X JAPAN解散以降、気がつけばYOSHIKIは「クラシックの人」というか、「バラードの人」というか、「アニヴァーサリーな人」というか、制作10年(!)にも及ぶソロ・プロジェクト<VIOLET UK>が未だその全貌を見せないだけに、ほとんど「謎の人」と化してる観がある。 しかしそれでも「伝説のアーティスト」として君臨し続けてるのだから、それはそれで特異な「個性」なのだ。 それにしても、<紅白>のテーマソングに始まり、<愛・地球博>の公式イメージソングやら、<天皇陛下御即位10周年記念式典>で披露したピアノ協奏曲やら、<テレビ放送50周年>記念番組の主題歌やら、何かの節目を飾るに相応しい「ピアノでクラシックでバラード」は、全てYOSHIKIに依頼が集中してる現状が面白すぎる。 「なんかクラシックを演る機会が多くて――自分から演ろうと思ってるわけではなく、なんか流れで(笑)。自分でも『なんでこうなるんだろ?』みたいな。勿論クラシックも未だにずっと勉強し続けてるんで、多少は進歩してるとは思うんですけど、すっかり<クラシックの人>になっちゃいましたねー。しかも節目節目で現れる、みたいな。でも光栄に思ってます。 考えてみたらX時代から、決して高尚にはならず「クラシックの魅力と醍醐味」を誠実に聴かせてきた男なのだから、これも紛れもないYOSHIKIそのものなのである。 そんなここ数年の「上品なYOSHIKI(笑)」を総括するかのような、12年振りのクラシック・ソロ・アルバムが『ETERNAL MELODY II』だ。前述した様々なアニヴァーサリー楽曲達も勿論、網羅されている。 「気がついたら揃っちゃってたんですよね、アルバム1枚分(笑)」 その他にもX JAPAN後期の名曲やら、「あの世紀の合体劇はどうなっちゃったんだ?」globeの曲やら、9・11に触発された新曲やらhide追悼の新曲やらが詰まっている。しかもVIOLET UKの楽曲まであったりして、まさにX JAPAN以降のYOSHIKIワークスのベスト盤的ですらあるのだ。でも……全曲クラシック・ヴァージョンなのだ。 新曲2曲にせよVIOLET UK物にせよ、オリジナル・ヴァージョンが未発表のまま別ヴァージョンの方を先に聴くという、物凄いパラドックスがまた彼らしくて可笑しいのだけれど。 「ね?でもそのよくわかんないとこが面白いでしょ(嬉笑)」 「どの曲もかなりリアレンジしましたねー。1年ぐらい懸かりましたよ、完成まで」 「例えば“Kimi Dake Dakara”は、NHKの記念番組の時と全然アレンジ変えちゃったんですよ。ハープシコードとかも入れて。<愛・地球博>の“I'll be your love”(World Expo“I'll be your love”)もオリジナルの日本語ヴァージョンは、ハワイの女の子のDAHLIAが唄ってたけど英語ヴァージョンはVIOLET UKのNicoleが唄ってて、でも今回はクラシックで――ってわけわかんないでしょ?」 確かに。そういう意味では、「クラシック」という1フィルターをあえて通してYOSHIKIの世界観を堪能するという、<心地好い面倒くささ>が逆に面白さを倍増させるのかもしれない。 年内にはようやく、「世紀のハーメルンの笛吹きアルバム」VIOLET UKが遂にリリースされる。怒濤の<ロックYOSHIKI>来襲の前に、まずはこのアルバムで肩馴らしだ。 |