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達郎が曲を作って美奈子が詞を作って、彼女がコーラスを入れてくれて……時間が経ち過ぎてて、それしか覚えてないなあ(笑)。達郎には『Pink
Pussy Cat』というアルバムをプロデュースしてもらっていたの。
今はもうないんだよね、新宿ルイード。あそこでライブをやる日に達郎を呼んで打ち合わせをしたな。
当時彼は『GO AHEAD』を出した頃だったね。達郎と出会ったことで音楽的なことはとても勉強になったよ。
例えば当時私は音程がフラットしがちだったんだけど「ヘッドフォンをして歌うからフラットになるんだよ。前にチビ・モニターを置いてボリュームを小さくして自分の声を耳から聴くといいよ」って。
それによく遊んだ、映画行ったり呑みに行ったりね。
今回の「ブギ・ウギ」の、このドラムはいい音だよ。特にスネアの音は最高。
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リメイクがこのアルバムのコンセプトだから、どの曲もオリジナルとはかなり変えたいと思って作っていったんだけど、「リンダ」はア・カペラでやりたかった。それも私ひとりで全部のコーラスをやりたかったの。
そうしたら相棒のFrankがイヤ?な顔して
「Annieがやったら時間かかるよ」
「時間かかっても一生懸命やりたいのよ?!」
なんて不毛なやりとりもありつつ(笑)結局コーラスはFrankの長女と次女15歳と13歳の澄んだ声が入っている。
1980年に録ったオリジナルの「リンダ」では達郎が全部重ねてくれています。
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ミディアム・テンポの綺麗な曲なのに当時の私はヘビメタに凝ってましたからね、「イヤだギターが入ってないとー!」ってあの綺麗なイントロにムリにギターを入れてちゃってた(笑)、という印象がこの曲にはずっとあっただけに、今回は素直なアレンジでいきました。L.A.に住んでいる自分としては、L.A.に合う音楽はやっぱりイーグルスだと思うの。だからもうどこまでもイーグルスにして! と。コーラスも、ギターもちょっとカントリーっぽくして、こんなの昔の私だったらカントリーなんて許せないんだけど、そのへんはちょっと大人になった。
やっとそういう良さがわかる年になったんだなぁ、と。でも好みの基本は、ギターは歪んでなきゃダメ(笑)マーシャルでなきゃいけない!というのは未だに変わらない(笑)。
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アンプラグドでリメイクしました。歌とピアノとコーラスでシンプルに構成してあります。
イントロに入っている語りはポエット・リーディングをやっているFrankの彼女が自発的に参加してやってくれました。“美しいものは長続きしない”という意味の詩を書いて欲しいと話したら、15分くらいでこの詩を作ってリーディングしてくれて、なんかすごく雰囲気出てる。この曲に合ってるよね。コーラスも最後まで綺麗に入ってて、ここはすごく気に入ってる。ぴたっと息まで消してしまうという機械的な処理が曲にも合ってるんだな。
それにしてもスタジオのテクノロジーの進化には、たじろぐばかりよ(笑)。
今日もここにくるまでのあいだアルバムを車で聴いていたんだけど「美人薄命」は私の声に一番合っていると自分では思うんだけれど。どうかな?
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この曲は唯一アルバムから選曲したチューン。他にもシングル曲で例えば「ラ・セゾン」であるとかセルフ・カバー候補はたくさん上っていたんだけど、アルバムって一曲くらいふっと息を抜ける曲があるとバランスがいいと私は思っているの。これはそういう役割を果たしてくれてる曲で、もちろん好きな曲だよ。
レコーディングもあっさりとシャッフルで仕上げてみました。
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ここから続く3曲「あゝ無情」「六本木心中」「天使よ故郷を見よ」は、(オリジナルの存在感が強いために)リメイクするといってもねー。これだ!というやりようが、なかなかないのよ(苦笑)。とりあえず3曲ともドラムは生で入れている。「あゝ無情」は裏ネタを明かせば、ステッピン・ウルフの「ボーン・トゥ・ビー・ワイルド」で、よく聴くと特にベースはそうなの(笑)カッコイイよ。その上にキーボード、ギターと入れていったからベース&ドラムが後ろにいっちゃっててあまりわかならいないかもしれないどね。ただブンブン鳴ってるだけじゃなくって、メロディと一緒に動くベースが私は好きなんだなとあらためて思った。やっぱり昔の人間なのかしらね(笑)。
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この曲はギターで遊んでいます。それも、古いことをやって遊んでるのね。一時期ギターでユニゾンでハモるっていうのがあったじゃない? あのダサおもしろさをFrankとやってみたんだけど、「え。アン・ルイス、マジでこんなことやってんの?」と思われちゃあ困っちゃうよねえ、わかってくれるかなぁこのおもしろさって話してて。ねえ、どうかしら? これを録ってるとき、ちょうどアメリカでもうベタベタに古いことをやってるヘビメタ・バンドが流行っていて、それをまたFrankが観に行ってきたのよ、で、すごい面白かったっていうから、じゃあこの曲ギターで遊んじゃおかって。そういうノリだよね、レコーディングでアイディアがポンポン出てきて広がっていくときの感じって。けれどもマジで、古いものには面白いものがいっぱいあるよ。それ、一緒に楽しんで音楽を聴いてもらえたら嬉しいね。
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このアルバムの中にはキーを変えて歌っているものもあるんだけれど、この曲はオリジナルと同じキーで歌っています。そうでないとあの迫力は出せないもんね。当時を振り返ると、例えば新しい曲を頂戴するじゃない? 私は大して練習しないうちに録ってたタイプだったと思うんだ。そういうふうに吹き込んだオリジナルと比較すれば、その後からTVやステージで何回も何百回も歌ったりする訳だから、メロディ慣れしてテクニカル的にもどんどん向上して歌は育っていくよね。だからオリジナルより(このアルバムの歌は、歌そのものに)自信がついているよね。それは「六本木心中」だけじゃなく他のどの曲でも感じていることかな。
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ここから書き下ろしの新曲です。
この作曲はFrank、詞は私が描いている。レコーディング中ちょうどFrankがD.ボウイのライブを観に行って、彼は素晴らしい!」と大絶賛する中、素直なメロディのロックを一曲やろうと書き上げてきたのがこの曲。
JEOPARDYの意味は、危険。最近日本へ帰るといい話を聞かないのね、誰かがダメになったとか事務所がつぶれただとか(苦笑)だからこれはそいつらのために描いた詞。人生はJEOPARDY、這い上がろうぜ、と。
だからひとつの応援歌なわけなんだけど、今でも日本語で詞を書くのは難しい。例えばドレミの3音に、英語だと“I love you”をのせることができるじゃない?日本語だと“あなた”とか“そして”とか“明日は”とかさ、言えることが少ないの。だからたぶん、サビのところが英語になったり日本語に英語が混じったりするんだな。
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一曲くらいラップやろうぜーって、そんなのできないくせにやってみた(笑)。そうしたら意外にいいんじゃなーい?っていうのが出来ちゃった。私、大好きなの、この曲。
周囲に、あるカップルがいて別れてしまったんだけど、彼のAbuse……Dmestic Abuse(夫婦間での暴力)が原因だったのね。その話を聞いたころだったので、テーマにしてライムを書いてみた。ラップは世間に対する反発、昔でいうパンクだよね。今もアメリカのラッパーはどんどん過激になっている。そのあたりやっぱり日本のラップは、少し様子が違うところだろうね。
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最後の曲は11年間私のそばにいてくれたカイザーのために書いた曲。
作曲はFrankで去年彼と遊びでAnnie-Frankというユニットを組もうとしてたときに作ってあった作品です。
原曲としてはそもそもFrankが持っていた作品で、実は彼の書いた詞で歌も入っていたんだけどあまりにいい曲なのでもらったのね。後から知ったんだけれど、奇しくもこの曲はFrankが亡くなった友人へむけて書いた曲だったらしいの。だからアン・ルイスがもらった曲といった方が正しいかもしれない。
大事な友人、パートナーとの永遠の別れは悲しくて辛いよね。作詞するときは電子辞書を手放せない私だけれど、この詞は辞書を開くことなく、すらすらと自分の気持ちを詞にできました。“いつか私が死んだときに天国で逢えるね”ということを言いたくて、でも天国という言葉は使いたくない、どうしようかなって、そこだけ悩んだかな。悲しみからぜんぜん抜け出せていなかった、ずいぶんウジウジしているときに書いた詞です。
今はこうして説明できるようになったけれど、それでもときどき涙が出そうになるのよね、カイザーのことを話すときは。このアルバム・レコーディングは今年の3月から始まったんだけれど、4月10日のカイザーの命日の日に、左腕に“カイザー”の名とサルーキーの絵を入れたの。そうした日に、歌詞も少し換えたんです。『あなたごとこの肌に刻み込むよ』って。それまでは毎日泣いてたんだけど、その日から吹っ切れたんだ、きっと腕にカイザーを入れてこれでもう一生一緒にいるんだって思えたのかな。うちには猫が七匹いるのね。今はだからね、あと七回こんな思いをするのかと……
そう思うと、うーん……たぶんまたみんなの名前が肌に刻まれていくんだね(苦笑)。
カイザーは猫みたいな犬で、そこがまた私とはぴったりで。カイザーに逢ってから人間が丸くなったねって友だちにいわれてきたんだけど、自分でもそれはすごく感じてるし、本当に毎日幸せだった。
カイザーに心から感謝しています。ありがとう。
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