9mm Parabellum Bullet

LIVE REPORTS

2023.2.9 福岡DRUM LOGOS

今年2023年は9mm Parabellum Bullet結成19周年イヤー。というわけで、1月から12月までの「9日」もしくは「19日」に全国でライブを行う「19th Anniversary Tour」がスタートである(ちなみに「9日」か「19日」のうちライブがない日はYouTubeでの生配信やアコースティックライブが行われる)。1月の9日と19日はいずれもオンラインでの企画だったため、実質的なツアーの初日となるのが今回の2月9日・福岡DRUM LOGOS公演だ。

突如暗転した場内にSEのATARI TEENAGE RIOTが鳴り響く。そしてステージに登場した菅原卓郎、滝 善充、中村和彦、かみじょうちひろの4人とサポートメンバーの武田将幸(HERE)。「9mm Parabellum Bulletです!」という菅原の名乗りからいきなりぶちかましたのは「Discommunication」である。フロアからはオーディエンスの腕が高々と突き上げられ、ライブはオープニングからとんでもない熱狂の渦だ。もちろん熱いのはオーディエンスだけではない。バンドの演奏のキレも上々。立て続けに突入した「名もなきヒーロー」でも輪郭のくっきりした轟音が耳に飛び込んでくる。

「名もなきヒーロー」のフィニッシュをバシッとキメると、かみじょうが叩き出すお祭りビートに合わせて菅原が「Black Market Blues」を歌い始める。体を激しく揺らしながらジャキジャキとギターを鳴らす滝、地を這うようなベースラインを一心不乱に弾く和彦、そしてそんな暴れ馬のようなサウンドを華麗に乗りこなす菅原のヴォーカル。これぞ9mmである。間奏では滝がお立ち台に登り左右に激しく揺れながら弾き倒す。オーディエンスと一体となったハンズクラップが、ますます場内の空気を濃く熱いものに変えていくようだ。

曲が終わるとフロアからは歓声が飛ぶ。それを聴いた菅原も「嬉しい」と思わず呟く。そしてぎっしりと詰まったフロアを前に「やっと来れたぜ、福岡!」と叫ぶ。そうなのだ。昨年の9月に予定されていた「Walk a Tightrope Tour 2022」福岡公演は台風の影響で直前で中止に。福岡のファンにとっては待ちに待ったこの日のライブだった。「もっとシックな感じにしようと思ったけど、声が聞けて嬉しくて」と感情をあらわにする菅原。その横で滝も何だか楽しげなフレーズを延々弾いている。「今日はそのリベンジということで、ツアーと同じプログラムをそのままやると思っている人もいたかもしれない。違うんです。新しい年なんだから、今までと違うことをやりたいじゃないですか。なので俺たちは今から『TIGHTROPE』の曲を丸々演奏します」といきなりのアルバム再現を宣言する菅原。その言葉にフロアからは喜びの声が上がった。

その前に「準備運動だと思って」ということで昨年のツアーで盛り上がった「Psychopolis」から「悪いクスリ」へのもともと1つの曲だったんじゃないかというくらい自然な流れを披露すると、いよいよ『TIGHTROPE』完全再現パートが始まっていく。アルバムのインタールードが流れ世界観をガラリと変えると、それを突き破るように「Hourglass」が始まっていく。ズンズンと響き渡るビート、速弾きギターソロ、そしてドラマティックなメロディに和彦のスクリーム。もちろんさんざんツアーでプレイしてきたからというのもあるだろうが、ぎちっと密度の高い音はまさに19年という時間を過ごした9mmの進化の果てという感じがする。

「One More Time」では菅原の「ギター!」というコールから滝のソロが軽やかに鳴り渡り、「All We Need Is Summer Day」ではオーディエンスの手拍子や声がバンドを後押し。コロナ禍真っ只中で作られた『TIGHTROPE』だが、こんなにも「オーディエンス参加型」のアルバムだったのかと感動する。一転「淡雪」をじっくりと聴かせると「ライブアルバムはどうですか?」と菅原。「『TIGHTROPE』って意外と、今まで出したアルバムの中でも再現しやすいんですよ」と言いつつアルバム後半の曲たちに入っていく。テンションの高い「Tear」を繰り出すと、アルバムのタイトル曲「タイトロープ」からイントロからオーディエンスの拳が上がったインストナンバー「Spirit Explosion」へ。壮大なスケール感と抒情性と切っ先の鋭さ、9mmの音がもつ要素が塊のようになって押し寄せてくる。凄まじい。

菅原と滝のハーモニーも美しく響き渡った「泡沫」をしっとりと届けると、インタールードを挟みアルバム最後の曲「煙の街」だ。確かに『TIGHTROPE』はコンパクトなアルバムだったが、こうしてライブで聴くとなおさらあっという間に感じる。滝のギターがとても繊細に情景を描き出していき、かみじょうと和彦のリズム隊がそれをさらに大きな景色へと押し広げていく――この曲をライブで観ていると、9mmの曲を演奏するというのはまるで絵を描くような作業だなと思う。オーディエンスも食い入るようにステージを見つめているのが印象的だった。

アルバム『TIGHTROPE』再現パートが終わり、大きな拍手を浴びるなか菅原が「ありがとう!これでやっとリベンジできたんじゃない?」とフロアに語りかける。「19th Anniversary Tour」の今後の展開を期待させるような言葉を届けると「今日は祭りにするって決めてますから。いけるか、福岡!」。その声を合図にかみじょうのタイトなリズムと滝のギターが躍動を始める。「ハートに火をつけて」だ。軽快な裏打ちのリズムにオーディエンスの体も揺れる。菅原が歌の一部に会場の福岡DRUM LOGOSの名前を入れると、その瞬間ものすごい歓声が巻き起こった。

そこからはいよいよライブのクライマックス。ソリッドな「Cold Edge」で一気に空気を引き締めると、そこから繋げるように「新しい光」を投下。イントロから溢れ出す轟音の奔流にフロアは再び沸騰状態だ。さらに「The Revolutionary」へ。和彦もフロアを煽ってさらに温度を高める。流れるようなメロディがギターと絡み合いながらどこまでも突き抜けていくようだ。そしてラストは「(teenage)disaster」。お立ち台にのぼってギターを弾き倒す滝に熱い声援が送られる。ギリギリのバランスで成立しているアンサンブルがとどめを刺すようにこちらの心を掻き立て、菅原も叫んでフィニッシュ。潔いほどにすべてを出し切るラストだった。

ライブの最後にはスピーカーによじ登ってギターをかき鳴らしていた滝がなぜかステージから消えるという展開に。どうしたのかと思っていたらなんと3階(スポットライトが置いてある)から顔を出して、ステージ上の菅原と手を振り合っている。気持ちが猛りすぎて3階までいっちゃったのかもしれない。とにかくバンドの演奏もオーディエンスの熱気も、初日から最高潮だった。これから1年、どんなツアーになっていくのだろうか。

(TEXT:小川智宏)

9mm Parabellum Bullet 19th Anniversary