松山千春にとっての「フォークソング」は、もはやそのオリジナルを問うものではない。時代を超え、自らのスタイルとして確立されたそれは、魂と力で普遍的な美を見いだそうとしている。そして、その美しさはとてもしなやかである。存在感だけの歌ではだめだ。日々耳にすることで、気持ちのいい歌にならなければ…。そのしなやかさは、いつの時代でも通じるものだ。時と共に素材が変色、あるいは変質するように歌も変化し続けていく。しかし、それもまた表現なのだ。本作品は、現実と虚構を見据える若い世代へのメッセージである。ここには、悲観すべき現実を前に、それでも希望を捨てない人間の姿がある。ポジティブな現代批判にして、その心は鮮やかな広がりをも聴かせるのだ。
(解説文より)