Nippon Columbia / PASSION COCP-31816

【永田敬士による全曲解説】

 
1.枯葉
〜夢の世界へ誘う(いざなう)泡の模様〜
 あの01年9月11日唄吹き込み。その余りに現実離れした光景に動揺どころか興 奮さえ覚えてしまったことを記憶しています。ともすれば事件へのポストソング に捉えられ兼ねないですが、全く関係ないしその類いには興味もありません。し かしながらその予言紛いの歌詞故に事件の進行と完全同期された(コントロール ルームにはTVモニターが入っていました。)唄入れの瞬間、瞬間にそれをオーバ ーラップさせずにはいられなかった事を告白しておきます。魂の注入作業。ソウ ルミュージック。
 酷すぎる状況から脱出する希望を持つことよりも酷い現状=夢の中と信じる事 の方がリアリティがある時代。追い掛ければ逃げて行くあの感覚、がこの曲。成 り立つ方程式は『夢の中では飛べる=夢の中でしか飛べない=現実では飛べない =事実を知ってなお前を向く』。
 
2.florida(alternate ver.)
今回のアルバムレコーディングセッションは巨大なサンプル摂取作業でもありました。既存サンプル音源は一切使用していません。matthew herbertに共感。基準となるグルーヴを設けず、それぞれの時間軸で演奏したトラック群を1つの時間軸にまとめる作業。それは時に気が遠くなる程手間のかかる”実験”でしたが、それがヒトのグルーヴの損失に繋がるとはぼくは思いません。ヒトが主導権を握ってコンピューターを”利用”すればどちらか一方だけでは決して生まれないもの、つまりこの時代にしか生まれ得ないものを創ることが可能だと思うからです。
 01年6月発表のAO/Florida収録ver.とは別に今回新たに渡部高士氏がミックスし直したここには前出のver.にはなかったアコースティックギターの音色が現われています。AO(今作未収録)の裏側として創られた曲ですが当時も解説したように対だった片方と切り離す事によって全く別の意味を持たせることに成功しています。

 
3.jojo(dub)

 珈琲の時間、夕刻より、from dusk till dawn、秘密、暗室、煙、裏、地下室。これらはこの曲のタイトル候補でした。人は誰でも隠したい過去、嫌な所を閉じ込めている地下室を持っている。鍵をかけて誰にも入らせない。そこが魅力。ヒトはその隠された部分にこそ惹かれるのです。両手で顔を覆いたくなるような事件は同時に指の隙間から覗いてみたくなる誘惑でもあります。理性を裏切ったが最後たちまち本能の波に飲み込まれるのです。ぼくらはそれを”快感”と呼びます。4:50、Pe'z大山氏によるtrumpetの*ejaculate。
 尚この曲には(dub)と表記されている以上、ダブではないブラスセクションがフルにフューチャーされたゴージャスなver.も存在します。

*e・jac・u・late/
━《動》(他)
1 〈精液を〉射出する, 射精する.
2 〈言葉を〉不意に叫びだす, 突然叫ぶ.
【ラテン語「投げつける」の意; 《形》 ejaculatory, 《名》 ejaculation】

 
4.宇宙旅行
 今アルバム中、一番新しい曲。ということは一番大人の曲。大人になる事と引き換えに失ってしまったものを取り返しに宇宙旅行。学ぶ事と忘れる事。出合いと別れ。喜びと悲しみ。約束と裏切り...。諦めてしまったヒトもせめて希望くらい描いてみるのも時には良いのだと思う。頭の中で下される判決には誰も口出し出来ないから。ただぼくらの場合その脳内裁判を[cameramans/1st.]というカタチで公開する事によって皆に希望を与えられたら、と願っている。公開/表現するかしないか、それだけの違いしかない。

 
5.heart no beat

「管楽器、延べ8人。これライブどうしましょうか?毎回ゲスト8人呼ぶ訳にもいかないでしょうしねえ。今から家に帰って考えます。」
〜家にて〜

1. ギャラはビール1杯づつで毎回8人に来てもらう。(なんなら発泡酒でもバレない)でもたった1曲だけの為に来てもらうのももったいないのでこのheart no beatを毎回与えられた時間、延々ループする。歌詞ともリンクするし丁度良い!
2. マルチトラックレコーダー持ち込んで再生。でもマスター、ソニーの3348なのでレンタルするなら毎回トレーラーが運んでくる。そもそも貸してくれるのか?下北沢等の入り組んだ地域でのライブは断念。
3. カラオケ。メンバーはあてぶりなのでブラスセクションも適当に頭数だけそろえて立たせておく。楽器はラッパズボン4着あれば8本なんとか作れる。

 さて、正解はどれなんでしょうか?

 
6.透明人間

 昨年夏、へきれき主催の「光合成」というコミュニティに参加しました。15アーティストによる銀盤上での共演はその後のステージでの共演へと繋がり、ひと夏の想い出と1枚のCDがカタチとして残ったのです。そこに収録されているcameramansによるLast Sceneはこの透明人間のプロトタイプとなったものです。歌詞と自らによるミックスで大きく異なりますがそちらの出来もかなり良いです。
 レコーディングスタジオにはありがちな話ですが、この時のセッションでも謎の現象が多々起こりました。透明人間の仕業でしょうか。それともただスタジオが古かっただけか?

 
7.幽霊船

 アルバムを創り終えた時、そこにはいつも実体の無いものを追い掛けている自分に気が付きました。実体の無いもの。それを音で表現する為に具体的にはスライドギターであるとかフレットレスベースであるとかエコーエフェクトを使っているのです。言葉ではたとえばアルバム中何度も出てくる”夢”です。しかしこの世の中に実体、確実、等あり得るのでしょうか?たった26年生きただけではまだ分かりません。だからぼくらはこれからも探し続けるのではないでしょうか?
 !!音楽は姿を持っていません。ただドラッグ体験者に言わせればその時音はカタチを持って目の前に現れるそうですが、この曲では健全なあなたに薬物無しでもスピーカー又はヘッドフォンからカタチを持って現れてくる音像を疑似体験出来るようになっています。大きい音で聴くことをお勧めします。!!

 
8.rocketeer

 竹村延和氏によるAssembler名義Remixの原曲。AO/Florida収録ver.でここに再現。以下解説は当時の"Remix"で。
 〜夢から醒めた僕らは爆裂ファズロケットに乗って再び宇宙へ向かいます。cameramansを求めているらしいその惑星めがけて今日も飛ぶのです。昨日超高性能小型長距離無線装置の故障の為地球へ引き返そうかと検討致しましたが、機長自らの「別れの涙を見せてしまったので男として今さら戻れない」という理由によりこのまま飛び続けることに決定。再び新たなメッセージを届けに戻る事を約束致します。また逢う日まで、さようなら。〜
 地に根を張ったベースドラム+ダブルベースによる"レゲエ"なボトムと、それに乗せるライドシンバル+スネアドラムで突っ走る"ジャズ"な上物とのバランス、タイム感の獲得に成功。最高。

 
9.列島

 01年3月17日新生cameramans第一弾「列島ep」発表。1年前のナガタはこんなことを言っている。
〜10代の愛すべきクソガキども(かつては自分もその一員であった)の触手を誘うべく生産される音楽(それは"音楽"と呼べる代物ですらないが)が幅をきかせている現状で、”大人”になった”ぼくら”は何を追い求めれば良いのか?そんな大人達に捧げる曲がこれ。正解などあり得ない。全ては「無」なのかもしれない。しかしcameramansはその答えを探し続ける”ぼくら”に追い風を起こすべく唄うのです。約7分間、全編を貫くサイケデリアと高揚感に浸れば何かが浮き彫りになってくる。〜と。その”答え”はまだ見つかっていない。
 この曲においての長尺演奏はライブでの重要な位置を占め、いまだセットリストから外された事がない。本番直前の機材トラブルでその日の公演が絶望視された危機でさえ30分1 本勝負ならぬ30分1 曲勝負という暴挙で乗り越えた事もある程。

 
10.ゆらゆら

  これを聴きながら例えば白昼夢の中で漂っているヒト。彼女(彼)等に〜おやすみさ〜と告げる事で現実への覚醒をさせる。実際とは逆。そんな試み。そもそも夢と現実に表も裏もない訳で。例えば現実モードではどうあがいても思い出せない風景であるとかあの娘の顔であるとかが夢モードで見えてしまった時、やはり現実モードに戻った時には思い出せずさらに切なさだけが倍増して残っているという体験は誰もがすることでしょうが。もはやそうなると夢が現実で現実が夢で.....。思考が絡まって螺旋状に堕ちて行く時の感じ。底なし沼だってひたすら堕ちれば地球の裏側の暖かい場所に辿り着くだろうし。つまりハッピーエンドということで。

 



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