評判の最新のバイロイトの「リング」を聞いた。全体として云えることは、バイロイトの特殊なオケピットからのオーケストラの音が、特有の雰囲気を残しながらも、明瞭にとらえられていること、即ち、歌手とオケの音が混濁せずにきっちりセパレートされていることなど、録音のよさに感服した。今でも時々 NHKからのバイロイトライブをFMで聴くが、はるかに秀れていると思う。ティーレマンの解釈によるものなのかは判然としないが、木管や内声部がはっきり聴き取れることも大きなメリットである。
歌手については、50年代から60年代の往年の歌手の名唱が耳にこびりついているせいかもしれぬが、個々にみれば、ばらつきはあるものの全体として軽量級。指揮とオケに関して云えば、流石はバイロイトのオケ、ヴァーグナーを知り尽くしている素晴らしい表出力である。金管が、昔に比べるとやや軽くなったかなという感じはするが、ホルンは見事。木管の天馬空を行くが如き、テクニックと響き、そして弦楽器の昔ながらのうねるような重厚感、いずれも非の打ちどころなし!
ティーレマンの指揮は、往年の巨匠が醸しだしたような味のある部分と、現代風のスピード感と軽さが混在していて、やや統一感に欠けるところがある。ただ歌手にとっては、アゴーギク、フレージングなどの面で歌いやすい指揮だと思った。オペラハウスでのキャリアの賜物であろう。
最後に、バイロイト劇場のアトモスフィアが非常にリアルに収録されている点で、これは出色のCDであることに間違いないと確信した。
古川一夫さん、お便りありがとうございます!
ありがたい感想を頂戴し、スタッフ一同喜んでおります。
このリング、バイロイト初体験の方からベテランのワグネリアンの方々まで、多くの方に支持される内容のようで、反響も大きいです。
また、古川さんも言及されている音質についても評判がとても良いのがうれしいところ。
ここのところ、ネットラジオが急速に普及し、コアなファンの皆さんはバイロイトのライヴを時を置かずして楽しめるのが実情であり、「わざわざCDで聴かなくても・・・」という意見もあるのではないかと若干の心配がありました。が、やはりCDの高音質で聴けるというのは大きな価値としてみなされているようで、ホッとしているところです。
バイロイトプロジェクト、今後もリリースが続きますので、どうぞご期待ください!
「オーパス・アルテ ハイビジョンオペラ プレミアムセレクション vol.1」が発売されたことは、非常にうれしく思っている。
カセットハードディスク「iV」については、パソコン系雑誌でその登場を知ってはいたのだが、実際にコンテンツ、しかもオペラで登場するとは思っていなかった。よくやってくれました!
しか~し、Vol.1の収録コンテンツは、すでにDVDを保有しているものばかり。「HD画質だから」というのは理解できるのだが、二重に買うにはサイフの負担が大きい。プレイヤーも購入しないといけないので・・・(T_T) ということで、いまだ購入できず。
Vol.2が出たら、Vol.1も「やけくそ」で購入するかもしれません。
できれば、国内未発売のものが入っているとうれしい。ちなみに、コヴェント・ガーデンの「サロメ」なら、DVDを持っていますが買います!!!!!
血まみれのシーンを高画質で見たい、というのはちょっと悪趣味?
大島さん、お便りありがとうございました!
「よくやってくれました!」のお言葉に、スタッフ一同感涙にむせんでおります。
しかも、DVDも多く保有していただいているようで、本当に励みになります。
「iV」は日本語字幕付でハイビジョンオペラを楽しめる現状唯一の商品です。大島さんの貴重なご意見を参考にさせていただき、今後もますます展開していきたいと思っておりますので、どうぞご期待ください!
サロメの血まみれシーン、ハイスペック映像で見るとド迫力でしょうねー。
人によっては卒倒するかも!?
でもあのシーンは、えもいわれぬ美しさをたたえていると個人的には思います。
この前、ネーデルランドオペラの《ラインの黄金》を観たが、これは面白かった。
なんと言ってもオーディの演出とその他の装置・照明・衣装が秀逸。
歌舞伎の花道のような場所での演出も面白い。炎もよくもまぁあんなに使えるもんだと感心。
可動式の壁と照明が場面場面で効果的に使われていて飽きさせない。
また、ニーベルハイムの住人を見ていると、まるで映画の「ロード・オブ・ザ・リング」を観ているようだ。
オペラが苦手だとしても、この演出と衣装、照明は男心をくすぐる。
冒険しているかのようなドキドキ感が沸いてくる。
特典映像も面白い。本公演を深く掘り下げるには充実な内容である。
歌手陣の中ではローゲ役が見事。
指揮ヘンヒェンの進行は随所で「重み」がほしかった。すんなり行き過ぎている感が否めない。
あとの3夜分は、シルバーウィークにじっくり観ていきたい。
オーパスアルテはバイロイトとも契約したらしいですね。、
一生で1回行けるか分からないバイロイトの公演映像を見られるのは素晴らしい。
ただ、出来れば日本語字幕をつけてほしい。
指環おじさんさん、初めまして。そして、投稿ありがとうございました!
ネーデルラント・オペラの《指環》、おかげさまで巷でとても好評です。
ちなみに、すでにご存知かもしれませんが、『レコード芸術』の9月号の「DVD発クラシック名作劇場」で、舩木篤也さんがこの映像を礎に、《指環》を論じておられます。そちらもぜひご覧になってみてくださいね。
バイロイト、日本語字幕付のリリースももちろん検討しております。続報ありましたら、またこのかわらばんでお伝えしますので、お楽しみに!
サントリーホールでは、〈モーツァルト&ダ・ポンテ三部作〉というシリーズを昨年から始めていて、昨年は《フィガロの結婚》、今年は《ドン・ジョヴァンニ》をホール・オペラ形式(オーケストラと歌手が同じ舞台の上で演奏・演技する)で上演した(来年は《コジ・ファン・トゥッテ》の予定)。
両演目とも見たが、演奏・演出・演技・歌唱すべての面でなかなか充実した舞台になっていた。とりわけ昨年の《フィガロ》は秀逸で、スザンナ役のダニエル・ドゥ・ニースが魅力満点、お茶目でコケティッシュ、でもしっかり者のスザンナを見事に演じていた。彼女はいま、人気、実力ともに絶好調のソプラノではないだろうか。DENONから出ているヘンデルの歌劇《ジュリオ・チェーザレ》にもドゥ・ニースはクレオパトラ役で出ているが、一途に恋をする若い女の可笑しさ、奔放さ、憐れさ、哀しさをなんと魅力的に演じ、歌っていることか。グラインドボーン音楽祭のライヴ映像で、随所に見られるダンス・シーンなどの現代的な演出効果と相まって、笑いと涙を誘うドゥ・ニースに観客といっしょに酔いしれてしまう。
今年はヘンデルの没後250年にあたり、ヘンデルの歌劇も見直されるだろうが、この《ジュリオ・チェーザレ》など、〈オンブラ・マイ・フ〉で有名な《セルセ》とともに話題に上がるオペラになるだろう。
この2枚組のDVDには、特典としてドゥ・ニースがこの公演中、グラインドボーンで過ごした様子を追いかけたドキュメンタリー映像が収められている。宿泊しているコテージの紹介や、ランチのパスタ作りや、歌劇場の紹介や中庭での音楽祭理事長との対話や、歌の練習風景や、楽屋での化粧や衣装合わせなどのシーンが、彼女の明朗な語りを交えて映し出されていて、なかなか興味深い。
オペラをDVDで手軽に見られるようになって、オペラ鑑賞の愉しさが倍加したことは間違いない。DENONが今回特別限定企画した<STANDARD OPERA 20>は、名演奏・名舞台のDVDが揃っていて、20作品いずれもオペラの醍醐味を存分に堪能させてくれた。そのなかでも、クライバー指揮、ゼッフィレッリ演出、オブラスツォワ、ドミンゴ主演の《カルメン》と、カラヤン指揮・演出、ドミンゴ、カップッチッリ、コッソット主演の《イル・トロヴァトーレ》と、グシュルバウアー指揮、シェンク演出、ポップ、グルベローヴァ、ベリー主演の《こうもり》は、同曲DVDの中で最高のものだと言っても過言ではないだろう。しかもそれらが2,800円とは、ただただ感謝。
近代のオペラ作品の中には「ルル」や「ヴォツェック」「イェーヌファ」のように、人間の暗部を描いた救いようのない傑作が多い。そんな中でも「ムツェンスク郡のマクベス夫人」は飛び抜けた傑作だと思った。それは変幻自在ともいえるショスタコーヴィチの作曲技法によるものだと感じた。前半を視聴して、やや違和感があった。第一にあまりにもオーケストラが雄弁で”歌つきの交響曲ではないか”と感じた。しかもオケの音が上質すぎて、ロシア風でないし、悲劇風でもない。第二にカテリーナはマドンナ風でしかも寝室がガラス張りということで、ここにもロシア的なものがない。しかし、幕が降りて、身動きできないような感動に襲われた。やはり第四幕が白眉だ。
精神病院のような、ナチの収容所のような舞台はやや違和感があるが、冒頭、老囚のモノローグと囚人の合唱は救いようのないこのオペラを象徴している。カテリーナの「森の奥深くに」は行き場を失った人間の無限の絶望感が歌われる。オテロ、デイスデーモナの「柳の歌」に通じるものがある。幕切れ、カテリーナが絞殺された後の囚人の合唱がレクイエムのようにも聴こえた。幕が降りると、感動の感情はなぜか、浄化、永遠へと純化されていった。
一口でいえば、ロシア的なものがないのは不満だが、実に感動的な「ムツェンスク郡・・・」である。片山杜秀はこのオペラの時代背景を深く掘り下げ、しかも分かりやすく解説しており、感心した。特典映像も大いに参考になった。
ところで、ムツェンスク郡というのはどこらへんかと、地図を広げてみた。
ロシア南西部、オリョール州にあり、人口47,800とある。モスクワより330キロくらいのところのようだ。
カテリーナが身を投じた川にも興味が沸いたが、手元にある資料に川の名前はない。
このオペラの日本初演を手元の資料で当たってみたら、1992年のケルンオペラの来日公演とある。「カテリーナ・イズマイロヴァ」は1973年、二期会が初演している。
1996年、ゲルギエフとマリンスキーが来日したときは原作と改定作の連続上演を行っている。
ライナーノーツを見ると、「ポッペアの戴冠」は”欺瞞から生じた荒廃、裏工作、脅し、離縁、中傷、追放、殺人だらけのオペラ”とある。確かに、筋書きはギリシャ悲劇、シェークスピア悲劇も真っ青だが、美しい歌手が次々と登場し、美しい声で詠唱を繰り広げる舞台を視聴していると、筋書きなどどこへやら、天上の世界に行ったように陶然となった。
モンテヴェルディのオペラは「オルフェオ」の解説によると、初期のオペラである「モノディ”歌うように語る”」の範疇ということになるが、「ポッペアの戴冠」はモノディの集大成なのだろう。「オルフェオ」に比較して、器楽伴奏は極力抑えられ、チェンバロの音しか聴こえないといってよい。(このチェンバロが過不足なく素晴らしい)
このDVDの印象は「天上のオペラ」であるとともに、「浄化されたオペラ」「悟りのオペラ」「時世のオペラ」でもあると思った。
このオペラの台詞には多くの箴言が含まれている。また「死」という言葉が沢山でてくる。登場人物のそれぞれが自分の死を予感して、詠唱している場面が多々ある。恐らくこれは死を前にした(1642年完成)モンテヴェルディ(1567~1643)自身が自分自身と対話しながら作曲したのではないかと思われる。
したがって、視聴感として、オットーネの悲劇性や不倫者が愛を成就するという矛盾よりも「浄化」「悟り」といった印象が強く残った。
この作品を「天上のオペラ」という次元まで高めたのは演出家オーディの手腕によるところが大きい。
名歌手を揃え、その演出も見事。一例を上げると、第一幕後半(16)は台詞もリアルだがが、ポッペアとネローネの演技も生ナマしく、性愛さえ感じる。
舞台も第一幕は大きな球と太い柱だけという簡素さ。これがうまく活用されている。舞台、衣装、照明の統一感も素晴らしい。
なんといってもパウル・シェフラーの音楽教師が最高です。作曲家の直線的で(途中、理念と現実との間で揺れ動くシーンがありこの言葉が適切かどうかは分かりませんが)、誠実な人物像に対し、妥協的かつ小市民的な音楽教師、オペラに入る前の序幕には、作曲家の芸術理念に対立する「俗物」達が様々登場しますが、この音楽教師こそ(ツェルビネッタではなく)、最も作曲家と鋭く対立する人物像のように思われてなりません。作曲家の理念に共感を示す唯一の人物であるにもかかわらずです。序幕の大きなテーマである大衆の俗物性に対する「諷刺」という喜劇的性格が、音楽教師にも強く出ています。まさにお人よしで小市民です。給料の話を持ち出す点などその典型といえます。
このような人物に、本当に奥深く美しい、そしてなんといっても温もりのある声の持ち主であるシェフラー(このとき70歳近いとは到底信じられません)が、ぴったりはまっています。人のよさと素朴さから滑稽が自然に出ています。困り果てる際の、声の表現力など人間味溢れ見事です。意外な身長の低さや、年を取りくたびれた様子などもプラスに作用し、まさにホーフマンスタールが描いた音楽教師像そのものといえるのではないでしょうか。
このシェフラーだけでも、この映像の価値は十分にあるといえますが、加えてジェス・トーマスも最高です。「全く繊細に、殆ど少年のようでなければならない」(ホーフマンスタール)バッカス像とは、かけ離れてしまってはいますが、これだけ輝かしいテノールは、今では考えられません。
コラム道場いつも楽しみに拝読しています。オラ鳥男さんのピンポンパン・ゲームで思い出したのが、日本の高度経済成長時代に一世を風靡した幼児向けTV番組「ママと遊ぼう! ピンポンパン」のピンポンパン体操(作曲小林亜星、作詞阿久悠)です。荒川静香のトリノ・オリンピックから遡ること40有余年。恐るべしトゥーランドット。
赤い靴さん、はじめまして。オラ鳥男さんへの反応ありがとうございます!
ピンポンパン体操、初めて聞いたのですが、なぜか初めてとは思えない、どっかで聴いた事あるような曲。
ちなみに検索していたら「ドリフのピンポンパン」というのも発見。モーニング娘。のピンポンパン体操ってのもありました。
いやはや、いにしえの三人衆が現代にも脈々と影響を与えているのですね…(遠い目)。
先日“ピンポンパンゲーム”をやってるテレビ番組があり、
「このピン・ポン・パンの名前の由来はプッチーニ作曲のトゥーランドットに出てくる…」
と写真つきで解説がありました。
そこですぐに思い出したのが『なりきりオペラ・ガイド』。ピン・ポン・パンの写真を観た瞬間、あのやりとりを思い出して笑ってしまいました。
本当にあんなやりとりがあったとしたらと思うと、可笑しくてしょうがないです。
トゥーランドットは好きでよく観るんですけど、次から違う見方をしてしまいそうです。
今後もコラムの更新楽しみにしております!
オラ鳥男さん、ありがとうございます!
広瀬さん、今後も想像力爆発でいろんなオペラの脇役になりきるので、ご期待ください。
しかしあのお三方が「ピンポンパンゲーム」の由来だったとは知りませんでした・・・。
こんなくだらないことを投稿していいのか分からないが
ひとこと言いたい。
ニュースのところの、ベームのDVDに関する記事で、
レリ・グリストがかわいいと書いてあった(しかも強調したピンクで…)。
まあ、確かにかわいい。
だがしかし、以前TDKから出ていた「椿姫」の
ヴィオレッタ役:ステファニア・ボンファデッリの方が断然かわいいと思う!
特にレコード店でもらった廉価版のチラシの表紙!!
あの上目づかいの表情はこたえられない・・・。
なぜこれをDVD自体の表紙にしなかったのか、制作担当の人に小一時間問いたい。
ちなみに、そのチラシのボンファデッリの下に映っているクライバーの写真、
後ろにおじさんが写りこんでますよね。
この人、手塚治虫先生の『アドルフに告ぐ』に出てくる
ゲシュタポ極東諜報部長:アセチレン・ランプにそっくりだ。
ステファニーさん、熱いご意見ありがとうございました!
ボンファデッリ、オペラ歌手の中でも屈指の美貌をたたえてますね。この投稿をいただいてから、気になって調べてみたところ、ボンファデッリ、ここ数年、活動しているふしが見当たりません。もう舞台に出演してないのでしょうか!?
もしかして、さながら原節子のように「美しいイメージのまま表舞台から消え去りたい…」という一心で、静かにフェードアウトしていたりするのでしょうか(勝手な妄想ですが)。
どなたか、ボンファデッリの近況をご存知の方がいらっしゃいましたら、教えてください。
ボンファデッリのかわいい上目遣い写真のある「廉価版チラシ」は「STANDARD OPERA 20」のチラシですね。
ご指摘のクライバー写真、拡大してみました。
(クリックで拡大)
この後ろのお客さんのことですね。ステファニーさん、すごいところに目をつけてますね。
そして確かに似てる気が…(リンク先写真4枚目が特に)。
というか手塚の作品でよく出てくるあの人物(たまに頭にロウソク立てている)、「アセチレン・ランプ」という名前だったんですね。ヒョウタンツギは知っていたのですが・・・。
個人的にはこのお客さん、エルヴィス・コステロに似てると思います。
上記お便りを随時募集しています。
いただいたご意見は、できる限り本ページ内にアップさせていただきます。
なによりも、皆さんのお便りは、私たちスタッフの血となり肉となり、大事な財産となるでしょう。
たくさんのお便りをお待ちしております!