1989年4月、福岡と東京で結成公演を行った有田正広指揮東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ。その結成公演で絶賛された交響曲第41番「ジュピター」のCD化を望む声は大きかったが、様々な理由により見送られてきた。その間、オーケストラ活動も中断していたが、「福岡古楽音楽祭」での演奏をきっかけに、2006年、舞台を東京芸術劇場に変え、本格的な演奏活動が再開された。 そして、今回、「有田正広指揮東京バッハ・オーケストラ・ライヴ!」として、オール・モーツァルト・プログラムがCD化される。
[録音:2008年10月4日1、3、2008年3月6日 2、東京芸術劇場ライヴ]
2) 金管楽器、特にトランペットにおいて(今回はホルンには問題となる音がほとんど無かったので、問題にならなかった)、これまでのオリジナル楽器演奏では、ナチュラル・トランペットで作られる自然倍音列にのった音階だと高い音域で平均律とかけ離れた音程がでる音があるので、菅の途中に穴を開けて、それの開閉で音程を修正していたが、今回の演奏では穴を開けずに当時は金管特有の音程感があった、との考えから修正せずに、唇の調整のみで演奏している。最近はこのような演奏を行う団体が海外でも幾つか見受けられ、来日公演も行っている)
3) 今回のピアノ協奏曲で用いられた1806年製のフォルテピアノは、少し後の時代とはいえ、完全な状態の素晴らしいオリジナル楽器であることも特筆できる。
4) その他にも解釈の中に当時の音楽手法(思想)が盛り込まれているように思われる。
ここで、音楽学的には正しくても、肝心の演奏はどうなのか?という疑問が湧くが、その疑問への答えを以下にライナー・ノートから引用しよう。 ※しかし、間をおいたこの2つの演奏を聴いて最も強く感じるのは、20年の歳月を経ても音楽の芯は変わっていないということである。楽器、奏法、音楽学上の研究の成果などによる変化はあっても、そうした外的な事情にとらわれない、音楽をする上での核となる部分、作品に対する感動であったり思いでもあるだろうが、このような、音楽をする上で不動のものがあることを感じさせられる演奏である。(小川恒行:ライナー・ノートより転載)
最後に、ピアノ協奏曲で共演したピート・クイケンのコメントを紹介する。 「いつもそのたびにびっくりしてしまうのだが、高度に洗練された日本の文化、日本的な繊細さと、ヨーロッパの古楽、そしていわゆる「オーセンティック」な、当時の慣行に忠実な演奏法は、実に見事に溶け合う。 有田正広さん率いる東京バッハ・モーツァルト・オーケストラと共演すると、いつもとてもダイナミックな経験をすることができる。音楽に対する誠実で奥行きのある取り組みに自然さが加わることによって、音楽作品がその場で息を吹き返すように感じられるのだ。人間的な豊かさと、対話と共感に満ちた温かい雰囲気の中で一緒に仕事ができたことに何よりも感謝したい。」