Filter Project

五十嵐ハル

オフィシャルインタビュー

音楽

ーー小さい時はどんな音楽を聴いていましたか?
いつも親の車で流れていたのがきっかけで、ずっとB'zを聴いていました。小学校と中学校ではサッカーをやっていたんですが、中学で顧問の先生とうまくいかず、サッカーを辞めて楽器を始めたんです。親が、何もやらないんだったらやってみればって言ってくれて、エレキギターを始めたら楽しくて。B'zを聴きまくってギターを練習して、高校では4人組のロックバンドを組みました。自分がギター&ボーカルで、RADWIMPSやONE OK ROCK、MONGOL800なんかをコピーしてましたね。
ーーB'zのどういうところに惹かれたんですか?
最初に聴いたのは小学3年生くらいでしたけど、歌詞がめちゃくちゃ好きで。B'zって結構失恋系の曲も多いと思うんです。自分が作る恋愛ソングのほとんどが失恋なのもそういうところの影響があるのかなと思っています。恋愛に限らず、自分の歌詞はマイナスな部分が多いんですけど、実体験として思い浮かぶのもそういうマイナスなことが大きいからだと思っていて。
ーー例えばどういうことでしょう。
警察官だった時の辛すぎる経験もそうだし、高校の時に全校生徒の前で告白して付き合うことになった人に浮気されて落ち込みまくったこととか。
ーーエピソードのスケールが大きすぎるので、ひとつずつ聞かせてください(笑)。全校生徒の前で告白をするって、どういう状況だったんですか?
文化祭で告白大会みたいな企画があって、好きだった先輩にステージで告白しました。付き合うことになったんだけど浮気されちゃって、すごく落ち込みましたね。今となってはその感情も歌詞を書くときの材料になっているからありがたいんですけど、当時はものすごいダメージを受けました。
ーー後ほど詳しく伺いますが、警察官だった時の経験も歌詞にはだいぶ反映されているそうですね。
とにかく毎日が辛すぎて、その経験を「それでも生きてみた。」という曲にして発表したら結構反響があったんです。なるほどこういう需要もあるんだなということで、そういった感情を元に歌詞を書いたりしてましたね。
ーーオリジナル曲はいつ頃から作り始めたんですか?
高校3年生の時でした。バンドが解散する間際くらいに作り始めたんですが、ちょっと速めのロック調の曲で、さっき話した浮気した先輩のことを思いながら作った失恋の曲だった気がします(笑)。
ーー五十嵐ハルというアーティスト名はいつから?
「青」という曲を出す直前だったと思います。"五十嵐"は本名なんですが、もともと気に入っていたし、テレビとかでも結構かっこいい人気名字として取り上げられていたのでそのまま。でも下の名前は全然決まらなかったので、一番好きなラーメン屋さんの名前から取って"ハル"にしました(笑)。
ーーその前は、ボカロPの「ぺむ」として活動されてたんですよね。
はい。高校生の頃「歌ってみた」がすごく流行っていて、ひらがな2文字の名前の人が結構目立っていたんですね。こういう可愛い名前が流行るんだったら自分もそうしようと思って「ぺむ」にしたんですが、SNSの使い方が下手だったし、アイドルっぽく振る舞えなかったというか、可愛げのないただの落ち着いたやつみたいな感じになってしまって(笑)。人に聞かれた時に、可愛すぎて自分で名前を言うのが恥ずかしくなったのも改名したきっかけでした(笑)。
ーー音楽に対する向き合い方が変わったりもしましたか?
「センチメンタルヒーロー」を出すまでは、改名しない方が良かったのかなと思っていました。自分の声で歌うようになって再生数が落ちたので求められていないのかなと思ったし、SNSの「いいね」も減っていったので、だったら名前を戻そうかなって。でも「センチメンタルヒーロー」という曲を出したら反応がすごく良くなって、「五十嵐ハル」で検索してもどんどん出てくるようになったんです。インスタグラムのフォロワーが1000人行くか行かないかだったのに、去年の末ぐらいからフォロワーも急激に増え始め、今は8万人にまで増えてくれて。今回はそういう中でのリリースになるので、皆さんからの反応が早く知りたいし、楽しみな気持ちが大きいです。
ーーもちろん楽曲そのものの力によるところもありますが、ここまで急激に知名度が上がったのは、発信の仕方を変えたことも大きかったようですね。
それまで苦手意識もあって、SNSが嫌いだったんですね。何をどう投稿すればいいかもよくわからなかったし、インスタもどうせ伸びないだろうなみたいな感じであまり上げてなかったんです。でもSNSで人気になっている新しいアーティストたちの動画をしばらく研究していたら、最初の2〜3秒を見るとおすすめに乗るみたいなことがよくあったので、動画の内容自体を考え直しました。とはいえ、それでもまだまだ足りない。こんなに頑張ってるのに(笑)。どうせボーン!といかないなら使える手は全部使っちゃおうと思って、「元警察官が独学で音楽やったら」みたいなフレーズを入れたりしたんです。吹っ切れたのが良かったのかもしれないですね(笑)。

警察官

ーー五十嵐さんのプロフィールを語る上で、「元警察官」というワードはかなりインパクトがありますね。
高校を卒業してから5年くらい警察官をやってました。
ーーそれは自分から志願したんですか?
元々警察官になるつもりはなくて、最初は大学に行こうと思っていたんですが、1〜2限の授業をサボったりしていたら評定がどんどん落ちて、推薦で進学ができない感じになったんです。そんな中、ダメ元でいろいろ受けたらたまたま東京の警視庁だけ受かってしまって(笑)。 受かるとも思ってなくて、まさか人生で角刈りにする日がやってくるとは思いもしませんでした(笑)
ーーそこからはどういう生活を送ったんですか?
最初は警察学校で10ヶ月間、角刈りで過ごしました。みんなと寮生活するのは意外と楽しかったんですが、パソコンが使えないので音楽は全くできませんでしたね。その後都内の交番勤務になり、曲作りもしながらしばらくはのほほんと過ごしていたんですが、ちょっとした出来事があり。。。
ーー詳しいことは割愛しますが、ドラマでしか見たことがないような経験をされたんですね。
そうですね。それでその次に行くことになったのが機動隊でした。朝5時に起きて夜遅くに終わる、めちゃくちゃハードな毎日で。音楽をする時間も全くなくなったし、理不尽なことばかり起こるし、こんなに朝から晩まで拘束されたらたまったもんじゃないと思い、辞めることにしたんです。やっぱり音楽がやりたかったし。
ーー辛すぎる経験が、その後の音楽活動のエネルギーになったのかもしれないですね。
それはあると思います。明るい感じの歌詞も書こうと思えばたぶん書けるんですけど、基本的には負の感情の方を強く覚えちゃうんですね。だから、喜ばしいことよりも大きく残っちゃう負の感情を消化するために歌詞を書いているところもあって。「こういう嫌なこと、あるよな」、「人生つらいけど、頑張らなきゃね」みたいなことを歌詞に乗せて、そこに共感してくれる人がいればいいなと思っているので、これからもこういう方向性で歌詞を書いていく気がしています。あとは、自分の感情がうまく乗せられた時に出るドーパミンっていうか、「わぁ、いいわ」っていうのが快感なんですよね。上手く作れることへの中毒というか。だからもっといい曲をどんどん作りたい!っていう創作意欲に繋がっている気がします。

イラスト

ーーこれまで発表された楽曲のMVは、そのほとんどがご自身のイラストで構成されていますね。
もともと、小学生の頃から遊びで漫画を描いていたんです。ドラえもんのキャラが戦う、パロディーみたいなふざけた漫画なんですけど(笑)。そういう経験もあったから、自分で曲を作るとなった時、これからずっと誰かに依頼するよりも一度機材を買って自分でやった方が安いなってことで始めたんですよ。お金があったら、作ってなかったかもしれないですね(笑)。
ーーどのキャラクターも1枚紙が貼られていたり、マスクを被っていたりして、表情が隠されているという特徴があります。
正直言うと、顔を書くのが下手なのでそれを隠すためなんです(笑)。画力がないからっていう理由からだったけど、表情が隠れることによって本音はどうなんだろう?みたいな意味にも取れる。これはこれでいいなと思い、統一するようになりました。

EP「映画」

ーー3月27日にリリースされる1st EP「映画」はどんな作品になっていますか。
ここに収録されている全部の楽曲が、自分自身を書き写したような内容になっています。言ってしまえば、自分自身を映画化したような感じ。でもこれは自分だけのストーリーではなく、共感したり、何かを思い出すきっかけになったり、聴いてくれた方のストーリーとも重なっていく部分がある映画なんじゃないかなと思います。今回は5曲収録されていて曲調や歌詞はちょっとずつ違いますが、どこかしらマイナスな部分を抱えているっていう共通点はあるかも。自分の人生は自分が主人公のはずなのに全然そうは思えないとか、自分の人生なのに他の人が主人公なんだって認めざるを得ないとか、そんな風に感じながら生きている人が聴いたらきっと、「あぁ、私だな」と思えるような作品かなと思っています。
ーー五十嵐さんは今、自分の人生をどう感じていますか?
自分の人生だから主人公は自分であるべきだと思っているけど、今は自分が主人公だとは思っていなくて。これからなりたいんです。だからこの作品は、自分自身の中で自分が一番なんだって言い切れる何かを見つけるまでのストーリーでもあるというか。そういう映画の一部でもあるのかなと感じています。

これから

ーーこの先、アーティストとしてやってみたいことはありますか?
たくさんありますが、ひとつはアニメの主題歌を作ること。皆さんそこから大きく羽ばたいているような印象があるので、ぜひやってみたいです。もうひとつは、ライブ。ライブハウスでやるのももちろん楽しいと思うけど、最終的には東京ドームや横浜アリーナなど、自分が今まで見に行っていたデカい会場で皆さんとコール&レスポンスがやってみたいです。
ーーライブではギターも弾きますか?
曲によっては弾きたいなと思っていますが、結構難しいフレーズで作っているものも多いから、100%の歌を届けるためにはボーカルだけに専念した方がいいのかなとも思いますね。まだまだ実力不足なので。
ーーちなみに楽器はギターだけですか?
たぶんライブで弾けるのはギターだけですね。ピアノも少しだけ弾けるんですが、独学ですし、人前で披露するほどではないなと思っています。

Filter Projectについて

これまでもいろんな会社の方からお声がけをいただいたりもしたんですが、「こういうものなんだな」っていうそっけなさみたいなものを感じることが多かったんです。でもFilter Projectはいろんなことを一緒に考えてくれるし、僕が作る音楽をすごく大事にしていただいている。このチームの皆さんと仕事ができていることは、本当にありがたいことだなと感じています。今もすでにいろんなことをやらせていただいていますが、今後はこういったインタビューやプロモーションなどの経験も重ねながら、いろんな場所でのライブやイベントなど、広く音楽活動をやっていけたらなと思っています。

Interview & Text:山田邦子


楽曲解説

Interview & Text:山田邦子