松山千春の作品には、いつも時代の空気のようなものが映し込まれている。別の言い方をすると、自然の中で風を感じるように時代というものを捉えているということになるだろうか。ここでは、「愛」という普遍のテーマに取り組みながらも、相変わらず鋭い眼で退行化しつつある現代社会へ発したメッセージを読み取ることが出来る。「家訓」といった個性豊かな歌にも思わずニンマリさせられてしまう。タイトル作品となった「純-愛する者たちへ-」は、映画初出演となった「武闘派」(91年東映作品)の主題歌である。圧倒されるほどの歌唱力と、もの悲しくも繊細で美しいメロディーが、振り子のように揺れ動く心の様を見事なまでに伝えている。ここにも「歌は心だ」という松山千春の歌い手としての強い信念が貫かれている。
(解説文より)