――――広瀬悦子を初めて聴いたのは、彼女が13歳の時にモスクワ青少年ショパン国際コンクールに参加して優勝した、その頃のテープで、そこでは音楽の流れが常に自然で、実に素晴らしい才能だと感心した。その後、パリに留学したときいて、どうしているのかと時々気にもなっていたのだが、そのうちにアルゲリッチ国際コンクールに第1位入賞という話を聞いて、喜んでいた。そして数年前に別府のアルゲリッチ音楽祭に登場、実にみずみずしいテンペラメントそのものの演奏を披露してくれた。 このCDには、いわゆるピアノのオリジナル曲ではなくて、他ジャンルの作品をピアノ用に編み直した、つまり編曲ものばかりが収録されているが、これがまたいずれもが実に魅力的である。「愛の喜び」や「ファウスト・ワルツ」に弾むそのリズムの乗りの魅力。シューベルト〜リストを歌い継ぐ息づかいの自然さ。また「シャコンヌ」は実に堂々として構築的で、音楽の内容も立派だ。まさにアルゲリッチ好みの、テンペラメントな資質を十分に発揮した若手の登場だ。
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