Max Cavalera こそ、メタルシーンにおける創造性を具現化した人物である。謎めいたシャーマン、プロテスト・シンガー、革命的なヒーロー、そして大のメタル・ファン、父であり、夫であり、バンド・リーダー、コンポーザー、南米のスラムから極東ロシアにいたるまで、数世代にわたるファンの支持を集めており、彼のプロジェクトSOULFLY はそれぞれのアンセムとして輝きを放っている。
トレードマークであるCavaleraの4弦ギター、野獣のごとき咆哮、そして唯一無比と言えるバンドのリフ。 ニュー・アルバム»Savages« は彼らの持つポテンシャルをいかんなく発揮した傑作と呼んで差し支えない。リード・プレイヤーMarc Rizzo (彼は既にMax がSEPULTURAに在籍していたのとほぼ同じ年月をSOULFLYで費やしている)、ベースのTony Campos (Static X, Ministry, Prong)、Maxの 21歳になる息子Zyon(彼はLODY KONGのドラマーとしても名高い)。
“SOULFLY のキラー要素のすべてがSavagesには含まれている” と、Maxは断言する。
»Savages« は間違いなくバンドの長い歴史において、最もブルータルかつヘヴィな作品と言えよう。
Max自身の分析では »Savages« は初期2作に見られたトライバル・グルーヴ('Bloodshed'、'Ayatollah of Rock'N' Rolla'、'Master of Savagery'など)と、DARK AGES、OMENらのスラッシュ・メタルの融合を見せる。またCAVALERA CONSPIRACY などに収録されていた短く、パンキーな曲は鳴りを潜め、初期METALLICAを髣髴とさせる長尺な楽曲が大半を占めている。 'Fallen' 、 'Cannibal Holocaust'などのデス風味の利いた楽曲も健在だ。
“俺はタイトルの»Savages«をとても気に入ってる。1語というのがパワフルで良いんだ。'Primitive', 'Roots', 'Arise,みたいなね。現在の人類の状態についてのタイトルだ。ネット社会で、火星へのプロジェクトも進んでる一方で、互いに傷つけあう。結局人類は野蛮人なんだよ。テクノロジーの進歩に関わらず、俺たちの本質は野蛮なんだ。”
Max Cavalera の持つ多様な音楽性は、彼が携わる様々なプロジェクトからも窺い知ることが可能だ。長い確執を経て、実弟のIgor Cavaleraとスタートさせた CAVALERA CONSPIRACY、FUDGE TUNNEL のAlex Newport と組んだNAILBOMBには名うてのロッカー、DEAD KENNEDYS, FRONT LINE ASSEMBLY, BIOHAZARD 、NEUROSISのメンバーが顔をそろえる。また、THE DILLINGER ESCAPE PLAN, MASTODON、THE MARS VOLTAのメンバーが一同に会したプロジェクトもスタートする。
SOULFLY はMax Cavalera が、自らが作ったバンドを去った時に産声を上げた。
デビュー作»Soulfly« は多様な人脈をフル活用し、多くのゲストが参加、全米のみで50万枚のセールスを記録。その後も、SLIPKNOT, SLAYER, MEGADETH, DEFTONES, RADIOHEAD, STONE SOUR, CYPRESS HILL, MACHINE HEAD, DEVILDRIVER, FEAR FACTORY, MORBID ANGEL, THROWDOWN, S.O.D., SKINDRED, BORKNAGAR, WILL HAVEN ,CATTLE DECAPITATION などジャンルの壁を越えたアーティストたちとのコラボレーションを繰り広げている。
今回のプロデュースを勤めたのはTerry Date (PANTERA, DEFTONES)。以前に SOULFLYのアルバムをミックスした経験を持つDateは最適な人選だったようだ。レコーディングの日程が決定して以降、Max は創作のスピードをどんどん速めて行った。
Maxと息子の Zyon が共作した楽曲も収録されている。
“Zyon が俺に向かって言うんだ。'ねぇ、俺がアルバムでプレイするよ。ガッカリさせないからさ。'ってね。部屋でヤツといっしょにジャミングしたんだけど、それが最高だった。'こりゃ良いぜ。やろう!!'ってなったのさ。”
通常SOULFLY の作品では、ドラマーは基本的にMaxがレコーディングしたデモをコピーしてスタジオに臨むのだが、今回はZyonと家でリラックスした状態で制作が進んだ。 “1ヶ月間、みっちりジャミングした。マテリアルの90% をスタジオ入りした時にはマスターしていたんだ。昔のSepulturaを思い出したよ。Ariseや Chaos A.D.をね。弟の Igor がそのスタイルでやってたから、今回はそれに近いね。”
今回のレコーディングにあたり、Cavalera は少なくとも1,000のリフを考え付いたと言う。 “やっぱりキラーなリフが楽曲の要になってる。作曲のプロセスというのは、俺に限って言うならキラー・リフを可能な限り見つける事と同義だ。戦いと言っても言い。時には数時間ギターを持って考えるし。思い浮かばなければ、楽器をたたきつけて、休憩するよ…で、またやり直す。”
BLACK SABBATHの'Symptom of the Universe'が最高のリフの一つと断言するMax、そのSABBATHの Tony Iommi とMETALLICA のJames Hetfield こそが現代のリフ・マスターだと彼は主張する。
“リフを作ることはアートフォームだ。もっと注視されるべきだし、その価値があると思う。”
既に10年もの歳月をバンドで過ごしているもう1人のギター・プレイヤー、Rizzoはスラッシュ/デス・メタルへの造詣をバンドにもたらしている。
“Marcが Soulflyに参加したことでバンドには大きな変化があった。彼こそが理想のプレイヤーだった。 Andreas [Kisser](Sepultura のプレイヤー)と仕事をしていた時は、彼こそが最高だと思っていて、その後、そのヴァイブを感じることはなかった。前任者たちはクールではあったが、100% じゃなかったんだ。新作の 'Bloodshed'に顕著だと思う。クリーンパートからフィードバック、楽曲を良くしてくれるんだよ。”
Campos とはラテン・ルーツという点で共通項が多い。
“Vargasという人物に関するアイディアがあった。ヴェネズエラ出身の犯罪者だ。 'El Comegente'(people eater =人食い)と言うニックネームで呼ばれていて、アンデスのレクター博士みたいなものなんだ。俺たちは2人とも彼に関する記事を読んでいた。 Tonyはそれをテーマにした楽曲の何箇所かのパートをスペイン語で歌っていて、俺はポルトガル語で歌った。ベース・プレイヤーとしては勿論素晴らしい。トーンも歪みもね。自分のやり方を知ってるプレイヤーたちと録音をするのは楽しいよ。”
Max にとって、自分の息子、まだ21歳の青年をレコーディングに参加させるのはある意味リスキーだったに違いない。
“息子がドラマーで参加する…最高だよ。リスクは好きなんだ。何が起こるか試して、結果を見る。失敗したって、挑戦したことは確かだし、何もしないよりは全然マシなんだ。少しの勇気は必要だったかもしれない。プロデュースのTerryに俺は、息子はクリックを聞かないよって伝えたけど、 Terryは問題なかったし、Zyonは素晴らしかった。サウンドもプレイもね。”
Zyon のレコーディング・デビューだったのみでなく、»Savages は家族作品と言っても良いかも知れない。オープニングの 'Bloodshed'では、もう一人の息子、Igorが参加している。
Igorはパンクな声の持ち主だよ。昔のCORROSION OF CONFORMITYみたいだね。サビはオールド・パンクの雰囲気かな。MISFITSみたいでもあるよ。”
また»Savages«にも、以前同様多くのゲストが参加している。CLUTCHのNeil Fallon ('Ayatollah of Rock 'N' Rolla' / 楽曲タイトルはメル・ギブソンのMad Max 2: The Road Warriorにインスパイアされている)、I DECLARE WAR のJamie Hanks は、'Fallen'で縦横無尽なデスコア・ヴォイスを聞かせる。
NAPALM DEATH のMitch Harris が参加した'K.C.S.' も聞き逃せない。Harris とCavalera(家)の付き合いは長く、Zyon が生後一ヶ月の時に、彼のおむつを替える映像が残っているほどだ。
“Mitch はツアー中で、オフを過ごすためにスタジオに立ち寄っただけだったんだ。 'おい、何か歌うか?'と尋ねたら、 '今かよ?'と答えた。 'そうだよ、やってくれ!' っていう感じさ。彼がスクリームしてるのを見たんだけど、アニメみたいに目玉が出てたよ!! 'お前、今のはここ数年で最高にメタルな瞬間だったぜ!!'って、ほめてやった。”
新しいバンド、NINE INCH NAILS, MAN MUST DIE, TRIGGER THE BLOODSHED ,I DECLARE WARを聴き漁る反面、彼は自らのルーツである METALLICA, SLAYER, C.O.C.に立ち返る時もある。また、多くのワールド・ミュージックを聴き、コラボレーション、プロジェクトは枚挙に暇がない。それらずべてがSOULFLYというメタル・マシーンへと繋がってゆくのだ。