ほそやかな桃色をした幽玄な桜雲が、

ほわりと辺り一面に漂ってくる。

「なんと脆く美しい世界だろう」

誘われるように、花の雲に近づいて、

その渦の中へ飛び込んでみると、

そこにあったのは「桜源郷」だった。

目を開いても瞑っても、見えるのは薄桃色の仙境。

上も下も前も後ろも過去も未来も無い場所。

夢なのか、現なのか？

これは、永遠をまとった無常。

それは、儚さから舞いでてくる香(かぐわ)しい一瞬。

春はあけぼの、桜は夢。