今回はレディメイド・イヤーズ、トライアド・イヤーズのファンタスティック・プラスチック・マシーンのベスト盤という企画を頂きまして。
――正式な意味でのベスト盤は初めてですね。
去年も須永辰緒さんによるメガミックス盤というのはあったんですけど、今回は自分で選曲させて下さいということになりまして。ベスト盤とはいえ2001年の気分で1995年から2000年までの14曲を選んでみました。そういう意味ではベスト盤ってゆうか、ベター盤。「モアベターなベスト盤、通称ベター盤」。
――タイトルも「les plus(レ・プリュ、注:フランス語で最上級)」。
「レ・プリュ」は一番最初にオーガニック・カフェが家具屋さんのオーガニック・デザインだった頃に、梶野くんとなんかおしゃれなパーティーやろうということで始まったパーティの名前なわけですけど。いわゆるカフェ文化の先取りみたいな(笑)。鎌倉のディモンシュの堀内さんにコーヒーいれてもらって、M&CO. 松浦さんに映像をやってもらって、関口さんや帝さん、それから帰国後まもないノリ(池田正典)くんとか、エスカレーター・チームとか色んな人といっしょにDJして。ライブもやったり。
――海外からのゲストも豪華でしたね。
うん。ジェントルピープル、カーミンスキー。ハモヤン(ル・ハモンド・インフェルノ)も来たし、イージーチューンも来たし。まあ、その後オーガニック・デザインは東京を代表するカフェになったわけですけど、ぼくと梶野くんはカフェ文化から遠ざかって、いや遠ざかってもないか(笑)。
――(笑)で、そんなベター盤「les plus(レ・プリュ)」ですけど。
実は、結局なんとなくFPMを代表するような曲とかが入っているようで入っていないっていうか。
――うんうん、そうですね。 トラック14の「I FPM」で小西さんがメガミックスというかたちで全部披露してくれてるので、代表曲に関してはそこに引き受けてもらってと思って。あとは自分の気分で今DJでかける曲だったり、海外の12インチだけ入っているようなレア・トラックだったり、それからもちろん、FPMの実質的デビュー曲である、「ジェット機のハウス」を入れてみたりとかですね。トライアド・イヤーズ以降にFPMのことを知ってくれた人もたくさんいると思うんですけど、そういう人にも、FPMの歴史をふりかえってもらえるようなものを作ろうと思って。そういう意味では2001年の終わりにふさわしいコンピレーションかなと。
――ジャケットも、2001年っぽい感じで、真っ黒にしちゃいました。
黒版。ブラックアルバムみたいなもの。プリンスの。
ほんとは、昔の音源をもう一回リミックスして今風にという企画もあったんですけど、まあ、今回は時間と予算の関係で(笑)。
――では曲ごとのエピソードなど。
まず、1曲目「TAKE ME TO THE DISCO」。これはレディメイド・イヤーズの最後のシングル。'99年世紀末感がもりあがる中、世紀末を象徴するようなアンセムをつくりたいなと思って作ったトラック。
――この頃からミラーボール感(ディスコ・ハウス感)が高まってきた時期ですね。
そうですね。覚えてるのがね、これが出た時にね、モーニング娘。もディスコだったんですよね。ほとんど発売時期が一緒で、あれでモーニング娘。はブレイクしたんですけど、オレはブレイクしなかった(笑)というオチもつけつつ。 ――2曲目は「THERE MUST BE AN ANGEL」のリミックス。
これは世界3枚同時リリースした『インターナショナル・スタンダード』の『P』、ドイツのバンガロウ盤に入ってて、リミキサーのパウロ・スコッティはイタリアのDJであり選曲家でありレコード・バイヤーっていうかコレクター。このトラックはほんと僕のDJパーティーのアンセムですね。どんなパーティーでも必ずかけるし、必ずみんなが盛り上がるという。
――ですね。シスコハウスやマンハッタンだと「万人うけ」ってコメントつく感じ。
うん、万人うけ。実際DJしてる時にも2曲目にかけることも多くて、いまだにすごい人気曲かなと。確かにすごくよくできたリミックスだと思う。
――3曲目の「HELLO & GOODBYE」、これはレア・トラックですね。
ハウィーBがやってるPUSSY FOOTというレーベルの『PUSSY TOONS』というコンピレーションに収録されていて、大人向けの架空のディズニーのサントラという企画で書きおろした曲ですね。正式には本邦初公開になるのかな。
――この頃にボコーダーボイス導入ですね。
まあ、ちょっとダフトより早かったぞと(笑)、まあ、ギリギリですけど(笑)。
――そういえば、『ラグジュアリー』の中の「ミスター・ファンタジー」もボコーダーでしたよね。
そう。エレクトロ感ていうのは実はFPM最初からなんとなくテーマにしていてなんかエセ未来みたいな。
で、4曲目は「STEPPIN' OUT」。これはファーストに入っていた曲なんだけど、これで初めてカバーを本格的にやって、これ以降FPMのアルバムではカバーをやっていくみたいな伝統が生まれたわけですけど、その栄えある1曲目。ニューヨークな感じ、ボッサな感じ、当時のドラムンベース感をゆるめに入れつつ最後にはサンバ・ハウスになるという、1曲の中で、ころころリズムが変わるみたいなことがやりたくて。ジェントル・ピープルのダギーのヴォーカルの感じにしても、その後のFPMの方向性を決定づける1曲になってて、これはやっぱりハズせないかな。自分でもこの曲への思い入れは特別ですね。なんとなくちょっと寂しい感というか、サウダージ感というものをそれぞれの曲に入れたいと思ってるんですけど、そういう意味でもこの曲はなんとなく寂しい感があるじゃないですか。原曲もすごい大好きな曲ですね。レ・プリュ感は一番高いし。イベントではラストにかけてましたよね。結局その後で出てくるアヴァランチーズとかのかなり先駆けですね。ストリングスのサンプリングとかさ。そういいながらもジェントル・ピープルの影響はあるね。 ――ジェットセット世代というか。 当時はジェットセット世代な感じはあったもんね。
――さっきも話に出たイージー・チューンもそうだし、ハモヤンもそうだし。
次は5曲目「HONOLULU, CALCUTTA」のまりんさんのリミックスですね。
これは、『インターナショナル・スタンダード』の『F』に入ってた。さすがにまりん君のセンスが活かされた、かなりヒップホップですね。これはスイス・エアーのコンピレーションとかにもライセンスされてたり、海外でも非常に評判の高いリミックス。ロシアでDJしてこれをかけたら、ロシアのDJが『これ何? 何?このミックス』ってとんできたことを思い出しますね。
――オリジナルの時点でかなりまりんさんに近いセンス。タイトルもジェットセット的で。
ジェット機つながりで、次は「ジェット機のハウス」。これはFPMとして初めて作ったデモテープを小西さんに渡したんですね。そしたら小西さんから連絡頂いて、『ちょっと手直しして自分のアルバムに入れたい』ということになって。すごいビックリしました、でもすごい嬉しくて。
――ちゃんとこまめにクレジットをチェックしてる人たちにとってはピチカートのこの『ロマンティーク'96』で初めてファンタスティック・プラスチック・マシーンという名前を知ることになったというわけですね。
そうだね。アルバム内デビューという形で。僕のほんとのデビューはピチカート・ファイヴのアルバムの中だったんですよ。もう1曲そのアルバムの中で「GOOD」というプラスチックスのカバー曲のアレンジもやってて。そういえば僕は最初からハウスだったんだな。なんかラウンジの人って思われてますけど。 ―― 「ジェット機のハウス」というタイトルで、もうすでにボサノバをもとりこんでいるしね。
「シャレオツなスーハウ」ですか(笑)ノ そう、タイトルは「ジェット機のサンバ」からきている。実際「ジェット機のサンバ」の一節をちょっとサンプリングしたりもしているし。これが実質的デビュー曲ということで。ファンでもあんまり知らない人が多いかも知れないから、というわけで入れてみました。
――続いて「BOSSA FOR JACKIE」のリミックス。
これはですね、『インターナショナル・スタンダード』のアメリカ盤に入ってた、ロス・アミーゴスというベネズエラのバンドによるリミックスですね。デビッド・バーンのレーベル、ルアカバップからリリースしてる彼らがやってくれたエセ・アーバン満開のリミックス。当時はちょっと早すぎたかな、今、2001年にかなりジャストなタイミングでこのキラキラ感クリスタル感が。
――また、ヴォーカルも。
そう、梶野くんの紹介で、キング・オブ・ルクセンブルグことサイモン・ターナーに歌ってもらって。このリミックス、忘れてたんですけど、今回選曲していて聴き直したらあらためて、クリスタルだ!と、ちょっと思い出して2001年の気分で入った曲ですね。
で次が「TAKE ME TO THE DISCO」のMalibu mix。ジェリー・フィッシュ〜ムーグ・クック・ブックを経て、ベックのツアーでキーボードもやってるロジャー・マニング Jr.によるリミックスなんですけど、これ聴いた時はホントよくできてるなあと思って、すごい愛があるリミックスだなと思ったんですよね。去年秋に、出来たばかりのこのミックスをちょうどソリッドのパーティーでかけた時にエチエンヌ・ドゥ・クレシーと、アレックス・ゴファーが『何これ? 僕にもくれ』って言ってたことを思い出しますね。
――続いて「YOU MUST LEARN ALL NIGHIT LONG」のSWAMPのミックス。
ベックつながりということで。SWAMPはあのスクラッチDJ選手権・DMCのアメリカのチャンピオン。ほんとにスクラッチうまくて、ベックのライブでいつも彼のスクラッチタイムというのがあるんですよ。そのSWAMPのブレイクビーツもの。
――10曲目は「BACHELOR PAD」ですけど、この曲は、FPMとか関係なく曲が一人歩きしてる感がありますよね。『オースティン・パワーズ・デラックス』に『チノパン』。
今は『アヤパン』。そうそう、携帯の着メロにもなってるし。そのくらいメジャーな曲で。アメリカで『オースティン・パワーズ・デラックス』が公開されたときのトレーラーにも使われたんですよ。
――60'sというか、グルーヴィーというか、まさにその辺りの感じの集大成ですよね。ファースト、セカンドの頃というのは基本にはそういうグルーヴィー感がありますしね。
基本的にね。それがレディメイドのカラーでもあったし、それに関しては今でもすごい大好きだし。
次が、「PLEASE, STOP!」という曲のルード・ボーンズのリミックス。当時彼らはまだインディだったんですけど、スカでリミックスしてほしいなあと思って、堀江くん(ニール&イライザ)に相談したら、ルード・ボーンズがいいんじゃない?と言うことになって。すごく簡単な動機で頼んだんですけど。今ではルード・ボーンズもすごい人気あるし、彼らがAVEXに移籍したら、僕と同じディレクターが担当したりと、奇遇な縁がありますね。ライブではこの曲を今でも演奏してくれたりしてるんですよ。リミックスっていうかカバーだったり、作り直してもらおうという気持ちで。僕が今回『contact』というアルバムで表立ってやったんだけど、この頃からそういう気持ちはすでにあったんですね。
次はですね、ドイツ盤の12インチで最初出てドイツ盤のアルバムにも入ってたマックスウェル・インプロージョンによる「PURA SAUDADE」のリミックスです。「シャレオツな」ドラムンベースですね。よくできてる。
――初めてヨーロッパで出たシングルですよね。
そうだね。茶色のバンガロウ・プールっていうシリーズの12インチ。
次がハモヤンつながりということで「THERE MUST AN ANGEL」のバンガロウの12インチだけに入ってるナイス・ボサなミックス。そういえば、ギターはゴンチチのチチ松村さんです。まあカフェ・ブームに便乗した選曲かなと(笑)。
――いよいよラストですけど
ラストを飾るには、レディメイドの大将、小西康陽さんによるメガミックスですね。ここのコンピレーションに入ってきてなかったような例えば「ファンタスティック・アヴァンチュール」や「YOU MUST LEARN ALL NIGHIT LONG」のオリジナルだったり代表的なトラックが網羅されていて。 最近の海外DJツアーのラストにはこれをかけるって感じですね。このベター盤をしめくくるにもふさわしいかなということで。最後のこの1曲でいわゆるFPMっぽい曲をうけもってもらってるかな。いい流れだよね。
――このメガミックスでまとまったという感じですね。トータル72分。 確かに、いわゆるベスト盤でもレアトラック集でもなく、ミックスCDでもなく、ベター盤なセレクトですね。
それにしても、12月ってベスト盤が山ほど出るからね。このFPMのベター盤とルパンのベスト盤とピチカート・ファイヴのメガミックスと3枚同時発売ということだけど、一番売れるといいな。ジャケットおしゃれだし。真っ黒だし。
FPMから21世紀の終わりのクリスマスプレゼント! でも買ってね、みたいな(笑)。

interview&text : Shoichi Kajino (atelier L'APPAREIL-PHOTO)




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