上間綾乃 10の楽曲への思い
01.【はじめての海】
このアルバム全体、そして今の上間綾乃を象徴する曲です。
今年、私はメジャーデビュー3年目になりました。
デビューからの1.2年は、沖縄から仕事のために本土に通い、慣れない環境でとにかく必死で、音を紡いできました。
そして今、東京に住むようになって一年が過ぎました。
小さな小さな島で育った私には広すぎる大都会は、
最初、とても窮屈に感じました。
しかし、いざ暮らしてみると、とても刺激的で、毎日驚かされることばかりで、
今まで感じたことのない感情が、徐々に生まれて来るのを感じました。
その感情は、旅を続けながら歌う道で出会う、
沢山の人たちの温かい優しさに触れた時や、道端に咲いた儚く強い花を見たときになどに生まれました。
そんな日々を過ごしていたなか、撮影のために神奈川県の葉山の海に行きました。
生まれ島の海しか知らず島の海こそが1番だと思っていた私でしたが、
目の前に広がる海を見た時「なんて美しいんだろう」と、
心から素直にそう思いました。
「この海は大好きなふるさとにつながっている」胸が熱くなりました。潮の香り、髪をさらう風が、本当に気持ち良くて…
「今までこの美しさに、なぜ気づかなかったんだろう」
なにか、心の奥底につかえていたものがとれて、一気に視野が広がりました。
忙しい毎日に、いつしか忘れてしまったもの、失ってしまったなにか…大切な人、皆それぞれがもつふるさとに、
この海はつながっている…。この曲で、そんな事に気づくきっかけになってもらえたら嬉しいです。
この曲で面白いなと思うのは、バンドと、風のようなストリングスのコード進行と、それに相性ぴったりの三線のフレーズです。
私にとって三線は相棒で、想いを表に伝える表現方法の一つ。もっと自由に、何にも縛られずに演奏できればいいなと常々考えていて、アレンジャーの河野伸さんと相談してフレーズを決めました。三線の音自体にもこだわり、カスタマイズを変えることで、これまでの私の三線とは違った音に仕上げました。
皆さん気づくでしょうか?
02.【波】
大好きな川江美奈子さんの曲です。
アレンジャーの松浦晃久さんと、大切なものは何か、どういう気持ちを込めたいのか、上間らしさとはなにか。
様々な事をお話しました。
まるで私のカウンセラーの様で(笑)とても心強かったです。
サビの歌詞のない部分では、色んな景色が浮かびました。
皆さんも想像して聞いてみてください。
03.【花言葉】
初めてご一緒させていただいたASUさんの作品。
ノスタルジックな響きが心地良く、
何処の国とも、いつの時代とも限定しない世界観、
そして沖縄民謡の節とも言い切れない、けれどJ-POPの枠にも収まらない歌い方になったこの曲は、聴く人のいろいろな想像をかき立てるのではないかと思います。
歌の余白に、皆さんは何を感じるでしょうか?
自分で歌っていても、凄く気持ちが良く、
今までにない歌い方になり、自分でとても驚きました。
これからの歌の道が開けたような感覚です。
華やかなツインギターや、ツインパーカッションならではのサウンドも是非お聴き逃しなく!
04.【夏いちりん】
夏の野外コンサートで歌っている気持ちでレコーディングしました。ミュージシャンの皆さんにも、夏フェスな感じでお願いします!と。皆さんノリノリで演奏してくれました。
車の窓を全開にし、歌うと気持ちがいいですよ。
私は湘南の海でそれを実行しました(笑)
だって、海が私をそうさせるんですもの。
この夏、皆さんと一緒に熱唱したいですね。
05.【童神】
古謝美佐子さんの名曲を、私は10代の頃から原詩のうちなーぐちで歌っていました。うちなーぐちの独特な世界観を大切にしながら、今回は標準語で歌う事に挑戦しました。
そのきっかけとなったのが、去年(2013年)ピアニスト倉田信雄さんと二人で出演した、六本木ヒルズのクリスマスイベントでした。童神を標準語で歌う私の歌に、皆が喜んでくれたんです。
思った以上の反応で、皆の笑顔が素直に嬉しくて、私の歌の原点である「周りの人が喜んでくれるから歌う」という気持ちに改めて気づかされ、今回倉田信雄さんの素敵なアレンジで収録しました。
レコーディングしたのはバレンタインデー。東京大雪の日。
島育ちの私にとっても、あの大雪レコーディングは、忘れられない日になりました。
スタジオからの帰り道、録りたてほやほやのこの曲を聴きながら帰りました。
「暑き夏の日は 涼風を送り 寒き冬来れば この胸に抱いて」
雪景色を見ながら、こうやって季節は巡っていくんだなと、胸が熱くなり、また夏が待ち遠しくなりました。
06.【あの角を曲がれば】
この曲も、川江美奈子さん作詞作曲。
「なんで川江さんは、こんなにも私の心の中が見えるんだろう」
この曲ができた当時、私は大切な人との別れがあり、寂しさの中にいました。
川江さんは、そんな私の想いにそっと触れて、歌で表現する勇気をくれました。
二人で色々お話ししたり、何度か私のコンサートを見ていて、この曲が生まれたとおっしゃっていました。嬉しくて涙が出ました。泣いてばっかりですね、私(笑)
でも今は大切な仲間に囲まれて、心から笑える自分がいます。
悲しみを乗り越えると、人って強くなるんですよね。
「ダイジョウブ ダイジョウブ」と口癖のように言ってくれた大切な人のように、今度は私が皆さんに「大丈夫だよ」と勇気をあげられるように、歌い紡いでいきます。
07.【オキナワのともだち】
長い時間会わなくても、変わらず居てくれる友達は私にとって本当に宝物です。
曲のなかでは、”ともだち”と歌っていますが、友達だけでなく、大切な人や、家族を想い歌っています。
いつでも自分を受け入れてくれる環境に甘える事なく、夢を叶える為に必至に歯を食いしばる。
きっと皆さんもそうでしょう。
そんな忙しい社会で日々頑張っている人達皆への応援歌でもあります。
レコーディングの一番最後の作業で、仕上がった10曲を通しで聞きました。
「あの角を曲がれば」から「オキナワのともだち」の流れで涙がでました。
大切な人との切ない別れがあり、けれども大切な仲間に囲まれて、日々強くなる自分に気づく、
「あの角を曲がれば」。そこからガラリと雰囲気が変わり、
輝く太陽を思わせる華やかなサウンドの「オキナワのともだち」
ふるさとへの思いが切なくて、なのに曲が明るくて、だから余計にまた切なくて…
そんな私にスタッフさんが、何も言わずにハンカチをくれました。そしてまた泣きました。だから私は頑張れているんです。
大切なものを見失わず、変わらずに居る事。
成長し続け、変わる事を恐れない事。
この思いを噛み締めながら歌っています。
08.【海へ来なさい】
この、倉田信雄さんのアレンジには衝撃を受けました!
倉田さんがお1人で何層にも重ねたコーラスもとても気持ちよくて、
スタジオに居るのに、私は潮風が香る岬で両手を広げて立っているようでした。
スタジオで、この曲の仕上がりをチェックする際、
スピーカーから飛び出してきた音の迫力、すべてをも包み込んでくれるような温かいサウンドに驚き、一瞬思わず体が浮きました。
自分の悩み事なんてちっぽけだ。
もっと大きな視野をもちなさいと、いつも背中を押してくれて、勇気を与えてくれる海。
井上陽水さんの永遠の名曲を、私は優しい子守唄のような気持ちで歌いました。
09.【あなたには守ったものがある】
私の前アルバム「ニライカナイ」から今作への橋渡しの役割を担ってくれた曲です。
今回のアルバムのレコーディング期間は9ヶ月と長期間に及びました。
その最初にレコーディングしたのがこの曲でした。
「こういう風に歌いたい」と、自分がイメージする歌にならずに、今までにないくらい苦しみました。
足踏みしたり、試行錯誤しながら沢山回り道をしました。
そんな上間を温かく見守り、供に歩いてくれるチームに支えられ、進む事ができました。
自分自身を受け入れた時に、今まで悩みもがいていたのが嘘のように、
晴れやかな歌が次々に飛び出しました。
私の周りにいる大切な人へ。そしてこれから出会う人たちへ向けての感謝の気持ちを込めた歌。応援歌です。
私には歌があり、皆さんがいます。
皆さんにも歌があり、私がいますよ。
そんな気持ちも込めて歌い届けます。
10.【てぃんさぐぬ花】
7才から始めた沖縄民謡のルーツと、
アーティスト上間綾乃の音楽の未来を伝えたくて、この曲を選曲しました。
根底にしっかりとルーツがあるからこそ、サウンド面でも、面白い作品になりました。
この素晴らしいアレンジは松浦晃久さん。
「こんな曲です」と、松浦さんの自宅スタジオで歌いました。
歌っている最中、私のそばでは可愛い猫が、私の膝と三線に身を寄せていました。
その時、記録用にと録ったものが、本採用されることになりました。「これでいいんですか?」と楽な気持ちで歌った私は驚きましたが、「これが、いいんです!」と松浦さん。
たしかに、心のゆとりが見え、気張らず、伸びやかに歌っているなと、私自身もそう思いました。
この曲で注目してほしいのは、後半のスクラッチノイズや、曲の一番初めの音と、最後の歌詞に出てくる、不思議な「てぃーー」という音。実はこれ、私のコーラスなんです。
最初の声は、声を逆再生しディレイ等で加工し、後半はまるでエンヤのように何層にも重ねてレコーディングしました。
「松浦さんって、面白い事をするなー」と、思わず笑っちゃいました。ホント、音楽って可能性無限大で楽しいです。
最後に私が補作した歌詞は、
「太陽は西に傾き、もうすぐ陽がくれる。明日の楽しみは、太陽と共にある。」という意味。
上間綾乃の音楽も、太陽のように日々生まれ変わり、新しい陽が昇ります。その光を皆さんと供に共有できたら嬉しいです。