(album)
COCA-14715
1997.12.10


Intro

Lesson 3003 part1

東京は夜の七時
(readymade mfsb mix)

イッツ・ア・ビューティフル・デイ

ベイビィ・ポータブル・ロック

ハッピー・サッド

スーパースター

メッセージ・ソング

アイスクリーム・メルティン・メロウ

モナムール東京

Lesson 3003 part2

トウキョウ・モナムール

子供たちの子供たちの子供たちへ

悲しい歌

陽の当たる大通り

大都会交響楽



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ピチカート・ファイヴの「TYO」('95)に続く2枚目のベスト・アルバムをここにお届けします。
題して「ピチカート・ファイヴ JPN」いかがなものでしょうか。

 いまとりあえず、ベスト・アルバムと書きましたが、ぼくにとってこのアルバムはベスト盤とかグレイテスト・ヒッツというよりもシングル・コンピレイションというのが相応しい感じです。究極のシングル・コンピレイション、といってもいいかな。大ヒットしたシングルと、まあまあのシングルと、まったくヒットしなかったシングルと、「切らなかった」シングル。とはいえ、どれも特別の愛着を持っているのです。

 シングル作りは楽しいものです。ヒットすればラジオやTVで何度もオン・エアされてカラオケで歌ってもらえるかもしれない。たとえまあまあでも、コンパクトでキャッチーな曲なら、コンサートで盛り上がる新しいレパートリーになるかもしれない。もっと大きく予想もつかないほどの大ヒットになれば、音楽で世の中を変えることができるかもしれない――。少なくとも自分の暮らし向きが変わるかもしれない。  そんなことを夢に見ながらの曲作り。それはいっぽうでむずかしい宿題を解くようなものです。
 ここ数年来、ピチカート・ファイヴはだいたい毎年春と秋にタイアップを付けるからシングルを作ってほしい、という依頼を受けるわけです。
 そんなときにいつも作りたい、と思うのはまず思いきりキャッチーな曲。ラジオふと耳にしたときに聴き流すことができないような曲。つい口づさみたくなるような曲。朝、そのレコードで目を覚ましたい、と思えるような曲。そしてヘッドフォンで何十回くりかえして聴いても、聞き飽きるどころか、いつも新しい発見があるような曲。ぼくにとっては、それが理想のシングル盤です。
 ぼくの頭の中のジュークボックスには、そんな理想のシングル盤ばかりが何十枚も入っていて、いつもリクエストできるようになっています。そしてピチカート・ファイヴの新しいシングルは、いつも必ず、そうした殿堂入りシングルに匹敵する水準をクリアしなくてはいけないわけで。けっこう大変なものです。
 先日、筒美京平さんにお会いしたときにズバリ言い当てられたのは、「ピチカートの音楽ってヒットする云々よりも、もうある種の美学を追求してるみたいに聴こえる」ということ。ウーン、そうかも知れない。京平先生にとって究極のシングル=大ヒットした曲ですが、ぼくの中のジュークボックスには、何というか完璧すぎてヒットしなかったレコードとかもたくさん入っているので---。
 その意味では、この「ピチカート・ファイヴ JPN」は、他のそんなアルバムよりもピチカート・ファイヴの美学(カコイイ)が過激なまでに追求されていると思うのです。
 じっさい、自分でいうのも本当にヘンですが、マスタリングした後、今こうしてこの原稿を書く間に、このアルバムを何度もプレイバックしてみて、我ながら本当にイイ曲と思ったり、真貴ちゃんもいろいろ歌い分けてるよな、と感心したり、思わず涙がこみ上げてしまったり、もうこんなむずかしい曲は二度と作れない、と嘆息したり、どうしてこれがヒットしなかったのか、と腹を立ててみたり、やっぱピチカートいいな、とニヤニヤしてみたりをくりかえしてました。真貴ちゃんもたまに言ってますが、もし自分のバンドでなかったら、ピチカートは間違いなく世界で一番オレ好みの音楽を作ってる、と思ってしまいます。ゴメン。でも大好き。



では曲目について書きます。

1.イントロ
これはイントロ。バックトラックは、前作「ハッピー・エンド・オブ・ザ・ワールド」のアレです。

2.Lesson 3003 part1
これについては後ほど。

3.東京は夜の七時
前回の「TYO」のときにはシングルとなった福富幸宏くんの編曲のヴァージョンを収録しましたが、今回の「ウゴウゴ・ルーガ」ヴァージョンは、わりとぼくの頭の中で鳴っていた最初のイメージに近いもの。じっさい。クラブでかけてるのはこっちのヴァージョン。ディミトリ・フロム・パリスがめちゃくちゃ気に入ってわざわざFAXを送ってくれたことがありました。

4.イッツ・ア・ビューティフル・デイ
これはシングルで切ったオリジナル・ヴァージョン。これも理想のシングル。理想を追求しすぎて、ほとんど生では歌えない(息継ぎができない!無理して歌うと死ぬので注意)これがピチカートの美学。今年7月の国内ツアーで寺谷誠一氏のドラムスを加えて演奏したとき、我ながら「こんなにキャッチーで強力な曲もない」と身震いした憶えがあります。

5.ベイビィ・ポータブル・ロック
春に聴きたいヒット・ソング。それも絵に描いたようなヤツ。そう考えて作ったのがコレ、じっさい大ヒットしました。廣瀬修氏のミックスが素晴らしい。

6.ハッピー・サッド
作った当初は、サビが弱いとか何とかクレームを付けられ「んー、あなたとふたりなら」のパートを加えて録り直したり、そくせ地味なタイアップしか取れなかったり、とあまり祝福されずに生まれたシングル。ところがアメリカ映画「UNZIPPED」のエンディング・テーマになったり、スペインでファッション・ビルのCMに使われたりと、意外な運命が待っていて。何よりも「トゥイギー・トゥイギー」と並んでクラブプレイされている曲。これもぼくにとっての理想のシングル。

7.スーパースター
ピチカートのパブリック・イメージに合わなかったのか、タイアップがなかった曲。でも、改めて聴くとやっぱりパーフェクトなシングル。真貴ちゃんの歌い方もまった く別人のよう。自分の中にこんなロマンティックなものが出てくる回路があるというのがいまだに不思議です。相川七瀬さんがカヴァーしたら、きっと理想のシングル。

8.メッセージ・ソング
これは「みんなのうた」のために作られた歌。意外なところで熱烈に支持されたりして嬉しかった。このトラックはリズム・セッションがスゴい。ギター窪田晴男、ベースキタダマキ、ドラムスyoshie、ピアノ河野伸という顔ぶれ。今年の一月、冬のある日、六本木から飯倉へ歩いている途中、路上アクセサリー屋のラジカセから偶然、大音量でこの曲を聴いたのが、作者としては幸福な想い出。

9.アイスクリーム・メルティン・メロウ
これは「切れなかった」シングル。アルバム「ロマンティック96」は秋のリリース、そしてこの歌は思いきり「夏向き」だったので。これもまた自分が書いたとは思えない、素直ないい曲。

10.モナムール東京
「ハッピー・エンド・オブ・ザ・ワールド」からのシングルカット。このシングル・ヴァージョンは思いきりコンパクトなかたちに編集されています。真貴ちゃんの歌がパーフェクト。

11.Lesson 3003 part2
これも後で。

12.トウキョウ・モナムール
これも「ロマンティック96」のときに作った、もうひとつの「切れなかった」シングル。竹内まりやの「駅」も大ヒットしたのだし、せめてシングルカットしてみるだけしてくれてもよかったのでは、といまだに思う。むずかしすぎてカラオケでは歌えない、と言う人もいるかも知れないけど、そんなことはない、完璧に歌い上げることのできる奴をぼくは知っています(ただし男)。来年の秋にもう一度シングルを切ってみませんか?

13.子供たちの子供たちの子供たちへ
たとえば「GET BACK」のB面に「ドント・レット・ミー・ダウン」がるとか、オザーク・マウンテン・デアデヴィルズの「ジャッキー・ブルー」が大ヒットしたり、という意味で、これはやはりぼくの頭のジュークボックスの中ではシングルとして通用する曲。このリズム・セッションも素晴らしい。ギター古市コータロー、ベース小里誠、ドラムスMITSUKO、ピアノ堀江博久。歴史的名演、みたいにずっしりしたサウンド。

14.悲しい歌
「ロマンティック96」からのシングルカット。ほとんど勢いでできてしまった曲で、作った当初は他人からほめられてもあまりピンとこなかったり。それが何故か今年になって自分の中では大ヒット。ようやく良さがわかったというか。いまクラブでガンガン廻してます。和田アキ子さんにカヴァーしてもらうのが作者としての夢。

15.陽の当たる大通り
これはアルバム「オーヴァードーズ」に収録されたものとは微妙に異なるシングル・ヴァージョン。詞が切なくて気に入っていたのだけれども真貴ちゃんの詞が切なくて気に入ったのだけれども、新宿二丁目のお友だちに「これってオカマのうたよね〜」と言われてから、作者であるぼくでさえ、そうとしか思えなくなりました。バラ色のベッド、なんてね。

16.大都会交響楽
最新シングル。これも作った時は、何とも判断しがたい感じでしたが、こうしてこのアルバムに収録されると見事に殿堂入りしたような気がします。はじめてのゲームソフトのための書下ろし、ということで、こんなテンポを選びました。この曲を聴きながら夜の首都高速を走るとかなりヤバイです。

という具合に、この「JPN」はソングライターとしてのぼくを思い切り自己満足させることのできる究極のシングル集になったと思うのですが、そこへDJとしてのぼくが巻き返しを討ったのが、新録トラック"Lesson 3003"なのですね。
 ある意味ではピチカートの曲のメガミックスでもあるこのトラック、ベスト盤には相応しい企画と言えるのですが、最近のDJの好みを思い切り反映させて、かなりオモシロい作品になったと思います。そしていまハードディスクでの可能性を試すのが楽しくて仕方がない福富幸宏さん---はもちろん前作「ハッピー・エンド・オブ・ザ・ワールド」の共同プロデューサーです---と、さらに永山 学さんとL?K?Oくんそれぞれ芸風のまったく異なる、しかしかなり気合いの入ったターンテーブル技能のおかげで、そうとう完成度も高くなったと自負しております。ムズカシいことはさておいても、今年の年末のパーティ・シーズンのDJにかなり役立つトラックになりそうです。ちなみに12月だけでも何とDJ10回!DJ小西は相変わらず精力的に活動しております。ひとつ。
 ベスト盤の解説としては、山下達郎さん並に長々としたものになりましたが、それだけ思い入れのあるCD、ということで、どうか企画モノと片付けずにせめて一度は聴いていただきたいものです。そしてふたたびピチカート・ファイヴの古い作品をひっぱり出して聴いていただけるなら、こんなに嬉しいことはありません。

小西康陽



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