20年以上もの長き間、眠り続けていた邪神が漆黒の闇から解き放たれる。UKメタルの王、Hell の幻の作品がついにそのヴェールを脱ぐ。
オカルト・メタルという当時想像さえもされなかったジャンルのオリジネイターとして、その後のメタル・シーンに間接的に与えた影響は計り知れず。
82年に結成されたHell。Race Against Time とParalex という2つのバンドのメンバーが集まってその母体が出来上がった。(*Paralex の‘White Lightning’ EPは当時ファンジン上で海外のアルバムを紹介、コレクトしていたMetallicaのLars Ulrich のお気に入りで、その後、彼とGeoff Barton(Kerrang ! マガジンの創設者)が共同でリリースした ‘NWOBHM ’79 Revisited’ サンプラーに収録された。
5年もの間、ツアーに明け暮れていたにも関わらず、彼らの名前が当時のミュージック・シーンで浮上することは、なぜかなかった。なぜならばプレスが理解できないことを彼らは当時から行っていたからだ。あまりにも他と異なり、エクストリームなサウンド。
彼らの音楽的知性を理解していたほんの一握りのファンは、多様なイメージを喚起させるそのサウンドに酔いしれていた。
そして、長い間保ち続けていた夢が砕け散る瞬間が訪れる。86年にようやくつかんだアルバム契約が、契約先のMausoleum レーベルの倒産によりなくなり、さらには87年にオリジナルのシンガー/ ギター・プレイヤーだったDave Halliday が自殺。バンドの活動は一切ストップしてしまう。
そのHell のライヴに必ず足を運び、最前列でヘッド・バンギングをしていた少年がいた。
Andy Sneap というその少年は、Haliday にギターを教わっていて、その後Sabbatを結成し、人気を博しただけでなく、プロデューサーとしてもそのキャリアを大きく開花させていた。
Andy はその後、Hell の残りのメンバー、Kev Bower (guitar/keys)、Tony Speakman (bass)、Tim Bowler (drums) と話し合い、過去のマテリアルを昔のデモを使用しながら再レコーディングするアイディアをまとめあげた。Haliday のギター・パートはAndy が、そしてヴォーカルにはDavid Bowerを参加させ、80年代のHell のクラシック10曲をレコーディング。
ヨーロッパのメディアは、この新たに作り上げられたアルバム ‘Human Remains’ を過去15年間に起こったすべての事件の中で、最も歓迎すべきこととして取り上げ、遂にHell が再始動したと狂喜している。
琥珀の中で長い時間眠り続けていた猛毒生物のごとく、Hell の遺産はここに甦った。
HELL は長い間、NWOBHM (new wave of British heavy metal) というムーヴメントの中で特別な存在だったし、彼らと仕事をするチャンスが訪れたことにとても興奮している。当時、マニア同士のテープ・トレーディングで彼らのデモを入手して、その数十年後にAndy Sneap のディレクションでアルバムが完成したんだ。そのサウンドは以前よりもずっとフレッシュなものだ。Nuclear Blast がHellと仕事をすることに誇りを持っているし、そのタイムレスな音楽をファンが共有できることは素晴らしい。Hell はこのアルバムで、ようやく彼らが本来享受するはずだった認知を得ることができるし、このバンドがどれだけ怪物的な存在だったかを皆が知るはずだ。
Jaap Wagemaker, A&R of Nuclear Blast