GENERAL HEAD MOUNTAIN 松尾昭彦による
アルバム『バタフライエフェクト』セルフライナノーツ
♪01.『薊』
完成当初は「思考停止」と言うタイトルだったのだが、「殺してくれないか」と言う
究極の愛情表現から始まる曲のため、歌う度に言葉に出来ない違和感に襲われた結
果、レコーディング中にタイトル変更。可愛らしい表情を無数の棘で隠す花、その名
前を借りてグルグルと回り続ける頭の中に決着を付けた。
♪02.『揚羽蝶』
いつだって僕は誰かに嘘をつく。いつだって君も誰かに嘘をつく。そんな世界に何を
期待しろと言うのだろうか。ありったけの金を、夜の帳へ投げ込んでは見える真っ赤
な電飾、低い天井、コントラストはどこまでも強く。あの日、僕が見たあの揚羽蝶
は、誰かが捨てた一万円札なのかもしれない。
♪03.『鍵穴』
誰にも言えない事ばかりだ。いっその事、部屋に閉じ込めてしまおうか。普通に鍵を
掛けてもなんだか味気ない。そうだ、君が好きだった飴を溶かして鍵穴に詰め込んで
しまおう。あれ?何味が好きだったんだっけな?思い出せない事ばかりだ。そう言え
ば、君の顔が上手く思い出せないよ。たぶん、あの女優に似てたはずなのにな。思い
出せない事ばかりだから、僕は都合の良いように記憶を塗り替える傾向がある。
♪04.『菜々』
バナナの皮には幻覚作用があると聞いた。そこから拾ったタイトル通り、地獄の一歩
手前でうごめく男の悲しい夜の歌。見えないもの、見えるもの、世界はいつでも広が
るばかり。
♪05.『天照』
「神話の里、宮崎」出身の私、車を走らせ高千穂峡へ。そこで「神々も踊った」と言
う話を聞き、「なんとも滑稽なダンスミュージック」をテーマに制作。光を欲した
神々が踊ったと言うならば、人々はもっと過激に踊らなければならない。何とも底辺
の僕らしい作品になったと思う。ウム、マコトニコッケイナリ。
♪06.『林檎』
11月下旬、とある町の小さな空の下の話。甘く熟した林檎みたいに赤い頬、それは何
を物語るのだろうか。二人の未来を想像して。
♪07.『感情論』
これは僕の十八番のタッチ。今回は「悪魔のダンス」をテーマに制作。確かに世界は
愛に溢れてはいるが、満ちているとは思わない。少女漫画のような恋愛に憧れるな
ら、きっと現世では無理だろう。来世に期待したいのだが、たぶん僕は、蟻とか蜂と
かになると思う。これだけ自由に生きた罰、ゴミのようにこき使われて死んで行く運
命に導かれても仕方がない。嗚呼、現世を満喫しなければ。あれれ?恋愛の話は何処
へ…
♪08.『蜃気楼』
例えば僕が死んでしまう二秒前。最後に何かが食べたくなって、とにかく揺れて、と
にかく揺れた。何が食べたくなったのか、無論、答えは歌詞の中。
♪09.『風車』
足りなくなってしまったものが、それでも世界は何も変わらず回り続ける事と、それ
故の美しさと儚さを教えてくれる。誰かのように優しい風は、今日もあの坂道を通り
抜けて、静かに季節を彩るのでした。
♪10.『すばらしい日々』
限りある時間の中で、限りある世界の中で、限りない何かを想像し、映し出し、表現
し続けた日々。いろいろあったな、楽しかったな。また会えるかな、また会いに行く
よ。言葉にすれば簡単で、だからこそ伝わらない心の中心点。だからと言って、あの
日の空のように、青く広がり続ける事だけが正解だとは思わない。だから僕は歌って
いる。赤っ恥、それも承知の上で歌っている。理由は死ぬ瞬間にでも考えるよ。ゆっ
くりと、ゆっくりと。
♪11.『本当に僕は、君だけの太陽になりたかったんだ。』
君だけの太陽になりたかった。たったそれだけの事。今日も太陽は昇った。明日も
きっと、同じように昇るだろう。笑い声、光の中心、空の上。本当に僕は、君だけの
太陽になりたかったんだ。ただ、それだけで良かったんだ。
全11曲、僕と君から始まれば終わる、小さな世界の日常と非日常。その中に、僕なり
の光が満ちて溢れるまで注ぎ込んで約44分間に閉じ込めた。この作品に触れた感覚
は、十人十色、その感動も、その高揚感も、その違和感も、その喜びも、その悲しみ
も、それは光、間違いなく光。どうか受け取ってください、これが僕の音楽です。僕
が愛する音楽です。
GENERAL HEAD MOUNTAIN
松尾昭彦