真心ブラザーズ 19th ALBUM
SQUEEZE and RELEASE


News

Release

19th Album

SQUEEZE and RELEASE


デビュー35周年記念盤

コロムビアミュージックショップ&ライブ会場限定商品
2024.09.21 RELEASE

¥9,000+税 CEG-86
CD、ブロッカー・フィギュアトイ、Tシャツセット
※オリジナルビニールケース収納
通常盤 
2024.10.09 RELEASE

¥3,000+税 COCP-42333

デビュー35周年を記念し、2年ぶりにリリースされる19thアルバムは、95年リリースの大名盤『KING OF ROCK』を彷彿とさせる1枚が完成!
大橋 哲 (Bass)、古市健太 (Drums) と新進気鋭のミュージシャンを招いて制作されたアルバムは、ラップもファンクもフォークロックもあり、そしてフリーダムかつ躊躇の無い歌詞と、35年目も “ロックの王様” 健在!
さらに今作のアートワークには、コラージュアーティストの河村康輔を起用!デビュー 35年経ってなお、進化していく真心ブラザーズに要注目!

Official Interview

今年デビュー35周年を迎えた真心ブラザーズが、19作目のオリジナル・アルバム『SQUEEZE and RELEASE』を完成させた(デビュー35周年記念盤9月21日発売 /通常盤10月9日発売)。
常に絶好調な名コンビ・YO-KING、桜井秀俊が35年目にして世に解き放つのは、90年代の記念碑的な名盤『KING OF ROCK』(1995年)を彷彿とさせる、いやそれ以上に思いっきりはみ出した爆発力による自由なアルバム。管楽器、鍵盤を加えず、大橋 哲(Ba)、古市健太(Dr)という新進気鋭の若手ミュージシャンと共に、ほぼ一発録りでレコーディングされたという。歪んだ轟音の中でYO-KINGの自己啓蒙的アジテーションが炸裂する「あたまの中は大自由」で幕を開け、その通りと膝を打ちたくなる「オレは音楽」、桜井のラップが縦横無尽にマイクロフォンを翻弄するミクスチャーロック「Mic Check」等々、オルタナティヴと呼ぶにはあまりにも異端な、それでいて真心ブラザーズらしさ満載の作品となっている。
今の真心ブラザーズのモードについて、アルバム全曲解説的にお2人に語ってもらった。
インタビューを読む ▼

イベントに出て「今はこういうソリッドな感じがいいのかも」という感触があった(桜井)

――デビュー35周年、ニューアルバム『SQUEEZE and RELEASE』完成おめでとうございます!

YO-KING&桜井ありがとうございます!

――35周年というのはどのように感じていらっしゃいますか。

YO-KING「デビュー35周年」って言われて、「ああそうか」ってびっくりしてる感じです。

桜井30周年ぐらいまでは振り返り疲れたというか、同窓会を5年ごとにやるみたいな感じで「もうええわ!」って思ってたんですけど、35周年になるともう諦めたというか(笑)。逆に振り返り慣れが出てきてる気がしますね。

――今日もいろいろと振り返りつつ、新作アルバムについて訊かせてください。『SQUEEZE and RELEASE』繰り返し聴いております。

YO-KINGじゃあたぶん、俺より聴いてると思う(笑)。制作過程ではめちゃめちゃ聴くんだけど、完成するとなかなかね。逆に10年ぐらい前の曲とかをすごく聴いてますね。 ただ、ニューアルバムについてもいくらでも喋れますよ。めちゃめちゃ最近やったばっかだし(笑)。

――それを訊きに来てますのでお願いします(笑)。桜井さんもそういう感覚なんですか?

桜井一番最後にマスタリングルームの良い環境で、エラーとか無いかチェックするために大音量でドーンと聴くんですけど、やっぱりそれで一旦しまっちゃいますね。

――そこに神経を注ぎすぎてちょっと離れたくなる?

桜井そうそう、もう映画『地獄の黙示録』を全部見終わった時みたいな(笑)。『地獄の黙示録』って撮影とか、完成までの道のりが大変だったって言うでしょ?最後の曲「急がない人」が「The End」(劇中で流れるザ・ドアーズの曲)に聴こえてくるから。そういう感じです。

――今回も本当に最高のアルバムです。

YO-KINGよかった。うれしいなあ。

桜井ありがとうございます。

――前作『TODAY』、前々作『Cheer』とはまた違う真心ブラザーズの最高さというか、ズバリ言って“『KING OF ROCK』モード”の真心ブラザーズですよね。こういう作品になった発端はなんだったんですか?

桜井イベントで、『KING OF ROCK』系のハードな曲をやっても、すごく成立するなと思ったんですよ。「これは!」と思ったきっかけは、大阪城野音で〈OYZ NO YAON!〉っていうイベントに出たときに、怒髪天もいてフラカンもいて、もう知り合いばっかりだから、ゴリゴリなことをやっちゃっても許してくれるお客さんだろうと思ってやってみたら、だいぶお客さんを掴んだ感触があったんです。「ENDLESS SUMMER NUDE」も「どか〜ん」もあれもこれもやらなきゃいけないみたいなことじゃなくて、「マイ・リズム」とかでみんながワーっと反応して盛り上がってくれたりして。それもあって、「今はこういうソリッドな感じがいいのかもね」っていう感触をもとに、こういうアルバムを作ってみようという流れになりました。

――それが、『KING OF ROCK』のような作品を目指そう、というところに繋がっているわけですね。

YO-KINGうん、最初にそういうアルバムにしようっていう意思決定のもとに始まった制作だったので。

“表現者の揺らぎ” が新作を生むから(YO-KING)

――今回は初参加のミュージシャンお2人と全曲レコーディングしているのも特徴です。ドラムの古市健太さんは、ザ・コレクターズの古市コータローさんの息子さんですよね。

YO-KINGえっ!マジで!?

桜井ははははは(笑)。

――……内緒だったんですか?

YO-KINGいや嘘、嘘(笑)。全然いいです。

桜井今のボケは是非使ってください(笑)。

YO-KING健太君とはここ1年ぐらい付き合いがあったんです。最初は〈やついフェス〉でコータローさんのソロバンドを観に行ったときに、ドラムがかっこよくて、息子さんなんだって聞いて。そこから健太君がメンバーのバンド・DOGADOGA(ドガ)とYO-KINGソロで何本かライブをやったんです。俺は弾き語りで参加していたので、後半はドラムを叩いてもらったらやっぱりすごく良くて。そういうことを繰り返していくうちに、『KING OF ROCK』っぽい作品をやるにあたって、新しい人とやりたいよねっていう話になって健太君にお願いすることになったんです。

――ベースの大橋 哲さんはどんな繋がりからの参加ですか。

YO-KING哲君は木(KI)っていうバンドのベーシストで、木(KI)とドガとYO-KINGソロでミニツアーをやったときに観たらすごくかっこよくて、さらにラップもやっていて。あと、打ち上げで、1年ぐらい前から流行ってる足が地面につかないようなステップ(slipback)をやっていて、たぶん究極の理想があってのボケだったんだけど、俺は完成系を知らなかったから「この人は何をしてるんだろう」と思って(笑)。ベースはかっこいいし、愉快な人だなと思って、哲君と健太君の2人に声をかけさせてもらったんです。

――『KING OF ROCK』では鍵盤や管楽器が多く使われていました。もちろん同じ作品を作るわけではないですが、今作ではシンプルな楽器編成で出すソリッドなバンドサウンドを求めていたということなんですか。

桜井そこはね、『KING OF ROCK』時代よりもさすがに進化してると自分は思っているんです。ブラスが聴こえてくる曲もなくはないんだけど、でも入れなきゃいけないってことじゃないんだよねっていう、そこは言わずもがなで。この先ライブとかで足そうと思えばいくらでも足せるけど、そうじゃなくても十分にこのうねりで4分とか5分とか聴いてもらえるようにできているんだから、なるべく楽器が少ない方がクールなんじゃないかという判断でした。ほぼ一発録りで、振り返ったらダビングはしなかったっていう感じです。

――「ジングルベル」、「おれんち」とかを聴くと、4人だけでセッションしながら作っている様子が目に浮かびました。レコーディングはどんなはじまりだったんですか?

YO-KINGリハスタに入ってどんどん曲をやって、20曲以上は試したんじゃないかな。それこそセッションだよね。それをそれぞれ自分のスマホで録音して。やっぱり、粗い録音がすごく良くて、それをどう本番でも活かしていくかっていうのは、途中で出てきた1つのテーマかもしれない。

桜井リハスタでのYO-KINGさんのギターの音が非常にでかくて。僕もそこで対抗すると、もう全然歌が聴こえなくなっちゃうから一応我慢したんですけど(笑)。つい2年前ぐらいまでは、ギターの音がデカいのが嫌だからこっちが頑張って下げてたんだけど、今回はその15倍ぐらいの音が出てるから「どうしたどうした!」って。

――「すげえアルバムを作ろう!」って気持ち的にも高ぶっていたわけですか?

YO-KINGどうなんだろうね?俺、リハスタにあるギターで弾いてたから勝手がわかんないっていうのもあるし、アンプもそこのアンプだからとりあえず大きく歪ませてりゃいいかぐらいの感じでやってたから(笑)。でもそれも何かアマチュア時代を思い出して楽しかったですね。普段はローディーさんがいるから、ちゃんと整えてくれるというか。そうじゃなくて、アマチュアの頃はマイクを挿したりとかこういうこともやってたよなって、懐かしかった。

桜井リハーサルの始まりは、学生のときと変わらなかったですね。「すげえモードなんだな」って思いながらやってました。

YO-KING「小さい音でロックンロールはできるんだ」っていうツアーをやったんで、それを経てのデカい音だから。なんていうかその揺らぎ、“表現者の揺らぎ”が新作を生むから。

――早くも名言をいただきました!

YO-KING&桜井ははははは(笑)。

YO-KING気分が変わるから新作ができるわけじゃない?本当にそのとき思ってることじゃないと面白くないよね。本当にやりたいことをするっていうのは大事だと思うし、『KING OF ROCK』っぽいものをやろうとなったときに、自分をそこに持っていくっていうのが大事だと思う。ご存知の通り、俺はストックが2兆曲あるから。ただそれをさらう作業がもう面倒くさいからさ(笑)。だったら新曲を作った方が早いっていう気になっちゃって。『KING OF ROCK』みたいな作品を作るには、ストックでやりくりしようっていうチマチマした考えを止めて、2兆曲を全部わすれて新曲をドーンと作った方が良いなと。どうせ似たような曲しかできないから(笑)。

桜井ははははは(笑)。

――なんでそんなこと言うんですか(笑)。

YO-KINGいやいや、いい意味でだよ?名人って、そんなに技がないと思うんだよね。スタン・ハンセンだったらウェスタン・ラリアット、ジャイアント馬場なら16文キックみたいに、1個か2個の大技を手を変え品を変えやっていく人が好きなんだよね。手塚治虫も美空ひばりもそうだし、ハンスJ.ウェグナーっていう北欧家具のデザイナーがいるんだけど、「似たようなやつばっかじゃねえか」っていう家具を死ぬまで作り続ける。ああいうのに憧れちゃうんだよね。ボブ・ディランもそうだし。

〈そういうゲーム 修行 遊び 訓練〉(YO-KING)

――それで言うと、爆発的な演奏と喋るようなボーカルが「スピード」を彷彿とさせる「あたまの中は大自由」をアルバムのオープニングにしたのは確信的ですよね。

YO-KINGそうですね。それはありました。

桜井面白かったのは、「スピード」はちゃんとしてるっていうか。「あたまの中は大自由」は、歌詞をちゃんと言えてないけどOKにしてたり(笑)。「でもそれがいいんだ」みたいなところが、アップデートした部分だなって思います。「スピード」は、まだ“ちゃんとやろう”っていう感じというか。「あたまの中は大自由」は、もはやちゃんとやろうとしてないんだけど、だからって何でもいいってことじゃないっていうか。

YO-KINGそうだね。やっぱりここまでやらないと、「本当にセッション一発なんだな」っていうのがわかりにくいっていうか。これ、もう1回やったらすんなり歌えると思うんだけど、間違った譜割をOKにしてるんだよ。もちろんそれじゃ駄目な曲もあるしそれでいい曲もあって、この曲はこれをOKにするべきだなって思ったんですよね。

――それで最後に「OK!」って笑ってるわけですね。ギターのピックスクラッチとか入ってますけど、バンド始めたての中学生気分というか。

YO-KING確かに(笑)。誰もが持ってる中学生気分を引き出すっていうのはテーマだったかもね。理屈じゃないっていうか。普通、やっぱりみんな上手いし、そつがないからね。

桜井まあ普通直すだろうしね(笑)。

YO-KINGどこまで下手さをOKと捉えるかっていう頭の訓練ってところもあったかもしれない。〈そういうゲーム 修行 遊び 訓練〉ですよ。これは、ネガティブなことも、明るい人が明るく考えることによって現実の度合いもちょっと小さくなったりするんじゃないかなっていう希望的な気持ちもある。

――お2人の自由っていうのは、デビュー以来変わらないですか。

YO-KINGそうですね。俺はすごくバランス良い人間だから、いろいろ折り合いもつけられるし、いろいろやれるんだけど、その分頭の中はすごく自由だぞっていうのは、クリエイターとしてはすごく大事なところなんじゃないかなと思ってる。

桜井もちろんYO-KINGさんの持ってる自由とは性格は違うけれども、僕は僕で基本はギターを弾いてみんなとバンドやっていれば楽しいので。同時にソングライティングもするし、アレンジするのも大好きだし、人の持ってる才能に対して料理っていったらおこがましいけど、「こういう器で出したらいいんじゃないか」とか、「焼くといいんじゃないか」とか考えるのも好きだし。その中で自分の大好きなギターをバンバン弾いて、思いついたら躊躇せずスクラッチをするとかね(笑)。あとは自由もいいんだけど、めちゃめちゃやってるようでも、ちゃんとチューニングしないと台無しになるとか、“ロックンロールのエチケット”は抑えながら、クールな頭を持ちながらやるのもまた楽しみですよね。

「さすがです、先輩!」って思いました(桜井)

――「オレは音楽」はタイトルを見た瞬間に、「出た!」と思いました。

YO-KING&桜井ははははは(笑)。

――なかなか言えない言葉だと思いますけども。

YO-KINGライブをたくさんやってると、本当に息を吸って吐くように音楽が演奏できちゃう瞬間があるんだよね。それと、そう思って演奏するとより楽しい。「オレは音楽なんだ」と思って演奏すると音楽が盛り上がって、また「オレは音楽だ」って戻ってきてグワングワン上がってくると無敵感が出るっていうかね。ライブをやるときに自分を上げていく一つの技であり、呪文だったのかもしれない。導火線を自分の中で見つけて、そこでガーッと上げてくっていう技の中の1つとして、「オレは音楽」っていう呪文はこれから使えるなって、今思いました(笑)。

桜井自分も歌詞を書く人間として思ったのは、この曲の〈だから〉っていう接続詞(だから サイコー だから スゲー)は、なかなか難しいんですよ。なぜなら〈だから〉っていうのはその前の言葉が何かの説明になってるってことだから。それってなかなか詞として粋じゃないから、使うのはむずかしいなと思っていて僕は避けてる言葉なんだけど、ここでは特に根拠が示される気配もなく、連発してるんですよね(笑)。その一発がすごい迫力で、「さすがです、先輩!」って思いました。

YO-KINGでも2番の〈だから サイコー ホントに スゲー〉は、ここだけ歌い直してダビングしちゃってるからね(笑)。〈ホントに スゲー〉の方がよりバカな感じになるなあって。

桜井「超えてきた!」って、コントロールルームでみんなウケましたから。

――セッションでファンキーなサウンドが構築されていった感じなんですか。

桜井これは衝動のままというよりは、結構計算してやった曲ですね。また健太くんと哲くんが、すごいスピード感で「それそれ!」みたいのを返してくれるから、そういうグルーヴも出てると思います。思った以上のものを若い2人が返してきた驚きで、だいぶ興奮しましたね。

――「DIVIDE」はボブ・マーリー「LIVELY UP YOURSELF」のオマージュが出てきますね。

YO-KINGそうそう。でもセッション前に名前が挙がったバンドの一つがリトル・フィートで、ボトムがああいう感じのニューオーリンズ風のセカンドラインになってます。この曲のテーマは、自分はちょっとずつやる人間なので(〈毎日ちょっとずつやるんだ 気づけば仕上がってる いつのまにかできてる〉)。例えば、俺は毎日朝起きて1km走ってるんですよ。本当は800mだけど(笑)。それをコロナでジムに行けなくなったときに始めてもう5年ぐらい淡々とやり続けてるんだけど、やってる人とやってない人では体力はやっぱり違うよね。生きていく上で体力があった方が、遊びだって仕事だって楽じゃん。そういう意味で、ちょっとずつやるっていうのが性にあってるんですよね。本を読んだりレコードを1日1枚ずつ聴いていくとか、そういうことに無上の喜びを感じるんですよ。

――制作時において煮詰まって2人でずっと悩むみたいなこともないですか。

YO-KING1回もない(笑)。ダメだなと思ったら、漫画を読んだり他の楽しいことをして、また取りかかって、何回かやっていくうちに上手くいったりとか。そこの見極めはすごく速い。

桜井むずかしい問題に出くわすことはあるけど、それも割と気合で乗り切れるというか。

YO-KING俺がよく言ってるのは、アルバムってもちろん良いものを作れるに越したことはないんだけど、レコーディングしてるその日一日が楽しければいいのよ。歌ってるそのときが楽しいとか、ギターを弾いてるこの瞬間が楽しければ良くて、それをちゃんと楽しめれば、良いアルバムになっちゃうっていうのは、35年で学んだと思う。「良い」「悪い」ってやっぱり微妙なところだと思うし、それよりも瞬間的に気持ち良いとか楽しいっていう感覚を味わった結果、少なくとも35年はできたから。ただ、もしもそっちの「良い」っていう方をめちゃめちゃ重要視して苦しんで悩んでやってたら、とんでもない大名盤ができた可能性はあるよね(笑)。でもそれで35年できたかっていうと、やっぱり性に合わないからそれはできなかったんじゃないかなと思う。

――そう言いながらも名盤をたくさん作ってきた35年じゃないですか。

YO-KINGそうなんです、それはそうなんですよ(笑)。

ウザいぐらいに、ラップを頑張ってみました(笑)。(桜井)

――「大崎の次は五反田だよ」は、何について歌った曲でしょうか。

YO-KINGこれは、品川から山手線で帰るときに「次は大崎、大崎の次は五反田に止まります」って言うアナウンスが頭に残ってて、ディラン・スタイルでサビは決まってて、あとはもう自由な歌詞にしちゃうっていうパターンですね。

――こういうシャッフルのフォークロックも真心ブラザーズの十八番ですね。

YO-KINGそうですよね。普通にやるとフォークロックだからどういうふうにやろうかっていうのはちょっと考えたかもね。パッと作ると、口癖のメロディーで歌っちゃうから、そうじゃないメロディーを探った記憶ある。だからサビが急に高いんだよね。

桜井こういうアルバムだからこそ、この曲は定番の真心重視でやった方がいいかなっていう感じでしたね。

――次の「Mic Check」は桜井さんの作・歌唱曲ですが、これもアルバムの大きな聴きどころではないでしょうか。こんなテンションでマイクチェックしてるんですか?

YO-KING腹立つよね、マイクチェックでこれやってたら(笑)。

桜井こんなテンション高くないですけどね(笑)。今回は歌の内容よりもギターリフとかがすごく大事なアルバムになると思っていたんです。それでレコーディングとかセッションをやる前に、いろんなロックのアルバムを聴いて脳トレというか、体力作りみたいなことをやっていて、AC/DCを聴き込んでアンガス・ヤング師匠が体の中に入ったときにこのリフが思いつきました。そこから始まって、何となく「Mic Check」だったんですね。もしかしたら、アルバムに入るための準備をしてるっていう気持ちだったのかな。それで歌詞を書くときに、マイクチェックだけに何かが始まる前のことを歌にしたら良いんだろうなと思って、始まってもいないのに〈夕べはごめんね〉ってさらに昔のことを蒸し返したりとかして。 あとは、どうやらラップの人って韻とか踏むらしいじゃないですかみたいな感じで、極端にやってみて遊ぶとか。

――〈2 時間ちょいの旅の始まり〉とか、いろんな曲を連想させるリリックが面白いですね。

桜井そうそう、〈WAKU WAKU させてよ〉とか。これも「HIP HOPってどうやら引用して良いらしいじゃないすか」っていうことで(笑)。

YO-KING桜井節が効いてて、ウザくていいよね(笑)。やっぱりラップってウザくないとダメですよ。

桜井ウザいぐらいに、ラップを頑張ってみました(笑)。

――続く桜井さん作の「カンナ」は、カントリー、ブルーグラス調の軽快な曲です。これこそ呪文のような歌詞が出てきますが、どんなことを考えて書いた曲なんですか。

桜井政治的じゃないけれども、そういう世の中を憂いているという歌です。世の中どうなろうと、昔から今までそして未来永劫、人間最後は神頼みだなというのは多分変わらないだろうという、諦念みたいなものもありながら書きました。

――こういうアレンジにしたのは、あんまり重い曲にならないように?

桜井カントリーって、底抜けに明るいアメリカ人のフォーク・ミュージックっていう発祥がありながら、パンクロックと相性が良かったりするので、こういう歪んだギターで弾くブルーグラスフレーズも合うので。明るく軽くやってるんだけど、動機はパンクなんですよ。〈かんながら たまち はえませ〉というのは、“ノー・フューチャー”ですから。

YO-KINGリズムのノリもいいし、歌いやすい曲でしたね。

桜井これは健太くんの反応が速くて、さすがでした。

YO-KING確かにね。いろんなリズムがあるから、よく全曲やったよね、あの2人。

桜井難なく引き出しをパッと見て「これでしょ?」みたいな感じで。すごく頼もしかったですね。自分もツアーまでにイントロの速弾きを楽勝で弾けるようにしないと(笑)。

――素朴なラブソング「ぬかよろこび」もやはり、真心ブラザーズの魅力の1つです。

YO-KINGこの間までやっていた【真心道中歌栗毛 2024】で新曲の弾き語りをやっていたんだけど、その中で出した曲です。『KING OF ROCK』もそうだったように、歌ものもあっていいのかなっていうことで入れました。

――この曲のギターソロってYO-KINGさんが弾いてるんですか?

YO-KINGそう。わかる?ずっと曲作ってるから、ギターが上手くなっちゃって(笑)。指先がずっと硬いんですよね。ずっと硬いなんて本当にありえなくて。やっぱり弾いてると上手くなるもんだね。家だとアコギしか弾かないんだけど、アコギを弾いてると自動的にエレキも上手くなるから。捨てていい音と捨てちゃいけない音の区別もわかってくるっていうか。

桜井この曲は「ぬかよろこび」っていう言葉で持っていってる感じで、あとは全部手癖っていうのが全開で潔いですね。

YO-KING俺の中で〈君ばっか君ばっか〉のところが出てきたときに、面白いな、いけるなと思った。

桜井なるほど、確かにそこは新しい。

4人でトロッコに乗って、急カーブを曲がり切るようなグルーヴ(YO-KING)

――「ジングルベル」はセッションしながらこういう言葉が出て来たんですか?

YO-KINGいや、歌詞も最初からあったんだけど、これはこのリフを繰り返すことで出てくるグルーヴをどこまで録音できるかっていうのがテーマの曲だよね。そこは本当にバンドの4人の演奏が、はみ出そうではみ出ないままグーッと行く感じっていうか、みんなでトロッコに乗って、急カーブで飛び出しちゃいそうだけど曲がり切るみたいな、そういうグルーヴだよね。

――ちなみに、今回は音作りに於いてエンジニアさんとか、以前と変わったところもありますか。

YO-KINGエンジニアさんは以前と同じ、西川(陽介)君なんだけど、初日にこういうコンセプトのアルバムを作るんだっていうことは口頭で伝えたら、もうすごく優秀な人だから「はい、わかりました」って寄せてきてくれるんだよね。それで俺以上にとんでもないアイディアを出してきて、逆にこっちが「いや、これは普通にしてください」っていうのが何個かあったぐらい、よりハジけてるから(笑)。

桜井一緒にセッションしてるメンバーの1人って感じですね。マイクを立ててるときから楽しそうにやってくれてますからね。

――「おれんち」も、セッション色の強い曲ですが、どんな成り立ちの曲ですか。

桜井曲自体は、前の前のツアーぐらいに新曲としてライブで弾き語りでやったりしたんだけど、バンドでやったら楽しいだろうなと思ってた曲だったんです。さっきYO-KINGさんが言ったように、今回モチーフとなっているバンドの一つにリトル・フィートの名前が出たので、これは割と当てはまるなと思って出してみました。

――〈腹なんかとっくにくくってる〉という歌詞が、長年やっているミュージシャンならではの歌詞でグッときます。

桜井みうらじゅんさんの言葉で、「歳を取るとバカでも迫力が出てくる」っていうのがあって、「俺にも出てきたかな」みたいな感じ(笑)。

YO-KING踊れるアルバムにはしたかったんだけど、良いダンス・ミュージックを探していくとやっぱり、ニューオーリンズってまだまだ掘り甲斐があって、日本語との相性がいいんだよね。ドクター・ジョンまではみんな聴いてるんだろうけど、リトル・フィートの濃いところって、あんまりまだ日向に当たってない気がしていて。そういうのをアルバムの中でやってみたかったっていうのはあるんですよ。リトル・フィートのリズム隊もめちゃめちゃすごいからね。ベースの間引き方とかが好きですね。

桜井こういうセカンドラインに日本語で歌をつけるときに、言葉の気持ちよさとリズムの気持ちよさ、あとは落語で落とす気持ちよさみたいなものがあって、最後にパシッと〈いらっしゃい〉で落ちたなっていう達成感はすごくあって。そのユーモア加減みたいなものは、多分大瀧詠一さんとかの影響なんだろうなって、自分で思いながら作りました。

最後の曲がたまたま「スピード」の逆だった(YO-KING)

――最後の曲は、スロー且つラウドな「急がない人」。これは30年越しの「スピード」のアンサーソングですか?

YO-KINGああ~、それは誰かにも言われたんだよな。でも本当、たまたまなんですよ。まさに天の采配でこんなことになっちゃって。『KING OF ROCK』みたいなアルバムを作ろうと思ったら、最後の曲が「スピード」の逆だったっていうね。意図はしてなかったけど、そこが天才の天才たる所以というか(笑)。こういう偶然が重なっちゃうんですよ。ただ、「スピード」みたいな曲の思想もあるにはあるんだよね。例え「やっぱり忙しくしてないと駄目だ」って曲ができたら、「やっぱり暇は最高だよね」って曲もできたりするわけ。だから俺の思想が全部「急がない人」っていうわけでもなくて、「急ぎたくないよな」っていうのをピックしてここまで表現してるだけじゃなくて、自分の中の多重人格的なところは未だに存在していると思ってます。「スピード」のときだってのんびりしてたしね。

――アルバムを締めくくるこの曲は…

桜井「The End」です(笑)。マスタリングで最後に聴いてるときに、映画のエンドロール感があって、すごくいいなって。ボーカルのテイクが、セッションで演奏しながら一緒に歌ってるときとちょっと変わって、息を吸ってのびのびゆっくりとというか、歌い直してる感じが、「なるほど、深くなったな」と思いました。あと、「スピード」との関係の話で言うと、「スピード」は別に急いでるわけじゃないんですよね。テンポが速いっていうことで、そのテンポの中では止まってすらいるというか。せかせかしてたら速いテンポってできないから。だから近い話をしているようでも、「急ぐ」っていうのと「スピード」は違うので、そこを間違えないようにねって、注意してる曲かなと思います(笑)。

――なるほど、今日聞いたお話を踏まえてまた聴かせてもらいます。リリース・ツアーも楽しみにしております。本日はありがとうございました!

YO-KING&桜井ありがとうございました!!

(取材・文:岡本貴之)

Information

  • ※準備中。しばらくお待ちください。

Live / Event

アルバムリリースツアー開催発表!

真心ブラザーズ ライブ・ツアー『SQUEEZE and RELEASE』

2024年11月4日
(月・休)
神奈川・SUPERNOVA KAWASAKI
開場16:30/開演17:00
スタンディング 7,000円(税込/+1D)
2024年11月13日
(水)
北海道・札幌 cube garden
開場18:30/開演19:00
スタンディング 7,000円(税込/+1D)
2024年11月15日
(金)
宮城・仙台 Rensa
開場18:30/開演19:00
指定 7,500円(税込/+1D)
2024年11月23日
(土)
岡山・岡山YEBISU YA PRO
開場16:30/開演17:00
スタンディング 7,000円(税込/+1D)
2024年11月24日
(日)
香川・高松 festhalle
開場15:30/開演16:00
指定 7,500円(税込/+1D)
2024年12月7日
(土)
東京・新宿 THEATER MILANO-Za
開場16:45/開演17:30
指定 7,500円(税込/+1D)
2024年12月12日
(木)
兵庫・神戸CHICKEN GEORGE
開場18:30/開演19:00
スタンディング 7,000円(税込/+1D)
2024年12月14日
(土)
長崎・DRUM Be-7
開場16:30/開演17:00
指定 7,500円(税込/+1D)
2024年12月15日
(日)
福岡・DRUM Be-1
開場16:00/開演16:30
指定 7,500円(税込/+1D)
2024年12月21日
(土)
愛知・名古屋 ボトムライン
開場16:30/開演17:00
指定 7,500円(税込/+1D)
2024年12月22日
(日)
京都・磔磔
開場16:00/開演16:30
スタンディング 7,000円(税込/+1D)
※お一人様4枚まで
※4歳未満入場不可。4歳以上要チケット

Profile

1989年 大学在学中、音楽サークルの先輩YO-KINGと後輩桜井秀俊で結成。
バラエティ番組内“フォークソング合戦”にて見事10週連続を勝ち抜き、同年9月にメジャー・デビュー。
「どか~ん」「サマー・ヌード」、「拝啓、ジョン・レノン」など数々の名曲を世に送り出す。
2014年に自身のレーベルDo Thing Recordingsを設立。
デビュー35年目となる今もなお、ライブ、制作にと精力的な活動を展開している。

真心ブラザーズオフィシャルサイト:https://www.magokorobros.com/