レポート
- ●「Vinyl Journey」~第1夜 アニメクラシックス~
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日本コロムビアが保有するアナログレコードの音色に耳を傾けながら、当時の記憶に心を委ねるプレミアノスタルジックイベントシリーズ「Vinyl Journey」。その第1夜が2024年2月7日に開催された。
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本イベントは、プレイリストメディア【NIPPONOPHONE(ニッポノホン)】や南青山にあるMusic Hall &Bar【BAROOM(バルーム)】とタッグを組みお届けするイベント。古き良き音楽カルチャーの発信を通して、今の音楽シーンを新しく捉え直すきっかけを創り出すことを目指している。
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第1夜は「アニメクラシックス」をテーマとし、音楽プロデューサー/音楽評論家の冨田明宏氏と音楽プロデューサー/ミュージシャンのミト氏(クラムボン)の2名がゲストとして登壇。2024年3月20日(LPレコードの日)に発売が決定しているアニメーション音楽アナログレコード名盤を試聴しながら、ふたりがレコードなどの魅力について熱く語った。
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イベントがスタートすると、ゲストのふたりがTVアニメ『悪魔くん』のOPテーマ曲「悪魔くん」のミュージックに合わせて登場。冨田氏が「ミトさんと言えばVinylジャンキーじゃないですか(笑)」と振ると、ミト氏は「最近はこれ(レコード)にいくらかけているか分からないくらい資産を投入している」と回答。続けて、「(レコードの説明などが書かれた)帯は日本特有の文化で、その帯付きのレコードが海外の方から大人気。国内でレコードは手に入りにくくなっている」と、昨今のレコード事情についても解説した。
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挨拶もそこそこに、さっそく登場時に流れた「悪魔くん」、および同作のEDテーマ曲「12 FRIENDS」についてのトークを展開。「悪魔くん」の作曲を担当したのは、『ガラスの仮面』OPテーマ曲なども手掛けたつのごうじ氏。つの氏はベーシストでもあることから、「ベースラインのすごさに驚いた」と冨田氏は言葉にする。それを受けてミト氏は「80年代はコンテンツの説明を(楽曲に)入れるのがアニソンのスタンダードだった。それとオシャレさがいい意味で乖離しているのが面白かった」と、80年代アニソンの魅力についても熱弁した。
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また、「12 FRIENDS」については冨田氏が「当時の最新のヒップホップをやっている」と一言。ミト氏は「音色はミネアポリス・サウンドで、あまりにもとんでもないエンディングだった」とセンセーショナルな楽曲だったことについても触れた。
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その後、実際に「12 FRIENDS」を試聴することに。今回のイベントでレコードをかけるのは、日本コロムビアでマスタリングなど中心に、カッティングなども担当する技術部の富岡氏。円形ホールの高音質な音響空間でプロがレコードをかけるという構成からは、本イベントの“音楽へのこだわり”をひしひしと感じる。駆け付けた方々はその贅沢なサウンドに耳を傾け、酔いしれた。
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試聴後、「音やキックの感じが、ヒップホップのひとつのスタイルを作ったグランドマスター・フラッシュの『ザ・メッセージ』に近いと感じる」と冨田氏。ミト氏は「当時はまだ日本ではヒップホップがアンダーグラウンドだったところをフックしながらやっている。アニソンはそういう挑戦をしてきた」と続ける。また、録音については「ちゃんと厚みもある。アナログのよさは音の厚み!」と、その魅力について力説した。
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続いて取り上げたのは、TVアニメ『ONE PIECE』の初代OPテーマ曲「ウィーアー!」。本曲はこの度、初めてアナログ盤化されることが決定し、2024年3月20日にリリースされる。本曲の作曲を担当したのは、数々のアニメ・ゲーム音楽を生み出してきた田中公平氏。二人は田中氏のアニソンは「詞が先行であることがすごい、そしてとてつもない魅力に繋がっている」と熱弁。1,000曲以上の楽曲を生み出してきたミト氏でも詞が先行の場合は20曲あるかどうかだそう。冨田氏は「冒頭の『ありったけの』という部分が最初は不思議なメロディ運びだなと感じたけど、結局はあそこのリズムやメロディがフックになっているから中毒性が高くなる。この曲が古く感じない理由にもなっているのかもしれない」と回顧。ミト氏は、「不思議なもので、リリックにしっかりと当てはまっても面白くない。本当に難しい」と作曲の奥深さについて、経験談も踏まえて解説した。
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ふたりはその後、藤林聖子氏の詞自体がまずは魅力的過ぎること、さらに「勇者王誕生!」「御旗のもとに」などを生み出した編曲担当の根岸貴幸氏・田中氏のタッグが生み出す楽曲は「さすが」と絶賛。そして、「ブラスの鳴りとシンセサイザーがいい感じで分かれている。これがCDだとギラついてしまうが、アナログだと太さや密度感が違う。重心がある感じがアナログならでは」と、レコードならではの特徴について改めて言葉にした。
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その流れから「ブラスのバキバキとした音は、デジタル収録だと上手くいかないことがある」という話に。続けて、「レコードや音楽にはひずみが重要。アナログにもひずみがないといい音にはならない。あくまで物にもよるけど(笑)」と、プロならではの視点からアナログのよさについて解説した。
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続いて会場に流れた楽曲は、TVアニメ『聖闘士星矢』の「ペガサス幻想」。ミト氏は本曲について「洋楽のハードロックを聞いているよう」「『聖闘士星矢』と『北斗の拳』はアニソン界にハードロックの要素を120%にぶち込んだ2台巨頭」と評す。続けて、「ロック調の曲をカッティングして聞いてみると面白いと思う」と、二人とも今後の展開にワクワクしている様子だった。なお、今回のイベントに合わせて、歌唱したNoB氏からコメントが到着。NoB氏は、「『ペガサス幻想』は自分にとって大切な曲。アナログ盤も楽しんでいただければ」と、メッセージを届けた。
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続いて、3月20日にリリースされるレコード「銀河鉄道999 主題歌挿入歌集」のなかから、ささきいさお氏が歌唱した「銀河鉄道999」を視聴。ふたりは「かっこいい」「包まれている感じがすごい」と感動。また、ミト氏は当時と今の収録環境の違いやアンチフェイズがアナログ(レコード)には利かない理由を説明しながら、「それでも、今よりダイナミクスで壮大に聞こえるからすごい」、冨田氏は「(作品の音楽を担当した)青木望先生をはじめ、制作者の方々が“子供向けだけど、子供だましには作っていない”」と、リスペクトの気持ちを込めてそれぞれの印象を言葉にした。
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イベントも終盤に差し掛かったところで、「交響詩 銀河鉄道999」より、「終曲-別離、そして新たなる出発(たびだち)」~「銀河鉄道999」(THE GALAXY EXPRESS 999)」のメドレーを試聴。「日本のアニソンに、当時はフレッシュだったロック音楽がしっかり使われた黎明だったのでは」と言及するミト氏は続けて、ゴダイゴのタケカワユキヒデ氏が本曲を12時間で書き上げた、という逸話も紹介した。
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イベントの締め括りに選ばれたのは、「交響詩 さよなら銀河鉄道999 - アンドロメダ終着駅-」より、メアリー・マッグレガー氏の「SAYONARA」。メアリー氏は、「Torn Between Two Lovers」が音楽チャート・Billboardで2週間トップになるなどの有名アーティスト。そんな海外の歌い手をフックアップしていたことに二人は驚き、本曲を「アニソンの歴史を語るうえで重要な一曲」と言及する。また、「その文化は日本のアニソン界に脈々と受け継がれている」とコメントし、代表例として、TVアニメ『傷物語』でクレモンティーヌ氏をフックアップした音楽プロデューサー・神前暁氏を紹介。「アニソンの文化をみんなで繋いでいる。可能性は無限大」と熱く語った。そんな「SAYONARA」が流れるなか二人がステージを後にして、イベントの幕は閉じた。
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「レコード」と言えば、“コレクターのラグジュアリーな趣味”という印象の人もいるのではないだろうか。実際、空間も機器もこだわればこだわるほど、ミト氏のように資産をつぎ込むことになるだろう。しかし、今回のイベントでも紹介されていたレコードを挟んで聞けるポータブルレコードプレーヤー《サウンドバーガー》など、実は気軽にレコードを楽しめる時代になっている。世界中から注目が集まるレコードが、いい意味で“ノスタルジック”ではなくなる時代が、すぐそこまで来ているのかもしれない。