『アニマル音楽ランド4&5』(COCX-39813-4)と『アニマル音楽ランド3』(COCX-39688)、『アニマル音楽ランド』(COCX-39561)に収録された楽曲も含めた全BGMを、作曲者亀山氏と選曲担当宮葉氏が語りつくした楽曲解説を一挙掲載!!
1.「動物戦隊ジュウオウジャー」(インストルメンタル)
1曲目を飾るのは、OP主題歌のメロオケ。「アニマル音楽ランド1」のトラック21に収録したメロオケとは異なり、ここでは、1コーラス目をGt、2コーラス目とサビ繰り返しをブラスに編集してフルコーラス収録している。演奏は、主題歌歌手の高取ヒデアキ率いるZ旗で、ツインギター、ホーンセクション(Tp×2、Tb、Sax)を含む、総勢10名のミュージシャンによるゴージャスなサウンドも聴きどころ。また、アフリカンでヒロイックなイメージを表現すべく、パーカッションにはフロアタムとティンパニが加っている。劇中では、視力が覚醒したイーグルが、ボウガンズの攻撃を跳ね返す第3話を皮切りに、ゴーカイジャーと共闘した第29話で選曲。他に歌入りと編集して選曲される例もあり、第11話ではジュウオウジャーの変身名乗りまでメロオケを使用し、5人のバトルから「最高の王者~」と歌入りに差し替え、高揚感を高める選曲がなされている。逆に第33話のように歌入りから入り、スモートロンを撃退する場面をメロオケに差し替えて使用された例もある。
2.最も邪悪な遊戯
(1)M-EX3(サブタイトル) (2)M26b(デスガリアンのテーマ・Short) (3)M220(伝説) (4)M26c(デスガリアンのテーマ・リズム刻み無し)
トラック2は、サブタイトル音楽に続き、サジタリアーク内で策略を練るデスガリアンの面々をイメージした音楽集。M-EX3は、サブタイトル用の音楽で「ジューランドのテーマ」が短く用いられている。「当初、サブタイトルに音楽を付けない予定だったのが急遽必要になりました」(宮葉氏)とのことで、EXのナンバーが与えられている。「譜面はなく、M8をベースにエンジニアの三浦克浩さんに作ってもらいました。ホルンはシンセで加えています」とは亀山氏。M26bは、「デスガリアンのテーマ」M26のバージョン違いで、イントロのリフを外し、すぐにメロディが立ち上げるようになっている。M220は、追加音楽メニュー2からのサスペンス曲、「SE的な曲でちょっとミニマルっぽい低音の動きを入れています」とは亀山氏。選曲例としては第28話のケタスの回想シーン、第35話でバングレイに捕らわれた大和の場面がある。M26cは「デスガリアンのテーマ」M26のリズムの刻みを抜いたバージョン違い。「劇中ではこちらを使うことが多いです」(宮葉氏)とのことで、第1、2、5話のサジタリアークの場面でお馴染みである。また、第10話での選曲例が面白いので紹介しておこう。まず、ホログラムで現れるジニスの場面にこのM26cが選曲され、リズムなしの楽曲が実態のないジニスと上手く合っており、続いて光のドームに街が覆われる場面からM26へと編集し、ディトーションギターが危機感を煽る選曲となっている。
3.ブラッドゲーム・スタート
(1)M110(あれは…?) (2)M109(大ショック!) (3)M19(サスペンス) (4)M106(謎解き) (5)M46(神秘) (6)M67(迫る!)
地球に降り立ち、人知れず暗躍するデスガリアン。トラック3は静か目のサスペンス曲を集めてみた。M110は、第1回録音録音の追加分からのサスペンスブリッジで、「M106と同じようなサウンドで、キャラが立っていない短い曲です」とは宮葉氏。劇中では専ら疑問、疑惑の場面で用いられ、第24話では気絶していた大和が目覚め、視界に母・和歌子の姿が浮かぶ場面で選曲。母は故人であるため、音楽も疑問を提示する意味でこの曲が使われている。M109は、SE的な短いタッチで、選曲例としては第27話でバングレイが街を見下ろす場面がある。M19はクラリネットがメロディを奏でる「動物戦隊のテーマ」のバリエーション。「サスペンスで使えるようテーマメロはかなり崩しています」(亀山氏)。宮葉氏によれば「サスペンスはもちろん、シリアスや悲しい場面にも合う、使い勝手の良い曲ですね」とのことで、第5話では人間を怖がるラリーを慮る5人、第18話でトウサイジュウオーに負けた5人がキューブの中で悔しがる場面、第20話では操が落ち込む面倒臭い場面、第21話はタスクが操にきつく当たる場面など様々なシチュエーションで選曲されている。M106は特定のモチーフを持たないシンセ主体の1曲。「第1回録音のサスペンス曲、M41~44が割とメロディが立っていたので、あまり主張しない雰囲気ものが欲しいと思って発注しました」(宮葉氏)。第6話で、ジュウオウジジャーとラリーが再会する場面が初出。他に第28話で、6人が変身を解いたマーベラスに疑問をぶつける場面での選曲例がある。M46は、シンセによる雰囲気曲。「メロディのないアンビエントミュージックですね。映像バックの様々な用途に使えるよう意識しました」とは亀山氏。主な選曲例として、第1話で大和がリンクキューブを発見する場面や、第28話のケタスのホログラムが現れる場面がある。また「ヘンな場面で部分的にアクセントとして使うことが多いです」(宮葉氏)とのことで、第22話では、イルジオンが無機物を爆発物に変える説明をする場面での選曲例がある。M67は、第1回録音分からオーケストラによるブリッジ音楽。高音のトランペットがデスガリアンを表しており、「サジタリアークでのラストシーンで良く選曲しています」(宮葉氏)とのことで、第5、23、31話の選曲例がある。
4.メーバ発生!
(1)M31b(メーバ出現・リズム追加) (2)M231(猛獣注意) (3)M211(リズムアクション) (4)M33(怪人・猛威)
作戦遂行の最中、ジュウオウジャーと遭遇するデスガリアン。突如として繰り広げられるアクション!ここでは物語の前半戦をイメージした4曲を選んでみた。M31bは、オリジナルのM31では途中から出てくるリズムが入るタイミングが異なる。従ってbのナンバーが振られてはいるが、TDによるバージョン違いではない。「すぐに怪人が襲ってくる雰囲気を出したかったので、後半から出るリズムを早く入れてもらいました」とは宮葉氏。第22話で、イルジオンがステッキで色々なものをタッチしていく場面、第24話で死んだはずの人間が蘇り、パニックになる場面の選曲例がある。M231は「カッコいいだけでなく、ファンクっぽいリズムでコミカルな部分を表現してみました」(亀山氏)と言う、アクションよりのコミック音楽。第22話で、ジュウオウタイガーとシャークの女子二人が、ザワールドをおだてて乗せようとする場面で短く使われている。M211は、ティンパニをはじめとした打楽器群とワウギターが絡み合うバーバリックなアクション曲で「潔く1コードでいきました」と亀山氏。続いて宮葉氏が「M38がこんなイメージで発注していたのですが、実際にはテンポが遅くコードも明るめだったので、当初の狙いが出るように改めて発注してみました」と、その意図を語る。なお、ワウギターのカッティングは宮葉氏の指定で「何か野獣とかジャングルというと、ワウギターのイメージがあるんですよ」とのこと。M33は「アニマル音楽ランド1」のトラック32に収録したM32のテンポ違い。宮葉氏によれば「その場の尺に合ったほうでM32とM33を使い分けています」とのことで、第3話でボウガンズが高速道路の車を襲撃する場面での選曲例がある。
5.サバンナのメロディー
(1)Gtr_juohger (2)M401(EYES OF LION)
ここではレオ絡みのEXTRA音楽を2曲お届けしたいと思う。1曲目のGtr_juohgerは、第8話からミュージシャン志望の青年・大輔が作ったインストのギター曲。本エピソードのみの劇中曲だが、亀山氏が新規に作曲している。劇中ではレオが大輔のヘッドフォンで聴かせてもらい、ノリノリになる場面と後半、オーディションで同曲を演奏する大輔&彼のヘッドフォンを耳にしたレオが大声でヤバイカーに立ち向かう一連の場面で選曲。M401は第40話用の楽曲。いじめられっ子だったレオの回想シーン用に用意された音楽。一聴すれば、それと分かるパロディ音楽であるが、メロディはしかと「動物戦隊のテーマ」が奏でられており、作品の音楽であることがしかと刻み込まれている。
6.「覚醒!ジュウオウジャー」(インストルメンタル)
トラック6は等身大アクション曲「覚醒!ジュウオウジャー」のインストをフルコーラスで収録。作曲は『手裏剣戦隊ニンニンジャー』の主題歌でスーパー戦隊シリーズに参戦を果たした歌手の大西洋平。編曲はシリーズ、久々の参加となる大橋恵で、サックスの音色のシンセがメロディ奏でる。演奏は大西率いるミラクルチンパンジーが担当。
7.優しき獣たち
(1)M8b(ジューランドのテーマ・Short) (2)M53(温もり) (3)M5(ゆったり) (4)M58(寂しさ)
戦いから離れ、ジュウオウジャーを優しく包み込む、束の間のひととき。トラック7は木管やストリングスを中心に紡がれる抒情的な音楽集。いずれも第1回録音からの楽曲を集めてみた。1曲目のM8bは、「ジューランドのテーマ」のショートバージョンで、bのナンバーが振ってあるがTDによる別バージョンではなく、M8と共通スコアによる別テイク。M53は、共通メロを持つ4つの日常曲(M52~55)の中で最も心情寄りの1曲で、ストリングスの伴奏にフルートとオーボエがメロディを奏でる。「タイトルに“温もり”とあったので、ちょっと柔らかい音色を持つ木管で、そうした雰囲気を表現してみました」とは亀山氏。第2話の巨大戦後、アトリエの場面で短く使われたのを皮切りに、第6、9、16、22、25、31話など、巨大戦の後か、ラストシーンで選曲されることが多い。M5は「A.主題歌アレンジ」からの1曲で、「主題歌のコードは全て無視して、ストリングスのテクニックで美しく聴かせてみました」とは亀山氏。勇壮な主題歌が美しい心情曲へ。まさにアレンジの妙味を堪能できる1曲といえよう。第35話のラストシーンでの選曲例がある。M58は、M53と全く同一の編成の心情曲だが、こちらは「大和のテーマ」のバリエーション。「ここでは“大和のテーマ”メロをより美しく聴こえるように変奏させています」(亀山氏)。劇中では、M53ほど使用例は多くないが、大和のお母さんが蘇った第24話のラストシーンで選曲。大和の主役エピソードだけに、締めの1曲として、これ以上の選曲はないだろう。
8.想いは遠く…
(1)M8-2(ジューランドのテーマ・ギター抜き) (2)M60(誤解) (3)M12(癒しの時)
懐かしいジューランドでの日々。トラック8は「郷愁」に絡めた音楽集。M8-2は、「ジューランドのテーマ」のバリエーションで、ギターを外したことでエスニック色が薄れ、静謐なイメージに。第1話でのOP主題歌前、大和がジューランドを見渡す前の場面にはこのM8-2を短く編集して使われている。M60は「大和のテーマ」のバリエーションで、アフリカンフルートが奏でるメロディに金属弦のフォークと12弦ギター(DBで、どちらも今泉洋氏が演奏)がアダルトなムードを醸し出す。第5話では人間界で受け入れられないラリーの回想シーン、第37話で、ラリーが鳥男(バド)と交わした会話を思い浮かべる場面での選曲例がある。M12は、ガムランのリズムでエスニックな味付けを施した「ジューランドのテーマ」のバリエーション。メロディは定番のアフリカンフルートだが、奏者はアドリブで他の楽曲との差別化が図られている。「M11と同じような曲調ですが、こちらのほうがウェットですね」とは宮葉氏。選曲例としては、第5話の山小屋での5人とラリーの場面がある。ジューマン同士が交流を深める場面ということもあり、やや明るめの曲調も含めて、この場面では欠かせない楽曲として上手くい機能している。映像では第1話しか描かれていない、ジューランドであるが、その分、音楽が果たす役割の大きさも実感してもらえると思う。
9.「わが故郷 ジューランド」(スキャット・Btype)
トラック9は五條真由美が歌う挿入歌のスキャットバージョンをフルコーラス収録。「アニマル動物ランド2」で聴くことができる歌詞付きとは異なり、全編を通してスキャットで歌われているほか、リズムセクションが外されている。原曲は劇伴の「ジューランドのテーマ」M8で、主題歌アレンジも手掛けたZ旗(演奏も担当)の籠島裕昌が編曲、亀山氏もその見事な仕上がりを絶賛する1曲である。ここに収録したスキャットバージョンは劇中での選曲を考慮して用意され、第28話では、大王者の資格を手にしたケタスがジュウオウホエールに変身して凶悪な怪物を倒す回想シーン、第30話では汚染された海を浄化してキューブホエールが現れる場面で選曲。いずれも女声スキャットが奇跡を彩り、まさに音楽と画が一体となった名シーンを生み出した。
10.Death Trap
(1)M42(気配) (2)M28b(計略・進行・ドラム抜き) (3)M37(怪事件発生)
怪しく蠢く何かの影――。トラック10は再び動き出したデスガリアンをイメージしたサスペンス音楽集。いずれも第1回録音分から打ち込みをメインとした3曲をセレクトしてみた。M42は、特定のモチーフこそ持たないが「楽器で敵の気配を表現しました」(亀山氏)とディストーションギターが用いられている。選曲例としては、ショッピング中のアムが邪悪な気配を察知する第7話、大和たちが手分けをしてスイッチを探す第10話、ゲームを再開しようとするグルーザの前にバングレイが現れる第23話の各場面がある。「デスガリアンのテーマ」M28の別バジョーンM28bは、リズムが外され、よりサスペンス色が濃厚に。「これはディストーションギターをデジタルロック風に置き換えてみました」とは亀山氏。選曲例としては、第28話のサジタリアーク内、クバルとアザルドの場面がある。M37は、シンセの音色で聴かせる1曲で、「このシンセのパターンは他で使っているので、全体のバランスを考えてここでも入れてみました」とは亀山氏。また、宮葉氏によれば、「特にテーマメロはあるわけではなく、なんとくピンチな状況に使える曲です」とのことで、第11話で、鳥男にジューマンの4人が翻弄される場面での選曲例がある。その他、第4話で大和たちがレオ&セラを探す場面を皮切りに、第14話で不破兄妹と出会ったアムがデスガリアンの気配を察知する場面と、様々なシチュエーションで使われている。
11.破滅への助走
(1)M66(愕然!) (2)M47(深まる謎) (3)M50(ミラクル!) (4)M210(地球最大のピンチ)
デスガリアンの作戦により、地球に危機が迫る! トラック10に続くサスペンス音楽集だが、ここでは重く、切迫感がある楽曲を集めてみた。M66は、「H.サスペンス」のM43&44のモチーフを流用したショートピースで、打ち込みだったM43&44に対して、こちらはオーケストラでレコーディングされている。劇中では使用頻度が高く、第32話のオモテウリャーの出現場面や、第24、36、37話では、デスガリアン出現を察知したジューマンの尻尾が跳ね上がる場面での選曲例がある。M47は、「G.アクション」のM35からメロディやリフを抜くなどしたアレンジ曲。M66もそうだが、こうしたバリエーションは指定ではなく、亀山氏のアイディアによる。「共通性を持たせて、匂わせるようなことは最初のコンセプトとして考えていたことです。特に新曲である必要がないものに関しては意識的にやっていますね」(亀山氏)。印象に残る選曲例としては、第10話のラスト、負傷した大和の前に鳥男が姿を現す場面がある。M50は、ストリングスの刻みが高揚感を醸し出し、30秒前後からブラスが「動物戦隊のテーマ」を重々しく奏でる。第30話で、海底で何者かに弾き飛ばされた大和が「きっと今の、キューブホエールだ」と5人に伝える場面での選曲例がある。M210は、追加音楽メニュー2から、「動物戦隊のテーマ」を用いて危機感を表した楽曲。「アメリカの映画音楽風のサウンドをイメージしつつも、“動物戦隊のテーマ”を入れてみました」(亀山氏)。第32話ノラスト、バングレイに敗北して変身解除した大和が連れ去られる場面での選曲例がある。
12.「デスデスデスガリアン」(インストルメンタル)
トラック12は山形ユキオが歌う挿入歌「デスデスデスガリアン」のギターメロのインストバージョンをフルコーラス収録。原曲は劇伴の「デスガリアンのテーマ」M26で、亀山氏自ら編曲も手掛けている。選曲例としては、第37話で、サグイルブラザーズの二人が人々を襲う場面がある。
13.王者VS破壊者
(1)M212(攻撃開始) (2)M64(敵の襲撃) (3)M39(互角の戦い) (4)M208(最終決戦!)
ジュウオウジャーVSデスガリアン、その互角の戦いをイメージした、重量感溢れるアクション音楽集。M212は打ち込みでオーケストラサウンドを再現したブリッジ音楽。「追加音楽メニュー1のM107と108がロックノリズムで割とノリが良かったので、怖さが欲しいと思ってオケのイメージで発注しました」とは宮葉氏。第21話で、ジュウオウエレファントが洞窟から海へ脱出しようとメーバと闘う場面で初めて使用された。第1回録音のブリッジ音楽M64は、M32と共通スコアの抜粋演奏曲で、第1話で地球にジャグドが現れる場面での選曲例がある。M39は「動物戦隊のテーマ」の変奏曲で、デスガリアンを表すディストーションギターが「動物戦隊のテーマ」に絡み合い、危機感を提示している。また印象的なトランペットのアクセントについては、「アメリカの劇伴では古くからやっていますが、割と僕のトレードマークみたいなところがあります。しかもエリック(宮城)が無茶苦茶あがりますからね。もう、ここぞとばかりにやってもらいました」と亀山氏。第37話ではラスト、ジュウオウバードの名乗りシーンで選曲。ジュウオウジャーとデスガリアン、双方の要素が入ったこの楽曲を付けることで、この時点では、まだ敵か味方か分からないことを音楽面から表している。また、「シリアスでピンチのシーンで時々使っています」(宮葉氏)とのことで、第34話で、ジュウオウイーグルが偽物のジュウオウゴリラに苦戦する場面での選曲例がある。M208は追加音楽メニュー2からの1曲で、メニュー表にある「ジューマン、デスガリアン総力を結集した決戦」との指定を具現化すべく、「動物戦隊のテーマ」(M15)と「ジュウオウザワールドのテーマ」(M201)をミックスしたM206に、「デスガリアンのテーマ」(M26)を加えて一つの楽曲に再構成している。亀山&宮葉両氏は「デスガリアンのテーマを使うと、リズム隊をロックにできるのでテンションがあがりますね」(宮葉氏)、「上手いことそれぞれの要素を出すことができました。元々メロディはあるわけですから、あとは組み合わせの問題とオーケストラをいかにして鳴らすか。こうした作業はとても楽しいですね。特に2回目のオーケストラ録音はエリックをはじめ、ブラスのコンディションが絶好調で、大変いい演奏になりました」(亀山氏)と語る。第25話で、6人になったジュウオウジャーがバングレイと戦う場面が初選曲で、第28、30話でも同様のシチュエーションで選曲されている。
14.陸海空制覇!
(1)M14(変身~名乗り) (2)M206(6つの力で!) (3)M205(羽ばたけ!ジュウオウジャー)
野性開放して、大逆転するジュウオウジャー! トラック14は、ヒーロー側勇勢のアクション音楽集。M14は、メニュー上は「B.ジューランドのテーマ」に分類されるが、実際には「動物戦隊のテーマ」M15と同一スコアの抜粋演奏。第2話で5人が変身する場面などで使用されている。M206は、追加音楽メニュー2から、「動物戦隊のテーマ」と「ジュウオウザワールドのテーマ」を組み合わせたアクションBGM。「二つのメロを対旋律で組み合わせたり、展開させたり、かなり混ぜこぜになっていますね」とは亀山氏。また宮葉氏によれば「“ザワールド”のテーマの中に“動物戦隊のテーマ”が入ることで、6人が仲間になったことが音楽からも分かるよう発注しました」とのことで、第20話でジュウオウザワールドとしての初変身&名乗り場面で選曲。M205は、主題歌のオーケストラアレンジ曲。「主題歌のオケアレンジの最終形態のつもりで取り組みました。またモチーフはかなり展開させていますが、なるべく原曲の主題歌が分かるように心がけました」(亀山氏)。亀山氏が述べているようにメロディは一部分が採られ、変奏されているが、宮葉氏によれば「主題歌自体が、Z旗の演奏で生ブラスが入っているし、籠島さんもオーケストラをイメージして編曲されていたので、メロディを全部使うとメロオケと同じになってしまうんですね。その差別化もあって“メロディの一部を使って展開させてください“とお願いしました」とのこと。また選曲意図としては、「毎年そうなのですが、ロボが同時に並ぶときにどのテーマをかけるか悩むんですよね。そこで主題歌をロボ戦で使えるようアレンジしてもらったらどの場面でも使えるかなと思ったんです」(宮葉氏)と語っており、第33話では、ワイルドドウサイキングとドデカイオーが巨大スモートロンにコンビネーション攻撃を行う場面での選曲例がある。
15.「輝く王者」(インストルメンタル)
高橋秀幸と宮島咲良のデュエットによる挿入歌のインスト。ここでは1コーラスとハーフ繰り返しをギター、2コーラス目をシンセに編集してフルコーラス収録している。作曲は『魔法戦隊マジレンジャー』や『炎神戦隊ゴーオンジャー』などで知られる岩崎貴文。歌入りは第25、32話で選曲されているが、ここに収録したインストは「Blu-ray COLLECTION」の映像特典『スーパー動物大戦』第3話で選曲。
16.サンキュー ナリア!
(1)M65(強敵出現) (2)M69(ショックA) (3)M70(ショックB) (4)M213(立ちはだかる脅威) (5)M36(大激突!) (7)M216(最終兵器始動)
ジュウオウジャーに倒されたプレイヤー。だが、ナリアが放つ金のコンティニューメダルで復活を遂げる、さらに巨大な姿になって……。トラック17は敵側優勢の巨大戦をイメージした7曲から構成してみた。M65は、第1回録音からのブリッジ音楽で、巨大化シーンで頻繁に使用されている。M34と同一スコアによる抜粋演奏曲だが、こちらのほうがテンポが速い。「尺に合わせてM34の頭と使い分けています」とは宮葉氏。第1話でジャグドが巨大化するシーンで使われたのが初出。以下の2曲も第1回録音分から別曲を抜粋演奏したブリッジ音楽で、それぞれM69はM50、M70はM40の終結部を用いている。M213は、追加音楽メニュー2に2曲あるブリッジ音楽の1曲で「これはシンセでオケ風のサウンドを作ってみましたが、ストリングスのパートにちょっと変わった音を使ってみました」とは亀山氏。第35話の冒頭、前話ダイジェストのシーンでの選曲例がある。M36は、第1回録音分からM35と同一スコアによる敵側優勢のアクション曲だが、こちらは巨大戦を想定して、リズム隊が外され、テンポも落としている。「ミニマル的な手法で同じモチーフをどんどん繰り返していくことで盛り上げています。自分の中でも力を入れた1曲ですね」とは亀山氏。第30話では、ジュウオウワイルドとイルジオンの巨大戦から、ジュウオウゴリラがホエールに本能覚醒してガブリオ&ハナヤイダーと戦う場面にかけて使われている。M216は、追加音楽メニュー2で用意された「デスガリアンのテーマ」のバリエーションだが、お馴染みのディストーションギターを外した、クラシカルな編成で従来のバリエーションとは幾分異なる趣きを持つ。劇中では、第18話でザワールドが操るトウサイジュウオウのテーマ的に使われている。また、ここでは冒頭部分をサブタイトル音楽に使っているのも面白い。
17.爆進!巨大なる王者
(1)M1b(吠えろ!ジュウオウジャー・イントロのみ) (2)M24(ジュウオウキング爆進) (3)M202(トウサイジュウオウ) (4)M25b(必殺技炸裂!!・打楽器MIX違い)
トラック17は、巨大ロボ登場イメージのファンファーレから、ジュウオウジャー側の巨大ロボ活躍音楽集。M1bは、主題歌のマージアレンジ曲M1から、冒頭のファンファーレを抜き出したバージョン違い。M24は、「ジュウオウキングのテーマ」で、M24と同一モチーフのバリエーションだが、全体にアフリカンパーカッションが加わり、差別化が図られている他、モチーフを2回繰り返した後の打楽器のロールが外されている。「特にどのロボと限定することなく、尺に合わせて使い分けています」とは宮葉氏。第6話のジュウオウワイルド登場場面が初出。M202は、「トウサイジュウオーのテーマ」で、「(ジュウオウ)ザワールドのテーマ」をベースにテンポを落とし、重量感あるオーケストレーションが施されている。また、トウサイジュウオー自体は第18話が初登場であるが、追加音楽メニュー2は悪役時での選曲は想定しておらず、最初からヒーロー側のロボとして発注されている。「メロディの一部やコードを変えてワル感をなくす方向性でアレンジしました。またフォークギターの刻みはヒーローになった証として“動物戦隊のテーマ”を踏襲しました」とは亀山氏。劇中ではザワールドが味方となる第20話のトウサイジュウオーVS巨大ボウリンゲンとの戦いで初選曲。M25bはロボの必殺技用音楽。「ジュウオウキングのテーマ」M24と同一スコアによる抜粋演奏だが、ミキンシングで打楽器が加えられている。かつてのスーパー戦隊シリーズは「太陽剣オーロラプラズマ返し」(『太陽戦隊サンバルカン』)などロボの必殺技場面にはそれ用音楽が存在したが、現在は「映像では必殺技でそれほど尺も取っていないので、ロボのテーマでそのまま通してしまうことが多いです」(宮葉氏)とのことで未使用となっている。
18.「動物合体!ジュウオウキング」(インストルメンタル)
D1の最後は、ロボの勝利をイメージして、Project.R(Nob、YOFFY、谷本貴義)が歌う挿入歌「動物合体!ジュウオウキング」のインストをフルコーラス収録。ここでは3人のユニゾンをギターメロに置き換えている。作曲は亀山氏で、劇伴のM23、24と共通のモチーフを使用しつつ、サビに新たなメロディを配することで、まったく違った印象の曲となっている。
1.「レッツ!ジュウオウダンス」(インストルメンタル)
D2の1曲目は、谷本貴義が作編曲を手掛けたED「レッツ!ジュウオウダンス」のインストをフルコーラス収録。大西洋平&ヤング・フレッシュによるボーカル部分はシンセメロに置き換えられている。劇中、第12話では、子どもたちに絵本を読み聞かせるタスクと、それを盛り上げるぬいぐるみ姿の4人の場面で選曲されている。
2.二人と四匹
(1)M3(今日も元気に) (2)M229(呆然…) (3)M38(急げ!)
森真理夫のアトリエで過ごす日常的なひととき。明るく弾んだ、日常描写音楽集。M3は、生ブラスが快活さを持つ主題歌アレンジの日常曲。「メロディはそのまま使って、レゲエ調にアレンジしてみました」とは亀山氏。第26話ではカフェで談笑する6人の場面、第3、15話ではラストシーンでの選曲例がある。M229はメロディを持たないシュールなコミカル曲、クイズを行う第27話は操が落ち込む場面で選曲されているが、楽曲の雰囲気が不思議とクイズ回に上手くハマっている。「それこそシンキングタイムとかで使えそうですが偶然です(笑)。普通にシュールな曲として作っただけです」とは亀山氏。M38は第1回録音の「G.アクション」からの1曲で、「これは“ジューランドのテーマ”のパーカッションを使い、アフリカンフルートに暴れてもらいました」とは亀山氏。音の厚み的にもアクションより日常曲向きの仕上がりで、劇中では第5話では大和が人間だと知ったラリーが慌てふためく場面での選曲例がある。
3.妄想大討論
(1)M72(コミカルショック) (2)M4b(コミック・メロディ抜き) (3)M301b(妄想・リズム抜き) (4)M230(大失敗)
トラック3は、コミカル音楽集で、笑える場面の中でも、とぼけた場面を想定した楽曲を集めてみた。M72は第1回録音の「J.ブリッジ・ショック」からの1曲で、M54と同一スコアの抜粋演奏曲。M4bは、主題歌アレンジ曲M4のリズムのみとなるバージョン違い。第5、6、10、18、30話と真理夫のコスプレシーンで選曲されることが多い。M301bは操の場面でお馴染みのコミカル曲M301のバージョン違い。リズムがなくなったことで、よりとぼけた味わいが前面に。第30話でタスクからパンケーキの食べ方を指摘され落ち込む場面、第36話では、タスクとアムが付き合っていると勘違いした操が、気絶する場面での選曲例がある。M230は、追加音楽メニュー2で用意されたコミカル曲。「西部劇っぽい雰囲気でコミカルな雰囲気を出してみました」とは亀山氏。
4.「あいさつどうぶつマーチ」(インストルメンタル)
ヤング・フレッシュが歌う挿入歌「あいさつどうぶつマーチ」のシンセメロをフルコーラスで収録。作編曲は亀山氏で、劇中使用を想定しない、いわゆる企画ソングであるが、インストは劇中、効果的に用いられている。まず、初出となる第33話ではアム&レオが猫だましの練習をする学生相撲の二人に話しかける場面で選曲された他、巨大戦後のアム&レオと相撲部の二人の場面でも選曲され、物語を締めくくる役割を担っている。また第36話では、ハロウィン会場の場面で選曲。こちらは楽曲イメージから、まるで当て書きかのようなハマリ具合であった。
5.思い出はきらめいて
(1)M68(勝利の喜び) (2)M59b(切なさ・エレピメロ) (3)M104(勝利の感動)
トラック5は、穏やな気持ちを綴った癒しの音楽集。M68 は、第1回録音のM52と共通スコアの抜粋演奏曲。M59bは第1回録音の「大和のテーマ」の1曲。M59と同一楽曲だが、ギターメロのM59に対して、こちらはヴィブラファオンがメロディを担当している。「これはレコーディングで聴いて、M6と音型も音色も同じだと思ったので、メロディの音色が異なるバージョンも作ってもらいました」とは宮葉氏。印象的な選曲例としては、第11話で、森真理夫と大和がホットミルクを飲みながら会話する場面がある。M104もエレピによる心情曲だが、こちらは追加音楽メニュー1からの1曲。「第1回録音の“I.心情・その他”の曲はジューランドのコード感が暗いこともあり、寂しい雰囲気の曲が増えてしまったんですね。それでもっと明るい心情曲がほしいと思って、追加発注したのがM104とM105です」と宮葉氏。第14話では、人間の兄妹と知り合ったアムが、病気の妹のお見舞いに行こうと思ってる旨をみんなに話す場面及び、ラストシーンの二か所で選曲されている。
6.届かぬ夢
(1)M225(伝わらない想い) (2)M13b(望郷・メロディ抜き) (3)M45b(嵐の記憶・ギター抜き)
いくら思っても、故郷には帰れない現実。トラック6は、ジューマンの内面に迫った悲しく、沈んだ音楽集。M225はピアノソロによる心情曲。第24話では、お母さんと再会した大和の心の迷いを表した曲として印象的に使われたが、亀山氏曰く、「今回はピアノを使う箇所を極力ハープやエレピに置き換えるように縛りを設けていたのですが、ネタがなくなり、ついに使ってしまいました」とのこと。とはいえ、劇中で十分機能していたことは、先の場面を見れば明白である。また、素朴で点描的な響きは、劇伴の枠に捉われず、純粋にインストゥルメンタルとしても鑑賞してもらえると思う。M13bは「ジューランドのテーマ」M13からアフリカンフルートを外したバージョン違いで、弦楽合奏による全くの別曲に聴こえるのが面白い。「TDでこうした曲を作ることも織り込み済だったので、ストリングスだけでも使えるように考えていました」とは亀山氏。「選曲する際には、最初にM13bを流して尺調整して、途中からM13に切り替えることもあります。伴奏とメロが完全に独立しているからこそ、できるテクニックですね」(宮葉氏)とのことで、第16話の幼い大和と森真理夫の回想シーンでは、父とケンカをした大和が真理夫のアトリエを訪ねる場面からM13bを当て、大和がホットミルクを飲み、「美味しい」「そうか」のやりとりから、M13の「ジューランドのテーマ」が流れ、感情の機微に焦点を当てた選曲がなされている。M45bは、「大和のテーマ」M45のバージョン違いで、伴奏のギターが外され、より静的なイメージに。劇中での使用は遅く、第37話のバドとラリーの会話で選曲され、憂いを帯びた曲調と「関わるべきじゃないんですよ、人間と俺たちと」のセリフが場面を意味深なものとしている。
7.Extra Player
(1)MW-2(ザワールド・サスペンス) (2)MW-3(ザワールド・悲しみ)
トラック7は、「アニマル音楽ランド3」に未収録だった、ザワールドのテーマアレンジ2曲を収録。MW-2は「ザワールド」のモチーフを使ったサスペンスアレンジ曲で、「ワルをイメージしたAメロの部分だけ使っています」とは亀山氏。第19話で大和の前で変身解除して苦しむ操の場面での選曲例がある。MW-3は心情系のアレンジ曲でメロディ楽器にはハンマーダルシマーの音色が用いられている。「犀男、鰐男、狼男との絡みをイメージしてアフリカ系に寄せてみました」(亀山氏)とのことで、狙い通り、第21話で操の脳内空間で3人のジューマンにアドバイスをもらう場面で選曲されている。
8.「ジュウオウザワールド」(インストルメンタル)
松原剛志が歌う挿入歌のギターメロをフルコーラス収録。作編曲は亀山氏で劇伴の「ジュウオウザワールドのテーマ」と共通モチーフを持ち、追加音楽メニュー(ザワールド)のMW1を歌メロとしてブラッシュアップ。ポピュラーにも造詣が深い亀山氏の手腕が遺憾なく発揮された1曲といえよう。
9.楽園の秘密
(1)M9(神殿) (2)M218(奇跡!!) (3)M219(ジューランド・サスペンス)
ジューマンたちの故郷・ジューランド。悠久の時が流れる平和な世界、しかしそこに秘められた謎とは……。トラック9は「ジューランドのテーマ」バリエーション3曲で構成してみた。M9は全体的に音数を減らし、メロディにシンセを使うことで神秘的なイメージを演出。M218は追加音楽メニュー2からの1曲でME風のシンセが加わるなど、よりアンビエントな雰囲気に。宮葉氏によれば、当初、第28話のケタスの回想シーンでこの楽曲を使う予定だったが、「わが故郷 ジューランド」(スキャット・Btype)に変更となり、第30話で、大王者の資格を抱えた大和がケタスの言葉を思い浮かべる場面で初選曲された。M219はサスペンスアレンジ曲。「発注段階ではシナリオまではあがってなかったのですが、どうもジューランドには闇の部分があるのかなと思って発注しておきました」(宮葉氏)。まさにその予感は的中、第38話では、バドが助けた人間の青年が、ジューランドで捕らわれの身となる場面で選曲されている。
10.デスガリアン大逆襲
(1)M108b(強大な影・ギターソロ抜き) (2)M107(急襲!) (3)M215(最強プレイヤー出現) (4)M102(全力バトル)
トラック10は、「デスガリアンの音色」であるディストーションギターを中心とした、ロックテイストのアクション音楽集。M108bは、「アニマル音楽ランド1」に収録したM108の別バージョン。劇中ではこちらが選曲される場合が多く、第18話の後半、トランパスが出現する場面での選曲例がある。続くM107は、M108と共に第1回録音の不足分を補う、追加音楽メニュー1で用意された楽曲だが、ハイテンションな曲調。第15話で、ハンタジイを捕まえようとするレオとタスクの場面で選曲されている。M215は、プログレ風のシンセメロが特徴を持つ楽曲。「音色はデスガリアンイメージですが、コード感とノリが明るいので使いどころがあまりなくて残念ですね」とは宮葉氏。第34話で動物の被り物をしたジュウオウジャーの名乗りシーンで選曲され、コミカルな雰囲気を上手く表している。M102は当初、ジュウオウジャーにも使える汎用的なアクション曲として発注されたものの、亀山氏発信の音楽設計もあり、「第5、6話くらいまで選曲しちゃうと、ジュウオウジャー側にロックを当てると僕も違和感が出てきてしまって」(宮葉氏)とのことで、実際には変則的な使われ方をしている。選曲例としては第20話では、ジュウオウザワールドの野生解放のテーマ的に使われ、必殺技「ワールドザクラッシュ」でボウリンゲンとアザルドを撃退する場面や、第28話で、ジュウオウジャー、ゴーカイジャー、デスガリアンが三つ巴の戦いを繰り広げる中、ゴーカイジャーがゴーカイチェンジして戦う場面での選曲例がある。なお、本トラック中、追加音楽メニュー1の3曲のギターは、サイキックラバーのIMAJO、M215は今泉洋が演奏している。
11.「ジュウオウファイト」(インストルメンタル)
トラック11は、NoBが歌う挿入歌「ジュウオウファイト」のギターメロインストをフルコーラス収録。作曲はNoBが山田信夫名義で手掛けた。歌入りは第17、26、31話で選曲されているが、第40話では歌入りと編集して初選曲。
12.ジニス、立つ!
(1)M221(暗躍) (2)M29(デスガリアン進撃) (3)M214(ジニス降臨)
デスガリアンのオーナー・ジニスがついに地上に降臨。その強力なパワーでジュウオウジャーを圧倒する。1曲目のM221は、追加音楽メニュー2からの重厚なサスペンス曲。楽曲自体は打ち込みだが、「サンプリングしたストリングス、それからパイプオルガンの音色はこの作品では初ですね。後半は物語も盛り上がるので、他の楽器を登場させて変化を持たせてみました」とは亀山氏。M29は「デスガリアンのテーマ」をアップテンポにしたバリエーション曲。「リフを強調して力強いイメージを前面に出しています」(亀山氏)。劇中では第4話のアバンが初出。ここではアムとセラとレオの尻尾が立つ場面~アミガルトが捕らえた人間にバトルショーをさせる場面~その様子をサジタルアークで見るジニスと複数の場面をデスガリアン側に重きを置く選曲となっている。M214は、数々のバリエーションを作られてきた「デスガリンのテーマ」M26の最終進化形態ともいえる1曲。「M26とは雰囲気を変えたいと思ったので、ロックではなくオーケストラメインで、“ディストーションギターをバッキングじゃなくて、メロディにしましょう”と亀山さんに提案しました」(宮葉氏)。また、劇伴のみならず、山形ユキオが歌う挿入歌「デスデスデスガリアン!」の要素もフィードバックされている。「サビのところですね。山形さんのボーカルが実にインパクトあって、まさに“やってくれたな!”と(笑)。思いましたね。それもあってM214にも取り入れてみました」と亀山氏。なお、本稿執筆時点で「どのタイミングで使うか、出しところは迷いますね」(宮葉氏)とのことでは未使用となっている。
13.砕かれた爪
(1)M71(ショックC) (2)M224(動揺) (3)M226(戦隊解散!?) (4)M222(葛藤) (5)M223(絶望)
ジニスの猛威を前にして、為すすべもなく倒れるジュウオウジャー。敗北、そして絶望。果たしてこの星の運命は……。M71はM19と共通スコアの抜粋演奏曲で、第1回録音のブリッジ音楽として用意されたもの。続く4曲は全て追加音楽メニュー2からのセレクトで、M224は本作の中も数少ないピアノ曲。「M100番台で悲しい心情曲がなかったので、発注しました」とは宮葉氏。M226は「動物戦隊のテーマ」がピアノで変奏され、そのイメージに合わせてアフリカンパーカッションが加わっている。M222はループメインのサスペンス曲。「作業的にはDJみたいなもので、色々な素材の組み合わせで成立しています。ああでもないこうでもないと雰囲気を作ってみましたが、これがまた意外と難しいものです。普通に書いたほうが早いかもしれません。でも、全然違ったものが出来上がるので、劇伴としては面白いですね」とは亀山氏。選曲例には、第38話のジューランドの回想シーンがある。M223は「動物戦隊のテーマ」を用いた1曲で、「“動物戦隊のテーマ”を織り交ぜつつ、敗北感をストリングスで表してみました」とは亀山氏。「悲しみや怒りをはじめ、複雑な感情を感じさせるとてもいい曲ですね」(宮葉氏)。第24話で大和のお母さんがバングレイに殺される場面で選曲され、その悲劇性を訴えかけた。
14.命、あるかぎり
(1)M61(仲間割れ) (2)M227(決意) (3)M228(前へ!!)
逆境の中でも決して諦めることなく、今再び立ち上がるジュウオウジャー。その目には闘志が燃え上がる! M61は弦楽オーケストラによる重い心情曲。亀山氏のアイディアで「動物戦隊のテーマ」が素材として使われており、どこか感傷的なチェロのパートが心に響く。M227は「大和のテーマ」のバリエーションで「心情よりのアレンジです」(亀山氏)とのことで、ピアノとストリングスが抒情性を携えて旋律を奏でる。選曲例としては、第35話で、操とジューマンの4人が大和救出の決意を固める場面があり、5人の大和への思いを音楽面からも見出すことができる。M228は、力強いオーケストラが感情を鼓舞する1曲。こうした楽曲は本来なら「動物戦隊のテーマ」を用いるところだが、「選曲の都合上、この後に”動物戦隊のテーマ”を使うことになるので、重複を避け、敢えて違うメロで発注しました」と宮葉氏。印象的な選曲例としては、第24話、母さんの思い出を傷付けられた大和が、バングレイの前で感情を露わして変身する場面がある。
15.大爆発!野生パワー!!
(1)M16(動物戦隊登場!) (2)M207(命のパワー炸裂!)
この星をやめるなよ!――、復活を遂げたジュウオウジャーが繰り広げる熱いアクション音楽集。M16は「動物戦隊のテーマ」M15のバリエーションで、アフリカンバーカッションを外し、イントロが加筆された以外、M15と大差はない。また「M16から選曲して、動きが入ったところからM15に乗り換えて使うこともあります」(宮葉氏)とのことで、第5話のジュウオウゴリラとアザルドとの戦いでは、初めはM16を使用し、戦いがテンションアップしきたのに応じてリズム入りのM15に乗り換えて使用している。M207は、追加音楽メニュー2から、「ジューランドのテーマ」を用いたオーケストラアクション曲。「僕的にはM10で狙っていた曲調がようやく実現しました」(宮葉氏)。亀山氏によれば、本来はリズムに乗せて大きく出すのが相応しい曲とのことであるが、「新しいメロからはじまり、最後にジューマンのテーマを華やかに出してみました。せっかくいいメロができたので、そこは直にやっていますね」とは亀山氏。第22話で、ジュウオウタイガーとシャークにおだてられ、有頂天になったジュウオウザワールドが大活躍する場面、第24話で、ジュウオウイーグルとバングレイが戦う場面での選曲例がある。
16.「ドデカイオー現る!」(インストルメンタル)
高取ヒデアキがZ旗名義で歌う挿入歌「ドデカイオー現る!」のギターメロをフルコーラス収録。
作曲は亀山氏で劇伴にも「キューブホエール・ドデカイオーのテーマ」M204があるが、劇伴と挿入歌に共通性はない。「当初は共通のメロディを持たせるつもりだったのですが、ドラマの流れ的に、挿入歌はスケール感より、マイナーコードで燃える闘志を感じさせる曲にすることにしました」(宮葉氏)とのことで全くの別曲となっている。いわば同一作者による同名異曲というわけだ。編曲はZ旗の籠島氏で、演奏もZが担当している。
17.大地の讃歌
(1)M-EX2(アバンタイトル) (2)M10(野生のエナジー) (3)M232(大団円)
強大な敵を倒し、今開かれるジューランドへの道――。「ジューランドのテーマ」のバリエーション3曲から成るラック17は、最終回で描かれるであろう大団円をイメージした音楽集。M-EX2は、「ジューランドのテーマ」のショートピースで、本来はアバンタイトルのナレーション用に用意されたものだが、「尺に合うこともあってレコードサイズのイントロを使うことになりました」(宮葉氏)と変更された経緯がある。楽曲自体は、劇伴のストックとして、劇中、ジュウオウゴリラ初登場回の第5話で「この星をなめるなって」とアザルドに言い放つ場面で、ファンファーレ的に選曲されている。M10は、M8と共通スコアだが、テンプアップし、ギターからパーカッションに置き換えている。「M8は雄大さをイメージして、遅めのテンポ設定にしていたのですが、こちらは少し動きのあるイメージです」とは亀山氏。宮葉氏によれば、ジューランドは第1話しか登場しないので、情景描写曲は使う機会があまりないとのことだが、第27話で、大和とジューマンの4人が、出会いの頃を回顧する場面での使用例がある。オーケストラサウンドで壮麗に鳴り響くM232は、最終回をイメージして発注されたもの。2回目のオーケストラ録音での「大団円」は、スーパー戦隊シリーズでは定番の音楽メニューで、通常は劇伴のメインテーマが用いられることが多いが、ここは作品の設定を反映して、「ジューランドのテーマ」M8が採られている。「ジューマンの帰還をイメージして、オーケストラでテーマを一番美しく聴かせられるようアレンジしました」とは亀山氏。また「最終回に相応しく、これまでの出来事が走馬灯のごとく蘇るイメージもありますね」とのことで、中間部には「動物戦隊のテーマ」の一節も盛り込まれている。楽曲は、作品によっては最終回一度限りの「当て書き」的に使用される場合もあるが、本作は既に使用例があり、第29話のラスト、ゴーカイジャーとジュウオウジャーの別れのシーン、第35話では、5人に助け出された大和が再会を喜び合い、バングレイとの戦いを決意する場面がある。
18.「レッツ!ジュウオウダンス」(TVサイズ2)
本トラックには、ED主題歌TVサイズの、歌詞2番バージョンを収録。門藤操が仲間に加わった後の第21話から映像が変更されたのに伴い初使用され、以降は歌詞の1番とランダムで使用されており、オンエアでは、第30、31、33、35、37話で流された(※本稿執筆時点)。
19.正解は…
トラック19は毎回のオンエアでお馴染みの「レッツ!どうぶつかくれんぼ」の正解コーナーの音楽。当初はEDの終結部を使う予定であったが、どうしても映像の編集と曲のテンポが合わないため、この部分のみ新たに作曲された。よって「あくまでEDの一部」という解釈で、作曲者は亀山氏でなく、ED作曲担当の谷本貴義氏である。
20.予告
(1)M15b(動物戦隊のテーマ・Short)
「アニマル音楽ランド・ファイナルフェスティバル」を締めくくるのは「動物戦隊のテーマ」M15を編集した次回予告音楽。第11話、第28話など前後編エピソードの予告編など、一部例外を除き、ほぼ全てのエピソードで用いられている。
2.「動物戦隊ジュウオウジャー」(アクションVer.)
トラック2は、主題歌のイントロの一部をカットしたテレビサイズの別バージョンを収録。劇中での選曲を考慮して用意されたもので、「多くの命が生きる星……」のナレーションに被さる緩徐部分をカットし、激しい部分から立ち上がるようになっている。劇中、第1話ではナレーション部分がジューランドの場面であったことから「ジューマンのテーマ」M8-2を流し、この「アクションVer.」に切り替えて選曲された他、第1話のラス立ちでも使われている。以後、劇中で主題歌を選曲する際にはこちらを使うことが多い。また第11話のようにアクションVer.のイントロとインストを編集しての選曲例もある。
4.世界の王者
(1)MW1(闇の狩人) (2)M201(アクション・ザワールド)
サイ、ワニ、オオカミと三つのジューマンパワーを自在に使うジュウオウザワールド。デスガリアンの送り込んだエキストラプレイヤー・ザワールドからジュウオウジャー6人目の戦士へ――。ここでは同一メロによる「ジュウオウザワールドのテーマ」2曲を配置してみた。メロディ自体は挿入歌「ジュウオウザワールド」と共通で亀山氏によれば、「デスガリアン側のキャラが味方になる設定だったので、ザワールドをイメージしたAメロから段々とヒーローになる過程を表してみました」とのこと。1曲目のMW1は。ザワールド用の2回目先行録音分からのザワールドのアクションシーン用の楽曲で、第18話でザワールドがジュウオウジャー相手にその圧倒的な強さを見せつける場面のために用意された。「第18~20話のシナリオを元に必要な音楽要素を洗い出し、3曲追加したうちの1曲です」と宮葉氏。オンエアに合わせるべく暫定的に作られたバージョンで、生楽器はIMAJOのギターのみだが、エレキギターが悪を表すのは亀山氏のコンセプト通り。M201は追加音楽メニュー2から、同一楽曲のオーケストラバージョンで、ブラスで奏でられるメロディをはじめ、生中心の演奏が存在感を際立たせている。またエレキギターのリフが入っているのはデスガリアン出自の設定であるため。劇中では第20話のジュウオウザワールドとしての初バトルで初の選曲。
6.ハチャメチャ動物ハウス
(1)M301(妄想) (2)M54(ズッコケ) (3)M302(それ!追いかけろ!!)
門藤操が仲間に加わり、6人となったジュウオウジャー。ここでは普段の6人が繰り広げるズッコケ、ドタバタのコミカルな音楽集。M301は追加BGM分から門藤操の「面倒臭い」場面用の楽曲。「追加音楽メニュー3のコミカル曲、M229、230、231がちょっとオシャレな雰囲気で操には合わなかったんですね。それと設定上、操だけ人間なのでジューマン要素のない曲にしたいと思い、M301と302を発注しました」とは宮葉氏。スーパー戦隊シリーズの劇伴は、オーケストラによる2回の録音(※第1回録音と追加音楽メニュー2)が選曲ストックの基本となるが、本作はその他に3回の追加録音が行われており、リアルタイムで番組が進む中、少しでも内容に寄り添うべく、音楽面でも軌道修正が図られている。著作権フリーの音源に頼らず、あくまで番組のための音楽制作に拘るが、それがもたらす効果は大きい。劇中では第25、第27話、第30話など、操の面倒臭い場面で度々使われており、第32話のように1話の中で3回使われたケースもある。第1回録音「I.心情・その他」からのM54は、M52~55と共通メロを持つ汎用的な日常テーマのバリエーション。メロディを担うミュートトランペット&トロンボーンに加え、リズムを刻むワウギターがコミカルな雰囲気を醸し出す。「テンションが低めのコミカル曲はシンセでやるケースが多いのですが、生ブラスでミュートは久々に聞いた感じですね」とは宮葉氏。初出は第4話の冒頭、買い物に出たセラとアムを心配する大和の場面。他に第36話のラストでの選曲例がある。M302は先に述べた通りM301と共に用意された操のコミカル曲。亀山氏によれば「ループは釣り竿のリールのイメージです」とのことで、操のキャラを反映した音楽設計がなされている。第25話のラストで操とレオがケンカする場面での選曲例がある。
8.確かなつながり
(1)M6(寂しく) (2)M105(絆) (3)M51(大いなる大地)
デスガリアンとの戦いの最中、絆を深めていく6人。トラック8は、その友情を謳うような、暖かく美しい音楽集。いずれもアコースティックギターをフィーチャーした楽曲で構成してみた。M6はエレピとガットギターによる主題歌アレンジ曲で、「この曲は一言でいえば、ガットギターの音色が魅力です」とは亀山氏。また宮葉氏によれば「ガットギターはピアノよりも野生というか、自然の雰囲気を感じさせますね」とのことで作品の色合いが見事に落とし込まれている。また小編成なのは、M5との差別化によるもので、これも宮葉氏の発注意図に基づくもの。M105は第1回目録音の追加分からの心情曲。「ギターメロの曲は他にもありますが、ここでは3拍子で少し変化を持たせてみました」とは亀山氏。
第8話ではレオとミュージシャンを目指す青年・平松大輔の場面で複数個所選曲され、同話のテーマ音楽的な役割を担っている。M51はアコギとアフリカンフルートによる「ジューランドのテーマ」。メニュー上の「I.心情・その他」のブロックに分類される楽曲だが、心情よりも情景描写的であり、第38話で、バドと大和が王者の資格について話し合う場面で使われている。
10.巨獣ハンター
(1)M303(第三勢力登場!?) (2)M209(大襲撃) (3)M217(最終兵器暴走)
ジニスにスカウトされブラッドゲームに参加することとなった巨獣ハンター・バングレイ。刺激を求めて珍しい生物を次々とハントし、これまでに仕留めた獲物は判明しているだけで99頭。その次なる獲物は果たして……。トラック10は第23話から登場した新キャラクター・バングレイをイメージした3曲を並べてみた。1曲目は劇中「バングレイのテーマ」的に度々使われているM303。追加音楽メニュー3からの1曲で、「当初はバングレイのテーマとして使う想定ではなく、単に第三勢力の音楽として、デスガリアンとはまた違う低音を意識した曲として発注しました」とは宮葉氏。追加BGMは、全て打ち込みで作られた楽曲であるが、このM303のみ生オケのような音の厚みと深みを感じてもらえるかと思う。その点について亀山氏に伺ってみると、「これまで『ジュウオウジャー』のためにレコーディングした音楽の中から、たとえば“このティンパニは抜粋できるな”と部分毎に抜き出して、新らしい曲を作りました。指示したのは僕ですが、エンジニアの三浦克浩さんの苦労の賜物です」と語ってくれた。本作の音楽が全て頭に入っている亀山氏にしかできない離れ業といえよう。劇中、第23話でバングレイがジュウオウジャーの前に登場する場面で初選曲されて以後、第24話、第25話など度々選曲。「ここまでバングレイのテーマとして使うと、今後、使用例はないかもしれないですね」とは宮葉氏。現状、最後の選曲例は第34話でバングレイがクバルの記憶からジュウオウゴリラを生み出し、偽物のジュウオウジャーが名乗る場面。なお。退場回の第35話はバングレイ優勢の場面がないため使われていない。M209は追加音楽メニュー2から敵側の攻撃を描写した音楽。例年、2回目のオーケストラ録音では、後半の展開も踏まえて、さらなる激しい音楽がオーダーされるが、「一度空くと再び力が漲ってきます」(亀山氏)とのことで、危機感を煽るシンフォニックな楽曲を書き上げ、その期待に応えた。第28話では、ゴーカイレッドがレオッドバスターからレッドホークにゴーカイチェンジして大王者の資格を持ち去る場面、第34話ではジュウオウイーグルが偽物のジュウオウジャーの4人に襲われる場面での選曲例がある。M217は「デスガリアンのテーマ」のバリエーション。但し、ベースは第1回目録音分のM26ではなく、亀山氏自ら歌用にM26をアレンジした挿入歌「デスデスデスガリアン!」を改めて劇伴として仕立て直したもので、ホルンがメロディを担当しつつ、ディストーションギターも大活躍。なお、「ファイナルフェスティバル」D1のトラック16に収録したM216が巨大戦、ここに収録したM217は等身大戦を想定しており、第23話でバングレイがジュウオウジャーに斬りつける場面での選曲例がある。
12.君臨!最強の王者
(1)M204(ホエールロボ) (2)M203(ワイルドトウサイキング)
ジュウオウジャーの頼もしい戦力として次々と登場する巨大メカや巨大ロボ。ここでは追加音楽メニュー2からドデカイオーやワイルドトウサイキングのテーマを2曲お届けする。M204は「キューブホエール・ドデカイオーのテーマ」。亀山氏曰く「単体では最後のロボですから、それに相応しくとにかく派手な雰囲気が出るよう、割とアカデミックな手法で書いてみました。もう自分の中でこれ以上はありません」と入魂の1曲である。選曲例としては、第31話ではジュウオウホエールがキューブホエールに搭乗し、ギフトカスタムを攻撃する場面、第35話で14体のジュウオウキューブがワイルドトウサイドデカキングに動物全合体する場面での選曲例がある。なお、挿入歌「ドデカイオー現る!」も亀山氏の作曲であるが、こちらは全く別個のメロディで、いわば、同名異曲ともいえるもの。M203は「ワイルドトウサイキングのテーマ」でロボを構成するジュウオウキューブから、第1回録音の「ジュウオウキング合体」M23と「トウサイジュウオー」M202、二つのモチーフが融合した楽曲となっている。「双方のモチーフの印象的な部分を使いたいところですが、とはいえキーを合わせないといけないし、展開させる際のつなぎが悪くてもダメです。二つのモチーフをなるべく違和感のないひとつの曲に仕上げるよう気を使いました。オーケストラによる巨大感も含めて、最終的には納得がいく楽曲を作ることができたと思っています」(亀山氏)。選曲例としては第22話で13体のジュウオウキューブが動物大合体する場面で初選曲。第24話ではジュウオウキングとトウサイジュウオウーの動物合体から、二大ロボの活躍、そしてワイルドトウサイキングがアミガルド&トランパスを撃退するまでをこの1曲で大いに盛り上げている。
『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャー ドキドキサーカスパニック!』
トラック17からは2016年8月6に公開された映画『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャー ドキドキサーカスパニック!』の音楽を収録している。全体の音楽は、新キャラクターのモチーフに加え、テレビシリーズで耳馴染んだモチーフから構成されているが、全ての音楽は尺に合わせて書き直されている点が「溜め録り」のテレビとは大きく異なる。「宮葉さんが作成されたものすごく綿密な音楽メニューがありまして、それに沿って1曲ずつ書いていきました。しかし尺が決まっているというのは作曲家としては意外と有難いもので、たとえば15秒のシーンなら余計な展開をさせる必要もなく、最初からその画に合わせて書けばいいわけです。本来、映画音楽とはそうあるべきものなんですよね」とは亀山氏。また大スクリーンで上映される映画ならではのスケール感を出すべく、「普通だったら小編成でもいけるような曲も敢えて大編成で作曲しました」(亀山氏)とのこと。以下は主要な楽曲についての解説となる。
●「ドミトルのテーマ」/映画M2、映画M8、映画M24
劇中本編の幕開けと共に流れるのが「ドミトルのテーマ」で、本作の主要なモチーフのひとつ。「敵キャラなので、デスガリアン側で多用したディストーションギターを踏襲していますが、メロディ自体は全く別のものです。リフから発想したのですが、なるべく既出の曲に寄らない手色の違ったメロディを意識したつもりです」(亀山氏)。なお、映画M2と映画M8は巨大戦、映画M24は等身大の場面に、それぞれ付けられているが、オーケストレーションには大差はなく、尺に合わせてテンポを微妙に変えることで差別化が図られている。
●「ペルルのテーマ」/映画M10、映画M15、映画M22、映画M26
「ドミトルのテーマ」と並ぶ本作の主要なモチーフで、みなしごのペルルの設定を反映して、どこか寂し気な雰囲気を携えた楽曲となっている。これはラッシュを観た亀山氏の音楽設計に基づくもので、「元々泣けるシーンが多かったし、最後も感動的に終わるので、ひとつ共通したテーマを当て込むことにしました」(亀山氏)とのこと。それぞれ、映画M10はエレピ、映画M15はピアノ、映画M22は“泣き”のストリングス、そしてエピローグで流れる映画M26はオーケストラで、美しくメロディ奏でられる。
●「コンドルワイルドのテーマ」/映画M25
劇場版オリジナルのロボのテーマ。楽曲はキューブコンドルの登場からロボへの合体、ドミトルの撃退といった流れに沿って細かく変化しており、まさに映画音楽ならではの醍醐味が満喫できる1曲と言えるだろう。なお、約16秒あたりで聴かれるシンセハープのグリッサンドは画面手前をキューブコンドルが横切る場面に合わせたものだが、これはレコーディング当日、宮葉氏からのオーダーで加筆された。作編曲はもちろん、打ち込み、演奏、ミキシングまでの過程を知り尽くしていないと、こうした現実的で効率の良いオーダーはできないという。「音楽録音の現場での注文はあまり手間をかけずに“出来る事と、出来ない事”をしっかり見極めて発注する必要もあります」(宮葉氏)。
●その他/映画M5、映画M17
映画M5はサーカスの場面に付けられた音楽で、これもまた劇場版ならではの新要素で、ある種、浮世離れした夢の世界を描くため音楽的にも幾分異なるテイストを持つものとなっている。「この曲はラッシュを観て思い切りクラシックにしてほうが合うだろうなと思いました。かなり古い時代、それこそモーツァルトとか中世くらいのイメージです」(亀山氏)。またテレビシリーズの既存のモチーフも細部に細かく手が加えられているが、その中でももっとも顕著なのが映画M17である。第1回目録音分のM35がベースになっているが、「出だしはちょっとヒーローっぽくしたい」との柴崎貴行監督からのオーダーを受けて、メロディが「動物戦隊のテーマ」に差し替えられている。「ストリングスのリフの上に“動物戦隊のテーマ”を乗せられないかと思いつき、亀山さんに相談してみたところ“できるよ”と言ってもらえたのが実現しました」とは宮葉氏。
作品は30分の上映時間に対して、音楽はOP&ED主題歌を含む全27曲で、ほぼ全編に渡って音楽がビッチリと付けられている。ここでは亀山氏が作曲した全25曲を一挙収録しているが、聴きやすさを考慮して、本盤の構成を手掛けた宮葉氏によって一部、曲順を入れ替えてある。映画の使用順に編集してみるのも面白いだろう。また各曲の使用箇所については、CDのブックレットに記載されている音楽メニューを参照してもらえればと思う。
1.はじまるよー!
(1)M-EX1(動物かくれんぼ)
アルバムの1曲を飾るのは「動物かくれんぼ」コーナーの音楽、M-EX1。第1回録音分に含まれるが、メニュー作成後に追加オーダーされたため、EXのナンバーが振られている。「動物戦隊のテーマ」のバリエーションで、「M7に近いイメージで、“動物戦隊のテーマ”のテンポを思い切り早くしてドタバタ感や楽しい雰囲気を出してみました」とは作曲家の亀山耕一郎氏。
5.レッツ!ジュウオウライフ
(1)M52(Let's Jump!) (2)M7(弾んで)
トラック5の2曲は、ジュウオウジャーの生活を彩る日常描写音楽。M52はトランペットメロによる賑やかな日常曲。楽曲は第1回録音の「I.心情・その他」に分類され、他に同一メロの楽曲が3曲存在する。主題歌アレンジのM3とほぼ同一編成(Tp、Tb、Gt)、同一コンセプトの楽曲だが、より汎用的な選曲に対応できるように発注された。劇中では第2話のラスト、納豆の匂いでタスクが昏倒する場面が初出。他に第11話、第21話のラストでの使用例がある。M7は本作では唯一となる「レッツ! ジュウオウダンス」のアレンジ曲で、軽快なリズムと木管の音色が心地良い。編成はアフリカンパーカッションに加え、フォークギター、フルート、クラリネットと比較的シンプル。「M52、M3と、使いどころとしては同じだけど、ガラッと編成を変えてもらいました」とは選曲家の宮葉勝行氏。また、亀山氏曰く「EDもとても良いメロディでアレンジもしやすかったですね」とのことで、メロディも崩すことなくストレートに用いている。劇中では第2話のOP後、人間社会ではしゃぐ4人に大和が翻弄される場面を初出に、第32話で6人がパンケーキパーティをする場面などの選曲例がある。なお、アフリカンパーカッションはこの曲に限らず、ジュウオウジャー絡みの楽曲で多用され、野性味溢れる特徴を形作っている。
7.野生の楽園
(1)M8(ジューランドのテーマ) (2)M45(嵐の記憶) (3)M57(友情)
地球のどこかにあるというジューランド。そこには動物によく似た容姿と性質を持ちながらも、人間のように進化した不思議な生命体ジューマンが平和な生活を営んでいた。トラック7はジューランドをイメージした音楽集。M8は雄大なオーケストラをバックに、アフリカンフルートがエキゾチックな雰囲気を醸し出す。「動物戦隊のテーマ」と双璧を成す本作の主要なモチーフで、メニュー表の「B.ジューランドのテーマ」のブロック以外にも様々な楽曲でモチーフが使われている。以下、亀山&宮葉両名に本楽曲について語ってもらった。
宮葉 打ち合わせでは、「動物戦隊のテーマ」よりもこちらをどうするかで盛り上がりましたね。
亀山 ええ。「動物戦隊のテーマ」と「ジューランドのテーマ」は最初にデモを作ったのですが、この作品の音楽を手掛けるに当たって最初に浮かんだのが「ジューランドのテーマ」でした。メイン監督の柴崎貴行さんはこちらを「動物戦隊のテーマ」に推すほど気に入ってくださって、嬉しかったですね。
宮葉 当初はもっと明るいファンタジー系の曲だったのですが、作品の方向性に合わせて、アフリカン、エスニックなテイストを入れてもらいました。
亀山 そこは意識的に入れるようにしましたね。
宮葉 メインの音色は民族系の笛で、これはオケ録りの後、別日にDBしています。オーケストラのフルートよりも、木の質感が出ていますね。
亀山 一口に”笛”といっても色々ありますが、今回はエスニックな匂いが出るようアフリカンフルートを使ってみました。またメロディ自体はほとんど展開せず、至ってシンプルですが、それ故に印象に残る曲ができたと思っています。このモチーフを使って、バリエーションも色々作りましたし、僕としても思い入れのある1曲です。
M45はアコースティックギターの伴奏をバックにアフリカンフルートが物悲しい旋律を奏でる。楽曲は「I.心情・その他」のブロックに分類され、メニュー上は指定されていないが、「大和のテーマ」と位置付けられている。「柴崎監督のオーダーで作りました。途中ちょっとサスペンス風になっています」とのことだが、これは大和とバド(鳥男)の関係を示唆しての音楽設計であり、「ジューランドのテーマ」M8と通じると音色を持つのもそのため。M57は、ゆったりと動くストリングスにオーボエ、フルート、クラリネットと木管楽器でメロディが紡がれていく「ジューランドのテーマ」のバリエーション。「アフリカンフルートがメロディを吹いたM13と近い感じですが、“人間とジューマンの友情”がキーワードの曲なので、メロディ楽器を変更して、美しさを感じさせる楽曲に仕上げました」とは亀山氏。第29話「王者の中の王者」でゴーカイジャーとジュウオウジャーの思いがひとつに繋がる場面での選曲例がある。
9.王者の探し物
(1)M48(作戦会議) (2)M11(ジューマン) (3)M49(探索)
デスガリアンと戦う一方、行方不明となった王者の資格を探すジュウオウジャー。ここでは変身前の5人の行動をイメージした3曲を並べてみた。いずれも民族楽器のリズムを持つエキゾチックなナンバーである。M48は「セリフの邪魔にならない雰囲気ものとして発注しました」(宮葉氏)とのことで、メロディを廃したリズムセクションのみの楽曲となっている。エスニック風味にしたのは亀山氏のアイディアで「劇中では、大和たち6人の場面で使われるわけですから、当然アフリカンパーカッションでしょう」と、作品イメージに寄せてある。第5話でトライアングラーから落下したガブリオを探す5人の場面での選曲例がある。M11は、「人間界にやってきたジューマンの描写曲として発注しました」(宮葉氏)とのことで、アフリカンフルートによる「ジューマンのテーマ」がガムラン風の伴奏を伴って奏でられる。「柴崎監督から“ガムラン風の環境音楽で、エスニックバーで流れるような音楽がひとつほしい”とのオーダーで作曲しました」とは亀山氏。ガムランはインドネシアの民族音楽だが、エスニックな味付けに幅を持たせた、と解釈すべきであろう。第3話でレオたちが行方不明になった王者の資格を探すシーンでの選曲例がある。トラック9を締めくくるのはM48をアップテンポにしたM49。「パーカッションにアコギを重ねるパターンは他でもやっているので、全体の統一感を考えて、この曲でも踏襲しています」(亀山氏)。選曲例として、第34話で真理夫がキューブホエールの模型を作り上げたシーンがある。
11.デスガリアン ~破滅をもたらすもの~
(1)M26(デスガリアンのテーマ) (2)M44(恐怖) (3)M28(計略・進行)
過去に99個の惑星を滅ぼしてきた邪悪な集団「デスガリアン」。リーダーのジニスを頂点に生き物を遊び感覚でいたぶる“ブラッドゲームを行い、残虐非道な行為で人々を恐怖のどん底に陥れる。M26は「デスガリアンのテーマ」で、ディストーション(※音を歪ませるエフェクター)をかけたエレキギターとオーケストラが混然一体となって聴く者を圧倒する。宇宙から来た敵組織でも、よくあるSF映画調のシンフォニックな楽曲ではなく、非常に独創性に富んだものとなっている。これはもちろん、亀山氏のアイディアで「僕が得意とする手法ですね。エレキギターだけじゃなくて、ストリングスも5度を刻ませて楽曲の一体感を高めています。またメロディ部分には現代音楽風に不協和音を入れて、禍々しい雰囲気を出してみました」とは亀山氏。選曲例としては、第6話で復活したアザルトが現れる場面が初出で、他には第13話のジュウオウジャーを足止めせんとアザルトがメーバを率いて登場する場面での選曲例がある。なお、サジタリアーク内ではリズムセクションを抜いたM26cが使われることが多いが、第8話ではサジタリアーク内で、憤るヤバイカーがアザルトの忠告を聞かずに出ていく場面で使われている。M44は敵側のサスペンス曲で、同一メロのM43共々に「ジニスのテーマ」的な扱いがなされている。使用例としては第5話でアザルドがジュオウジャーの前に初めて姿を現す場面が初出。重々しいロックサウンドがパワー系の幹部の登場を印象付けている。その後、第6話のガブリオの場面を経て、第7話、第9話ではジニスの場面で選曲され、以後はM43と共に、サジタリアーク内のジニスの場面で度々使われるようになった。また宮葉氏によれば、「レコーディングの後で気付いたのですが、M43とM44は同じテンポなんですね。ですから、M43から入って、映像に動きが出てきたところで音楽を編集してM44に切り替えるような選曲も時々やっています」とのことで、第9話では、サジタリアーク内でM43を当て、続いてハナヤイダーが町中で人々に「悪夢パフューム」をまき散らす場面からM44に切り替えて選曲されている。M28 は「ディストーションギターをデジタルロック風に置き換えています」(亀山氏)という「デスガリアンのテーマ」のバリエーションのひとつ。サジタリアーク内での選曲を想定しており、楽曲が持つテンションは他のバリエーションに比べると、やや抑えられている。第14話で不破和宏の前にドロボーズが現れる場面での選曲例がある。
13.Blood Game
(1)M41(疑惑) (2)M27(デスガリアン・遊戯室) (3)M43(罠) (4)M31(メーバ出現!)
トラック12に続いてデスガリアン側の音楽集。ここではデスガリアンの暗躍をイメージさせる、不気味な音楽を3曲並べてみた。M41は木管群とストリングスによる汎用的なサスペンス音楽。特定のモチーフは持たず、劇中では様々な場面で使われている。デスガリアン側の選曲例としては、第32話のバングレイとクバルの場面があるが、他に第9話でハナヤイダーの「悪夢パフューム」に翻弄される中、大和がセラに「今朝、俺と大事なことを話さなかったか?」と問う場面、第26話のラスト、キューブを集めるバドの前にラリーが現れる場面がある。M27は「デスガリアンのテーマ」のバリエーションで、M26とはガラッと趣きを変えてデジタルチックな楽曲となっている。「打ち合わせの時点では、作戦室がゲームセンターみたいな感じだと聞いて、発注しましたが、実際にはデスガリアンの悪だくみで、ちょっと静かな場面で使っています」(宮葉氏)。「パーカッションの不気味な音色は、テレビゲーム感を狙っています」(亀山氏)。第14話では、ドロボーズがナリアからステルス能力を使うように命じられる場面で選曲され、ドロボーズのコミカルな雰囲気を演出している。また第32話の冒頭、出番がまわってきたアザルドが息巻くサジタリアーク内の場面でも選曲。M43はトラック12のM44と共に「ジニスのテーマ」的に使われている楽曲で、「ディストーションギターが表すデスガリアンとシンセによる不気味さの融合で、単純にメロディを出すことを意識しました」と亀山氏。また宮葉氏によれば「これは使用頻度の高い1曲ですね。サジタリアーク内では“デスガリアンのテーマ”よりよく使っています。特にジニスのしゃべり方に合うんですよ」とのことで、第14、21、28、32、34、36話など、ジニスがいるサジタリアーク内での選曲例がある。その他の選曲例としては第4話でアミガルトがバトルショーに参加させる人間を集める場面と、バトルを強要された青年が勝利する場面、また、第16話ではデスガリアンに捕らわれた人間の中から真理夫がナリアの前に引きずりだされる場面がある。トラック13を締めくくるのは「F.その他悪テーマ」からM31。シンセ主体の楽曲で目まぐるしいリズムとスクラッチ風サウンドがメーバを表現しているが、実際にはメーバに拘ることなく、第27話で二組のセラとタスクに狼狽える大和たちの場面など、汎用的な楽曲として選曲されている。また第32話では覚醒した操がビルの壁面に触れ、爆弾であることを確信する場面に冒頭の静かな箇所を当て、リズムが入るところからイルジオンがジュウオウジャーを翻弄する場面に当てて、スムーズな流れを生み出している。
15.邪悪な狩人
(1)M108(強大な影) (2)M32(怪人・登場) (3)M30(デスガリアン総攻撃)
ついに開始された「ブラッドゲーム」。デスガリアンの破壊活動を描写した激しい音楽を3曲で構成してみた。M108は第1回録音の不足分を補う追加音楽メニュー1から選曲。第1回録音のブリッジの多くが抜粋演奏だったことから、M107(※「ファイナルフェスティバル」D2のトラック10収録)と共に発注された1曲。特定のモチーフは持たないが、デスガリアン由来でエレキギターが主体となっている。なお、演奏はサイキックラバーのIMAJOが担当。劇中ではメロ抜きのM108bが使われるケースが多いが、第32話の後半でスモートロンが暴れる場面では、パワー系のキャラに合わせてM108が選曲されている。M32は各話怪人の場面でお馴染みの1曲。「キリやすいですし、劇中でも一番使用頻度が高いんじゃないかな」とは宮葉氏。「頭のディストーションギターが、デスガリアンを表しています。また70年代の特撮ヒーローの劇伴でよく聴かれた、タンギングを意識的に取り入れてみました」(亀山氏)。第2話でハルバゴイが人間界を襲撃する場面が初出となる。「デスガリアンのテーマ」のバリエーションM30は、M29のテンポ違いだが、リズムパターンなど細部は異なる。またトランペットの高音を活かしたアップ&ダウンも聴きどころで、演奏はハイノートヒッター・エリック宮城によるもの。「ここまで高音を出せるミュージシャンは日本には数えるほどしかいません。自分的に拘った部分でもありますが、それこそエリックがいる前提でないと書けない曲です。いきなりこんな譜面を持って行ったら、ミュージシャンに怒られてしまうし、そもそも(こんな高音は)出せない」と亀山氏。宮葉氏によれば「テンションがあがってピンチになっていく感じが使いやすいですね」とのことで、劇中、大和を除くジュウオウジャーの4人が、ジャグドとメーバに苦戦する第1話での選曲例がある。
17.本能覚醒!!
(1)15(動物戦隊のテーマ) (2)M2(戦闘開始) (3)M18(緊急出動)
本能覚醒! ジュウオウチェンジャーを用いての変身、そして繰り広げられるデスガリアンとの戦い――。ここでは物語前半のバトルシーンをイメージした2曲を集めてみた。M15は、劇伴のメインテーマ「動物戦隊のテーマ」。主題歌と双璧をなすジュウオウジャーの音楽的な主題のひとつであり、劇伴作曲家としては最も力を入れる1曲といえる。以下、亀山氏に語っていただいた。
亀山 「ジューランドのテーマ」(M8)と共に事前にデモを提出しました。デモの時点ではファンタジックなイントロを付けていたのですが、そこはカットしてメロディから入ることで勇ましさを表現してみました。メロディで意識したのは雄大であり、スケール感。そのためテンポ自体はちょっと遅めですが、パーカッションの動きでテンポ感を出してみたつもりです。リズムは12/8拍子で、バリエーションを作る上ではちょっと苦労しましたが、特徴的なリズムとカッチリしたメロディで個性を出すことができたと思っています。
劇中ではM15を変身シーンで使用し、トラック22収録のM22をバトルシーンに選曲するのが黄金パターンで、第1話の変身シーンが初出となり、以後多数のエピソードで選曲されている。M2は、主題歌をデジタルチックなサウンドでアレンジしたアクション曲で、亀山氏は「デスガリアン側をディストーションギター中心に据えたこともあり、ジュウオウジャー側のアクション曲では、テクノを意識してシンセ中心にしようと思いました」と音楽設計を語る。第2話や第12話では前半のバトルシーンで選曲されている。また巨大トランパスの前で6人がキューブを積み重ねて新たな合体方法を思案する第18話、バングレイに記憶を読み取られないようジュウオウジャーが被り物をかぶって戦う第34話と、コミカルシーンに合わせての選曲例もある。M18は、「動物戦隊のテーマ」のバリエーションで、メロディはかなり崩して用いられ、キーボードの音色がどことなく70年代の刑事ドラマの劇伴風で、亀山氏が手掛けた『特捜戦隊デカレンジャー』の劇伴にもどこか通じるものがある。亀山氏曰く「アクション曲としての躍動感に加え、デスガリアン側との差別化も考えて、ファンクロック風にアレンジしてみました」とのこと。第8話でレオがヘッドフォンをして、ヤバイカーのパラリラノイズで暴れる大輔青年を止める場面で短く選曲されたのが初出。
20.ハチャメチャ動物園
(1)M4(コミック) (2)M56(カルチャーギャップ) (3)M55(コミックアクション)
日常生活の中で描かれるワチャワチャした雰囲気もまたジュウオウジャーの魅力のひとつ。ここでは戦いから離れ、コミックコーナーを設けてみた。M4は主題歌アレンジで、ミュートトランペットによるメロディがとぼけた味わいを持つ。「元々メロディはありますし、あとはアレンジの問題ですね。それも同じ主題歌アレンジM3との差別化くらいで、コミカルな音使いは特に難しくはありません」と亀山氏。宮葉氏によればメロ抜きのM4bの使用頻度が高いとのことだが、初出となる第2話では、真理夫のアトリエの場面でM4が選曲されている。M56は、アフリカンフルートとリズムのみのシンプルな楽曲。なお、メロディはアフリカンフルート奏者・菱本幸二によるアドリブ。汎用的なコミカル曲で、楽曲全体としてのウェイトはあまり重くないが、第1話では、ジューランドに転送されてしまった大和とジュウオウジャーの4人が初対面を果たす重要場面で選曲されている。M55は、M52~55と共通メロを持つバリエーションの1曲で、エスニックなサントゥールの音色でコミカル要素を表している。第38話でレオとタスクが学生相撲の二人から「猫だまし」について聞く場面での選曲例がある。
21.「レッツ!ジュウオウダンス」(インストルメンタル・ショートサイズ)
トラック21はED主題歌のインストバージョン。ここに収録したのはシンセメロを1コーラス+ハーフに編集したショートサイズで、フルサイズは「ファイナルフェスティバル」D2のトラック1に収録。
23.故郷、遙かに…
(1)M13(望郷) (2)M59(切なさ) (3)M20(悲しみ)
今は帰ることができない故郷・ジューランドへ思いを馳せるジューマンの4人。トラック23は喜怒哀楽、様々な要素を網羅した本作の劇伴の中から美しく、悲しげな音楽を3曲セレクト。1曲目のM13は「ジューランドのテーマ」のバリエーションで、アフリカンフルートがメロディを担うのはM8と同じだが、伴奏がアフリカンパーカッションから、ストリングスとなり、クラシカルな趣きと心情へ寄った楽曲に仕上がっている。「元々ある和音を無視して、美しい雰囲気が出るようにアレンジしてみました」とは亀山氏。第5話で大和さんがラリーに語り掛ける場面、第11話では、大和がジューランドへ帰りたいと願う、みんなの思いを噛みしめる場面で選曲されている。M59は「大和のテーマ」のバリエーションで、ギターとエレピが素朴な味わいを醸し出している。楽曲コンセプトや編成は主題歌アレンジのM6と同一であり、聴き比べてみるのも一興だろう。第3話で大和が人間社会に馴染もうとしているアムの心情を知る場面での選曲例がある。M20は「動物戦隊のテーマ」のバリエーションで、M15から一転、木管とストリングスによってメロディが情感を携え、ゆったりと奏でられる。亀山氏によれば「ジュウオウジャーの側の優しい音楽はストリングスでいこうと決めていました」との音楽設計があり、M20でもそれが踏襲されている。初出は第2話。大和が幼い頃に出会った鳥男の出来事をタスクに話す場面で選曲。ここで「動物戦隊のテーマ」が流れることで作品のテーマを音楽面からも深く掘り下げている。
25.信じるパワー
(1)M63(怒りを込めた一撃) (2)M62(想いを抱いて走れ!) (3)M17(なめるなよ!)
逆境にもくじけず、今立ち上がるジュウオウジャー。トラック25は心情を鼓舞する力強い音楽集。M63は「大和のテーマ」のバリエーション。「M62と同じシチュエーションでの使用を想定した楽曲ですが、M63は、もうちょっと悩んでいるところから、吹っ切れて思いを込めて前進していくようなイメージです」とは宮葉氏。楽曲は木管が奏でる「大和のテーマ」から、徐々に盛り上がっていき、ホルンが「動物戦隊のテーマ」を奏で、このモチーフが壮麗に変奏され、幕を閉じる。第6話では、ラリーが傷ついた大和に自身のジューマンパワーを与える場面で選曲され、二つのモチーフと画が見事に合っており、まるで画合わせでレコーディングした映画音楽のような相乗効果を生み出している。メニュー表には「動物戦隊のテーマ」の指定はなく、これは作品内容を把握した上での亀山氏のアイディアで、さらに宮氏が絶妙の選曲を行った好例といえるだろう。なお、初出は第1話で、大和が「頼む、俺にも力を貸してくれ」とキューブに懇願する場面で後半部分のみが選曲。M62は「動物戦隊のテーマ」のバリエーションでストリングの伴奏に2本のホルンがメロディを担う。第8話でヤバイカーと対峙するレオの場面から、大輔がオーディションに臨む場面にかけて選曲され、両者の思いを固く結び付けている。トラック17の最後は「動物戦隊のテーマ」のバリエーションM17。編成からは柔らかい音色の木管群が外され、ブラスセクションによるメロディが固い決意を表現している。「変身前の立ち上がる場面で使うスーパー戦隊シリーズでは必ず必要な曲です」(宮葉氏)のことで、第2話でタスクが大和にキューブを渡す場面を皮切りに、第11話で絶体絶命の大和の前に4人が現れる場面などの選曲例がある。
27.野性解放!!
(1)M16b(動物戦隊登場!・イントロのみ) (2)M101(ワイルドアクション) (3)M22(ジュウオウキューブ激闘)
戦いの最中、「野性解放!」の叫びをあげるジュウオウジャー。それぞれの動物の特徴を身体に具現化させ、そのパワーを駆使してデスガリアンを粉砕する! ここではジュウオウジャー優勢のバトルシーンを彩る3曲を集めてみた。M16bは、オリジナルのM16から冒頭部分のみをTDで抜き出したバージョン違い。第1話では大和が初めてジュウオウイーグルに変身する場面が初出で、第5話ではジュウオウゴリラに覚醒した場面に付けられるなど、等身大、巨大戦の区別なく選曲されている。M101は追加音楽メニュー1からジュウオウジャー側のアクション曲。M100番台は、打ち込みで処理されているが、ギターのみ生でサイキックラバーのIMAJOが演奏している。「当初、ジュウオウジャー側のアクション曲には亀山さんの狙いでロックを使わない縛りがあったのですが、実際に画に当ててみたところ、もっとテンションが高い曲が必要になったので、敢えて発注しました」(宮葉氏)。また特定のモチーフは指定されていないが、亀山氏のアイディアで後半に「動物戦隊のテーマ」が使われ、整合性が図られている。選曲例としては、第9話で、ジュウオウジャーがハナヤイダーの両肩の花を破壊する場面がある。M22は「動物戦隊のテーマ」を用いたアップテンポの等身大アクション曲。メニュー表ではジュウオウキューブのアニマルモードの音楽と記されているが、劇中での選曲を考慮して「動物戦隊のテーマ」のバリエーションとして発注された。「元々は雄大なメロディとして発想していたので、他と差別化を図るなら三連符を使ったシャッフル系のリズムでいくしかないなと。ミュージシャンは大変ですが、手を抜かず思い切って書きました」とは亀山氏。劇中では第2話のラス立ちをはじめ、使用例は枚挙に暇がない。
28.「動物戦隊ジュウオウジャー」(インストルメンタル・ショートサイズ)
OP主題歌のインストで、ここではイントロの短いバージョン(旧TVサイズ)を、1番をTpメロ、2番をGtメロの2コーラスに編集している。フルコーラスは「ファイナルフェスティバル」D1のトラック1に収録。
30.超巨大にコンティニュー
(1)M34(怪人・巨大化) (2)M40(最大のピンチ) (3)M35(総力戦!)
ジュウオウジャーに倒されたプレイヤー。しかしジニスのコンティニューメダルによって巨大な姿となって復活を遂げる。トラック30は巨大化したプレイヤーをイメージした音楽集で、いずれもオーケストラメインの楽曲を並べてみた。1曲目のM34はメニュー表「F.その他悪のテーマ」から、プレイヤーの音楽。M32と同一モチーフのバリエーションで、ここでは巨大戦での使用を想定してオーケストラに編み直されている。「ティンパニを加えたり、オーケストラをトゥッティで演奏することで、巨大な敵が降りてくるようなイメージを表現しつつ、敵なりのカッコいい音楽をひとつ作ってみました。また、M32にあるギターのリフはここではストリングスに置き換えています」とは亀山氏。劇中では、第3話で、巨大化したボウガンズが、ジュウオウキューブに攻撃を仕掛ける場面が初出。M40は第一回録音から最大のピンチ曲。「M34のイントロや、ロボのモチーフの一部など、様々な要素を盛り込んだある意味、集大成ともいえる楽曲です」とは亀山氏。また宮葉氏によれば「これはシリアスな場面で多用しています。今年は最後が盛り上がる曲が使いやすいですね」とのことで、選曲例としては、第17話でザワールドが登場する場面、第30話でキューブホエールが敵味方の区別なく攻撃する場面などがある。また第10話ではギフトに敗れたジュウオウジャーの場面に選曲されたが、第9話で流れた第10話の予告編音楽としても使用され、音楽で敗北フラグを立てている。本トラックを締めるのは「G.アクション」からのM35で、前2曲とは異なり、オーケストラにディストーションギターが加わり、デスガリアン色が前面に表れている。「ディストーションギターは鳴りっぱなしではなく、敢えて出さない箇所を設けることで、敵味方、双方入り乱れて戦っているイメージを喚起できるようにしました」とは亀山氏。演奏時間は1分50秒とスーパー戦隊シリーズの劇伴としては長いが、これは比較的長いシーンでの選曲を想定した、宮葉氏の発注意図に基づくもので、「最後、ストリングスの刻みで盛り上がっていく箇所はミュージシャンに頑張ってもらいました。終わった後、レコーディングブースからいっせいに“ぶーっ”と聴こえてきましたね(笑)」とは亀山氏。選曲例としては「これもM40と同様、最後が盛り上がるので使いやすいですね」(宮葉氏)とのことで、第9話でのジュウオウワイルドVSハナヤイダー、第17話の野生大解放するザワールド、第28話でのジュウオウジャーVSゴーカイジャーの場面などがある。
32.合体!百獣の王者
(1)M21(ジュウオウキューブ登場) (2)M103(爆進!巨大アニマル) (3)M23(ジュウオウキング合体) (4)M1(吠えろ!ジュウオウジャー)
ジュウオウキューブが合体して誕生する様々な巨大ロボ。トラック32は巨大なメカやロボの活躍、そして戦いの勝利を描く物語のクライマックスを4曲で表現してみた。M21は「ジュウオウキューブのテーマ」で、オーケストラの合間で刻まれるテクノ風のリズムがジュウオウキューブの動物モードの巨大感と躍動感を演出。「キューブアニマルからロボが誕生していく場面を短いモチーフの繰り返しで表現してみました」(亀山氏)。なお、テクノ風のリズムはM2と同様、亀山氏によるヒーローサイドの音楽的な縛り。「書くだけならいくらでも書けますが、何かしらの制約を設けないと整合性が取れなくなってしまいますし、作曲する上でもそのほうが楽しいんですよね」とは亀山氏。M103は追加音楽メニュー1からの1曲で「第1回録音分のロボ戦音楽はテンポが遅い曲が多かったので、テンポの早いロボ戦として発注しました」とは宮葉氏。追加音楽メニュー1は、ギターのみ生楽器で他は全てシンセだが、楽曲コンセプトに即して、ティンパニやブラスなど量感あるサウンドが再現されている。第20話ではキューブクロコダイル、ウルフ、ライノスの活躍シーン、第21話ではトウサイジュウオウーの合体シーン、第29話でのゴーカイジャーとのコラボによるワイルドトウサイキングの戦闘シーンでの選曲例がある。M23は「ジュウオウキングのテーマ」で、第1話を初出に多数のエピソードで使用されている。「ロボの音楽は作品の中でも主要なテーマのひとつで、オーケスラに相応しい壮大なメロディで印象付けてみました。ジュウオウキングの後にもさらに強力なロボが出てきますが、最初のインパクトは大事なのでそこは苦労しましたね」とは亀山氏。「アニマル動物ランド1」の最後を飾る劇伴は主題歌アレンジのM1。「歌メロですが、インストでも通用するし、直感的にいい曲だなと思いました」(亀山氏)とのことで、ここでは力強いマーチアレンジ曲に編み直されている。本原執筆時点では未使用となっているが、これについては「『ジュウオウジャー』は割とほのぼの終わる回が多いので、意外と使いどころがなくて残念です」と宮葉氏。毎回のラストは、たとえばマーチ系の曲で終るパターンが多い『特捜戦隊デカレンジャー』、心情曲が多い『侍戦隊シンケンジャー』など、作品によってまちまちだが、こうした部分は実際に作品が走り出して、はじめて方向性が見えてくるという。なお「Blu-ray COLLECTION」の映像特典『スーパー動物大戦』での選曲例はある。
以上をもって、『動物戦隊ジュウオウジャー アニマル音楽ランド1』、『同3』、『ファイナルフェスティバル 4&5』に収録された全劇伴解説を終えたい。この解説公開時は、オンエアも佳境に差し掛かっており、最終回に向けての様々なドラマが描かれていくと思う。そこで心に響く名場面があれば、きっと何かしらの音楽が付けられているはずである。各盤の収録曲から名場面を追体験し、また音楽自体の持つ力をとくと味わってもらえればと思う。