9mm Parabellum Bullet

LIVE REPORTS

2023.6.9 ザ・ヒロサワ・シティ会館 大ホール

毎月「9」のつく日に繰り広げられているアニバーサリーツアー「19th Anniversary Tour」、6月9日の会場は茨城県ザ・ヒロサワ・シティ会館。いうまでもなく滝 善充の出身地であり、3月のかみじょうちひろの出身地・辰野に続くメンバーの地元シリーズ第2弾だ。「9mm Parabellum Bulletです、こんばんは!」という菅原卓郎の声から始まった1曲目は「Lovecall From The World」。いきなりの意外な幕開けでホール内の空気を一気に沸騰させると、そのまま「Answer And Answer」に突入していく。ズシンと先制パンチを喰らわせるような中村和彦のベース、そしてかみじょうのドラム。滝がお立ち台に上がってギターをかき鳴らすとひときわ大きな歓声が彼を包み込む。

菅原が手拍子を求め、滝、菅原、そしてサポートメンバーの武田将幸(HERE)、3本のギターが重なる。切れ味鋭く繰り出されたのは「Mr.Suicide」だ。稲妻のような照明の点滅がますます興奮を煽り、滝のギタープレイを引き立たせている。そして「Sleepwalk」のフィニッシュをかみじょうのスネアでばっちりキメると、客席から大歓声が上がった。畳み掛けるようなオープニングである。「やってきました、茨城! 9mm、19周年で滝くんの故郷にやってきました」と菅原。「『人生楽ありゃ苦もあるさ』というのを体現しているバンドなんですけど」とおなじみ『水戸黄門』のテーマソングを引用してご当地ならではの挨拶をすると、「みんな歌いたかったでしょ?」と「All We Need Is Summer Day」を披露する。オーディエンスは声を上げ、拳を突き上げ、体を揺らす。気持ちのいい一体感。のびのびとした轟音という表現がぴったりのこの曲のサウンドがザ・ヒロサワ・シティ会館の空気をまた鮮やかに塗り替える。と、そこから続けて鳴らされたのはシンセ感のあるギターリフが印象的なインストナンバー「The Revenge of Surf Queen」。菅原の「ギター!」の掛け声に合わせて滝はステージの端まで行って弾き倒している。さらに菅原も「何年ぶりにやったんだろう」という「Heat-Island」(「以前水戸でライブをやったときに滝のギターが当たって流血した」という思い出つき)へ。まだまだライブは前半戦だが、ホール内は完全に最高潮だ。

ドラマティックな展開と二拍子の強烈なリズムで踊らせる「Everyone is fighting on this stage of lonely」からこちらもレアなカップリング曲「ラストラウンド」を真っ赤なライトに照らし出される中プレイ。メタリックなリフが緊張感をもって響き渡る。そこから一転、ダークなムードの中入っていったのは「Trigger」。地響きのような低音の上でメロディアスなギターが躍動する。そして裏打ちのリズムで一気に高揚するサビへ。眩いライトに照らし出された客席ではオーディエンスが力一杯手を打ち鳴らしている。そのテンションのまま「Termination」に流れ込むと、菅原の「歌ってくれ!」という声に応えてシンガロングが巻き起こる。滝がのたうち回りながらソロを弾いている横では菅原、中村、武田の3人が集まって呼吸を合わせてプレイ。音が止まると、怒号のような歓声が湧き起こった。

この日のセットリストは滝が発案したもの。「本当にメンバーセレクトだと『これやってなかった』ってやつが俺たちの身にも降りかかってすごく楽しい」と菅原もその意外性を楽しんでいるようだ。「ここからも楽しんでください」としっとり「コスモス」を始める。さっきまでの大暴れが嘘みたいな美しい抒情性がまたしても会場の空気を一変していく。さらに「砂の惑星」を重ねて壮大な風景を描き出すと、かみじょうの力強いビートにエキゾチックなギターフレーズが絡み合い始める。「命ノゼンマイ」だ。まるで何かに引き込まれるようにゆらゆらと体を揺らすオーディエンス。テンポチェンジによってギアを上げて上昇していくこの曲のドラマ性はいつ聴いてもやはり圧倒的だ。強烈な世界観をもった楽曲を畳み掛け、いよいよライブはクライマックスに向かってより濃密なものになっていく。

滝のギターが印象的なフレーズを奏で、そこからアクセルを踏み込むようにしてスタートしたのは「黒い森の旅人」。菅原と滝、ふたりの美しいハーモニー、そこに潜むエモーションを増幅して放出するかみじょうや中村のプレイ。曲が進むごとに温度は上昇し、情感は豊かになっていく。「みんなが歌っているのを見てしみじみした」と菅原。「嬉しいですね、こうやってライブできて」という素朴な言葉にバンドとして苦難をくぐり抜けてきた実感が宿る。「9mmとみんなとで進んでいけたらいいなと思っています。これからもよろしく」という声に大きな拍手が送られる。そしてここからラストスパート。「いけるか!」の言葉を合図にかみじょうがシンバルを打ち鳴らし、全員でジャンプして「The Revolutionary」に突入していく。全身で弦をかき鳴らす滝、体を激しく折り曲げながらベースを鳴らす中村、その真ん中で菅原がますます伸びやかに歌を響かせる。もちろんここでもオーディエンスの声がバンドを後押しする。それにしても、この曲が書かれた当時には思いもよらなかった事態が世界を襲い、〈長い夜が明けた 革命の次の日〉と始まる歌詞にこんなにもリアリティを感じるときがくるとは。それもまた9mmが誠実に、正直に、バンドを続けてきた証拠なのかもしれない。

さて、ここからはまさにクライマックス。「Beautiful Target」でお客さんと一緒になってお祭り騒ぎをぶち上げると、ものすごい音量の手拍子が巻き起こった「marvelous」へ。そのテンションに感化されたように間奏では滝も中村もむちゃくちゃになって暴れ回っている。そして菅原がマラカスを手にオーディエンスを煽り立て「Talking Machine」へ――と、ここで滝が弾き出したのは序盤のMCで菅原も引き合いに出していた『水戸黄門』のテーマソング「あゝ人生に涙あり」。菅原も一節歌って茨城愛を炸裂させる。ラストは「Hourglass」。すべてを注ぎ込むようにして演奏を終えると、気圧されたような一瞬の静寂のあと、割れるような歓声と拍手がステージを包み込んだ。ステージの端から端まで歩きながら手を叩き、頭を下げる滝の姿に、その声と拍手がさらに大きくなる。まさに凱旋公演にふさわしいあたたかな雰囲気のなか、ライブはフィナーレを迎えたのだった。

(TEXT:小川智宏)
(PHOTO:西槇太一)

9mm Parabellum Bullet 19th Anniversary