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Parakeet & Ghost (Deluxe Edition)_img
COCP-35813-4
¥2,940(税込)
直枝政広による『Parakeet & Ghost』セルフ・ライナーノート (2010/01/21修正)

※PDF バージョンはこちら(▼) pdf[pdf:178KB]
プリントして切りとっていただければ各CDジャケットに収納できるサイズになります

 『渋谷公会堂の『the booby show』。あの特効の合図ではじまる「クエスチョンズ」の荒々しさがバンドの当時の気分をうまく表わしていたように思う。そう、多少のいらだちはあった。『booby』においては、求められている成果や目標の数字を満たすことはおそらくなかったはずで、それは当時じっと我慢をしてくれていたスタッフたちの顔色からも薄々はわかっていた。プライオリティが落ちればその成果は目に見えて落ち込む。これは原理なのだ。まさに暗中模索。でもいつだってバンドもスタッフもそれぞれが思うできるかぎりのことをしようとした。
 バンドの顔としてしょっちゅう全国キャンペーンに行ったが、年を追うごとにメディア側の状況や反応は激変していった。みじめで寂しい思いをしたことは山ほどあった。とある街のキャンペーンを終えこだまで東京に帰る時、宣伝の担当が一点を見つめたまま一言も口をきかなかったこともあった。おそらく彼は言葉にならないくやしさやいらだちを噛み締めていたのだ。まわりの皆が同じ気持ちだった。「Edo River」や「It's a Beautiful Day」に続く曲が書けていなかったのかというとそれは絶対にない。自分でも誇りに思えるほどこの時期のカーネーションは驚異的に充実した作品を残してきた。だからこそ謎は膨れ上がった。もしかしたらこの世で何人かがその一番の理由を知っているのかもしれない。でもそんなことはもうどうでもいい。そのかわり、今回のリイシューは今聴かれるべくして堂々と出た。よく聴けばわかる。ここに詰まった思いは執拗に粘っこいのだ。
 まだ知らない人は多いだろうが、じつは加藤いづみの『Sad Beauty』(97年)というアルバムが怪物作『Parakeet & Ghost』に大きな影響を与えている。それは上田健司(当時はケンジ、通称ウエケン)とぼくのプロデュース作品が6:4の割合で収められているアルバムだ。直枝セッションのうち「木枯らしを抱きしめて」のカップリングとして収録された「みんな夢の中」(高田恭子のカヴァーで、幽玄の2050年版「アイ・シャル・ビー・リリースト」。その廃盤8cmシングルは見つけたら絶対にゲットすべし)で彼女に雑踏の中で歌を歌ってもらった時、身体ごとスタジオの壁を幽霊のように通り抜けたような気持ちの良い感覚をおぼえた。誠実に音を構築しがちだったカーネーションにはもっとこういった冒険や極端な遊びが必要だと確信したのはその時だった。一方のウエケンは音響派的なテクニカルなスタッフを駆使し、斬新ともとれる過激なポップスを飄々と示すことに成功していた。ぼくの引き出しにない今日的な美意識や空間意識がウエケンのサウンド・デザインにはあった。さらに何が良かったかといえば、そのコンポジションは一見小難しそうに見えて、じつは曲としては極端に単純でわかりやすく伝わるように作られていたということだ。何でもこってり好きのぼくにはそこが驚異だった。
 『booby』で極まった感のある上出来なヴィンテージ趣味、さらにこれまで培ってきたスタジオ内での決まり事、質、音色、すべての価値観を破壊すべきだとぼくはミーティングで提案した。カーネーションとしては異例のプロデューサー起用となるが、現状のバンドが抱える心理的なストレスの解消に絶対につながると心の中ではすでにわかっていた。なにより新しい風が必要だった。糸の切れたカイトとも言うべき『Parakeet & Ghost』は強面な音楽の霊媒師を通してとてつもない次元へ突入していくことになるのだった。
 音楽的にはUSインディーズがぐっと面白くなった時。シカゴ音響派が登場、エリオット・スミスなど宅録派がメジャーに、さらにはPhishなどのジャム・バンドが日本でも徐々に人気が高まってきた。ぼくも毎週のように西新宿のラフ・トレードに通いつめて最新の7インチを大量に漁ったし、新しい物を今聴かないでどうする?といった勢いはびしびし感じていた。その頃、棚谷くんが導入したファルフィッサというイタリアのヴィンテージ・オルガンはこの『Parakeet & Ghost』のサウンドの要となった。古い楽器をいかに尖らして聴かせるか、世界中の音楽家が裏で同時にそのアイデアを競いあっていた時期でもあった。ウエケンも変な効果を出す機材を持ち込んではスタジオ内のあらゆる音を歪ませようとしていた。
 アルバム作業の進め方は、Home Demoを基準に再現(「Rock City」「Parakeet Kelly」「Strange Days」etc)、もしくは現場でアッパーにヘッド・アレンジ(「なにかきみの大切なものくれるかい」「たのんだぜベイビー」etc)、そしてウエケンが持ち帰り再構成、新たな譜面を元に演奏というパターン(「グッバイ!夕焼けバッティング・マシーン」「ヘヴン」etc)だ。ここまでくると、もはや前もって几帳面にリハーサル・スタジオに入って練習なんてことはしなくなった。録音スタジオに入ってから曲に手をつけるのがほぼ当たり前なぶん、時間はかかってもその潔さが逆にメンバーに活気をもたらしたようにも思う。そういえば、シングル「愛する言葉」以降の矢部くんはタイガーバームを間違って目薬代わりにさしたショックから作曲欲に歯止めが効かなくなり、その天才性をこの時期大いに発揮、或る時などデモ出しミーティングに9曲もまとめて持ってきたことがあった。もちろんそれに刺激を受けてこちらも濃い作品を持ち込むわけだから、現場はまさに2枚組のアルバムを作るような勢いがあった。ビートルズ『ホワイト・アルバム』を目指したというより、放し飼いの中、でたらめに遊んでいたらいつの間にかこうなったというのがこの場合おそらく正しいのだ。数多いサウンド・エフェクトの選びもタイミングもほとんどカンでポン出し、そのほとんどが偶然の連続で成り立っている。アルバム制作時は超能力を全員が発揮していたし、奇跡的な音楽的効果を何分か置きに成し得ては「なんだよこれ、今回、どうかしてるぜ」と腹を抱えてよく笑った。そう、カーネーションというバンドは真面目そうに映るだろうけれど、じつは現場でも仕事をしているフリをしてゲームをしたり似顔絵書いたりして笑ってばかりいたのだ。

 

"Home Demo覚え書き"

 Home Demoでは矢部くんの「Parakeet Kelly」が秀逸なのだが、今回は収録時間の関係でここには収められていない。というかディレクター秋元によれば「完璧で、ほぼ同じだし…」とのこと。ちなみにあのスタジオ版にある後半の打楽器連打、アフロの祭典のような部分はぼくの思いつきだった。
 個人的には我が作品中もっとも気に入っている(まったく人気はなさそうだが…)「ナポレオン・ライス」のHome Demoがそのまま本編に入ったことが嬉しかった。あの1曲のユーモアがじつはこのアルバムの肝になっていると思っている。ギターは『Mellow My Mind』でぼくが抱えて写っている茶色のビザール・ギター(スゥエーデン製のHagstrome)で録音。今は赤いテレキャスターを製作してくれた平石くん宅に預けてあるけれど、とても妙な音がするのだ。もちろん、レス・ポール氏の多重録音作品にかなり感化されている。
 他のHome Demoもほぼその時点でイメージは出来上がっているけれど、「ヘヴン」の原型がこうまでムード・ミュージック的だったとは誰も想像できなかったのではないだろうか?あれをグランジへ移し替えるよう指示したウエケンの勇気、じつに見事だった。


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