人は年齢を重ねることで、その人なりの表情といったものを手に入れることが出来る。心を込めて、妥協することなく生み出されてきた歌にもそれなりに見えてくるものがある。ここにある歌は、どれもが柔かな表情に満ちている。「冬の星座」、「DON DON」は、明るくほのぼのとして楽しいし、「雪」のように心に染みる歌の温もりもうれしい。どの歌にも、松山千春の刻み込まれた時間(とき)の記憶が存在する。タイトルとなった「男達の唄」、「途上」といった作品で聴かせる熱情は、まさに、プロフェッショナルであるところの底力を見せつけられるようだ。下田逸郎の作品「踊り子」を取り上げたことも注目に値する。この名曲が新たな生命を得て、多くの人々の心に届けられることの喜びは大きい。