Sadistic Mikaela Band NEWS LIVE In Tokyo at NHK Hall 2007/03/08 オリジナル・フルアルバム「NARKISSOS」 「タイムマシンにおねがい(06 Version)」ネット配信


89年の再結成から数えると17年ぶり。
73年、オリジナル・ミカ・バンドのデビューまで溯れば実に33年目と、日本のロックの歴史とかなりの部分、併走してきたとも言える伝説のグループ、サディスティック・ミカ・バンドが、再々結成された。

三代目女性ヴォーカルの座に就いたのは21歳の木村カエラ。
加藤和彦、高橋幸宏、高中正義、小原礼から成るオリジナル・メンバー4人からしてみれば「娘」でもおかしくない世代だが、のびのびとした歌声を聞かせることで最高の“三代目”ぶりを発揮していることは、再々結成のきっかけとなったキリンのCFがオンエアされた時点ですでに明らか。
ワンショットだったはずのCM出演をきっかけに、ニュー・アルバムのレコーディングへと発展していったのも、5人にしてみれば、ごく自然のなりゆきだったのだろう。
10月25日には当の新作『NARKISSOS』も登場。再々結成のいきさつすべてが「楽しくてしかたがない」といった面持ちの加藤和彦が、SADISTIC MIKAELA BANDとして活動することの醍醐味を語ってくれた。

●真保みゆき(インタビュア)
○加藤和彦
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●CM出演を依頼されたことが、そもそものきっかけだったそうですね。
○前回の再結成の時もそうだったんだけど、僕らの側から言い出したってことは一度もないんだ。こういう話というのは外からやってくるものなんですよ(笑)。今回はキリンのCMが外圧だった。

●オリジナル・メンバー4人の反応はいかがでしたか。
○全員が「やろうよ」と決意するまで、多少の時間は要したかな。大人だからね。大人というかジジイなんだけど(笑)。ただ、いざ決意したら僕らは早い。うまい・早い・高いの三拍子揃ってる(笑)。

●木村カエラさんを起用するというアイディアは、加藤さんが言い出しっぺだったとか。
○女性ヴォーカルをどうするかという話になった時、僕が直感的に「カエラ、どう?」って幸宏に提案したら、賛成してくれて。小原は(奥田)民生君とトリオでやったりしてるから、彼を通じてカエラのことも知ってたんだ。「そりゃ最高だよ」と言ってくれたから、カエラにお願いしたら、快諾してくれた。
 カエラ起用の一番の決め手は、日本語を崩さず歌って、なおかつロックしてる点。しかもかわいい。上品なのにブッ飛んでる。そのへんの兼ね合いが、ミカ・バンド的には重要だからね。


●遊びの要素もどこかに必要だし。
○そうそう。ヘタじゃ困るけど、うま過ぎても野暮になる。カエラ自身、動物的な本能で使い分けてるんじゃないかな。ソロの時はもう少しサブカルっぽく重いでしょ。僕らとやってる時はポップに、思いっきり弾けてる。

●カエラさんのそうした軽さが、ミカ・バンド全体をギュッとまとめ上げている側面もあるのじゃないかと。
○だから、よくカエラがいてくれたな、と思って(笑)。カエラがいなかったら、CM自体おそらくやってなかったと思う。なにしろ歴代の女性ヴォーカルにあって、歌がピカイチ(笑)。最高の三代目ですよ。

●カエラさん自身、「こんなにリズムが緻密なレコーディングは、生まれて初めて経験した」とおっしゃっていたそうですが。
○僕ら、そういうことにはうるさいからね。特に小原だね。『NARKISSOS』1曲目の「Big-Bang Bang!』の♪バ〜ンバンのンを「気持ち、後ろに歌ってみたら」とかね。そういうポイントを見つけるのがうまいんだ。リズム担当重役ですよ(笑)。

●『NARKISSOS』自体、素晴らしいグルーヴに貫かれたアルバムだと思うんです。
○面白かったのは、今はプロトゥールズで録音していくでしょ。演奏の流れが、すべて線上で確認できる。それで今回録った「タイムマシンにお願い」を見ると、全員の演奏時間軸が揃っているんですよ。♪好きな時代に行けるわ〜って箇所では、揃ってビートが心持ち後ろに行っている。揺れも含めて、全員が同じグルーヴで演奏しているんだね。

●全員揃って微妙に後ろに行っていると。
○クリック的にはちょっとズレてるんだろうね。大きくはズレてないけど。面白いから試しに今度、(アクセントを)前に置いてやってみようって、やってみたら気持ち悪かった。そういう揺れ感が全員同じだった。それがやっぱりバンドの面白いところじゃないかって。やっぱり生じゃないとできないからね、こういうノリは。

●そんな風にできちゃうと、レコーディング自体が自然な流れというか・・・。
○まさにその通り。ほとんどノーダビングですよ。キーボードも一緒に録音しちゃってるし。ダビングといっても、ギターを多少後から挟んだり、ソロを入れたりした程度。高中に至っては、ギター一本クルマに積んできて、「チューナーある?」って僕に借りてたんだから(笑)。あいつ(レコーディング地だった)軽井沢に住んでるから、よけい身軽なんだよ。念のため「ピックは持って来たの?」って聞いてみたら、さすがに持ってきてた。ひとつだけ(笑)。

●流しじゃないんだから(笑)。
○ほんとだよね。僕も高中もエフェクター小僧じゃないから。アンプとギターが直結なの。それだけ。

●逆に言うと、すごく多彩に聞こえてるけど、実際弾いたままだと。
○ああいう音なんだよね。何を弾いても。

●高中さんのギターもそうですが、ミカ・バンドというグループ自体、何はさておき音楽の楽しさを謳歌しているというか。
○それが今回のコンセプトと言えばコンセプトだった。原点回帰というか、73年のファースト・アルバムに今までで一番近い。
 それがミカ・バンドだと思うんですよね。ロックと言っても、汗くさいのはイヤ。あと反体制的なポーズは取らない。遊び心はあっても、主張のないバンドなんですよ(笑)。


●とはいえ、汗くさくないロック・バンドというテーゼそのものが、実は大変な“主張”ですよね。汗をかかずにどう盛り上げていくかということ自体・・・。
○実はものすごく難しいんだ。

●あと、前回の再結成になかった要素と言えば、松山猛さんが作詞に戻ってきて。
○レコーディングまでに曲を書く準備期間が2カ月あったんだけど、弾けた曲がなかなかできなくてね。環境を変えようと思い立って、いきなり1週間ほどロンドンに遊びに行ったんですよ。ちょうどツアー中だったエリック・クラプトン、スティーヴ・ジョーダンとウィリー・ウィークスがリズム隊をやってるライヴを観たりして、スコ〜ンと頭をからっぽにして帰ってきた。
 そしたら「Big-Bang Bang!」の♪デデデ〜というリフがいきなり出てきて、メロディも一気に書けてしまった。これは松山だな、とピンと来てね。結果、「タイムマシン」のアンサーソングみたいな、とんでもないキャラが出てくる歌詞ができてきたという(笑)。


●松山さんの歌詞って、作為が全然感じられないじゃないですか。ただポ〜ンと言葉がある。ある意味、子どもの歌じゃないけど。
○意味とは違うところで主張してるよね。ストーリー性とかを求めてるわけじゃない。考えてみれば「タイムマシン」だって変な歌詞ですよ。今は認知されてるからいいけど、されてなかったら相当妙な世界だ(笑)。

●今回の演奏には、本当にフィットした詞だと思うんです。
○それぞれベストの組み合わせになってるんじゃないかな。僕が歌った「Low Life and High Heels」のサエキけんぞう君とか。幸宏が作曲した「Tumbleweed」のリリーフランキー(ELVIS WOODSTOCK名義)とか。

●幸宏さん作詞、加藤さんが作曲されている「in deep hurt」も、お二人の持ち味のモアレ具合が絶妙という・・・。
○モアレね(笑)。これはデモ・テープをそれぞれ2、3曲ずつ作ってこようという話になった時、幸宏から僕の「悲しくてやりきれない」、ああいう感じの大陸メロディを書いてよってリクエストされて。ああいうのは難しいんだよなあと言いながら作ったら、ちょっとアル・グリーンみたいな感じになった。そしたら幸宏が作詞するって、すぐできちゃった。

●幸宏さんが作詞作曲両方を担当された曲とは、また違うじゃないですか。
○ああいう男のロマンみたいなものを人にあてはめるのが、あいつは好きだからね。勝手にあてはめるんだよ、僕を(笑)。こんな性格じゃないよって言ってるのに、「いや、そうなんだよ」って(笑)。

●いつもは着ない服をむりやり着せられているような。
○そうそうそう。

●でも、そういう少しかぶいたような雰囲気を、加藤さんご自身も楽しんでらっしゃるんじゃないですか。
○そこはバンドだからね。僕だけのものではない。パート・オブ・ミカ・バンドとして楽しんでますね。

●サエキさんにはどういった注文を。
○ロンドンから帰ってきて作った2曲目なんだけど、できたらグラム(・ロック)ぽくしたかったのね。その時も直感でサエキ君の名前がひらめいてメールでお願いしたら、速攻で「やります!」って。いきなりすごいエロ歌が送られてきた(笑)。サエキ君、最近凝ってるからね、エロ歌に。それを「同じエロ歌でもルー・リードみたいな感じにしない?」とかリクエストして・・・。ああだこうだやりとりするうちに、こういう感じになったんです。ま、グラムといってもあくまで気分。本気でグラムをやりたかったわけじゃなくて、グラムが持ってたビザールな雰囲気を盛り込みたかっただけなんだけど。

●ビザールのさじ加減というのがまた、難しい気がしますが。
○それはまあ僕の中にすでに存在しているから大丈夫。わざとやらなくても、自然に出てくる。

●何げなくおっしゃいますけど、実は大変なことだと思いますよ。
○どうだろう。人それぞれ、キャラの問題でしょう。理論じゃないんだ。日本語で言うところの「華がある」。あの感じに近いのかもしれない。僕が思うに、ロックをやる上でもある種のビザールさ、「華」のようなものって、不可欠な気がするんだよね。どういうわけか日本のバンドにはほとんど備わってないんだけど。

●日本の伝統芸能でいうなら、歌舞伎とかってすごくビザールですよね。
○歌舞伎の話が出たから言うけど、(市川)海老蔵君なんて、ヘタなロック・ミュージシャンより全然ロックだよね。日本って、そういう意味でロックなバンドがいない。誰かいますか?

●いえ、言われてみても思い当たらないので、じゃあなぜミカ・バンドにはそれがやれてるのか、逆に不思議で仕方なくなるんです。
○その「わからなさ」、不思議な部分も含めて“ロック”なんだよね。「ロック的なるもの」って、そういうことなんだと思う。

●ミカ・バンドにしても、他のメンバーの持ち味は、加藤さんともそれぞれ違いますよね。
○みんなそれぞれ、ロックの捉え方が違うからね。

●なのにアルバム1枚の中で自然に同居している。
○それがミカ・バンドだと思うんだ。いろんな音楽が同居している。昔はそれが散り散りバラバラだったんだけど、今はそれぞれ持ってるものが安定してきてる。お互い独自の道を進みながら、ちゃんと接点がある。その上に全然位相の違う高中が平然と乗っかってるという(笑)。それが現在のミカ・バンドじゃないかな。

●出発地点から、離れ業的なバンドであり続けていると思うんです。
○カラダでやってると言うと変だけど、頭で構築しちゃわないところがよかったんだろうね。流れにまかせていると、無駄な間奏とか、自然になくなるもの。

●そうやって完成した『NARKISSOS』を、どう聞き手に楽しんでほしいですか。
○若い世代はカエラにおまかせ。僕らとしてはもう、カエラの双肩におぶさるしかない(笑)。というのは冗談にしても、彼らにしてみれば今まで聞いたこともないような音楽じゃないかと思うんだ。それだけに、カエラを媒介として聞いてもらえたら非常にうれしいよね。あるいはYMO以降の幸宏しか知らないファンにしてみれば、「幸宏さんが8ビートを叩いている」というだけで、大変な驚きだろうし。逆に、以前からミカ・バンドを好きでいてくれた人たちにとっては、「待ってました!」と言ってもらえるような隠し技がいろいろと仕込んであるから、何回聞いても楽しめるんじゃないかな。

●世代を問わないアルバムだと。
○そもそも特定の聞き手を想定して作ったアルバムじゃないからね。僕たちがこれだけ楽しめたんだから、きっとみんなも好きだろうなって。タイムレスでエイジレスなアルバムなんですよ。

●再々結成のいきさつを記録したドキュメンタリー映画の製作も、進行中だそうですね。
○井筒和幸監督の門下生の、滝本君という男が監督してくれてます。ミカ・バンドのPVも彼に頼んだんだけど。

●どんな映画を期待してますか。
○たとえばビートルズの『レット・イット・ビー』は、バンドのいい部分も悪い部分も全部出しちゃってるわけじゃない。僕らはビートルズと違ってメンバー同士いさかいがあるわけじゃないけど(笑)、井筒監督からすればおもしろい。けど僕らにしてみれば、「これを出すの? 勘弁してよ」と言いたくなるような箇所が絶対出てくると思うんだ。マーティン・スコセッシが撮った『ラスト・ワルツ』だってそうだよね。撮られてる側からすれば想定外、かっこ悪い部分を隠さずに編集することによって、異種交配の面白さが生まれてくる。せっかく井筒組にお願いしている以上、ここは僕らも大人になって(笑)、予想外の発見があるドキュメンタリー映画の完成を期待しています。



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