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TEXT by TETSUSHI ICHIKAWA
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space X JAPAN解散以降、気がつけばYOSHIKIは「クラシックの人」というか、「バラードの人」というか、「アニヴァーサリーな人」というか、制作10年(!)にも及ぶソロ・プロジェクト<VIOLET UK>が未だその全貌を見せないだけに、ほとんど「謎の人」と化してる観がある。

 しかしそれでも「伝説のアーティスト」として君臨し続けてるのだから、それはそれで特異な「個性」なのだ。

それにしても、<紅白>のテーマソングに始まり、<愛・地球博>の公式イメージソングやら、<天皇陛下御即位10周年記念式典>で披露したピアノ協奏曲やら、<テレビ放送50周年>記念番組の主題歌やら、何かの節目を飾るに相応しい「ピアノでクラシックでバラード」は、全てYOSHIKIに依頼が集中してる現状が面白すぎる。

「なんかクラシックを演る機会が多くて――自分から演ろうと思ってるわけではなく、なんか流れで(笑)。自分でも『なんでこうなるんだろ?』みたいな。勿論クラシックも未だにずっと勉強し続けてるんで、多少は進歩してるとは思うんですけど、すっかり<クラシックの人>になっちゃいましたねー。しかも節目節目で現れる、みたいな。でも光栄に思ってます。

考えてみたらX時代から、決して高尚にはならず「クラシックの魅力と醍醐味」を誠実に聴かせてきた男なのだから、これも紛れもないYOSHIKIそのものなのである。

さてこの『YOSHIKI Symphonic Concert』は、一昨年の12月唐突に、しかし華々しく行われたクラシック・スタイルズ・コンサート2daysを収録したライヴDVDだ。『ETERNAL MELODY』同様、ここ数年の「上品なYOSHIKI」の一部始終をベスト盤のように総括できる作品である。

数々のアニヴァーサリー物は勿論のこと、X JAPANからglobeから新曲からとヒストリカルなラインナップが並んだ。そして未だ見ぬ強豪VIOLET U.Kの楽曲も、クラシック・ヴァージョンながら3曲披露されてるし、計5曲でVIOLET UKの2人の女性ヴォーカリスト、NicoleとDaughterが唄ってる。

しかし私は、世界一妥協と縁遠い<ウルトラ完璧主義者>YOSHIKIを16年前から熟知してるだけに、「よくこんな手の込んだライヴが実現したなあ」と別の意味で感心した。

「最初はゲストで出るはずだったんですけど、気がついたら僕の比重がどんどんどんどん増えていって――というか僕のコンサートになっちゃって(失笑)」

「準備は大変でしたよ、もう。本番の1週間前に『このままじゃ普通のコンサートになっちゃう』って話になって、『そういえばそうだな、じゃVIOLET UKもやってみようかな』と。でいきなりアメリカからスタッフ呼んで、それからクラシック・アレンジして(笑)」

相変わらず無茶苦茶な男である。「ほぼぶっつけ本番状態(YOSHIKI談)」でこれだけのことをやっちゃうのだから、本当怖い。

でこのコンサート、よく観るとやはり「純クラシック」ではない。オーケストラと同期物をシンクさせたサウンドも面白いし、饒舌なYOSHIKIのトークも随所に観られて、「あくまでも基本はロック畑」なのが確認できたりもする。

「あんな喋るはずじゃなかったんですけど(失笑)。昔は自分が喋んなくてもTOSHIやHIDEが愉しそうにやってくれてたけど、1人だから『ファンの人達とコミュニケーションとんなきゃいけないな』みたいな」

最も枠の存在がデカいクラシックで、枠が無いことを試みるYOSHIKIの「ポジティヴな無謀さ」に、来たるべくVIOLET UKへの期待も更に高まる今日この頃、である。

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