サウンドスター1 | Episode of スティンガー | サウンドスター3 | サウンドスター4 | サウンドスター5
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宇宙戦隊キュウレンジャー オリジナルサウンドトラック サウンドスター 1
1.アバンタイトル
(1)EX-4Short
「サウンドスター1」の開幕を告げるのはアバンタイトル音楽のEX-4Short。山下康介氏が手掛けた『海賊戦隊ゴーカイジャー』のアバンと同様、編集でOPと繋がるように作曲されている。初使用は第2話で放送時間変更前の第31話まで使われた。ここに収録しているのはショートバージョンで、フルサイズは「サウンドスター5」のトラック14に収録しているので、詳細はそちらを参照してほしい。
3.「LUCKY STAR」(TVサイズ)
OP主題歌のTVサイズ。こちらはEX-4Shortと編集して使われるイントロのスネアのアタックがないバージョン。アタックありのTVサイズ2は「サウンドスター3」で聴くことができる。
5.救世主の伝説
(1)M9(宇宙戦隊のテーマ) (2)M19(戦闘準備)
全宇宙を支配する宇宙幕府ジャークマターとレジスタンス組織「リベリオン」の戦い。そして、伝説として宇宙に語り継がれている究極の救世主・キュウレンジャー。広大な宇宙で今日も彼らは戦い続ける――。トラック5はヒーロー側の主要モチーフを雄大なサウンドで聴かせる2曲。「宇宙戦隊のテーマ」のバリエーションM9は、メニュー表のBのブロックでは最初のナンバーだが、M10をベースにアレンジされた。曲調はどことなくジョン・スコット風で、「昔はそういう意識もなくて、パッと聴いてカッコいいなと思っただけですが、オーケストレーションが非常に明快で、僕の書法とどこか近いところがあるんですよね」と山下氏。初出は第4話のラスト、オリオン号で8人目のキュウレンジャーとなったラプターを歓迎する場面。M19は「キュウレンジャーのテーマ」のバリエーションで、シンセのみだが、重厚な楽曲に仕上がっている。ミリタリーテイストは本作の音楽コンセプトのひとつで、意識的にスネアドラムが多用されている。初出は第1話のオリオン号のブリッジで、ラプターたちが宇宙幕府ジャークマターやリベリオンの存在、そして9人の救世主についてラッキーに説明する場面。また、「出撃や逆転の際のカッコイイセリフと共に選曲する場合があります」(選曲・MA担当の宮葉勝行氏)とのことで、第12話ではピンチのみんなの前に現れたラッキーがイカーゲンに対して「そんなのやってみなきゃ分からねーだろ!」と言い放つ場面、第14話でガルがユーテルジャンに「運が悪いなら自分の力で運を取り戻せ」と言う場面、第42話でみんなに対してラッキーが「俺はやりたいことを全部やる」と自らの決意を語る場面などの選曲例がある。
7.進め!オリオン
(1)M14(オリオン号は大騒ぎ) (2)M52(宇宙は俺の庭)
オリオン号での個性溢れるキュウレンジャーたちによる賑やかな日々。トラック7は、陽気で明るい音楽集。M14は「宇宙戦隊のテーマ」のバリエーションで、「短くほどよくこじんまりとした感じでハネる曲ですね」とは山下氏。通常、コミカル曲はシンセメインで用意されることが多いが、「この曲の場合、シンセだとダサくなる」(山下氏)とのことで、生楽器の主体の楽曲となっており、とりわけサックスの演奏がユーモラスな味わいを感じさせ、生楽器ならではの効果を発揮している。初出は第1話でオリオン号を訪れたラッキーが自己紹介する場面。他に第9話や第14話のラストシーン、第44話ではペガさんが久々に現れる場面と、オリオン号(もしくはバトルオリオンシップ)で使われる場合が多い。M52は「I.心情・その他」から共通のモチーフを持つ汎用的な楽曲のひとつ。軽快なブラスとシンセコーラスの掛け合いが独特のムードを醸し出している。「女声コーラスの雰囲気が70年代のホームドラマ風の音楽ですね」とは宮葉氏。また山下氏曰く「この曲は割と最初の頃に書いていますね。どうしてもメインどころの楽曲は気持ちも高ぶるし、時間もかかるけど、これはメニュー的にも気楽に書ける内容だし、こういうのがサクッと書けると“あ、いけるかも”と他の曲も調子よく書けるんですよ」とのこと。初出は第7話でバランスが「ついにこの日が来た」と自分の誕生日にテンションが上がる場面。他に第21話のラスト、チャンプの復帰祝いの場面での選曲例がある。
8.「キュータマダンシング!」(インストゥルメンタル・ショートサイズ)
トラック8は、EDのシタールメロを1コーラス+ハーフに編集したショートサイズ。フルサイズは「サウンドスター5」のトラック20に収録。
10.緊急発進!
(1)M37(タイムリミット!) (2)M36(事件発生!)
キュウレンジャーが各惑星で挑む様々な事件。第1回録音の「G.アクション」から、事件発生の緊迫感を伝える音楽を2曲並べてみた。M37は、同じフレーズの繰り返しがサスペンスを盛り上げる。楽曲自体は比較的地味だが、劇中での使用頻度は高く、耳馴染んだファンも少なくないと思う。「発注の時点ではテーマメロは設定せず、作家さんがどういうものを上げてくれるかという、ある種の投げかけですね」とは宮葉氏。一方、山下氏によれば「逆に自由っていうのは辛いですね(苦笑)。良さそうで実は一番大変なんですよ」とのこと。続けてこうも語ってくれた。「メニューでは定番のタイトルだし、意外と重要なんですよ。色々なアプローチがあると思うけど、何パターンが作ったみたものの、気に入らなくてボツにしたものもあります」(山下氏)。初出は惑星ジャグジャグに墜落したラッキーが、ガルに襲われる場面。第8話ではインダベーに襲われている少年をカジキイエローが助ける場面など、各話の前半で選曲されることが多い。また第18話の冒頭では、ガルがナレーションを務める、前話振り返りのBGMとしても使われた。M36は汎用的なアクション曲。宮葉氏によれば「最後にリズムがなくなるので、合わせるのに苦労します」とのことであるが、楽曲自体は利便性がよく、使用頻度は高い。初出は第1話で惑星クロトスにラッキーが墜落する場面。以後、第2話や第11話での敵と遭遇する場面など、専ら前半のシーンで使われることが多い。他に第41話では惑星サザンクロスに突入したラッキーたちが階段を下りながら戦う場面がある。なお、このトラック順だと、第5話で小太郎&次郎兄弟がユメパックンに石を投げる(M37)~二人に襲い掛かるインダベーとそれを助けるキュウレンジャー(M36)、第10話でラッキーと小太郎がモズマに遭遇(M37)~オリオン号が太陽に向かって急加速(M36)の選曲例がある。
12.全宇宙の支配者
(1)M26(ジャークマターのテーマ) (2)M46(暗躍) (3)M47(恐怖)
宇宙に散らばる88の星座系のほぼすべてを支配する悪の組織「ジャークマター」。絶対的なヒエラルキーを有し、手中に収めた各惑星からプラネジュームを集めんとする――。トラック12は重く不気味な、ジャークマターをイメージした音楽集。M26は「ジャークマターのテーマ」。音楽的にもヒーローと対をなす存在として置かれているが、楽曲自体は派手にオーケストラを鳴らすわけではなく、どちらかといえば抑え気味で静的なイメージ。だが、これは狙い通りで宮葉氏によれば「当初、悪のボス(ドン・アルマゲ)は全貌が分からないという描かれ方だったので、ガンガン攻めてくる感じではなく、ミステリアスな曲として発注しました」とその意図を明かす。「悪のテーマはやはりヒーローと同じくらい印象に残るものにする必要があります。作曲にするに当たっては、マンネリ化は避けたいので、『(魔法戦隊)マジレンジャー』の悪のテーマ(インフェルシアのテーマ/M26)とか、過去の自作を聴き返した上で、メロディを書き、その上で複雑というわけじゃないけど、ハーモニーやコードワークはどちらかといえばクラシカルな書法を用いてみました」(山下氏)。冒頭ホルンが奏でるメロディは、オンエアを見続けているファンなら、「ジャークマターのテーマ」として、しかと認識していると思うが、「バリエーションも多いし、やっぱりメロディが良くないとね。メロが詰まらないと、自分でアレンジしていてもいい曲が仕上がりません。逆に言えば、メロディさえ良ければ、アレンジでどうとでもなるんですよ。限られた時間の中、“これだ!”と自分が納得できるメロディが浮かぶかどうかが勝負ですね」と山下氏。第1話では、オーケストラのトゥッテイで演奏される曲頭をビックモライマーズのカットに当て、続くホログラムのドン・アルマゲのカットにホルンが奏でるジャークマターのモチーフを当て、まるで尺合わせで付けたかのような絶妙な選曲がなされている。他に第13話のスコルピオとアルマゲの会話シーン、第29話、第43話などでの選曲例がある。続く2曲は「H.サスペンス」からの汎用曲で、まずM46は「感情が入る怖い系の劇伴ですね」(宮葉氏)ということで、ストリングスやシンセコーラスが恐怖を感じさせる。初出は第2話の鎖で吊り下げられてピンチのラッキーとナーガの場面。アルマゲ関連では第43話で「宇宙を消し去ってどうする」と言うツルギに、「私は不死身だ」と返す場面がある。他に第13話ではスティンガーがスコルピオについて「今はジャークマター最強の殺し屋として反逆者の暗殺を行っている」と語る場面、第19話では惑星キールで長老が「森に入ってはならん」と忠告する場面などでも選曲されている。M47も同じ系統の楽曲だが、タイトルが「恐怖」とあるように、よりショッキングな曲となっている。「リズムとハーモニーでずっと押していますね。最初にある程度の形はできるんだけど、あとはメニューのどこにハマりそうかなと落とし込んでいきました。それと、こうした曲はシンセになりがちですが、ポイントで生を入れることも大事なので、敢えて生で録りました」(山下氏)。「終結部が生だと後押し感がありますね」(宮葉氏)。第3話でエリードロンがスティンガーに「俺の部下になれ」と誘う場面が初選曲で、そうは言いつつ互いに信じ合ってない両者の張り詰めた雰囲気を音楽面からも伝えている。また、13話のスコルピオの毒で操られた人々の場面では、楽曲が持つホラームードを上手く活かしている他、第43話では、曲の前半をアルマゲによる全合奏でプラネジューム爆弾の起動、後半をキュウレンジャーの前にドン・アスランが現れる場面と、別個の場面を1曲で繋ぐことで危機感を持続させている。
14.Say!The CHANGE!!
(1)M21(変身~名乗り) (2)M15(キュウレンジャーのテーマ)
チェンジキュータマとセイザブラスターで変身する9人、そしてキュウレンジャーの戦い――。トラック14は、作品を代表する劇伴であり、鉄板の組み合わせとも言える2曲を並べた。M21は「変身~名乗り」のテーマだが、変身シーンはSEを聞かせ、名乗りシーンで使われるのがほぼ定番の選曲パターンとなっている。宮葉氏によれば「普段は名乗りのセリフの隙間でボリュームを上げるのですが、今回は隙間がないので全く上げられません」と語るが、キャッチーなメロディと色彩感溢れるオーケストレーションは耳に残るものがあり、多くの視聴者に「変身の音楽といえばコレ」と認知されていることは言うまでもない。以下、山下&宮葉両名に語ってもらった。
宮葉「今回はメンバーが多いので、いつもより長めに作ってもらいましたが、実際には名乗りシークエンスの尺は例年とほとんど変わりませんでした」
山下「曲自体のテンポが遅いわけじゃないけど、オンエアを見たら前後の曲に比べると、意外とゆっくり聴こえるんですよね。ちょっとトーンが下がる気がするんですけど、どうでしょうか?」
宮葉「他の曲とテイストが違って差別化も図られているし、全然大丈夫ですよ」
山下「自分としてはスタイリッシュさを狙ったつもりですが、まぁ、変身のテーマは毎年本当に難しいですね」
劇中での使用頻度も高く、代表的な選曲例としては、第4話でのシシレッド、ブルー、ブラック、グリーン、イエロー、ピンクでの名乗りを皮切りに、続く初の9人名乗りとなる第5話、初の11人名乗りの第12話、初の12人名乗りの第25話などがある。M15は「キュウレンジャーのテーマ」で、主題歌と双璧をなす劇伴のメインテーマ。対外的には主題歌が表に出がちだが、主題歌と劇伴の作家が異なる現在の音楽制作体制にあって、そのどちらを欠いても成立しない。M15はそれくらい重要な楽曲である。この曲に関しては、山下&宮葉の両氏に加え、音楽プロデューサーの八木仁氏(日本コロムビア)も交えて語ってもらった。
八木「中間部のギターソロ辺りは、なんとなく羽田(健太郎)節の流れを汲んでいる感じですね。とてもいい曲が出来上がったと思っています。」
山下「変身とメインテーマはいつも気合が入るのですが、あまり力んでもいいものが出来ないんですよね。もうちょっとリラックスして書けるといいんだろうけど。」
八木「その肩の力の入り具合がちょうど良かったんじゃない?」
山下「そう?」
八木「なんとなく手癖で書いてしまう人もいるけど、鳴りだけでやってない曲になっている。」
宮葉「イントロとコーダのフレーズが同じだけど、作曲する上では、そこから発想を?」
山下「ああ。そうですね。イントロの部分から出来上がった感じです。あと、意識したといえば、ビックバンド感。弦やリズム隊も入ってるし、完全にビックバンドというわけじゃないけど。ブラスロック的なイメージもありました。」
宮葉「今回、ベースを生で入れていて、それがまたバンドっぽさに繋がっていますね。」
山下「あとはサックスかな。過去の作品では、作風を意識したわけじゃないけど、渡辺宙明先生も上手く使われていたでしょう。」
八木「スタンダードな魅力を追及したと。」
山下「ええ。そういうことですね。」
宮葉「中間部のサックスメロはデモの時点ではちょっと弱かったので直してもらいました。」
山下「どうしても力が入り過ぎるとくどくなりがちで(苦笑)。やはりパッと聴いて、分かりやすくカッコいいメロディを書きたい。羽田先生みたいにワイン片手に書かないとダメかな(笑)。」
宮葉「いやいや。ここ数年のスーパー戦隊のメインテーマの持っていた、ある意味での暑苦しさから脱却した、素晴らしい1曲になりましたよ。」
17.悲しみの星空
(1)M20(悲しみ) (2)M61(仇)
トラック17は、悲しく、美しい二つの心情曲。M20は、前トラックのM15(キュウレンジャーのテーマ)のバリエーションで、ストリングスで奏でられる旋律がどことなく感傷を誘う。アコースィックな心情曲は山下氏の得意とするところで、「あまり難しいことを考えず、気持を込めつつ、手弾きでピアノを弾きながら、なんとなく流れで纏まります。そんなには悩むことはないですね」と語る。初選曲は第6話のラスト、ペガさんが死んだと思い込み、一同が悲しみに暮れる場面。ここは「アホ、勝手に殺すな!」と実は生きていた展開なので、ギャップを踏まえて敢えてシリアスな曲を当てている。楽曲に沿った使い方では、第16話のラスト、破壊されたチャンプの残骸を囲んでの場面、第43話の仮面が外れてアスランとラッキーが感動の再会を果たす場面、第46話のドン・ツルギの攻撃から一同を守ってショウ司令が消滅する場面、第47話ではスパーダ&ラプター、スティンガー&チャンプ、小太郎がそれぞれ戦う決意を固める場面など、数々の名シーンを盛り上げてきた。M61はより重い心情曲で、同じピアノとストリングスがメインだが、こちらはシンセによる楽曲でシンセならではのリバーブが独特の情感を携えている。劇中では、第1話でラッキーとガルが殴り合う場面が初出となる。ここでは「力があるのにどうして戦わない」とラッキーに問われたガルが「戦ったわ!俺の一族は最後まで」と手を握りしめるカットから音楽がインして、ガルの一族が滅ぶ回想となるが、まさに映像と音楽がリンクした絶妙のシーンになっていた。他に第43話で、デスワームとメカマーダッコを倒したキュウレンジャーが惑星サザンクロスを離脱する場面も忘れ難い。「この星を離脱する」と言うラッキーに対して、ガルが「おい、親父さんは?」と返し、微妙に顔を背けるシシレッドオリオンのカットから音楽がインし、重い曲調が表情のないマスクから苦渋の決断であることを伝え、さらにアスランがブラックホールを起動させる場面へと至り、悲劇的な展開を大きく盛り上げた。
19.見上げた空に…
M8(寂しく)
トラック19は主題歌「LUCKYSTAR」のアレンジ曲で、フルートやストリングス、ピアノとアコースティックな楽器が主体となる。M8はトラック17収録のM20と同じく山下氏お得意のアレンジで、「元のメロディはあるわけですから、あとはどういう色彩……オーケストレーションにしていくかですね。メロディはほぼそのままなぞり、細かく色合いを変化させていくことでニュアンスを出しています」と語る。また、シンセで行くか生で行くかの判断も大事だと言う。「小編成だから打ち込みで片付けることもできるけど、情感を伴う曲はやはり生に限りますね」(山下氏)。劇中では第3話のラスト、オリオン号のブリッジの場面が初出。また第45話ではツルギが「やりたいことが決まった」と決意を固める場面で短く使われている。
20.星を越えた絆
M13(友情)
オリオン号や各惑星で束の間の平和のひとときを過ごすキュウレンジャー。M13は「宇宙戦隊のテーマ」のバリエーション。ピアノとフルートをメインに、チェロが奏でる旋律が聴く者の心を揺さぶる。初出は第6話で、一度はダンス練習を諦めたハミィが、ひたすら特訓を続けるラッキーの姿に考えを改める場面。また代表的な選曲例としては、第47話でガルとハミィがラッキーに対しての気持ちを確かめ合う場面から、恐怖の感情を覚えたナーガに対して「おめでとう」とバランスが祝福する場面がある。
22.反撃!ジャークマター
(1)M29(ジャークマター出撃!) (2)M31(宇宙怪人・襲撃) (3)M34(激闘)
ジャークマターが各惑星への侵攻を開始。その激しい攻撃を表した音楽を3曲並べてみた。M29は「ジャークマターのテーマ」のバリエーションで、悪の進撃マーチと言ったところ。「リベリオンもミリタリー調ですが、ジャークマターも大艦隊なので、同じような発注をしました」とは宮葉氏。劇中での使用頻度も高く、初出は第1話のエリートロンのビッグモライマーズが攻撃を仕掛ける場面。他に第2話ではキュウレンオーとガメッツイの巨大戦、第21話ではスティンガーとスコルピオの決着後、ドン・アルマゲが姿を現し、全モライマーズが起動する場面、第46話ではリュウテイオー&スーパーキュウレンオーが超弩級ビッグモライマーズの破壊を試みるも、ドン・ツルギにその攻撃を遮られる場面などの選曲例ある。M31は「宇宙怪人のテーマ」と分類された3曲のうちの1曲だが、「一応、同じ曲のアレンジで統一はしているけど、主張するメロディを持ってるわけでもないし、敵側にもヒーロー側にも使っています」とは宮葉氏。「メロディよりもリズムで押していくタイプの曲ですね。とはいえ、メロディが流れてしまうのもイヤなので、途中でギターのアドリブを挟んでいます。自分でフレーズを書いても良かったのですが、アドリブの場合、出たとこ勝負で生まれる良さもありますね」(山下氏)。初出は第7話でカメレオングリーンがインダベーの攻撃を受ける場面。他に第21話の冒頭では、ショウ司令のナレーションによる前話振り返りから、スコルピオとの戦いの場面、第41話ではシシレッドたちがサザンキングと戦う場面などで選曲。また「最初はシリアスな方向性で打ち合わせしていましたが、いざフタを空けたらコミカルな怪人も多かったので、結果的にはこれくらいのサジ加減で使いやすかったのではないでしょうか」(山下氏)とのことで、第13話のスコルピオの毒に操られた人間たちに翻弄されるキュウレンジャーの場面や、第19話のキュウレンオーとオメーガの巨大化戦では、その辺りの温度感を感じさせる選曲になっている。「G.アクション」からの汎用曲M34は、M35と共通スコアのテンポ違いで、こちらが早いバージョンとなる。「テンポ違いで等身大と巨大戦で使い分けられる曲というのは、ここ数年のメニューで取り入れています」とは宮葉氏。「M34から着手しましたが、2曲カップリングなので、当然、テンポを落としても形になるよう予め考えて作曲しました。発想としてはベースパターンから作り始めていますね」(山下氏)。選曲例としては、第1話でラッキーの不時着で退路ができたことを受け、スパーダ、チャンプ、ハミィが人々を庇いながらボイジャーに向かう場面を皮切りに、多数のエピソードで選曲されている。また先に述べた通り、イメージは等身大アクションだが、第1話、第3話のボイジャー戦など、巨大戦で使われることもある。
24.正義の心はビッグバン
(1)M62(信じて進め!) (2)M16(9人の戦士)
窮地に追い込まれるキュウレンジャー。しかしここで負けるわけにはいかない。不屈の闘志を燃やして彼らは戦い続ける! M62はスーパー戦隊ならではの勇壮な音楽で、「最初は静かに始まり、徐々に盛り上げていく……これはもう発注通りの曲が書けたと思っています」とは山下氏。初出は第1話で、苦戦するチャンプを目の当たりにしたガルが、「俺は……戦って戦ってジャークマターをぶっつぶしてやる!」と決意する場面。宮葉氏によれば、「Pro Toolsを使うようになってから、こういう前半と後半で曲調が変わる曲は使いやすくなりましたね。上手く合わせられると映画音楽のような効果が出せます」とのことで、第4話でスパーダに「君は何がしたいんだ」と問われたラプターが「私はみんなと戦いたい!」と意思表明する場面での選曲例がある。また第47話でツルギを解放したラッキーが一同と再会を果たす場面でも使われた。M16は「キュウレンジャーのテーマ」のバリエーション。メインテーマのM17に対して、こちらはリズム隊を含まないオーケストラメインの編成で、テンポも落としてある。「デモの段階では、終結部が粘っこくてなかなか終わらなかったので、“もう少しテンションを上げてください“と直してもらいました」とは宮葉氏。スーパー戦隊では定番のメニューのひとつで劇中での使用頻度も高い。第2話でバランスがラッキーとナーガを助けて、バランス&ナーガがチェンジキュータマを手に入れる変身前の場面で初選曲。他に第45話で次郎たち地球人がアントンゼロに対して投石する場面、同話のラスト、12人全員が究極の救世主として、出動の決意を固める場面での選曲例がある。
26.Figthing Stars
M1(FIGHT!キュウレンジャー)
逆境に屈せず、攻勢に転じるキュウレンジャー。トラック26からは勝利へ向かってヒーロー優勢のテンションの高い音楽が続く。ここに収録したM1は主題歌アレンジの1曲で、アクションシーン向けに用意されたもの。スーパー戦隊シリーズでは珍しいJ-POP調の主題歌が、巧妙なアレンジでオーケストラサウンドへと換骨奪胎されている。「毎年の定番曲ですが、カッコよくアレンジできたのではないかと思っています。アレンジする上では、モチーフとして印象的な部分を取り出して再構成するならまた別ですが、基本メロディは崩せないでしょう。特にこの曲は節回しが細かく、その上で劇伴的なタッチも入れなくてはいけません。まぁ、そこが難しくもあり、面白いところでしたね」とは山下氏。また宮葉氏によれば「メニュー出しの段階ではデモしかもらってなくて、実際はそんなことはなかったのですが、このJ-POP寄りの曲調だと、戦う場面で使えないかもしれない、という心配がありました。山下さんのアイディアで、メジャーコードの主題歌をマイナーコードでアレンジしてくれたのですが、危機感ある場面にも合うので、非常に使い勝手の良い曲になりました」とのことで劇中での数々の名場面を彩ってきた。一例を挙げれば、初出となる第3話のラス立ちを皮切りに、第12、13話でのリュウテイキュウレンオーの合体シーン、第46話のドン・クエルボとのバトルシーンなどがある。また、通常とは異なり、主題歌が省略された第43話では、冒頭のタイトルバックから提供ジレットにかけて選曲された。
27.炸裂ギャラクシー!!
M17(苦戦)
M17はサックスをフィーチャーしたノリノリのアクション曲で、メニュー上は「C.キュウレンジャーのテーマ」に分類されているが、M15のバリエーションではなく、全くの別曲。CDのブックレットでも触れたが、原曲は映画『動物戦隊ジュウオウジャーVSニンニンジャー 未来からのメッセージfromスーパー戦隊』で使われた「超宇宙級戦隊」(M47b)で、これに手応えを感じた山下氏からの提案を受け、M17(苦戦)に組み込むことなった。「自分としても良い曲が出来たと思ったので、新しく作り直した上で、どこかで使いたかったんです」(山下氏)とのことで、TVシリーズ用にスコアが起こされており、細部は『VS』からブラッシュアップされ、編成もサックスが2本に増えるなど、より厚みのある楽曲に仕上がっている。また楽曲の持つテンポ感も重要で、「昔は早い曲でも140くらいだったのが、僕らの時代は180くらいまで行きますからね。あまり早いと演奏できなくなってしまうけど、テンポが遅いと緊張感を削ぐ。そういう意味ではテンポ感はけっこうシビアに決めています」とは山下氏。劇中での選曲については、「M15を名乗りや前半の戦いで使い、こちらをメインテーマ的に使うこともありますね」(宮葉氏)とのことで、第1話ではシシレッドから始まるラス立ちで選曲されたのを皮切りに、数多くのエピソードで使用。第11、14、41話では名乗りシーンでの選曲例もある。また予告編音楽としてもお馴染み。
28.「LUCKY STAR」(インストゥルメンタル・ショートサイズ)
OP主題歌のシンセメロ(コーラス入り)を2コーラスに編集。イントロは、冒頭のスネアは有りのTVサイズとなる。なお、フルサイズは「サウンドスター4」のトラック2で聴くことができる。
30.ダイカーン大逆襲
(1)M33(宇宙怪人・進撃) (2)M40(最大のピンチ)
巨大化したダイカーンやツヨインダベーが大都市を蹂躙する。その猛威を前にキュウレンジャーは……。トラック30は怪人の大暴れをイメージした音楽集。M33は、3曲ある「宇宙怪人のテーマ」のひとつで、どことなく後期ロマン派を思わせるシンフォニックサウンドが聴きどころ。「低弦がやるメロディがポイントです」とは山下氏。メニュー上は巨大戦イメージだが、実際の選曲では等身大のシーンで使われることが多く、第5話では小太郎と次郎を捕らえたスティンガーらの前にラッキーたち8人が現れる場面を皮切りに、第16話では本性を現したスコルピオがスティンガーの前でマスクを外す場面、第46話ではドン・ツルギの登場場面などの選曲例がある。また、第7話のトゥーミーのクリームアタックでキュウレンオーが視界を遮られる場面のように、イントロ部分のみを取り出して使うこともある。M40は「キュウレンジャーのテーマ」の変奏曲で、冒頭ホルンが奏でる旋律を聴けばモチーフが分かるかと思うが、これはメニューでは指定されておらず、山下氏のアイディアによる。「やっぱりメインテーマが出てくると、“おおっ!”となりますよね。菊池俊輔さんもよく主題歌のメロディを劇伴に取り入れていましたが、非常によくできていますよね。決してマネはできないし、なかなか手が届くものでもないけど、ああいう精神はどこかで意識したいとは思っています」(山下氏)。また、ここに収録した2曲は共にオーケストラによる楽曲で、スタジオ編成ではかなり大きい30人規模。この規模でこれだけ存分に鳴らせる実写のTVシリーズは、現在では、それこそスーパー戦隊くらいではないだろうか。とはいえ通常のクラシック編成に比べれば遥かに小さい。その辺りについて山下氏は「今はシンセでもフルオケっぽくやろうと思えばできるけど、逆に個性がなくなってしまいますね。みんな同じソフトで同じ音を鳴らしている。限られた楽器編成の中からアイディアを出すからこそ、面白い音楽ができるんです」と、持論を述べている。劇中では2クール目辺りまでは頻繁に使用されており、幾度となくキュウレンジャーのピンチの場面を盛り上げた。初出は第1話の冒頭、「地球は侵略者の手に落ちた」のナレーションと共にジャークマターが地球を襲撃する場面。他の選曲例としては、第21話でスコルピオが「俺が負ける?そんなことが許されるはずがない!」と叫ぶと共にマスクが壊れ、強大な力を発揮する場面、第47話でガル、ラプター&スパーダが消滅する場面がある。
33.宇宙の王(キング)へドッキング!!
(1)M11(キュウボイジャー発進!) (2)M22(爆進!キュウレンオー)
トラック33は、キュウレンジャーが操縦するそれぞれの専用マシン「キュウボイジャー」と、5体のキュウボイジャーが合体して誕生する究極のスペースロボ「キュウレンオー」のテーマ集。「キュウボイジャーのテーマ」M11は、「B.宇宙戦隊のテーマ」に分類されるが、「パッと聴いただけはM10のアレンジだとは気付かないですね」(宮葉氏)とモチーフは明確ではない。山下氏は「やっぱりたくさんの曲を作るので、色々思い付いたモチーフを並べて行って、このテーマに合うんじゃないかと当てハメて行った部分もあるんです。そういう意味では全く別曲と捉えてもらったほうがいいかもしれませんね」と語る。エレキギターによる短いフレーズが様々に展開していく曲調が独自の個性を放つが、「展開がころころ変わって行く感じは別に狙ってやったわけではなく、自然と浮かんだもので、それをなるべく生かしつつ、曲として仕上げました」(山下氏)と楽曲成立の経緯を明かしてくれた。また中間部で聴かれるギターのアドリブは、「コードだけ書いて、ミュージシャン任せですが、それがまたアクセントになりますね」(山下氏)とのことだが、どことなく師匠の羽田健太郎の劇伴を思わせる。「いや、羽田先生の場合は、アドリブひとつ取っても本当に上手く考えられていて、それが実に良い効果を生み出しているんです」と山下氏は謙遜するが、リスナー諸氏はいかが感じるであろうか。劇中では、キュウボイジャーの場面で定番的に使われている他、第7話では、キュウレンオーが巨大トゥーミーと戦う場面で選曲。M22は、挿入歌「キュウレンオー 銀河無敵伝説」と同一メロによるキュウレンオーのテーマ。通常、ロボの劇伴は、重厚なシンフォニックサウンドが多いが、本作ではサックスが入ることで、今までにない躍動感に満ちた楽曲となっている。第1話では両腕の3体合体のキュウレンオーが活躍する場面で選曲されたが、スピード感溢れる映像と合間って初登場のインパクトを見事印象付けたと言っても過言ではないだろう。「サックスはキャラが強い楽器で、そこは好みもあるのでしょうが、入れるからには生かさない手はありません。スーパー戦隊の劇伴も4作目ですし、今までにない発想の音楽を作ることが出来たと思っています」と山下氏。
35.銀河レベル級大勝利!
M3(進め!キュウレンジャー)
M3は主題歌のマーチアレンジ曲で、戦いに勝利を収めたキュウレンジャーの凱旋的なイメージでここに配置した。「マーチも定番のメニューなのでイメージは作りやすかったですね」とは山下氏。「イントロの最後のフレーズに入る前にドラムロールがあり、三つに区切れるので短いシーンでもよく使えます」(宮葉氏)とのことで、劇中ではフルサイズではなく、場面に応じてTDによるバージョン違いが使われている。また、第34話からは提供クレジットの音楽としても使用。
36.究極の救世主
M10(宇宙戦隊出撃)
トラック36は、まだまだ続くこれからの戦い、そしてキュウレンジャーの活躍に期待を込めて、「宇宙戦隊のテーマ」のバリエーションM10をチョイスしてみた。「宇宙戦隊のテーマ」は整理番号的にはM9が頭に来るが、モチーフの基本形はこのM10で、元々の原曲は映画『動物戦隊ジュウオウジャーVSニンニンジャー 未来からのメッセージfromスーパー戦隊』で使われた「転直下!9人の戦士」(M47a)に相当する(※「超宇宙級戦隊」/M47bの終結部でも同一モチーフが使われている)。「TVシリーズ用に新しくスコアを書いていますが、『VS』の打ち合わせの時点から、“テレビ本編でも使えればいいですね“とは話していました」と山下氏。楽曲については、ファンタジーとしての星座ではなく、リアルな宇宙をイメージしつつ、やはりビックバンド感が意識にあったという。「シンフォニックな要素も入っているけど、バリトンサックスを使ってみたり、僕がこれまでに作ってきた音楽とは明らかに違う傾向ですね」と山下氏。またダダダダダンのリズムが印象的で、これを聴けば、すぐにイメージが湧くリスナーも少なくないと思う。「発想としては以前手掛けた『海賊戦隊ゴーカイジャー』と近いものがありますが、やっぱりキーとなるモチーフがあれば、音楽的にもまとまりが出ますね」(山下氏)。また八木プロデューサーは「宇宙の壮大さを音楽で表現する上では、いわゆるスーパー戦隊らしいビートのあるロック感と、宇宙を表現したオーケストラ感、その二つの要素をどう入れるかは試行錯誤がありましたね。要するにゆっくりだと戦闘シーンで使えない、アップテンポだと宇宙の感じが出ない。それを経て出てきた山下節がこの曲でした」と語っている。またヒーローサイドに「B.宇宙戦隊のテーマ」と「A.キュウレンジャーのテーマ」と二つモチーフを与えている音楽設計も目を引く。これは宮葉氏によるプランであるが、その理由を尋ねてみた。「『VS』であのリズムを聴き、等身大の戦闘テーマではないのと思ったのと、スーパー戦隊には“泣き”と“人情”の話は必ずあるので、そうなるとメジャーコードではなく、マイナーコードじゃないと、悲しいアレンジ曲を作れません。それにOPもメジャーですしね。それで別途“キュウレンジャーのテーマ”を設けることにしました」(宮葉氏)。劇中では、TDによるバージョン違いが使われることが多いが、第5話のラスト、ロボ戦終わりから一同が地球の解放を決意して士気を高める場面ではほぼフルで選曲。また編集して提供クレジット音楽としても使われている。
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宇宙戦隊キュウレンジャー ミニアルバム3 Episode of スティンガー
Vシネマ『宇宙戦隊キュウレンジャー Episode of スティンガー』の音楽は、基本、テレビ本編と同様の選曲方式だが、ヒロイン・ミカに絡めた場面のみ、VM-1~6のナンバーで新規に発注されており、「ミカのテーマ」を主軸に据え、山下康介が「フィルムスコアリング」の手法で音楽を書き下ろしている。「この作品は音数や密度は全体的に薄いのですが、画の持つ温度感やセリフの分量、カットのテンポといった要素は、当然リンクしてきます。画を観て書くことができたので間違いのない音楽を仕上げることができました」と山下氏。当初はシナリオからメニュー出しを行い、夏映画の音楽録音に相乗りして、オーケストラでレコーディングするプランもあったが、以下の理由から全てシンセで作られることとなった。「まずはシナリオを読んで、ミカのキャラクターにはシンセの透明感が合うと思ったのがひとつ。それに加えて、坂本浩一監督は30分のホンを70分くらいに膨らませて撮る方なので、ホンの時点では画の想像がつかないんですね。ですから、尺が分からないまま、ヘタに生オケで録るのはリスクが高い。それならば画が出来上がるのを待ち、シンセで合わせてもらったほうが効果が出ると判断しました」(宮葉氏)。
8.Epsode of スティンガー VM-1
1曲目のVM-1は、ミカの初登場シーンの音楽。6曲は全て「ミカのテーマ」のバリエーションになるが、ここではまだ彼女の人物像が分からないため、ミステリアスな雰囲気を帯びている。また、約35秒前後と1分前後に盛り上がる箇所があるが、それぞれ、町に現れたミカの前にタナカたちが立ち塞がる場面、ミカが包帯を解いて異形の右腕を見せる場面に合わせてある。なお、本楽曲は終盤、スティンガー&チャンプの前でミカが怪人体になる場面にも使用。
9.Epsode of スティンガー VM-2
町から逃げてきたミカが、周囲の物に荒々しく八つ当たりする。そんな中、ふと視界に入ってきたカモミールの花……。ピアノソロが奏でる旋律が「ミカのテーマ」で、これがモチーフの基本形といって差し支えないだろう。カモミールの花を見てミカが座り込む場面に合わせて、約31秒辺りで薄くストリングスとコーラスが加わる。「画を観た上で曲を書けたので、イメージは掴みやすかったですね」と山下氏。
10.Epsode of スティンガー VM-3
教会を思わせるモライマーズの一室でのザンダバルドとミカ。サンダバルドはミカの身を案じて優しく接するが、ミカはその本心を知るよしもなかった……。ここでは画に合わせてオルガンが「ミカのテーマ」を奏でる。台本には単に「モライマーズ・内」としか書いてないので、事前発注だったら、こうはならなかっただろう。フィルムスコアリングならではの音楽設計である。
11.Epsode of スティンガー VM-4
瓦礫の下でのミカとスティンガー。閉ざされた空間、ミカは自らの出生の秘密と、それが故に迫害されてきた事実を明かす。両者は想いを通わせたかに思えたが……。VM-2に続き、ピアノが「ミカのテーマ」を奏でる。「生オケの持続音でやるより、ピアノのような隙間がある楽器のほうが、やはりミカの透明感や切なさが出ますね」と宮葉氏。なお、ガレキの下での最初の会話シーン(※スコルピオによる虐殺の回想前)は、同じピアノメインのM57(伝わらない気持ち)が選曲されており、同じ状況下での音楽イメージの統一が図られている。
12.Epsode of スティンガー VM-5
セイザブラスターでガレキの一部を吹き飛ばして、ミカを脱出させるスティンガー。ミカは「甘い男」と、右腕をスティンガーめがけて振るうが……。VM-5はガレキから脱出したミカとスティンガーの別れの音楽。ここではオーボエの音色が「ミカのテーマ」を奏で、さらにコーラスが加わり、聴く者に切なさを訴えかける。「同じメロなのに、VM-2や4では物悲しい雰囲気だったのが、コーラスが入ることで誇張されるのが素晴らしいですね」(宮葉氏)、「ありものの選曲ではこうは行きません。新規に書くことができて良かったと思います」(山下氏)。
13.Epsode of スティンガー VM-6
ミカが町民を虐殺するシーンの音楽で、「何かこう、宿命とかそういうものを感じさせる曲をイメージしました」と山下氏。当初、生オケで録る案が検討されたのは、このシーンがあったから。台本上は「ミカは迷いなく町民に襲い掛かる」と書かれており、字面だけ見ると、単なるアクションシーンに思える。だが、ドラマとしての流れはミカの感情が爆発する瞬間で、「ここにアクション曲を書いてもらうつもりはありませんでした」と宮葉氏。その点も考慮してか、メニュー表には「アクションですが、テンポは速くなく」との指定も見られる。ストリングスとハープによる曲の導入部は、町の人に捕らわれたミカのカットに合わせてあり、約25秒からコーラス入り、縄を引きちぎったミカが殺戮に手を染める場面となる。
以下、劇中で使用された楽曲リストを作成してみた。各自で編集する際の一助になればと思う。なお、VM-1~6の詳細については、「サウンドブラスター4&5」のブックレット掲載のメニュー表を参照してほしい。
・惑星スリーピーで激突するキュウレンオーとモライマーズロボ/M22(爆進!キュウレンオー)
・チャンプが暴走モードになり、オウシボイジャーが離脱/M64(出現)
・ラッキー「俺たちはあいつに集中だ」のセリフから~モライマーズロボ撃退まで/M1(Fight !キュウレンジャー)
・サンダバルド出現。その攻撃でチャンプとスティンガーは崖下に転落/M110b(銀河の危機)
・河原、カモミールの花を見て「この花はミカの……」とチャンプ。半年前の回想シーン/M42(銀河の伝説)
・地球を探索するスティンガーとチャンプ/M4(明るく)
・右手を包帯で抑えた女性(ミカ)が町へやってくる/VM1
・化け物呼ばわりされたミカ、怒りに任せて町人を襲う/M30(ジャークマター総攻撃!)
・スティンガー&チャンプVSミカ/M35(激突)
・町から逃げて来たミカ/VM2
・モライマーズの一室、サンダバルドとミカ/VM3
・ミカを蔑む町の人たちの発言に疑念を抱くスティンガー、ミカともう一度話し合おうと決意/M58(いらだち)
・「スコルピオを狙うには足手まといだ」とチャンプ。激高してチャンプの胸倉を掴むスティンガー/M12(危機!)
・ケンカする二人。そこへ激しい銃撃と共にインダベーが乱入/M36(事件発生)
・二手に分かれて戦うスティンガーとチャンプ~スティンガーはミカと渡り合う/M31(宇宙怪人・襲撃)
・外部からの攻撃で天井が崩落、瓦礫の山がスティンガーとミカを襲う/M63(突然の襲撃)
・瓦礫の中、スティンガーとミカ/M57(伝わらない気持ち)
・回想、仲間を殺戮するスコルピオ/M26(ジャークマターのテーマ)
・回想、「俺は力を求める、ただそれだけだ」と言い捨てるスコルピオ、スティンガーを叩きのめし、インダベーと共に村人を次々と惨殺していく/M40(最大のピンチ) ※M26と繋げて選曲
・瓦礫の中、スティンガーとミカ/VM4
・森の中を歩くチャンプ。そこへザンダバルドが現れる/M43(謎の惑星)
・激突するチャンプとザンダバルド/M113(緊急事態) ※M43と繋げて選曲
・瓦礫の中、スティンガーがセイザブラスターでミカの周囲の瓦礫を破壊する/M68(ショックA)
・瓦礫の中、「いいから行け!」とスティンガー~町に辿り着いたミカがカモミールの花に目をやる/VM5
・町の人に捕らわれるミカ/M64(出現)
・町の人たちを殺戮するミカ/VM6
・モライマーズを目指して歩くスティンガーとチャンプ、そこへ負傷した町人Aが現れる/M69(ショックB)
・死屍累々の山に唖然とする二人/M20b(悲しみ)
・死体を片付けるスティンガーとチャンプ~歌うスティンガーのイメージ/「サソリ座の歌」(acoustic ver.)
・ミカと対面するスティンガーとチャンプ、ミカは怪人体に変身する/VM1
・ミカがサソリオレンジ&オウシブラックに攻撃を仕掛ける/M65(衝撃) ※冒頭部分のみ
・サソリオレンジ&オウシブラックVSミカ怪人体/M62(信じて進め!) ※M65と繋げて選曲
・変身解除したミカ、激痛にあえぎ「このまま殺して」と哀願する/M61(仇)
・スティンガーの腕の中で息絶えるミカ~ミカの墓前、イッカクジュウキュータマを握りしめ、決意を固めるスティンガー/「一輪の影」
・回想から戻り、河原のチャンプとスティンガー。チャンプが再び暴走モードに/M37(タイムリミット!)
・ザンダバルドが出現/M27(暗黒の将軍)
・ラッキーたち4人が駆けつける/M16(9人の戦士)
・スターチェンジした5人の名乗り/M21(変身~名乗り)
・ラス立ち/「LUCKYSTAR」
・サソリオンジVSザンダバルド/M35(激突)
・イッカクジュウアーム装備したサソリオレンジ、必殺技「ユニコーンアンタレス」でサンダバルドを倒すまで/M17(苦戦)
・惑星スリーピー全景、チャンプ救出を決意して歩くスティンガー~エンドロール/「見えない絆」
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宇宙戦隊キュウレンジャー オリジナルサウンドトラック サウンドスター3 ゲースインダベーの逆襲
2.「LUCKY STAR」(TVサイズ2)
TVサイズ主題歌は、「サウンドスター1」にも収録されているが、本トラックは、頭にスネアのアタックが付いた別バージョンとなる。元々はこちらがTVサイズとして用意されたが、アバンタイトル曲(EX4short)からの乗り換えに邪魔となるため、別途、アタックのないバージョンが作られ、それが「TVサイズ1」となった。なお劇中で選曲される際は、TVサイズ2がほとんどで、このアルバムに収録されている『宇宙戦隊キュウレンジャー THE MOVIE ゲース・インダベーの逆襲』でも使われている。
4.龍の道
(1)M24(リュウコマンダー) (2)M23(新巨大ロボ)
トラック3は、華麗な棒術と射撃技を得意とする戦士・リュウコマンダーと、リュウボイジャーに3体のキュウボイジャーが合体したロボ・リュウテイオーのテーマ音楽集。M24は、M25(ショウ・ロンポー)と同一モチーフのバリエーションだが、こちらは司令官らしくスネアのリズムが入るなど、ヒロイックなイメ―ジが打ち立てられている。「結果的にはキャラと音楽がマッチしていたと思うけど、放送前に書いていたので、そこは毎回苦労するところですね」とは山下氏。楽曲はどことなく『ニンニンジャー』を思わせるテイストが感じられるが、それもまた山下氏の個性とは言えないだろうか。劇中では、ショウ司令の初登場シーンにコーダのスネア部分を短く使った第3話が初選曲。他に第8話ラストのリュウバイオレットの変身&アクションシーンや、第9話でリュウキュータマを手にしたショウ司令が、「今ならやれる!」と決意を固める変身前の場面での選曲例がある。また同じ第9話ではリュウボイジャーの初登場場面でも使われている。M23は「リュウテイオーのテーマ」で、シンセメインのスタイリッシュかつスピード感溢れる楽曲。初選曲はリュウテイオーの初登場回、第11話でデスワームと戦う場面。また、「等身大アクションにもけっこう使っています」(宮葉氏)とのことで、第19話ではタイヨウシシレッドがスコルピオからリュウコツキュータマを奪取する場面での選曲例がある。厳密にはテーマに沿った選曲ではないが、実際オンエアを見て違和感を覚えた人はほぼいないだろう。このように限られた楽曲を適宜、画に当てはめて行くこともまた選曲の重要な役割である。
6.怪盗BN団 参上
(1)M59(仲間割れ) (2)M123(ミッション開始) (3)M112(チェイス!)
潜入、盗み、逃走……ナーガ&バランスの怪盗BN団の暗躍をイメージした音楽集。M59はメニュー上のタイトルは「仲間割れ」とあるが、「シチュエーションを音楽で表現するのは難しい」と山下氏。一方、宮葉氏によれば、あくまでイメージに過ぎず、「元からこのタイトル通りに使うつもりはなく、この言葉で作家さんがどういう答えを返してくれるのか。上がった楽曲に応じて使える場面を考えます」と宮葉氏。劇中では、第1話の惑星ジャグジャグでラッキーとガルが言い争う場面が初選曲で、初期は第6話のハミィとガルが言い争う場面など、実際に「仲間割れ」の場面で使われていたが、その後の選曲は、オリオン号での作戦会議、もしくは状況説明シーンが増え、第8話、第11話、第16話、第22話、第26話、第44話などがある。M123は第2回録音分からの1曲で、リズム中心のコミカルな味付けを持つサスペンス曲。「元から生は想定していないので、打ち込みを意識して作った曲ですね」とは山下氏。劇中ではツルギに関連付けて使われることが多く、初選曲となる第21話で敵を一掃したツルギが「また会おう」と去って行く場面をはじめ、第23話のツルギが得意げに「輝かしい伝説」を語る場面、第23話のジャークマター放送局を乗っ取ったツルギが全宇宙にメッセージを送る場面、第40話ではツルギが野球のルールを説明する場面などの選曲例がある。M112は同じく第2回録音分からの楽曲だが、こちらはサスペンスではなく、アクション曲として発注されたこともあり、早いテンポが特徴。「これはホントに慌てている場面でもコミカルな場面でも使えますね」とは宮葉氏。劇中では、第27話でオリオン号に潜入したインダベーをショウ司令がチャンプと挟み撃ちしようとする場面での選曲例がある。
8.伝説の不死鳥
(1)M101(ホウオウソルジャー登場) (2)M103(ギガントホウオウ)
トラック8は、伝説の救世主・鳳ツルギが変身するホウオウソルジャーのテーマ集。楽曲は、2曲とも石原慎一が歌う挿入歌「伝説のホウオウソルジャー」と共通のメロに基づく。M101は劇伴のテーマだが、「キュウレンジャーのテーマ」(M15)に相当するものではなく、むしろ「9人の戦士」(M15)に近い立ち位置で、宮葉氏によれば「このテンポのものしか発注してないのは、アクションシーンには挿入歌もしくはそのインストを使う予定だったからです。また主題歌はメジャーですが、当初はキュウレンジャーと対立している設定もあったので、マイナーで発注しました」とのこと。作曲は挿入歌が先行しており、「歌メロの場合、独特の節回しがあり、たとえばサビ(歌詞の「伝説が」の箇所)を同じ音で連打するようなのは歌メロならではですし、そういう意味では劇伴にする上では全くアプローチが異なる曲になったと思います」と山下氏。M103は、ギガントホウオウのテーマで、巨大ロボならではの重量感溢れる楽曲となっている。「戦う場面を想定して重い曲調を心がけました」とは山下氏。約45秒(トラック内で約2分25秒)前後から「ホウソウソルジャーのテーマ」が奏でられ、ロボとヒーローを関連付けてある。劇中では、第21話で地上から打ち上げられたホウオウボイジャーが、ホウオウステーションと合体してギガントホウオウになる場面で初選曲。またロボ戦に限らず、等身大アクションで使われることもあり、第46話ではシシレッド&ホウオウソルジャーがドン・ツルギと戦う場面で選曲。重厚な楽曲がドラマを大いに盛り上げ、その効果を発揮した。
10.涙は青空の果てに
(1)M56(星空を見上げて) (2)M57(伝わらない気持ち)
第1回録音分から、美しく、寂しげな音楽を2曲。M56はゆったりとしたメロディが心安らぐ心情曲。発注時は1分の指定であったが、演奏時間は約2分とほぼ倍の楽曲に仕上がっている。「どうしても規定の尺に収まらない場合がありますが、それは曲の構成が不自然にならないようにした結果ですね」(山下氏)と拘りをうかがわせる。劇中では、第4話でラプター283が自分の妄想癖を辞められないことに対して「私、壊れているんです」とラッキーに言う場面が初選曲。また、第45話でラッキーに促され、みんなが平和を取り戻した後の夢を語る場面での選曲も印象深い。M57はピアノが奏でるリリカルなメロディをメインに、ストリングスと木管が加わることで感情を掘り下げていく。「あまり難しいことは考えず、気分が赴くままに書いていますね。ルバート(※テンポに縛られず、自由に演奏すること)も弾きっぱなし。意外と、そういうのが大事なんですよね」(山下氏)。「M56と同じようなシチュエーションで使える曲ですが、短く切れるので、こちらのほうがよく使っています」とは宮葉氏。劇中では第2話でラッキーが「自分でやりたいことは地面で決める。それを支え合うのが仲間ってもんだ」とナーガに話す場面が初出。他に第43話では、父・アスランを失い、落ち込むラッキーをハミィやショウが励ます名シーンもこの曲が彩った。
12.蛇使い、堕ちる
(1)M115(邪悪の副将軍) (2)M116(副将軍アクション)
闇落ちしたナーガ。ダークキュータマによりチェンジした悪の戦士・ダークナーガがキュウレンジャーにその牙を剥く。トラック12は、第26話のダークナーガの登場とアクションをイメージした2曲で構成してみた。いずれも第2回録音からジャークマターの最高幹部フクショーグンのための楽曲で、「ジャークマターのテーマ」とは異なる悪のテーマとなる。まずはその基本形となるM115について山下氏は、「こういう楽曲はメロディも大事ですが、ハーモニーですね。単純にメジャー・マイナーと括られるけど、それだけじゃない、“何かコイツ悪いな”と感じさせるものを表現しないといけません」と語る。M116はそのアップテンポバージョンで、今泉洋氏のギタープレイも冴える。作曲に関しては、M115を先に書いて、M116にアレンジしたという。2曲とも、本来のフクショーグンの場面では、第23話のテッチュウ初登場シーンと、続くホウオウソルジャーと戦う場面で選曲、これが初出となる。
14.最高で最強!!
(1)M118(大宇宙の奇跡) (2)M106(新アクションテーマ)
本アルバム中、TVシリーズの最後を飾るトラック14は、第2回録音分から、シシレッドオリオン初変身の神秘的な曲と、その華麗なる戦いをイメージした2曲。M118は、オーケストラにコーラスも加わった壮大な音楽で、第2回録音はファンタジー系が多く、本楽曲もその流れに属する。第30話で、ラッキーがオライオンからサイコーキュータマを託される場面で使われた。なお、初出は第21話で絶体絶命の危機に陥ったスティンガーたちの前に、チャンプが現れる場面となる。M106はシシレッドオリオンをイメージして発注した1曲だが、M15やM10など他のテーマとは関連付けられていない。「やっぱりカッコイイ曲にしたいですから、雰囲気に流されず、回りくどくなく覚えやすいフレーズを意識しました。あとは四つ打ちの感じですか。サウンド的には生もふんだんに入っていますが、シーケンサーのPADで味付けしたり、厚さよりもスピード感を重視しました」(山下氏)。初出はやはり第30話でシシレッドオリオンがククルーガを倒し、途中でロボ戦を挟み、ドン・アルマゲと戦う場面にかけて選曲。またテーマに縛られない選曲例としては、第35話で、ヘビツカイメタルがアキャンパーと戦う場面がある。
17.ゲースインダベーの逆襲・メインタイトル
(1)映画M1
トラック17からは『宇宙戦隊キュウレンジャー THE MOVIE ゲース・インダベーの逆襲』の音楽を全曲収録。まず映画M1は東映マークからメインタイトルまでの曲。冒頭、ゲース・スター付近での宇宙戦場面での危機感を煽るリズムは、この手の作品では定番。山下氏によれば「コントラバスとか本当なら倍くらい欲しいですね。これはもう純粋に人数の問題。シンセで補強する手もあるけど、録った音はそのまま生かしたんですよ」と拘りを見せる。約1分15秒辺りの低弦とコーラスのユニゾンで奏でるモチーフが、ゲース・インダベー登場に合わせた「悪のテーマ」で、トゥッティ(全合奏)で幕を閉じる。劇中、様々な形で出てくるこの「悪のテーマ」であるが、「モチーフが散漫になるので、ゲース・インダベーとケルベロスのテーマを一緒にしました」とは宮葉氏。続いて、山下氏にうかがってみた。「映画の場合、画を見ながら、まずは即興っぽくスケッチを当ててみるのですが、要はカットの尺があるのでそこに上手く収まるモチーフがいいでしょう。そうなると長いメロディは合いません。そこで浮かんだのが“ダカダカダーン♪”のモチーフです。これを繰り返すことで楽曲を展開させていくことにしました」。
19.竜の遺志
(1)映画M2 (2)映画M3 (3)映画M4
ショウ司令の死の知らせを聞き、悲しみに暮れるキュウレンジャーたち。だが、戦いを前に決意を新たに出動する。映画M2は沈痛のキュウレンジャーたちの音楽で、ピアノとストリングスが悲しみを引き立てる。映画M3は、ラプターが傍受していたというショウ司令とゲース・インダベーの会話シーンの音楽。ゲース・インダベーの「破壊神ケルベロスを手に入れるのだ」のセリフと共に「悪のテーマ」がホルンで奏でられる。「“思いきり怖い音楽を付けてください”と書いてもらいました」(宮葉氏)。映画M4は、ラッキーの「そのケルベリオスの力を使えばゲース・スターを壊せるんじゃないか?」のセリフを受けてのサスペンス曲だが、終結部は「宇宙戦隊のテーマ」が高らかに奏でられ、メットオフのラッキーたち8人が歩く場面となる。「選曲だとどちらかに重点を置かないといけないけど、1曲の中で悲しみからヤル気に乗り換えられるのが、フィルムスコアリングの良いところですね」と宮葉氏。
21.3つの惑星
(1)映画M5 (2)映画M6 (3)映画M7
トラック21に並べた3曲は、3つの惑星に降りたメンバーが、それぞれ敵に遭遇した際の音楽。映画M5は惑星ハスキーで、ラッキーがバイク形態となったガルを操り、カール・インダベーとバイクチェイスを繰り広げる場面のアクション曲。メニューではテレビ用M31が指定されているが、山下氏の判断で全くの別曲を当てている。「限られたスケジュールで負担をかけないように、“テレビのこの曲のアレンジ”と指定しても、山下さんはわざわざ画に合わせて違う曲を書いてきてくれるんですよ」(宮葉氏)。映画M6は、惑星ブルでのカール・インダベー戦の音楽で、ヘビメタ風のパワフルな曲調がカール・インダベーVSオウシブラックのプロレスバトルを盛り上げる。映画M7はスパーダ、ナーガ、バランスがゲース・インダベーに遭遇する場面の音楽で、エレキギターで「悪のテーマ」が変奏される。楽曲は惑星ブルでレフリーの加勢で苦戦するチャンプの場面まで続く。
23.奪え!ケルベロスストーン
(1)映画M8 (2)映画M9
前トラックに続く3つの惑星で戦うメンバー、それぞれの決着編。カニキュータマでハミィとスティンガーがリングに乱入する場面に付けられた映画M8は、テレビ用M15「キュウレンジャーのテーマ」のリアレンジで、耳馴染んだモチーフが随所に現れる心地良さは、TVシリーズの劇場版ならでは。但し、スコア自体は尺に合わせて新たに書き起こされており、編成も若干異なる。特に顕著なのがサックスで、テレビ用は2本だが、劇場版は1本で、ソロならではのニュアンスも聴きどころとなっている。映画M9は惑星ブルを中心に三つの惑星を繋ぐ音楽。冒頭のブリッジは、敗れたオーモ・インダベーがケルベロスストーンを奪って逃げる場面、続いてエレキベースとシンセコーラスが刻むリズムから惑星ハスキーで続くバイクチェイスになるが、編成はオーケストラメインで激しい戦いの様相が表現されている。約1分11秒(トラック内で約1分45秒)から惑星ドーベルの場面となり、変身解除したスパーダたちの前でゲース・インダベーがメットに手をかけ、その正体に驚くスパーダたちのカットを、音楽が大きく盛り上げる。
25.最悪なる野望
(1)映画M10 (2)映画M11
惑星ドーベルでゲース・インダベーがスパーダ達を打ちのめして、ケルベロスストーンを奪い去る曲と、ゲース・スターが地球に近づく描写音楽。映画M10は、メットオフしたゲース・インダベーが過去を語る場面に付けられており、回想で、捕まったホイ・コウローが連れ去られる際に「私は間違ってない!」と感情が高まるところから「悪のテーマ」が流れる。また約1分5秒辺りから、ケルベロスストーンを拾い上げる場面に合わせて再び曲調が変化し、これから起こるであろう危機感を煽る。映画M11は、地球に接近するゲース・スターを表した音楽だが、曲の終結部(約16秒/トラック内で約1分28秒)はオリオン号でのラプターの「後1時間を切りました」のセリフを受け、スパーダが「ゲース・スターを破壊する時間が残されているか」と心配する場面に合わせてある。こうした細かい音楽設計はフィルム・スコアリングならではと言えよう。
27.宇宙最大の作戦。
(1)映画M12 (2)映画M13&14
オリオン号での作戦会議から出撃、戦い、敗北までの音楽。映画M12は、テレビ用M15「キュウレンジャーのテーマ」と、M10「宇宙戦隊のテーマ」を繋げた美味しい1曲。「M15のこういうバリエーションはテレビにはなかったので新鮮ですね」とは宮葉氏。「第1回録音が終わり、これくらいのタイミングになると、前に書いた曲を客観的に見られるようになりますね。ですから、気持ち的にも余裕を持つことができたし、より良いアレンジを心がけました」(山下氏)。二つのモチーフはそれぞれ新規にスコアが起こされており、M15はホルンで奏でる勇壮なメロディに続き、約20秒辺り、ナーガの「司令の想いは俺たちが繋ぐ」のセリフと空席となった司令の椅子のカットで、メロディがストリングスに受け継がれ、死んだショウ司令への感情を掘り下げている。そして約48秒辺りから、お馴染みのM10のリズムが聴こえてくるが、ここは荒野を悠然と歩いてくるキュウレンジャ―に合わせてある。「こうして合わせてみると、リズムメインの曲で正解だったと改めて思いますね」とは宮葉氏。映画M13+M14はゲース、カール&オーモ・インダベーとの戦いから変身解除するまでの音楽。発注時は個別のMナンバーが与えられていたが、1曲としてレコーディングされた。楽曲は「テレビ用M34とM40を繋いだような曲ですね」(宮葉氏)とのことで、前半はM34を踏襲して新たなスコアが起こされているが、後半の変身解除後は「悪のテーマ」のバリエーションとなり、ケルベロスストーンを拾う場面(約1分32秒/トラック内で約2分49秒)でティンパニの打撃が一音入り、ここから「宇宙戦隊のテーマ」が変奏されて最大のピンチへ。
29.激バトル!新たな希望を賭けて
(1)映画M15 (2)映画M16 (3)映画M17
ショウ司令の復活から全員での変身、等身大バトルと勝利フラグへ向けての3曲。映画M15はショウ司令が助けに駆けつける場面の音楽で、音楽設計としてはだいたい以下の通りとなる。テレビ用M24のモチーフを使い、冒頭は劇的かつヒロイックなアレンジで聴かせ、約33秒辺りからファンファーレとなり感動の再会、約1分06秒辺りから「なぁ、ホイピョン」のセリフを受け、スネアのリズムが入り、戦いへ向けての強い意思へと向かって行く。「柴崎貴行監督の狙いとしては、このショウ司令の生き返りが一番の盛り上げたい箇所で、当初、ラッシュには主題歌が付いていました。ただ、セリフのある箇所に歌を入れると逆に盛り上がらないので、監督と相談した結果、劇伴にすることに決まりました」(宮葉氏)。映画M16は、テレビ用M21を尺に合わせて新たな曲に仕上げている。「オリジナルよりテンポをあげています」(山下氏)。また、宮葉氏によれば「ここ(約17秒/トラック内で約2分8秒)がオリジナルではギターのみですが、今回はリズムセクションを足してもらいました」とのことで、劇場版らしく、より華やかなイメージとなっている。映画M17は、テレビ用M17をベースに映画用に新しく作り直したヒーロー優勢のアクション曲。「尺もほぼそのままですが、映画用はギターがワウのカッティングになっています」(宮葉氏)。また曲の終結部、約1分10秒(トラック内で約4分20秒)からはシシレッドの「このまま決めるぞ!」のセリフを受けて、「宇宙戦隊のテーマ」が変奏される。
31.破壊神 降臨
(1)映画M18 (2)映画M19
トラック31は、ケルベロスの登場から、ラッキーがケルベロスボイジャーに乗り込んでキュータマを差し込むまでの2曲。映画M18は「悪のテーマ」の禍々しいファンファーレと共にケルベロスが登場。約1分18秒辺りで、危機感を煽る曲調から情感を帯びた曲調にガラッと変わるが、ここはショウ司令の「行けー!」のセリフを受けて一同がキューボイジャーに乗り込む場面に付けられており、司令とキュウレンジャーの絆の深さを音楽面からも表している。終結部はピンチのキュウボイジャーに合わせて「宇宙戦隊のテーマ」が奏でられる。映画M19はシシボイジャーのコクピット(シシキュータマ)をケルベロスに取り付ける場面の音楽で危機感を煽り、他のボイジャーがケルベロスを挟み込む場面では「悪のテーマ」が奏でられる(約34秒/トラック内で約2分16秒)。
32.超銀河級王者ケルベリオス!
(1)画M20 (2)映画M22 (3)映画M23
ケルベリオスへの合体からゲース・スター破壊、ラストシーンの大団円までの音楽集。ケルベリオスの活躍を描いた映画M20は、演奏時間が3分以上あり、サントラとしても聴き応えのある1曲。「ケルベリオスの戦いは、ピンチになったり、逆転したりと状況が変わるので、その都度、曲を切るより、1曲を通じて山下さんに細かく合わせてもらいました」(宮葉氏)。トラック21で述べたようにケルベロスとゲース・インダベーは共通のモチーフとなっているため、キュウレンジャー側になっても「悪のテーマ」自体は変わらないが、楽曲を通じて様々な形に変奏されるので耳を傾けて欲しい。また約55秒~1分10秒の間に「ホウオウソルジャーのテーマ」が流れるが、これはギガントホウオウの登場に合わせてある。続いてMナンバー順だと映画M21がここに位置するが、ブックレットに掲載したメニュー表にある通り、主題歌「LUCKYSTAR」に振られたナンバーであり、未収録ではないのであしからず。なお、主題歌の扱いについては、トラック29の解説で触れた通り、変更されたわけだが、「柴崎監督としては、ラス立ちに主題歌を流すといつもと同じパターンになるから変えたいという意図もあったので、“だったら、ロボ戦にしましょう”と映画M21に決まりました」とは宮葉氏。映画M22は、クライマックスを彩る「ケルベリオス ファイナルブレイク」でゲース・スターを破壊する場面の音楽で、やはり「悪のテーマ」のバリエーションとなっている。映画M23は、ゲース・スターが消滅し、平和を取り戻した地球~本編のフィナーレを飾る1曲。TV用M9(宇宙戦隊のテーマ)をベースに尺に合わせて新たにスコア化。耳馴染んだモチーフはテレビ本編と共通しており、(映画の公開時期に)番組自体が放送中であることを考えると、絶妙なサジ加減の幕引きとなっている。
34.「キュータマ音頭!」(Movie Edition)
「サウンドスター3」を締め括るのは劇場版のエンディングソング。ここに収録したのは映画バージョンで、フルサイズは「宇宙戦隊キュウレンジャー 夏期エンディング主題歌」(COZC-1363-4)、もしくは「宇宙戦隊キュウレンジャー オールスター全曲集」(COCX-40258-9)で聴くことができる。
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宇宙戦隊キュウレンジャー サウンドスター4&5 究極音楽集
DISC-1(サウンドスター4)
1.SUPER HERO TIME 2017
(1)EX1(スーパーヒーロータイム)
トラック1は「スーパーヒーロータイム」のテーマミュージック。数年置きに新曲が用意され、その年のスーパー戦隊シリーズの劇伴作曲家が担当している。歴代は『特捜戦隊デカレンジャー』時の亀山耕一郎氏が手掛けた初代(2004年 ※枠として最初の03年は流用曲)を皮切りに、『魔法戦隊マジレンジャー』の山下氏の二代目(05~07年)、『炎神戦隊ゴーオンンジャー』及び『特命戦隊ゴーバスターズ』の大橋恵による三代目(08~11年)&四代目(12~16年)に続き、今回が五代目となる。前述したように山下氏は2回目の担当となり、「本編の音楽とは括りが違うので書きやすい部分もありますが、CM音楽的なキャッチーさが求められます。ですから、劇伴を書く頭から切り替えて全くの別アプローチで作曲しました」と語る。
2.「LUCKY STAR」(インストゥルメンタル)
幡野智宏が歌うOP主題歌のシンセメロのインストゥルメンタルをフルコーラスで収録。作曲はKoTa、編曲はKoTa&高橋哲也で、スーパー戦隊では珍しいJ-POP調の楽曲も話題となった。なお、収録はコーラス入りとなる。劇中では歌入りと編集して使用されており、初出は第4話で、ワシピンクメインのアクションで歌入りを流し、ボウエンキョウキュータマでユメパックンが食べた子どもたちの夢を解放する場面からインストに差し替えて選曲。他に第27話ではショウ司令、ツルギ、チャンプ、スティンガー、スパーダの5名が素面名乗りをする場面でインストを流し、戦う場面から歌入りに差し替えて選曲。ここは歌入りの使い方も巧妙で、キメキメで名乗ったはいいが、ギックリ腰になったショウ司令を受けて、2番の「ハリキリ過ぎ注意!」の歌詞が流れ、ちょっとしたギャグになっている。他に第31話の選曲例もある。
3.果てなき世界
(1)M41(無限に広がる大宇宙) (2)M43(謎の惑星) (3)M49(妖術) (4)M48(謎の戦士)
大宇宙に煌めく88の星座。そこには数々の神秘が秘められている。トラック3は、第1回録音の「H.サスペンス」のブロックから、作品に登場する様々な惑星をイメージした音楽集。M41はCDの解説でも触れた通り、作品が持つ「宇宙観」を伝えるために事前にデモが用意された1曲。シンセメインの楽曲だが、壮大なスケールを感じてもらえるのではないだろうか。「シンセコーラスの箇所にナレーションを入れたらカッコいいんじゃないかなとイメージしてみました」と山下氏。「発注した時点では“宇宙戦隊”と言いつつ、過去作品では『巨獣特捜ジャスピオン』みたいな例もあったので(笑)、果たしてどれくらい宇宙が登場するかは予想が付きませんでした。まぁ、シンセで汎用性のある雰囲気ものとして発注した1曲ですね」(宮葉氏)。使用頻度は高く、第1話のファーストカット、地球で子どもたちが公園で遊ぶ場面で短く使われたのが初選曲で、第2話の惑星ジガマ、第4話でオリオン号が惑星チキューの前にワープアウトする場面、第19話でエリスがリュウコツキュータマにまつわる伝説を語る場面、第36話冒頭、ラッキーが惑星カイエンでの幼少時代の夢を見る場面などの選曲例がある。また第16話でのスティンガーとチャンプの場面、第20話ではキュウレンジャーを排斥しようとする地球人の荒んだ心に小太郎が落ち込む場面など、心情を掘り下げる場面で使われることもある。M43は音色からミステリアスな雰囲気を帯びた1曲。「最近はソフトシンセで音色をいくらでもピックアップできるからセンスの問題になっていきますね。作曲そのものはそれほど難しいわけではなく、6~10くらい音色を重ねたかな。ただ、それだけは面白くないのでアタックを入れてメリハリを付けています」とは山下氏。劇中では第18話のラスト、スティンガーが動き出す場面が初選曲。他に第21話のアルゴ船のコールドスリープカプセルの場面、第42話の惑星サザンクロスの場面などの選曲例がある。M49は、オーケストラメインで、アクセントのシンセが不思議な雰囲気を醸し出す。「メニュー上のタイトルは“妖術”とありますが、色々な惑星の住民をイメージして発注しました」とは宮葉氏。第15話の惑星ベラで救世主のフリをしたゴネーシに村の人々が捧げ物をする場面が初出。他に第39話では、ペルセウス座系を訪れたラッキーたちの前に悪の人格のアントン博士が登場する場面での選曲例がある。M48は、エレキギターにパーカッションとシンセを加えて表現された1曲で、「リバーブの感じが昭和っぽいですね」とは宮葉氏。山下氏は「生楽器はギター1本だけで成立する曲を目指しました。全体の曲数が多いので、そういった省エネ的な判断も必要です」と語る。元々はスティンガーのイメージで発注された1曲だったが、「本人のイメ―ジと違っていたので」(宮葉氏)との理由で使用は見送られ、第21話でコールドスリープから目覚めたばかりの鳳ツルギがキュウレンジャーに襲い掛かる場面で選曲。この時点ではまだ正体不明の存在だったため、ミステリアスな楽曲が見事マッチしていた。他に第26話でアキャンパーがヘビルカイスルバーに「感情を解放してみない?」と甘言を弄して近付く場面での選曲例がある。
4.惑星救助司令
(1)M70(ショックC) (2)M59b(仲間割れ・リズム抜き) (3)M50(一瞬を狙え) (4)M51(行動開始)
トラック4は、オリオン号(もしくはオリオンバトルシップ)での作戦会議でよく使われていた音楽集。M70はシンセメインによる雰囲気もの。尺も短く、さほど印象に残る楽曲ではないが、こうした曲もまた重要な1曲である。劇中では、第5話のオリオン号で、ラッキーが「俺はスティンガーを信じる」と言う場面が初出。続く第6話ではオリオン号で、ラプターが「今回の開放地区はこちらです」と地区を統治するダイカーンについて説明する場面などの選曲例がある。また第8話では小太郎がスティンガーにキュウレンジャー入りを志願する場面、第10話では、小太郎にビッグベア総司令が憑依する場面と、小太郎絡みで使われたこともある。M59bは「サウンドスター3」のトラック6に収録したM59のバージョン違い。劇中では第16話でショウ司令がラッキーたちに帰還を急ぐよう命じる場面、第18話でラッキーとナーガが十文字撃と話す場面などの選曲例がある。M50もいわゆる雰囲気ものの1曲で、第5話のスティンガーが、捕らわれた佐久間兄弟に食べ物を差し出す場面が初出。以後、第9、17、19、21話など多数のエピソードで選曲。また、「メニューに書いたような緊張感あるシーンではなく、ショウ司令が作戦を説明する場面で使うこともあります」(宮葉氏)とのことで、第42話ではショウ司令が惑星サザンクロス爆破の作戦を説明する場面での選曲例がある。M50から連番となるM51は、リズムが入ることでM50と比べると動的な楽曲なっている。初出は第2話で怪盗BN団と出会ったラッキーがバランスから仲間入りを誘われ、それを聞いたバランスが「仲間とはなんだ」と尋ねる場面。また曲調の変化を生かした選曲も行われており、「最初からだとシリアスな場面で、途中からだとコミカルな場面でも使えます」(宮葉氏)という利便性の高い1曲で、第6話でカメレオングリーンとオオカミブルーいがみ合う場面では楽曲の後半部分を当てている。他に第5話ではラプターがチキュウについて説明する場面で前半部分、ラッキーの「さっさと全部ぶっ壊すとするか」のセリフからショウ司令がキューレットで出撃メンバーを決める旨を話す場面で後半部分を当てるといった選曲例がある。
5.画竜点睛
(1)M25(ショウ・ロンポー) (2)M24b(リュウコマンダー・イントロ抜き、前半のみ)
表向きは、いい加減な性格でしばしばキュウレンジャーを困惑させるショウ・ロンポー。とても司令官ポジションとは思えないが、一方で冷静沈着に物事を見据え、彼らの人望は厚い。トラック5はそんなショウ司令をイメージした音楽集。M25は「ショウ・ロンポーのテーマ」で、弦のピチカート、テナーサックスやヴィブラフォンがユーモラスなショウ司令のキャラを表現している。「昔のコントにありそうな音楽をイメージしました」(山下氏)。楽曲自体は、ヒロイックなM24のアレンジ曲で、「順番で言えば、ショウ司令が変身してリュウコマンダーですが、楽曲としてはコマンダーのテーマを崩してショウ司令にしたほうがハマるかと思って、こうした発注にしました」とは宮葉氏。劇中では、第3話でショウ・ロンポーが自己紹介する場面で初選曲。以後、第3、4、6、10話など司令のコミカルな場面を彩った。また第17話では穴につかえて動けなくなったリュウボイジャーの場面でも使われている。M24bは、「リュウコマンダーのテーマ」M25のTDによるバージョン違いで、イントロ部分を抜粋したもの。劇中での選曲例としては、第9話では、ショウ司令が「今ならやれる」と変身を決意する場面や、第44話の冒頭、ショウ司令のナレーションによる前話振り返りの場面がある。なお、オリジナルのM25は、「サウンドスター3」のトラック4に収録。
6.「リュウコマンダー龍の道」(インストゥルメンタル)
前トラックのM25bを受けて、リュウ・コマンダーの活躍をイメージして、挿入歌「リュウコマンダー龍の道」のインストをフルコーラス収録。声優の神谷浩史が役名義で歌っているボーカルパートはエレキギターによる。作曲は『手裏剣戦隊ニンニンジャー』の主題歌歌手・大西洋平、編曲は梅村建太が手掛けている。
7.邪悪なMatter
(1)M65(衝撃) (2)M69(ショックB) (3)M44(疑惑) (4)M45(予感) (5)M28(悪だくみ)
ジャークマターが支配下に置くとある惑星。彼らはこの地で何を企んでいるのか? トラック7は、暗躍するジャークマターをイメージしたサスペンス音楽集。M65とM69は「J.ショック・ブリッジ」からの2曲。M65は曲タイトルによるように「衝撃」をシンセで表した楽曲。第2話のラスト、ペンダントを手にしたスティンガーのカットで使われたのが初出で、第10話でナーガが倒れている場面、第47話でサイコキュータマが破壊される場面、第30話で現代に戻ったラッキーたちが、ドン・アルマゲのいない世界になったことを喜ぶのも、壁面のモニターにアルマゲが映し出される場面などの選曲例がある。また第3話でスティンガーとチャンプが対峙する場面や、第45話では、「私の役目はシシレッド、お前の抹殺のみ」と叫ぶドン・アスラン対して、シシレッドが「やられるわけにはいかない!」と返す場面など、対立の緊張感を描く場面での選曲例もある。続くM69は、「巨大化シーンでよく使っています」(宮葉氏)とのことで、第12話でのイカーゲン、第17話でのシャンドス、第33話のマゲラー、第35話のドン・アルマゲ、第37話のククルーガ、第45話でのアントンゼロでの使用例がある。かつてのスーパー戦隊シリーズでは、音楽メニューに巨大化シーン用の音楽が含まれていたが、「ここ数年、巨大化シーンが定番的には描かれていないので、それ用の音楽は発注していません。その都度、尺に合うものを選んでいます」とは宮葉氏。他の選曲例としては、第29話の前話振り返り場面があり、ナーガの闇落ち、朽ち果てたオリオン号と衝撃を音楽面からも伝えている。M44とM45は、どちらも汎用的なサスペンス曲で、メニュー表の指定では「一般ドラマ的な」と指定されているが、シンセの音色など、どことなく宇宙っぽさが見え隠れする辺りに、山下氏のアイディアが垣間見える。M44は途中、一箇所だけフルートの音色が入るが、「いかにもシンセっぽい曲だけに、そこがちょっと驚きですね」とは宮葉氏。劇中では、第12話のキューレット・ザ・チャンスで外れたラッキーが落ち込む場面、第13話では、ショウ司令に単独行動を願い出るスティンガーの場面、第14話の惑星ベラの荒れ果てた海岸にハミィたちが愕然とする場面、第21話のアルゴ船の船内を探索する場面など、心情から状況説明まで使用例は多岐に渡る。M45はシンセの音色からファンタジックな雰囲気を持つ。「割と早い段階で出来た1曲ですね。この辺りは“疑惑”にも“予感”にも聴こえるし、できた曲をどのメニューに落とし込むかは考えました」と山下氏。第2話のラプターがジャークマスターの組織図を示して解説する場面が初出で、他にキュウレンジャーが初めて惑星チキューに降り立った第4話などで使われている。本トラックの最後を飾るのは「ジャークマターのテーマ」のバリエーションM28で、作戦会議など、セリフの邪魔をしない場面を想定して発注された楽曲。「M27のシンセバージョンですね。ジャークマターは特定の基地がないのですが、悪の作戦会議の場面でたまに使っています」(宮葉氏)とのことで、第28話でククルーガとアキャンパーが、闇落ちしたナーガを使い、キュウレンジャーを壊滅させようと話し合う場面での選曲例がある。他に第6話ではデンビルが支配地区の人々に「デンビル体操第一」を踊らせる場面、第17話ではガルとバランスがジャークマターのアジトを見張る場面、第22話ではジャークマター大学でマナビルが講義を行う場面でも使われている。
8.Start The Battle
(1)M109(大災害) (2)M38(リズムアクション)
ジャークマターの破壊活動やキュウレンジャーとの戦闘開始を告げるアクション音楽集。いずれもメロディーがなく、リズム中心の激しい楽曲という共通点がある。M109は第2回録音からの1曲で同じフレーズの繰り返しが高揚感を生み出す。「最近のソフトシンセの傾向ですが、ツールとなるネタ的な部分でアピールが変わりますね。たとえばこの曲も“ジャカジャカジャカジャカ”のリズムをひとつずつ作っているわけではなく、(鍵盤を)押していると鳴り続けるわけですよね。それでひとつのフレージングになっている。そういうパッチワーク的に作られている楽曲は今の世にたくさんあるけど、ただ、それだけで曲を作った気になるのはマズイ。その上でどう組み立てていくかで作家のセンスが問われるところだと思います」と山下氏。初出は第21話のアルゴ船で目覚めたツルギがラッキーたちと乱闘する場面。他に第43話では、ブラックホール発生装置の機能が停止する場面や、第46話でラッキーがドン・クエルボの巨大なカラスキュータマに包み込まれ、消え去る場面での選曲例がある。「リズムとコードの雰囲気的なもので、これもソフトシンセならではの曲ですね」(山下氏)というM38は汎用的なアクション曲で、劇中の使用頻度も高い1曲。初出は第8話で捕らわれたラプター&スパーダを助けるべく、ラッキー、ハミィ、ガルノ3人が走って来る場面。他に第20話のスコルピオVSスティンガー、第46話ではシシレッド&ホウオウソルジャーがコンビで戦う場面、第47話ではラッキーがシシキュータマを埋め込むべく、ドン・ツルギに挑む場面での選曲例がある。
9.お前の運、試してやるぜ!
(1)M10c(宇宙戦隊出撃・イントロ抜き) (2)EX5(予告)
ジャークマターの前に立ちはだかる12の影! ラッキーたち12人の登場と、キュウレンジャーへのスターチェンジをイメージした音楽集。M10cは「宇宙戦隊のテーマ」のTDによるバージョン違いで、冒頭のファンファーレがなく、エレキギターがモチーフを奏でる箇所から入る。その分かりやすさが功を奏したか、実は劇中での使用はM10cのほうが圧倒的に多い。サントラファン的には「聴きたかったのはこのバージョン」とも言うべき1曲である。第1話でラッキーが初変身するシーンで使われたのもこのバージョンで、第17話でラッキーがヒカリキュータマを持って現れる場面、第23話でラッキーが「俺はあんたとは違う!」とツルギに啖呵を切る場面など、専ら変身前の盛り上がる場面で使われている。他に第45話では小太郎が「許せない、みんなのことを弄ぶなんて!」と叫ぶ場面から変身&名乗りにかけて使われた例もある。また、前話振り返り場面での選曲もお馴染みで、第2~11、13~15、18、19、22~27、31、37、38、40話の各話で使われた。キュウレンジャーの登場をイメージして配置したEX5は「キュウレンジャーのテーマ」M15の一部を抜粋演奏したもので、元々は予告編音楽として用意されたもの。「25秒尺のうち、15秒が予告で最後の10秒が提供ナレーションになったのですが、15秒目くらいに山がなく同じフレーズの繰り返しになってしまうので、M17を編集して使うことにしました」と宮葉氏。
10.「セイ・ザ・キュウレンジャー~宇宙をとりもどせ!」(インストゥルメンタル)
サイキックラバーが歌う挿入歌「セイ・ザ・キュウレンジャー~宇宙をとりもどせ!」のインスト。作曲はYOFFY、編曲は大石憲一郎の鉄板コンビによる。サイラバの楽曲の場合、メロディはIMAJOのギターが多いが、今回は作品の宇宙観に合わせてかシンセメロになる。
11.星空のメロディー
(1)M9b(宇宙戦隊のテーマ・Short) (2)M53(暖かい宇宙) (3)M131(喜び)
戦いのない平和な時間。オリオン号でキュウレンジャーたちは思い思いの時間を過ごす――。トラック11は劇中で描かれる様々な心情を紡ぐ楽曲を3曲並べてみた。M9bは「宇宙戦隊のテーマ」M9のバージョン違いではあるが、M9とは別に新たに譜面が書き起こされている。「オリオン号登場など、短いシーンで使えるように用意しました」(宮葉氏)。劇中では、リュウテイキュウレンオー初登場回となる第12話で、キュウレンオー、リュウテイオー、それぞれの胸部が呼応するかのように発光し、シシレッドがショウ司令に合体を持ちかける場面での選曲例がある。続く1曲は「I.心情・その他」のブロックから、M52~55まで共通のメロディを持つ4曲の内からM53。ピアノと弦楽オーケストラのためにアレンジされており、チェロが抒情的に奏でる旋律に心揺さぶられる。「これはM52を先に書いてからアレンジしています」(山下氏)とのことだが、同じメロディでありながらも、コミカル曲のM52からしっとりとした心情曲へと巧みにアレンジされているのにも驚かされる。「やっぱりメロディやコード進行によっては、上手くアレンジできないこともあるんですよね。そういう場合は書き直すこともあります。そこは主題歌とか決まったメロディでアレンジするとは全く感覚が違います」と山下氏。選曲例としては、第5話のユメパックンを退けたラッキーたちと佐久間兄弟が話す場面と、第45話のチキューで小太郎と次郎が再会する場面の両方で、M53が選曲され、兄弟とキュウレンジャーの関係をさりげなく関連付けている。M131は第2回録音から心情曲としては大編成の1曲で、「宇宙戦隊のテーマ」がモチーフとして採られている。「クラシック編成なのにサックスが目立ちます」(宮葉氏)とのことで、サックスによる甘い旋律も聴きどころ。「普通、オーケストラには入らない楽器だから、休みが多くならないよう、存分に生かしました」と山下氏。劇中では第38話のラスト、ショウ司令が大僧正からケフェウスキュータマを受け取る場面での選曲例がある。
12.UNLUCKY STAR
(1)M54(アンラッキー) (2)M124(不思議エイリアン)
多彩な人物が織りなす人間模様、そして喜怒哀楽。笑いの要素もまた『キュウレンジャー』には欠かせない場面である。トラック12では、コミカル、マヌケな音楽を2曲お届けする。M54は、M52~55と共通メロの心情曲から、いわゆる「マヌケバージョン」。「4つもバリエーションを作るとなると、あまり複雑なメロディにもできないのですが、そこは経験ですね」と山下氏。ミュートトランペットが効果を発揮しているが、「これはEDで使っていたので、そっちの路線かなと思って使ってみました。ただ、そうなると生じゃないと面白くないですからね」(山下氏)とのこと。トランペットはスタジオプレイヤーとしてのみならず、最近はメディアへの登場も多いエリック宮城氏による。劇中では、第2話が「美容によくないよ」と突っ込むスパーダに「私に美容なんか関係ありません!」と言い返すラプターの場面が初出。他に第12話でビッグベア総司令がラッキーに憑依する場面、第18話ではガルとドギー・クルーガーが対面する場面、第22話でチキューを訪れたツルギが「俺様の顔、見覚えはないか?」と言う場面などの選曲例がある。M124は第2回録音分からのコミカル曲。宮葉氏は「なんとなく品があるのは山下さんらしいですね」と、楽曲の印象を語るが、「やっぱり音がハネますが、もうちょっとおちゃらけても良かったかもしれません」とは山下氏。また、既に第1回録音分でも数曲のコミカル曲が用意されているが、今回の発注意図を宮葉氏にうかがってみた。「話が進んで行くと共にネタキャラと化すメンバーが出てきました。それと共にコミカルな場面が増えてきたので、これまでのコミカル曲にはなかった、コード感はマイナーで成立する曲を新たに発注しました」(宮葉氏)。選曲例としては、第22話の冒頭、オリオン号の窓にホウオウソルジャーが「俺様だ。おーい、開けてくれ」と張り付く場面がある。
13.3.2.1.オッキュー!
(1)M6(コミックED) (2)M7(サスペンスED) (3)EDコトキュータマver. (4)M2(GO!キュウレンジャー)
EDテーマ「キュータマダンシング!」のメロディを使ったアレンジBGM集。本トラックにはコミカル、サスペンス、アクションと収録しているが、例年に比べるとEDのアレンジ曲が多い。「“キュータマダンシング!”は曲自体はコミックですが、2小節聴いただけで、EDだと分かるフレーズが散りばめられていたので、色々なアレンジ曲を作ったら面白いかなと思い、発注してみました」とは宮葉氏。通常、こうしたアレンジ曲はスケジュールの都合上、メロ譜を元に作られることが多いが、ダンスの諸準備のために、楽曲制作が先行しており、アレンジも含めてある程度形になったところで、劇伴の書きに入れたという。「最初にまだミックス前のデモテープを聴いたのですが、歌詞も含めて驚きましたね。いったいこれはどこを目指しているのかと(笑)」(山下氏)。まず1曲目のM6はコミカルアレンジ曲。「OPのコミカルアレンジ曲のM5は、ストリングスが入っていて、ちょっと上品な感じで、こっちのほうがコッテリ感がありますね」とは宮葉氏。原曲でも使われているミュートトランペットは、このM6でも踏襲されており、お笑い成分を上手く出している。「コミカル曲はいつものことながら敷居が高いですね。たかしまあきひこ先生のセンスが欲しいですね」と山下氏は謙遜するが、第6話でハミィがリーダーに立候補する場面を皮切りに、第10話で小太郎に憑依したビッグベア総司令が「おちおち成仏もできんわ」と小太郎の体を出たり入ったりする場面、第14話でユーテルジャンがガルに惚れる場面、第21話のラスト、人形を作ったのがスティンガーだと得意げに語る小太郎の後ろにスティンガーがやってくる場面など、数多くの場面で選曲され、笑いの要素を盛り上げてきた。続くM7はサスペンスアレンジ曲。「崩しても元メロが分かるのがいいですね」(宮葉氏)。「主題歌アレンジと同じく、どの程度崩すかは気を使いますね。とりあえずメロと一応コードも拾って、そこからどうリアレンジしていくかが大事ですね。またサスペンスで“潜入感”を出すことも忘れてはいけません」とは山下氏。劇中では、いわゆる作戦会議の場面で使われることが多く、初出は第5話でチキューの解放、メンバー探し、スティンガーが仲間か否かの判断と、今後の方針について議論する場面。以後、第7話のトゥーミーのアジト前でラプターの状況説明を聞き、スティンガーが作戦立案する場面、第14話のラプターが作戦を説明する場面などの選曲例がある。EDコトキュータマver.は、第14話に登場したコトキュータマに秘められた「琴の音色で音楽を奏でる能力」のために用意された現実音楽。劇中ではユーテルジャンを前に、本楽曲をBGMにナーガとバランス、ガルがダンスを披露したものの、ご機嫌取りは失敗に終わった。本トラックに最後を飾るのはEDのアクションアレンジ曲のM2。「EDアレンジ曲を戦闘に使うのはすごく久々な気がします」とは宮葉氏。以下、3名に語ってもらった。
宮葉「EDを聴いたとき、コミカル要素を抜いたら割とカッコよくなるんじゃないかと思ったんです。それに山下さんなら上手くやってれるはずだと」
山下「半分、無茶ぶりでしょう(笑)」
八木「楽曲自体は普通にファンクだからカッコいいんですよ」
宮葉「今年はキャラクターが多いから、真剣に戦う場面からお遊び的に戦う場面までアクションイメ―ジの振り幅がほしかったんですよね」
山下「なるほどね」
劇中では惑星ジガマでお宝をゲットしたバランス&ナーガの怪盗BN団の活躍シーンで使われた第2話が初出で、第10、14、15、19話など前半のバトルシーンで使われることが多い。他に第14話でガルがオトメキュータマの能力で乙女になる場面、第22話でハミィがヘラクレスキュータマでムキムキボディになる場面など、コミカルに振った選曲例もある。
14.キュータマダンシング!(Fighting Formation)
第6話のために用意されたEDインストのアクションバージョン。原曲同様、高取ヒデアキ率いるZ旗のメンバーでもあるギタリストの川瀬智がアレンジを担当。原曲のオケをベースにしていることもあり、楽曲イメージをダイレクトに伝えてくれる。劇中では横並びになったキュウレンジャーがダンス特訓の成果を発揮し、インダベーを撃退する場面で選曲された。また、第27話でオリオン号内に潜入したインダベーを、ラプターたちが捕まえる場面でも使われている。
15.The Darkness of the Space
(1)M68(ショックA) (2)M26b(ジャークマターのテーマ・Short) (3)M66(ジワジワと…) (4)M27(暗黒の将軍) (5)M28b(悪だくみ・リズム抜き)
宇宙幕府ジャークマターの頂点に君臨するショーグン、ドン・アルマゲ。ジャークマター内でもその正体を見た者は誰ひとりとしていないという……。トラック15は、「ジャークマターのテーマ」のアレンジ曲を中心に、ドン・アルマゲを象徴するような、重く不気味なサスペンス音楽集。M68は三種類用意されたショック音楽のうちの1曲。第5話でペガサスキュータマを用いたシシレッドの胸にペガさんが装着される場面で選曲されたのが初出。ジャークマター関連では第10話でミクロの粒子でオリオン号が操られていることが判明する場面で使われたほか、第15話で惑星ベラの住民がインダベーに襲われる場面、第16話ではスコルピオとスティンガーの前にデスワームが出現する場面などの選曲例がある。M26bは、「ジャークマターのテーマ」M26のバージョン違いで、シンセコーラスのメロディ部分のみ短く取り出したもの。「悪の母船の全景などで一瞬使えるかなと思って発注したものです」とは宮葉氏。実際にはそういった使われた方はしていないが、第44話ではスーパービッグモライマーズの場面にM26を、艦内のドン・アルマゲとアントンブレインの場面ではここに収録したM26bと、2曲を巧妙に編集して使用している。また第12話でチキュウに降り立つスコルピオの場面は次曲のM66と編集して使われており、高台からチキュウの街並みを望むスコルピオの場面にM26bを、マーダッコが「お迎えに参りました」と言う場面からM66に繋いでいる。そのM66は不安を駆り立てるピアノソロからはじまるショック音楽。初期は第3、4、12、17話とスティンガーやスコルピオ絡みの場面で使われた他、第29話ラッキーが単身、敵の前に現れる場面、第35話のアキャンパーの命令を下す場面での選曲例がある。M27は「ジャークマターのテーマ」のバリエーションのひとつ。ストリングスメインでハープ、シンセコーラスが不気味な雰囲気を帯びている。初期話数ではあまり使われず、第16話でスコルピオと対面するチャンプとスティンガーの場面で初選曲。ここではスコルピオ怪人態にスティンガーが「どうしてその姿に?」と問う場面から音楽が入り、続くスコルピオの「この姿は俺が力を手にした証」のセリフに「ジャークマターのテーマ」が流れることで、セリフの意味合いに含みを持たせた選曲となっている。他に第45話で瀕死のクエルボにドン・アルマゲが憑依する回想シーンでの選曲例がある。続くM28bも「ジャークマターのテーマ」のバリエーションで、M28からTDでセンセのみを抜いたバージョン。選曲例としては、第5話でスティンガーを伴って現れたエリードロンが、ユメパックンにキュウレンジャー抹殺を命じる場面、第13話でモンドムヨインダベーの前で人々が陳情する場面などがある。
16.激突する宇宙
(1)64(出現) (2)M12(危機) (3)M32(宇宙怪人・破壊)
ダイカーン、カロウ、フクショーグン……次々と現れる強力な敵。トラック16は、第1回録音から重厚な楽曲を3曲並べて敵側の優勢を描く。M64は「J.ショック・ブリッジ」からの1曲。M69と共に定番の巨大化音楽として用いられ、第2話のガメッツイ、第22話のマナビル(&モライマーズの変形)、第23話のメディアツヨインダベー&メタルデスワーム、第36話のジューモッツで使われている。また第42話ではツルギがナレーションを務める前話振り返り場面の音楽としての使用例もある。M12は「宇宙戦隊のテーマ」のバリエーションで、「シンセホルンがメインテーマの崩しですね」とは宮葉氏。「モチーフは入れていますが、ハリウッドSF系の音楽と言いますか。それほど主張はしていません」(山下氏)。第12話でラッキーたちがシャイドスの見えない攻撃に苦戦する場面、第19話ではチキュウに迫るモライマーズ艦隊に動揺を隠せないラッキーたちの場面などで選曲。また「前話解説は普段はM10cですが、ピンチのときに使うことがあります」(宮葉氏)とのことで、第9、12、20話での使用例がある。M32は3曲ある「F.宇宙怪人のテーマ」からの1曲で、リズムセクションは打ち込みだが、金管は生で迫力を生み出している。「“F.宇宙怪人のテーマ”は、実はこのタイトルでの使用は考えておらず、初期のスティンガーとチャンプの戦いだったり、ジャークマター以外の第三勢力、音楽的にどちらも応援できない状況を想定して発注しました」(宮葉氏)とのことで、劇中では第2話でサソリオレンジとオウシブラックが戦う場面で選曲、また、それに絡めてチャンプがナレーションを務める第16話冒頭の前話振り返りの場面でも使われている。他に第29話でオライオンとデスワームが戦う場面での選曲例がある。
17.銀河レベル級大決戦
(1)M35(激突) (2)M108(総力戦) (3)M107(宇宙最大のバトル)
等身大、巨大入り乱れた総力戦が繰り広げられる! トラック17は激しい戦いの音楽を3曲集めた。M35は「サウンドスター1」のトラック22に収録したM34のテンポ違い。「共通のスコアですが、ドラムを外した他一部編成が異なり、こちらのほうがシンフォニックなイメージです。またテンポを遅くした分、演奏時間が長くなるので最後を省略しています」とは山下氏。楽曲は年間を通して度々使われており、初出は第2話でエリードロンの登場から、高電話圧のサンダーアロー攻撃を繰り出す場面にかけて選曲。他に第11話で巨大化したデスワームとキュウボイジャーが戦う場面、第42話で巨大アキャチューガの前に苦戦する3大ロボの場面、第47話ではドン・ツルギの前に変身解除させられたハミィが消滅する場面などの使用例がある。また第43話では前話振り返り~惑星サザンクロスでの素面立ち回り場面で使用され、実質OP曲としての役割を果たした。M108は、第2回録音中、フル編成の1曲で、中盤以降にかけてこうした新曲を適宜選曲して行くことで、番組としても大きな盛り上がりを感じさせてくれる。また宮葉氏は「フレーズの間に入るオケヒットが印象に残りますね」と曲の印象を語っているが、「最近のソフトンセには、明確にオケヒットという音色がないし、若い人は知らないんですよ(笑)。現在はあからさまに使うと古臭い感じもありますが、こうしたジャンルでは非常にいいアクセントになりますね」とは山下氏。使用例としては第41話冒頭の惑星サザンクロスへの突入シーン、続く第42話のOP後のロボ戦などがある。冒頭、金管が「キュウレンジャーのテーマ」を変奏するM107は勢いと重量感を併せ持つピンチ曲で、「メニューの中では一番大げさな曲ですね」とは宮葉氏。また途中、約52秒(トラック内で約4分20秒)で、本作の劇伴では珍しくラテンパーカッションが入るが、「ドラムが入らない分、何かリズムを刻みたくてパーカッションを使ってみました」と山下氏。初出は第21話でリュウテイオーがモライマーズロボ&ツヨインダベーを撃退する場面から、シシレッド、コグマスカイブルー、オウシブラック、サソリオレンジがコンビネーションでスコルピオと戦う場面。他に第42話で素面のラッキーたちが惑星サザンクロスで戦う場面、第43話でドン・アスランに苦戦する場面、第47話では、ジャークマターの総力に立ち向かうキュウレンジャーたちの場面と終盤で多用されている。また、第20話に付く第21話の予告、第46話に付く第47話の予告にも使用されている。
18.「キュウレンオー 銀河無敵伝説」(インストゥルメンタル)
戦いの決着とDISC-Aの締め括りとして、松原剛志が歌う挿入歌「キュウレンオー銀河無敵伝説」のインストをフルコーラスで収録。作曲は山下康介氏、編曲は前作『動物戦隊ジュウオウジャー』の劇伴を担当した亀山耕一郎が手掛けている。なお、メロディパートはエレキギターが演奏しており、1コーラス目は忠実に、2コーラス目はアドリブを交えて演奏されているのも聴きどころとなっている。
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DISC-2(サウンドスター5)
1.「究極!無敵!!キュウレンジャー」(インストゥルメンタル)
「サウンドスター5」の開幕を告げるのは、等身大アクションソング「究極!無敵!!キュウレンジャー」のインスト。作編曲は『轟轟戦隊ボウケンジャー』や『天装戦隊ゴセイジャー』の主題歌歌手としても知られる山田信夫(NoB)で、幡野智宏が歌うボーカルパートはエレキギターに置き換えられている。
2.無限のStory
(1)M3b(進め!キュウレンジャー・イントロのみ) (2)M4(明るく) (3)M5(コミックOP) (4)OPテーマ校歌斉唱ver
トラック2は、主題歌「LUCKYSTAR」のアレンジ曲を集めた。主題歌のアレンジ曲については「サウンドスター1」のトラック26の解説でも触れたが、楽曲については「音楽打ち合わせの際に、主題歌をアレンジする上では元メロより“Woo Oh Oh…”のフレーズが印象に残るから、それを色々な箇所に散りばめたら面白いんじゃないかと話をしました」(宮葉氏)、「キャッチーだし、断片としては非常に使いやすいですね」(山下氏)とそれぞれ語っている。M3bは、主題歌のマーチアレンジ曲M3のTDによるバージョン違いで、原曲では「キュウレンジャー♪」のコーラス部分に当たるイントロのみを抜粋。初出は第2話で敵を倒したシシレッドとサソリレンジの勝利の音楽として選曲され、楽曲はそのままシシレッドがフタゴキュータマをセイザブラスターにセットする場面まで付けられた。他に第8話でキュウレンオーが三つ目のモライマーズを破壊する場面、第14話では“キューレットザチャンス”でオオカミキュータマが出てきて、ガルが喜ぶ場面などの選曲例がある。M4は主題歌の日常生活場面向けのアレンジ曲で、ABメロがモチーフとして用いられている。「サビ前まで行って終わる構成が面白いですね」(宮葉氏)。「ちょうど指定の時間になったので終わらせました。バリエーションとしては、サビをメインに使う曲もあれば、ABメロを使う曲もある、ということですね」(山下氏)とのこと。メロディ自体は途中終わりでも成立しているのが劇伴の面白いところでもあり、「逆に最後まであっても尺の問題で使えなかったでしょう」と宮葉氏は語る。選曲例としては第6、7話のオリオン号でのラストシーン、第8話でスパーダがラッキー、ハミィと共に炊き出しを行う場面がある。M5はコミカル曲で、シンセメロがとぼけた雰囲気だが、ヴィブラフォンや弦のピチカートがどこか上品さを感じさせる。またEDのコミカルアレンジ曲M6(「サウンドスター4」のトラック13に収録)とも聴き比べてもらえればその差異を味わってもらえると思う。劇中では第2話の怪盗BN団のバランス&ナーガの初登場場面で使われたのが初出。他に第4話のワープ空間内の場面、第21話のラスト、スティンガーがみんなの前で謝る場面などの選曲例がある。本トラックの最後の1曲、OPテーマ校歌斉唱verは、野球回の第40話用に用意されたEXTRA曲で、ロボ戦後、スコアボード前で、キュウレンオーとオリオンバトラーが「宇宙は俺たちが取り戻す」と気を付けする場面で使われた。「須上和泰監督から“校歌を歌わせたい”と要望があったのですが、尺的に厳しいと思ったのでピアノ伴奏の断片を入れることで落ち着きました。甲子園=ブラスバンドで、主題歌のマーチアレンジ曲のM3を使う手も考えたのですが、劇中でいつも使っているから、それだとパロディにはならないんですよね」(宮葉氏)。アレンジは山下氏が手掛けており、通常、溜録りの劇伴録音が終われば、作曲家の仕事はそれで終わりになるが、こうしたイレギュラーなオーダーにも柔軟に対応できるのが、スーパー戦隊シリーズの音楽チームの強みである。一度、ラフなデモが作られ、数度の手直しを得て、最終的に尺に合わせで完成に至ったという。「最初に作ったのは“ジャズっぽい、もうちょっとベタな感じで”と言われ、尺合わせも含めてなんだかんだで、2~3回作り直しています。ちなみにこれが僕の『キュウレンジャー』の最後の仕事になります」と山下氏。ちなみに宮葉氏は高校野球の古豪、早稲田実業の吹奏楽部出身、「中学高校合わせて8回甲子園に行っているので、甲子園のパロディにはこだわりがあるんです」との事。
3.ハイ!ハイ!ハイテンション!!
(1)EX2(ゲーム紹介) (2)EX3(ゲーム正解) (3)M123(ミッション開始) (4)M52b(宇宙は俺の庭・メロ抜き) (5)M55(超アンラッキー)
これまでの「サウンドスター1」、「3」、「4」にもコミカル曲が収録してきたが、一口にコミカル曲と言っても“幅”があり、ここではテンション高め楽曲を集めてみた。EX2とEX3は「ラッキーキュータマ運試し」用の音楽。実際には玩具と連動して玩具の音声そのものを用いることとなり、発注意図での使用は見送られた。但し汎用的な劇伴として使われ、EX2に関しては、第10話、キューレットで出てきたリュウキュータマに対して、ショウ司令が「犯人はぼくちんでした」と宣言する場面での選曲例がある。続くM123が第2回録音からリズムメインの動きのあるサスペンス曲。劇中ではリズムを刻む音色の雰囲気からコミカルな場面で使われることが多く、第21話では「また会おう」と上裸のツルギが去って行く場面、第22話ではツルギが輝かしい伝説の数々を語る場面などの選曲例がある。M52bはTDによる別バージョンで、「この曲のシンセコーラスがお気に入りで、目立たせたいと思い、メロなしのバージョンを用意しました」とは宮葉氏。第14話では宇宙竜宮城への潜入に失敗して排出されるラッキーとスパーダの場面で選曲。ここではラッキーが「楽しくなってきたー!」と妙に高いテンションで、楽曲が持つ温度感ともマッチしている。他に第19話でエリスがラッキーに惚れる場面や、第22話でラプターがツルギに美人秘書と言われ、妄想を膨らませる場面での選曲例がある。M55は、共通メロを持つ4曲中、もっともテンポの速い1曲でドタバタシーンでは定番的に使われている。「90年代のゲーム音楽をイメ―ジしました。使っているシンセブラスの音色もちょっと懐かしい感じです」(山下氏)。また宮葉氏によれば「途中でアッチェレランド(※「次第に速く」を意味する音楽用語)するのが面白いですね」と凝った1曲で、「この辺りは気持ち的にも余裕がある頃に作っています」と山下氏。劇中では第10話でシシボイジャーのコクピットで小太郎がラッキーのセイザブラスターを奪おうとする場面が初出。他に第14話ではユーテルジャンを油断させようとするも、ことごとく失敗する場面で3回に渡って使用。繰り返し使うことで、「お約束」の面白さを出している。また「ゲーム音楽イメージ」とのことから、第39話では勇者に変えられた小太郎の活躍シーンにも選曲。なお、この回で使われたゲーム音楽は山下氏が『手裏剣戦隊ニンニンジャー』の第37話用に作った音楽の流用で、そちらは「手裏剣戦隊ニンニンジャー 秘伝 音タリティディスク 2&3&4」(COCX-39415-7)に収録されている。
4.「正義の兵(つわもの)リベリオン」(インストゥルメンタル)
串田アキラ、宮内タカユキ、MoJoの“魂の三兄弟”が歌う挿入歌「正義の兵リベリオン」のインストをフルコーラスで収録。作編曲を手掛けるのは『獣拳戦隊ゲキレンジャー』の主題歌歌手の谷本貴義で、このインスト版ではメロデイパートがエレキギターによる演奏となっている。劇中、第40話でデスマッチ野球「デースボール」の試合中の場面に選曲された。
5.苦悩
(1)M127(裏切り) (2)M125(信じられない敗北)
後悔、焦り……様々な壁に直面したキュウレンジャーが抱く複雑な感情。トラック5は、やや心情が入ったサスペンス音楽を2曲。いずれも第2回録音分からのセレクトとなる。M127は、木管が奏でる旋律が重々しい。「M125~129は自分でも覚えられないくらいの微妙なニュアンスの心情曲です。“この場面はこの曲だ”ではなく、そういった違いの曲から選べるのもまた贅沢だと思います」(宮葉氏)とのことで、劇中では第32話でツルギがオリオン号について「あんな武装も何もない宇宙船……」と語り、ラプターの怒りを買う場面、第45話ではツルギが「たとえ刺し違えてもこの手でヤツを……」とラッキーたちの前で自らの気持ちを明かす場面での選曲例がある。「メニューに沿って作ってはいますが、バリエーションとして、どのシチュエーションでも使える曲になっているのではないでしょうか」と山下氏。M125は例年第2回録音では定番となる「敗北のための音楽」。メロディが立ち過ぎると心情に寄り過ぎてしまい、“敗北”という状況が伝わらなくなるため、その微妙なサジ加減をいかに表現するかが作曲家の腕の見せどころである。選曲例としては、第28話ではエキドナが「ナーガレイを抹殺する」と現れる場面、第37話のアスランの「己の言葉を信じるのだ」の言葉を思い出すラッキーの場面、第46話では、カラスキュータマに取り込まれ、敗北して諦めるメンバーの幻影に惑わされるラッキーの場面などがある。
6.Wonderer ~絆を探して
(1)M60b(孤独・リズム抜き) (2)M42(銀河の伝説)
銀河系最強と名高い、サソリ座系出身の孤高の戦士・スティンガー。兄のスコルピオはなぜジャークマター側についたのか……。トラック6は、物語前半でクローズアップされたスティンガー絡みの2曲を集めてみた。第1回録音からの心情曲のひとつ、M60bはスティンガーとスコルピオの過去を描いたシーンの定番曲。なお、「b」のナンバーが振られているが、TDによる別バージョンではなく、レコーディング後にリズムをPadに差し替えたもの。「M48と同じく、この楽曲もスティンガーのイメージで発注したのですが、スタジオでちょっと色合いが明るいかなと思ったので、山下さんに自宅録音でアレンジ違いを作ってもらいました」とは宮葉氏。劇中では第5話ではスコルピオが裏切る回想シーンで使われたのが初出。他に第16話で再会したスティンガーが再会したスコルピオと再会を懐かしむ場面、第20話ではスコルピオに捕らわれたスティンガーが「どうして強さを求めた?」と尋ねる場面での選曲例がある。M42は「H.サスペンス」から、劇中に登場する様々な惑星をイメージして発注された1曲だが「僕はこれを聴いたとき、ファンタジーというよりは切ない感じがしました」(宮葉氏)とのことで、実際には宇宙ではなく、悲しい場面で心情曲として使われることが多い。山下氏によれば、「最初にシンセの音色を探して、そこからインスピレーションを得て出来上がった曲です。メニュー上のタイトルが“銀河の伝説”ということで、神秘的な雰囲気を狙ったのかな。自分としてはあまりそうした意識は明確になかったのですが、ちょっと情感を帯びていますね」とのことであるが、意図せぬ部分でまた別の効果を発揮するのが溜録り&選曲方式の劇伴の面白いところでもあり、劇中ではスティンガー絡みの定番曲として印象を深めた。劇中では、第13話で小太郎が「今でもお兄さんのことを信じてるんじゃないの?」とスティンガーの気持ちを見透かす場面と、ショウ司令が語るスティンガーをスカウトする回想で立て続けに選曲。第16話では苛立つチャンプにスティンガーが「お前にとってアントン博士しかいなかったように、俺には兄しかいなかった」と気持ちを伝える場面と、スコルピオに裏切られ、戦意喪失したスティンガーをチャンプが身を挺して庇う場面の2か所で選曲。第19話ではリベリオン本部で修理中のチャンプと、その廊下で落ち込むスティンガーの場面、第20話では修理中のチャンプの前で小太郎がキュータマを握り締め、「絶対にスティンガーを助けて見せる」と決意を固める場面。また坂本浩一監督は本楽曲を「ステインガーのテーマ」と認識し、『宇宙戦隊キュウレンジャー Episode of スティンガー』では、河原に咲くカモミールの花から回想シーンに入る重要な場面で選曲された。
7.「サソリ座の歌」(インストゥルメンタル)
トラック7は第16話や第21話など劇中歌として印象を残したキャラクラターソング「サソリ座の歌」のインスト。“サソリオレンジ/スティンガー”名義で岸洋佑が歌うボーカルパートはギターによる演奏となる。岸が自ら作曲を手掛け、編曲は中畑丈治が手掛けた。
8.変えろ運命
(1)M60(孤独) (2)M18(闘志!)
悲しみや苦しみを耐え、前へ進むキュウレンジャー。トラック8は、リズム隊メインのロックテイストの心情曲集。M60は、前トラックで触れたM60bの元となった楽曲。メロディは同じだが、宮葉氏が語っていたようにリズムが立っている分、明るさがある。ミュージシャンが初見で何十曲も消化していかなくてはいけないタイトなレコーディングの最中、一聴して「こうすればハマる」とジャッジするのは至難の業だ。長年、手掛けてきた宮葉氏ならではといえよう。是非、聴き比べて楽曲の持つニュアンスの違いを感じ取ってもらえればと思う。M18は、「キュウレンジャーのテーマ」のバリエーションで、いわゆる根性系の場面での定番とも言える、ロックテイストでエネルギッシュな楽曲。「これは分かりやすさをイメージしていますね」とは山下氏。「1フレーズで成立するので短く使えるのも有難いですね」(宮葉氏)とのことで、第14話の穴で落下したスパーダとラッキーが手足を広げて耐える場面、第38話では筋トレ房でツルギが9999回の腹筋を行う場面での選曲例がある。初出は第3話でサソリオレンジが「俺の戦いの邪魔をするな」とモーレツヨインダベーと戦う場面。
9.伝説の陰に
(1)M130(別離) (2)M102(ホウオウソルジャー・サスペンス) (3)M101b(ホウオウソルジャー登場・途中から)
コールドスリープより目覚めし男・鳳ツルギ。初代宇宙連邦大統領として一度はクエルボら88人の戦士の力を借りてドン・アルマゲを倒したものの……。ツルギが語る過去の出来事をイメージした3曲。「メニューに沿い、比較的流れで書くことができました」(山下氏)というM130は第2回録音で用意された悲しみの心情曲。「M20など第1回録音の悲しい音楽は音が薄めで軽い感情だと思ったので、厚い編成でお願いしました」とは宮葉氏。劇中では第38話のツルギとショウの会話で、「あんたを見ているとクエルボを思い出す」と語る場面から回想シーンにかけて選曲。また第43話でのアスランとラッキーの別れの場面での選曲も忘れ難い。その重厚な楽曲がどこかハリウッド映画風のM102は、第20話でツルギがオリオン号のブリッジに現れる場面で使われた「ホウオウソルジャーのテーマ」のサスペンスアレンジ曲。例年、追加戦士の劇伴をどの程度設けるかの判断も重要だが、「ホウオウソルジャーは過去に何かありそうだと思ったので発注しました」とは宮葉氏。その発注意図は実際の選曲にも見事反映されており、前述した第20話以外にも、第21話でツルギが永遠の命を捨ててドン・アルマゲを倒した過去をスパーダとラプターに話す場面で選曲された他、第22話ではツルギがラッキーとの会話を通じ、88の星座系の中にいたクエルボについて話す場面、第30話でツルギがホウオウキュータマを手にして復活した過去を話す場面、第44話では惑星ベローナに降り立ったツルギが、かつてこの星の監獄でクエルボと出会い、解放したことを話す場面、第45話では負傷したツルギがオリオン号で「俺様はもうすぐ死ぬ」と明かす場面での選曲例がある。M101bは「ホウオウソルジャーのテーマ」M101のTDによる別バージョン。前半をカットし、中間部のエレキギターがモチーフを奏でる箇所から曲が始まる。初出は、第22話でジャークマター大学にホウオウソルジャーが現れる場面。また第46話では、ツルギにドン・アルマゲが憑依していく場面で選曲され、「ずっと仲間でいてくれ!」のツルギの叫びと、リズムが加わり盛り上がる楽曲後半が合間って絶妙な効果を生み出していた。
10.「伝説のホウオウソルジャー」(インストゥルメンタル)
トラック10は劇伴と共通メロディを持つ、挿入歌「伝説のホウオウソルジャー」のインスト。作曲は山下康介、編曲は籠島裕昌で、演奏は高取ヒデアキ率いるZ旗。石原慎一が歌うボーカルパートはシンセメロに置き換えられている。
11.宇宙崩壊の序曲
(1)M39(互角の戦い) (2)M120(最強の敵、現る) (3)M110(銀河の危機)
キュウレンジャーの相次ぐ勝利にジャークマーは最高幹部、ククルーガ、テッチュウ、アキャンパーと3人のフクショーグンを送り込んだ。トラック11は、これまでにない強敵をイメージして3曲を選んでみた。M39は、第1回録音分から「G.アクション」に分類される1曲だが、「シリアスな曲調からピンチの場面や衝撃の事実を告げる場面で使うことが多いです」とは宮葉氏。該当する選曲例としては、第3話、キュウレンジャーの前に初めて姿を現したスティンガーが、登場して早々にサソリの毒でバランスを負傷させる場面、第8話でショウ司令が「スティンガーがやられた」とラッキーたちに告げる場面がある。年間通しての使用頻度も高く、終盤でも第43話で、ラッキーがブラックホールを発生させる役を志願する場面、第45話でドン・ツルギがラッキーとツルギを前に「僕こそが救世主なんだ」と告げる場面と度々使われており、中でも第46話ではドン・ツルギの誕生から、ラッキーが「まだだ、みんな顔をあげろ!」と衝撃の一同を奮起させるラストシーンにかけて選曲され、ドラマの幕引きを担った。M120は、第2回録音分からのサスペンス曲で、「ユニゾンだけに線の力強さがあるし、ディストーションが利いていますね」とは宮葉氏。一方、山下氏は「ハーモニーもなく、メロディは全てユニゾン、後はギターを被せただけ。曲数が多い中、捻り出した感じですが、出来上がってみるとシンプル故の良さが出たと思っています」と作曲の苦労を述べている。初出は第20話でスティンガーが秘儀「アンタレス」を使う場面。終盤では度々使用されており、第41話ではサザンキングの精神世界に引き込まれたラッキーの前に、ツルギに刃を向ける父アスランが現れ、「父と仲間とどちらかを選べ」と迫る場面、第45話ではプラネジューム爆弾で、宇宙を消し去ろうとする野望を語るアントンブレインに続き、ドン・クエルボが現れる場面で選曲。また第47話ではラッキーがナレーションを務める前話振り返り場面でも使われた。M110は定番のピンチ音楽だが、第2回録音分なので、物語後半を盛り上げるべく、ピンチのインフレに応じなくてはいけないのが、毎回の作曲家の苦労するところ。「こういう危機感を煽る音楽は、これまでにもたくさん書いているからネタが……(苦笑)。やっぱり直感的に分かるのはハーモニーでしょうね。最初にピンチを感じさせるハーモニーがビシッと頭の中で鳴るかどうか。そこがけっこう肝じゃないでしょうか」とは山下氏。「メニューを書く側は絶対絶命、最大、最上級……と書けばいいだけなのですが、スーパー戦隊はピンチ音楽の使用頻度が高く欠かせない楽曲です」(宮葉氏)。劇中では第20話で操られたスティンガーが現れる場面で使われたのが初出。また終盤では心情寄りの場面で使われることが多く、第41話や第43話ではラッキーとアスランの場面、第46話ではドン・クエルボと対峙するツルギがクエルボを否定し、ラッキーを信じる場面、第47話では大勢の敵を前に「全員でドン・アルマゲの元で会おう」とのラッキーの決意に一同が「オッキュー」と返す場面で選曲された。
12.砕けた星座
(1)M58(いらだち) (2)M126(愕然) (3)M128(対立) (4)M121(大決断)
ジャークマターの圧倒的な戦力の前に敗れ去るキュウレンジャー。彼らは救世主ではなかったのか? 現実を突き付けられ、うちひしがれ、絶望する……。トラック12は絶望をイメージした四つの心情曲集。M58は、第1回録音の「I.心情・その他」から、ピアノメインでいらだつ気持ちを表した楽曲。劇中では、第4話でチキュウを訪れたキュウレンジャーがユメパックンを退けたものの、助けてもらった少年は父と共に不審な目を浮かべて去って行く場面が初出。以後、第7、11、14~16、20話などコンスタントに使われており、終盤では第42話で、ツルギが父親か宇宙か覚悟を決めろとラッキーに迫る場面でも使われた。続く3曲はいずれも第2回録音分のナンバーで、「ある意味では無意識で作っています」(山下氏)というM126は、メロディやリズムなどの主張はあまりなく、ピアノやストリングス、木管が雰囲気を伝えるいかにも劇伴っぽい1曲。しかし、このような地味な曲も劇中では欠かすことができず、選曲例としては第20話でラッキーと小太郎がチキュウの人たちに排斥される場面、第46話では、ツルギが「なぁ、戦いが終わっても俺様と仲間でいてくれるか」とラッキーに語りかける場面など、重要な場面で使われている。M128も明確なメロディを持たない、いわゆる雰囲気もの。「画のイメージがあれば、それを感じて自ずと生まれてくるとは思うのですが、言葉だけだとなかなか発想するのが難しい曲です。ただ、あくまで劇伴であり、当然、セリフが入る場面で使われるだろうから、メロディがあまり立たないよう、という意識はどこかにありますね」とは山下氏。劇中での使用頻度は少なく、第41話ではキュウレンジャーの行く手を阻む謎の戦士の仮面が外れ、アスランだと明らかになる場面での選曲例あるが、この場合、あまり聴きなれない曲が付くことで特別なシーンであることが伝わる。M121は逆に第2回録音分から使用頻度の高い1曲。「同じ音型の繰り返しで、ハーモニーが変化していきます。まぁ、よくある手法といえばそうだけど、それによって緊張感が出たと思います」(山下氏)。劇中、第22話でツルギがラプターに“壁ドン”する場面で使われたのがこの曲である。他にアスランに絡めて使われることもあり、第37話でラッキーが記憶に残る父の言葉を思い返す場面で選曲されたのを皮切りに、第41話でオリオン号に帰還したラッキーが負傷したみんなの姿に愕然とする場面、続く第42話ではツルギの問いにラッキーが「父さん……いや、アルランは俺が倒す」と決意する場面でも選曲され、仲間に手傷を負わせたアスラン、父を倒せるか否か究極の決断を下す二つの場面を音楽が繋いでいる。また、「決断ではなく、神秘的な場面で使うこともあります」(宮葉氏)とのことで、第26話で、ナーガが自分の中に眠ってる感情を気にする場面、第32話でワープ航法の実験中、磁気嵐に迷い込んだオリオン号が脱出する場面での選曲例がある。
13.輝きは消えず
(1)M122(謎を追え) (2)M119(古の力) (3)M129(約束)
一度は敗れたキュウレンジャーだが、仲間たちと助け合い、思いを繋げて立ち上がる! 第2回録音からの3曲を通じて、力を振り絞って奮起するキュウレンジャーを表してみた。M122は、メニュー上の指定にはないが、ティンパニが刻むリズムが「宇宙戦隊のテーマ」になっており、「せっかく作ったモチーフですから、色々な箇所に散りばめていくことで作品として個性を打ち出してこうと思っています」とは山下氏。「セリフがある場面でよく使っています。音楽が邪魔しないし、緊張感があるのもとても良いです」(宮葉氏)とのことで、第22話でドン・アルマゲが生きていることを知ったツルギが「後は俺様に任せろ」と言い放つ場面を皮切りに度々使われている。主な選曲例として、第42話でツルギが単身アルマゲの元へ向かう場面、第47話でラッキーが命をかけて戦わなくていけない、ある作戦を提案する場面がある。M119は民族系のハープがファンタジックな雰囲気を醸し出すサスペンス曲で、第46話ではラッキーが「やっぱり諦めるなんてダメだ!」とカラスキュータマの幻影を打ち破る場面での選曲例がある。M129は繊細な感情を紡ぐメロディにリズムが加わり、感動を盛り上げる心情曲。「第1回録音のM11と同じように途中で曲調が変わる逆転の曲ですが、もう少し動きがある曲がほしいと思い、発注しました」とは宮葉氏。ブックレットに掲載したメニュー表の曲調の欄の記述も細かく、“使える曲”にするためにはこうした配慮も欠くことができない。劇中では、第31話で闇落ちしたナーガが自我を取り戻す場面、第45話でラッキーが「諦めなければなんとかなる!」と、ツルギを口説き落とす場面での選曲例が印象深い。
14.決めろ!流星の一撃!!
(1)111(勝利をつかみ取れ!) (2)EX4(アバンタイトル)
逆境にも挫けず、ついに立ち上ったキュウレンジャー。大逆転の一撃を決める!! 1曲目のM111は、「宇宙戦隊のテーマ」のバリエーションで、聴く者の感情を鼓舞する勝利フラグとも言える音楽。お馴染みの打楽器のリズムも健在で、「このリズムが来たら“キュウレンジャーが強くなったんだな”と分かる曲です。メインテーマをメロディではなく、リズムパターンで聴かせるのが、今までのスーパー戦隊シリーズの劇伴と違うところでもありますね」とは宮葉氏。山下氏も「第2回録音ということもあり、作曲に際しては、完全に画が浮かびましたね」と自信を持って答えている。劇中では「ここぞという場面で使っています」(宮葉氏)とのことで、第20話で小太郎が凶悪化したスティンガーに立ち向かい、解毒剤で元に戻す場面が初出。その後、終盤では多用されるようになり、第41話ではサザンキングの幻覚を打ち破ったラッキーの場面、第43話ではドン・アスランの一刀をシシキュータマが食い止め、ラッキーがアスランの仮面を断ち切る場面、第46話ではドン・クエルボの前に絶対絶命のツルギの前に、カラスキュータマの幻影を打ち破ったラッキーが駆けつける場面、第47話ではドン・ツルギにシシキュータマを埋め込み、11人全員が復活を遂げる場面と、数多くの名シーンを盛り上げた。EX4はアバンタイトル曲のロングバージョン。番組フォーマット的には「サウンドスター1」のトラック1に収録したショートバージョンのみがあれば充分であったが、いかんせん尺が短いのでコロムビアサイドのオーダーで、CDでの鑑賞も踏まえて特別に用意された。「シリアスであり、宇宙っぽさも表現できたし、自分としても満足が行く曲になったと思っています」とは山下氏。楽曲があれば、当然のことながら選曲できるわけで、劇中では第1話の冒頭、ジャークマターの侵攻を受ける惑星クロトスにチャンプとハミィ、スパーダが駆けつける場面、番組の後半、宇宙に投げ出されたラッキーがシシキュータマを手に入れ、獅子座流星群と共に惑星に落下する中、スターチェンジする場面の二ヶ所で選曲。また第1話での選曲を踏襲して、最終回でも宇宙に投げ出されたラッキーの場面で使われており、さらに獅子座流星群に乗ってラッキーが地球に舞い戻る場面から主題歌「LUCKYSTAR」に切り替わるが、このアヴァンタイトル~主題歌の流れは番組の定番フォーマットであり、一年間番組を観てきたファンにとって、これ以上盛り上がる選曲はないだろう。他に放送時間変更後の最初の回となる第32話では、長尺のアバンタイトル場面に使われた選曲例もある。
15.「LUCKY STAR」(インストゥルメンタル・ショートサイズ2)
主題歌のインストは「サウンドスター4」のトラック2にフルサイズを収録したが、ここではシンセメロはそのままに、曲頭のスネアのアタック有り、コーラスなしのバージョンをTVサイズで収録。
16.大反撃!闇の将軍
(1)M63(突然の襲撃) (2)M113(緊急事態) (3)M30(ジャークマター総攻撃!) (4)M114(全銀河艦隊出撃)
ドン・アルマゲの大逆襲! その持てる兵力の全てがキュウレンジャーに襲い掛かる!! M63は、第1回録音から「J.ショック・ブリッジ」の1曲。「こうした短い曲はいくらでも書くことができますが、数を撃てば当たるみたいにはしたくないですし、書いたものでコレと決め、それがなるべくカッコいい曲になればと思っています」とは山下氏。劇中での使用例は多々あり、初出は第2話でラッキーたちの前にガメッツイが現れる場面。終盤では、第44話でラプターがカラス座系で次々と惑星が爆発しているとの入電を伝える場面、第45話ではドン・クエルボの前で変身解除させられたツルギの元にラッキーが駆け寄る場面、第47話では戦いの中、スパーダ、小太郎、チャンプが消滅する場面での選曲例がある。M113は第2回録音では唯一となるブリッジ音楽。曲調は危機感を伝えるもので、既に第1回録音でも用意さている内容ではあるが、全くの別曲。その発注意図について宮葉氏にうかがってみた。「第1回目だとM63の使用頻度が高かったのですが、それに代わるもので、かつシンセではなく、オーケストラで演奏した曲がほしいと思って発注しました」(宮葉氏)。第21話でオリオン号がモアイダーの襲撃を受けてピンチに陥る場面が初出。他に第43話でキュータマジンがボスワームとメカマーダッコに苦戦する場面、第45話ではオリオンバトルシップがワープホールを抜けると同時にモアイダーの襲撃を受ける場面などの選曲例がある。M30は「ジャークマターのテーマ」のアクションアレンジ曲。激しいオーケストラサウンドはもちろん、シンセコーラスが奏でるモチーフが悪側の優勢をより伝えてくれる。「コーラスは大編成の曲をよりスケールアップさせるためには効果的ですね」とは山下氏。また実際の選曲については「リズムがなくなってから(約45秒/トラック内で約1分43秒)が意外と長いですね。アクションが続く場面では前半を繰り返して使うようにしています。逆に曲調とリズムの変わり目がヒーローが倒れる場面にハマるといい感じです」(宮葉氏)と語っており、第11話ではイカーゲンとマーダッコに苦戦するシシレッドの場面で使われ、変身解除したラッキーにイカーゲンが「いい加減に終わりにしようか」と銃口を向けるカットを曲調の変化に当てはめ、危機感を大いに盛り上げた。初出は第4話の冒頭、ラプターの妄想内でキュウレンジャーがピンチに陥る場面。他に第6、8、9、10、12、17、42、44話などでも使われている。M114は第2回録音分から、「ジャークマターのテーマ」を用いたアクション曲で、M30のパワーアップバージョンとも言える位置付け。「ジャークマターのテーマの一番派手なバージョンとして発注しました。アルマゲが正体を現す場面では度々使っています」(宮葉氏)とのことで、第30話の冒頭、前話振り返りと共にドン・アルマゲのキュウレンジャーと窮地に追い込む場面、第44話のドン・クエルボ登場シーン、第47話のドン・アルマゲの最終形態で使用。また第42話では楽曲イメージからアキャチューガの巨大戦に重厚なM114を、続くドン・アスランとシシレッドオリオンの高いではテンポの早いM30を選曲している。
17.究極の総力戦
(1)M10b(宇宙戦隊出撃・イントロのみ) (2)M117(アルゴ船、浮上) (3)M104(キュータマジン) (4)M105(オリオンンバトルシップロボ)
ドン・アルマゲとキュウレンジャーの間で繰り広げられる壮烈な戦い。戦いは巨大戦へと至り、キュウレンジャーは全ロボでこれを迎え撃つ! 1曲目はロボの登場をイメージしてM10bからスタート。楽曲は「宇宙戦隊のテーマ」M10のTDによるバージョン違いで、イントロを抜粋したもの。劇中では第1話のオリオン号の登場カットとキュウレンオーの合体直後のカットで2回選曲された他、第6話のロボ戦後の勝利のファンファーレなどの選曲例がある。M117は、第21話のアルゴ船に合わせて用意された楽曲でオーケストラが紡ぐ壮大な調べが、伝説のアルゴ船が出現する場面に圧倒的ともいえるスケール感を与えた。他に第22話でもアルゴ船の召喚シーンで使われている。また、第33話では同じ船繋がりからか、バトルオリオンシップが登場するシーンでも選曲された。M104は第2回録音から「キュータマジンのテーマ」で、トランペットが奏でるモチーフが「ホウオウソルジャーのテーマ」、その裏で奏でるホルンが「キュウレンジャーのテーマ」と、ロボの設定を踏まえて二つのモチーフが融合した楽曲になっている。第24話のキュータマジン初登場回で選曲された。M105は、「オリオンバトラーのテーマ」。オーケストラメインの楽曲だが、いわゆる最終ロボのテーマにしては珍しく、うねるようなストリングスやロック的なリズムが軽快なイメージを醸し出している。山下氏のアイディアで、ロボよりもバトルオリオンシップにウエイトが置かれ、「高速船といったイメージを受けたので、特にリズムパターンからスピード感を出そうと思いました」(山下氏)とのこと。劇中では第33話でシシレッドオリオンがバトルオリオンシップを召喚し、オリオンボイジャーと合体、オリオンバトラーが誕生する場面で使われた。他の選曲例では、第39話ではバトルオリオンシップの登場&合体からスーパーキュウレンオーと共に2体の巨大ゼロを倒す場面がある。また、使用回数が少ないことからロボを限定せず、第36話ではスーパーキュウレンオーが右肩のバズーカ砲の連射でモアイダーを次々と撃墜していく場面でも使われた。
18.「ミラクルスター!シシレッドオリオン」(インストゥルメンタル)
キュウレンジャーがドン・アルマゲを打ち倒す! ここでは勝利のラストバトルをイメージして挿入歌「ミラクルスター シシレッドオリオン」のインストをフルコーラスで収録した。なおイントロ部分は劇中で使っている短いバージョンで編集し、高橋秀幸が歌うボーカルパートはシンセメロとなる。作編曲は、先ごろ放送がスタートした『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』の音楽を手掛ける高木洋。
19.無限の彼方へGood Luck!
(1)M67(勝利の喜び) (2)M132(銀河に平和が…)
ジャークマターは壊滅し、再び希望の光を取り戻す88の星系。12人の救世主が宇宙の平和を守り抜いた――。トラック19は勝利の喜びを謳い上げる大団円の音楽集。M67は第1回録音分からオーケストラによる華やかなファンファーレ音楽。劇中では第7話でバランスの誕生日パーティの飾り付けやプレゼントが元通りになる場面が初出で、最終回ではアルマゲに取り込まれた全宇宙の人たちが解放される場面でも使われた。M132は、第2回録音分では定番となる、最終回の大団円を想定した音楽。楽曲自体は「宇宙戦隊のテーマ」のバリエーションで、山下氏ならではの華麗なオーケーストレーションでモチーフが奏でられ、壮大なフィナーレを迎える。「ダダダダ♪のリズムはメニュー打ち合わせの際に、山下さんから“ここを使っていいですか?と提案がありました」(宮葉氏)という拘りの1曲。初出は第37話のラスト、ラッキーが惑星カイエンで戴冠式を行う場面。最終回ではアルマゲを倒した後、喜びを分かち合う人々の姿からナレーションと共に映し出される12人の救世主の場面にかけて選曲された。
20.「キュータマダンシング!」(インストゥルメンタル)
「サウンドブラスター5」のトリを務めるのは、ダンスも楽しいEDテーマ「キュータマダンシング!」のインスト。松原剛志が歌うボーカルパートは、1コーラス目とハーフ繰り返しをギターメロ、2コーラス目をシタールメロに編集して、フルコーラス収録。作曲は東映特撮初登板となる平沢敦士、編曲はZ旗の川瀬智が手掛けている。
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末尾に最終回(第48話)「宇宙に響け!ヨッシャ、ラッキー」(脚本:毛利亘宏 監督:柴崎貴行)の選曲リストを掲載する。各自で編集して曲順を再現してもらえれば、最終回の余韻や感動を追体験してもらえると思う。
・ドン・アルマゲ(最終形態)と対峙する12人 M35/激突
・ドン・アルマゲ(最終形態)と12人の戦い M31/宇宙怪人・襲撃
・アバンタイトル EX4short/アバンタイトル
・提供クジレット M10c/宇宙戦隊出撃
・ドン・アルマゲと12人の戦い M01/Fight !キュウレンジャー
・アルマゲの傷が回復、そのパワーで全員やられる M116/副将軍アクション
・ラッキーたちが立ち上がる(アルマゲ「運か、信じるだけ無駄だ!」から音楽がイン) M26/ジャークマターのテーマ
・ラッキー「運がない、俺だってそう思ったことがある」~全員立ち上がる M16/9人の戦士
・「さぁみんなで運を呼び込もう!」とラッキー M3b/進め!キュウレンジャー
・(CM明け)「さぁみんなで運を呼び込もう!」~素面名乗り M21/変身~名乗り
・全員名乗り~バトル~アルマゲ撃退 M17/苦戦
・アルマゲ巨大化~ロボ戦 M114/全銀河艦隊出撃
・(CM明け)ロボ戦続き~ M108/総力戦
・宇宙中の星座の力で奇跡が起こり、巨大化アルマゲを撃退 M117/アルゴ船、浮上
・アルマゲに取り込まれた人々が解放される M67/勝利の喜び
・アルマゲ「貴様の体をいただくぞ」とラッキーに憑依 M33/宇宙怪人・進撃
・宇宙に放り投げられたラッキーがもがき苦しむが…… EX4/アバンタイトル
・獅子座流星群でチキュウに舞い戻るラッキー~アルマゲ倒されるまで OP「LUCKYSTAR」
・宇宙に平和が戻り、各惑星で人々が喜び合う~ナレーションと共に12人の救世主 M132/銀河に平和が…
・(CM開け)エピローグ ED「キュータマダンシング!」
・着陸したラッキー M10/宇宙戦隊出撃