■about 「サヨナラ サヨナラ」Sound producer 小渕健太郎(コブクロ)■

 心のひだを声が撫でる。そんな感覚を覚えたのは2004年の秋、彼女自身の作品「秋晴れモノラル」の中の「まなざし」という楽曲を聴いた時でした。優しさ、切なさ、温もり、生活感、葛藤、慈悲、狂気、情熱、いくつもの感情が言葉とメロディーの隙間から漏れ聴こえてくるようでした。それは“歌唱力”などというくくりでは片付けられない、命あふれる表現者の息づかいでした。
 今回、楽曲提供のお話をいただき「サヨナラ サヨナラ」を書く際、とにかく、彼女の声と人間性が持つ沢山の魅力を、余す事無く呼び起こしたい、という事が一番の目標でした。そして、過去に僕が携わらせてもらった楽曲提供のプロセスとは全く違う方法で、ゆっくりゆっくり作り上げ、彼女は最後、それを完全に自分のものにして悠然と歌い上げました。
 作詞、作曲、アレンジからミックス、マスタリングまで全ての作業を任せて頂けた事で、僕自身も高いレベルでの達成感を得る事が出来ました。そうする事で、楽曲の芯に迫れた様に思います。
 僕があの日、本屋さんの天井にぶら下がった小さなスピーカーから流れてきた歌声に受けた衝撃を、この楽曲で一人でも多くの人に届けられたら良いなと思います。