1月31日、KT Zepp Yokohamaにて、NakamuraEmiによるツーマンライブシリーズ「背負い投げ」第4弾となる『NakamuraEmi 10th Anniversary「背負い投げ 4本⽬」』が開催された。今回のゲストは、昨年結成25周年・メジャーデビュー20周年を迎えて東京ドーム公演も大成功に収めた、UVERworld。
「なぜNakamuraEmiが俺たちをあなたに見せたかったのか、まだ謎だと思う」。リリース前の新曲“ZERO BREAK POINT”からライブを始めてフロアを驚かせ、2曲目“PHOENIX AX”を歌い終えた時点で、UVERworld・TAKUYA∞はそう言った。そして、こう続けた。「でもこのライブが終わる頃にはっきりわかるよ、絶対に」。一見、ジャンルもシーンもキャリアも異なる2組のように思うだろう。しかしこの日の対バンを目撃した人ならば、両者には通ずるものが大いにある、というかむしろ、音楽の核の部分は同じであることがわかったはずだ。
互いへのリスペクトが溢れまくったセットリストには、共通点がたくさんあった。UVERworldのセットリストは、「あなたたち(NakamuraEmiファン)にもしっかり刺さる、いい曲ばかりをチョイスしてセットリストを組んできました。彼女(NakamuraEmi)が好きな曲はきっとあなたたちの好きな曲だとも思う」という思いで選ばれた全8曲。対するNakamuraEmiは、冒頭の“メジャーデビュー”、“火をつけろ”、“かかってこいよ”はUVERworldのライブパフォーマンスを受け継ぐような、デカいロックフェスでも場を掌握するほどの勢いで、全身を使ってオーディエンスを巻き込んでいくスタイル。そして中盤は、カワムラヒロシ(Gt)、伊澤一葉(Key/東京事変、the HIATUS)、まきやまはる菜(Ba)、柏倉隆史(Dr/toe、the HIATUS)という手練れプレイヤーたちとともにポップス、ヒップホップ、ジャズなど幅広い音楽性の色彩豊かなサウンドで個性を魅せる、という流れだった。
その中で見えた共通点とは、両者ともに、「言葉」を届けることに全身全霊を懸けていること。その言葉がしっかりと届くように、UVERworldは全8曲、歌詞を丁寧に映像に投影しながら歌った。そして、その「言葉」の中身は、自身のダサさも恥ずかしさもビビっている姿も隠さない、生き様を丸ごとさらけだしたもの。誰かに媚びることなく、誰のせいにするでもなく、自分の足で立って、自分の人生を生きろと教えてくれるもの。そのための勇気を分け与えてくれるもの。それがNakamuraEmiであり、UVERworldだ。
具体的に挙げるならば、UVERworldが歌った“ALL ALONE”と、NakamuraEmiの“YAMABIKO”は、メッセージの表現の仕方まで通ずるものがある。“ALL ALONE”では、《あいつは 踊ってる時だけ/彼女は 絵を描いている時だけ/あの子は 文字を綴っている時だけ》など、さまざまな人を登場させながら《お前は お前がやりたい事を やれ》とシャウト。“YAMABIKO”も同様に、《包丁にぎるのが お前の道なら/土耕すのが 俺の道なら/旅に出るのが あの子の道なら》と十人十色の「自分の道」を挙げながら、己を信じて極めていけ、と歌った。それらが同日、同ステージで披露されると呼応し合って、先述したように「自分の足で立って、自分の人生を生きるため」に必要なエネルギーになって届けられたのだ。
「愛」に対する美学も、両者はつながっていた。UVERworldは、“EN”で《愛を粗末にする奴は 何に勝ったって一生負け組》と斬り込み、“Ø choir”では《それぞれの大切な人の代わりは居ない》と歌うなど、愛こそが人生を豊かにするというメッセージを惜しみなく投げた。NakamuraEmiも、“投げキッス”を歌う前には「直接会えたり、ライブに来てくれたり、この空間、感情のやりとりが何かを救ってくれるなと思って作った曲」と言い、“かかってこいよ”には《目に見えない小さな小さな積み重ねの『信頼』という宝物》という表現もあるように、人と人が空間や感情を共有・交換することで生まれる、目には見えないが心や身体で感じられるものを何よりも大切にしているアーティストだ。
愛やコミュニケーションの捉え方含め、両者は、社会の中で主流とされる考え方や価値観からこぼれ落ちるものを拾い上げているアーティストたちとも言えるだろう。UVERworldが3曲目に歌った“PRAYING RUN”には《右と左どちらが正解 押すべきか引くべきか/それが幸と出るか不幸と出るか 全部やって確かめりゃいいだろう》というパンチラインがあるが、思考や判断をAIに託す傾向が強まる時代だからこそ、自分の足で走り続ける中で失敗も涙も傷も幸せの糧になると歌う、その声がオーディエンスたちの心を突き刺した。
この日のハイライトといえば、その“PRAYING RUN”とNakamuraEmiの“スケボーマン”のマッシュアップが披露されたシーン。原曲からは生まれ変わったこの日のための特別アレンジの上で、2曲の歌詞が交互に編み込まれ、ここまで書いた両者の共鳴点が見事にひとつの大きな塊となった。《全部やって確かめりゃいいだろう》を、TAKUYA∞、NakamuraEmi、そしてオーディエンスが声を重ねて叫んだ瞬間も痛快だった。スペシャルコラボを終えるとNakamuraEmiとTAKUYA∞はハイタッチして、TAKUYA∞が「これからもともに!」と一言残してステージを去ったところまで、オーディエンスの心を震わせた。
「なんで対バンするんですか?」。そんなメッセージもTAKUYA∞には届いていたという。その質問には、はっきりこう答えたーー「本物のアーティストと対バンできる喜び、これは最高だよ。ただ純粋にかっこいいと思ったから、対バンを引き受けた。ただ単にかっこいいから、俺たちは心から感謝して、この大切なステージでライブをやらせてもらっています」。
NakamuraEmiも自身のステージの中で、UVERworldに声をかけた理由として「UVERworldさんの歌詞にあるたくさんの言葉に励まされた」という説明とともに、こうも語ったーー「(NakamuraEmi自身は)デビュー10年、音楽を始めて25年、こんなに覚悟がある人を見たことがなくて。そういう覚悟のある人たちと同じステージに立つなんて、超怖いこと。だけどさっきTAKUYA∞さんも言っていたけど、人生って生きるのも一度だし、死ぬのも一度だし、覚悟が決まったとんでもない王者と一緒になれば自分ももっと強くなれるかなと思って」。
UVERworldに挑むため、対バンが決まった日から緊張感を持って自分を高め続けてきたという。最後には、デビュー日である1月20日にリリースしたばかりの最新曲“UBU”をライブで初めて披露した。これは、この日に歌うことを想像しながら作った曲で「10年の思いと、こんなに強い人と一緒に立つという思いと、いろんなものがこの曲の歌詞を書かせてくれました。UVERworldさんとのこの日がなかったら、絶対に生まれていない歌詞」だと語った。《猫ババしたい あの人の才能》というラインは、つくづくアーティストにとって書くのに勇気がいる歌詞だと思う。そこまで生き様を生々しく音楽に刻み込むのが、NakamuraEmiなのだ。《ちらつく引き際 夢は残酷さ》のあとに続くフレーズは、《でもやめられない》。そうやってNakamuraEmiは、次の10年も歌い続けるのだろう。
今年はNakamuraEmiにとって、記念すべきデビュー10周年イヤー。この日の夜、10周年記念サイトもオープンした。4月からは2か月連続『NakamuraEmi 10th Anniversary「背負い投げ」』を開催し、4月18日にはRHYMESTER、5月15日にはTHA BLUE HERBをゲストに迎えることも発表された。UVERworldとの対バンで幕を開けた10周年イヤーは、NakamuraEmiとさまざまなアーティストやファンのあいだで、大きな愛とリスペクトの循環が繰り広げられる幸福な1年となりそうだ。
テキスト:矢島由佳子
Photo:福政良治
NakamuraEmi 10th Anniversary 『 背負い投げ 4本目 』
@KT Zepp Yokohama セットリスト
・UVERworld
SE.WICKED boy
01.ZERO BREAKOUT POINT
02.PHOENIX AX
03.PRAYING RUN
04.Eye's Sentry
05.ALL ALONE
06.EN
07.Ø choir
08.7日目の決意
・NakamuraEmi
01.メジャーデビュー
02.火をつけろ
03.かかってこいよ
04.使命
05.雪模様
06.Rebirth-MPC ver-
07.梅田の夜
08.投げキッス
09.YAMABIKO
10.PRAYING RUN × スケボーマン w/TAKUYA∞
11.UBU