOSHIKIなのだ。誤解を恐れずに言えば、「X JAPANはVIOLET UKを生み出すためにあった」ような気さえしてくるのである。
 <VIOLET>とは、「肌の色、人種を超えた」という意味を持つ。また、「怒りの赤と哀しみの青を混ぜた色」も同時に指している。そして<UK>は、「Underground Kingdom」の略。それだけに、このノンカテゴライズ・ロックは当然海外に向けてもリリースされる予定だ。
 「憂いのアナーキズム」とでも形容するしかないVIOLET UKの音が巷に流れる日は、すぐそこまで迫っている。
「VIOLET UKを契機に、ロックシーンが活性化すればいいですよね。X JAPANが登場した時もそうだったんですけど、波に乗るんじゃなくて波を作ってしまえたらなとも思っています(微笑)」

音楽評論家 市川哲史