"夏の終わりの海の沙汰"
9月の海。
海風の肌触りは、もうどことなく移り変わってきている。
夏の間にためこんだお祭り騒ぎの熱気を咀嚼(そしゃく)しながら、
海は落ち着きを取り戻そうとしているように見える。
"沙汰"という言葉。"沙"には砂、"汰"には選び分けるという意味があるそうだ。
水しぶきによって淘汰される海の記憶。
宇宙のことがまだ何も判っていないくらい、海の底の世界もまだ何も判っていない。
海に意志があったって、風に情感があったって、可笑しくはない、と思う。
きらきら光る海面を眺めながら、その底に果てしなく深く遠い未知の世界が
広がっていることを想う。
波によって篩(ふる)いにかけられる砂粒たち。
残るのはこのさきへと繋がっていく感覚の広い帯。
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