■第二十一集
1.ん廻し
町内の若い衆が、ただ酒を飲むだけではつまらないので、洒落酒盛りをやろうという話になった。“ん”を一つ言ったら、つまみの枝豆を一つ食べられる趣向なのだが…手始めのお題は地名で、飽きたら落語の演題、それも飽きたら何でもいいーということになり、わけの解らない珍回答が続出する。
2.雛鍔
植木屋が大名屋敷で仕事をしていると、庭で遊んでいた八歳になる若様が一文銭を拾い「これは何か?」と家老の三太夫に尋ねる。「さあなんでしょう?」と三太夫が答えると、「おひなさまの太刀の鍔であろう」と言った。これを聞いた植木屋は、「さすがに大名の若様だけに、銭など御存じない」と恐れ入り、家に帰ってせがれに話すが…
3.かつぎや
縁起をかつぐ呉服屋の旦那の正月。縁起のよい言葉を盛り込んだ奉歌を、使用人の権助に頼むと、権助は縁起の悪い言葉と間違えてしまう。雑煮の餅の中から釘が出て、番頭が「この家はますます金持ちになります」と言うと、権助は「この家の身上は持ちかねる」とやりかえす。大旦那の機嫌を直す為に、宝船売りに一芝居させるのだが…
ボーナストラック:[家元の芸人五十選(二十一)浪花節の全盛期]
■第二十二集
1.だくだく
貧乏な男、家具が一つもないので体裁が悪い。そこで絵の先生を呼んで、タンスなどの家財道具を壁に描いてもらう。その夜、この男の家に泥棒が入った。タンスの引き出しに手をかけて、引こうとしても引けない。そのうち絵だと気づいた泥棒は、「タンスを開けたつもり、着物を風呂敷につつんだつもり」とやりはじめた…
2.酢豆腐
町内の若い衆が集まって、一杯やろうと言うことになった。酒はあるが、肴がない。そのうちに前に買った豆腐のことを思い出したが、暑気で腐ってカビが生えてしまった。そこへ食通を気取る若旦那が通りかかったので、おだてあげてから腐った豆腐を見せ、「これは何でしょう?」と尋ねると、「これは酢豆腐です」と答えた為に…
3.しの字嫌い
隠居が、理屈っぽい使用人の権助に「“し”という字は、“死”を思わせるから、今後しの字を使ってはいけない」と命じる。隠居は、しの字を一つでも言ったら給金をやらないと言い、権助は隠居が言った場合に何でも望むものを貰う
ことを交換条件に承知する。隠居は何とか権助に言わせようと、四貫四百四十四文の銭を数えさせるが…ボーナストラック:[家元の芸人五十選(二十二) 東武蔵]
■第二十三集
1.一目上がり
隠居に掛け軸の誉め方を教えられた八五郎。「こういうものを見たら、結構な賛(さん)でございますと言えば、持ち主は喜ぶ」と言われ、さっそ家主のところへ行って、言われた通りにやってみた。ところが家主は、「これは賛じゃない。詩(し)だ。」と言い返された。次の先生のところでは、「詩じゃない、悟(ご)だ」と言われ…
2.近江八景
ある嫉妬深い男が、惚れ込んでいる芸妓に情夫がいるのではないかと、大道易者に見てもらうことにする。易者からは、「この芸妓は、落ち着けば情夫のところに行く」と占われる。未練がましい男は、芸妓から来た手紙を易者に見せる。その手紙は、近江八景づくしの恋文だったのだが…
ボーナストラック:[家元の芸人五十選(二十三)広沢虎造]
■第二十四集
1.山崎屋
北国と呼ばれた吉原の花魁の玉代が、三分で新造がついた時代。山崎屋の若旦那が番頭を呼んで、帳場の金から遊びの金を三十両工面してくれと頼む。番頭が断ると、隣町に妾を囲っていることをすっぱ抜くと脅す若旦那。困った番頭は、いっそ花魁と若旦那が本当の夫婦になれる一計を案じ、町内の鳶頭を巻き込んだ筋書きを書くが…
2.長短
至って気の長い“長さん”と、むやみに気の短い“短七”とは、気性はまるっきり反対だが仲が良い。今日も長さんが短七のところに遊びに来ている。のんびりと煙草を吸う長さんの所作を見た短七は、イライラして「煙草はこうやって火をつけて、叩くんだ」と教える。そのうち、火玉が短七のたもとに飛び込んで…
ボーナストラック:[家元の芸人五十選(二十四)廣澤菊春]
■第二十五集
1.提灯屋
町内の若い衆、新しくできた店のチラシを見て飲みに行こうとなるが、皆無筆でそれが何屋なのかもわからない。隠居に訪ねると「これは提灯屋の宣伝だ。開店祝いに無料で紋を書き入れる。万一書けない紋がある場合は、提灯を無償で進呈すると書いてある」と言う。飲めないと知った若い衆は、順番に提灯屋に押しかけるのだが…
2.置き泥
間抜けな泥棒が裏長屋に盗みに入るが、何も無い部屋で男がごろ寝をしていた。聞けば、博打で一文無しになってしまい金なんか無いと言う。大工の男は、泥棒が来たのをもっけの幸いに、仕事道具を質から出すのに五十銭くれと、逆に金をせびり取っていく。泥棒は金を置いて逃げ出したが、「おーい、泥棒!」と大工が大声で呼び止める…
ボーナストラック:[家元の芸人五十選(二十五)玉川勝太郎と相模太郎]
■第二十六集
1.お見立て
若い衆の喜助から、栃木のお大尽杢兵衛が訪ねて来たと言われた花魁の喜瀬川は、「病気だと言って、断ってくれ」と言う。杢兵衛は、久しく逢わなかったので病気になったのだろうと自惚れる。顔を見せたら治るだろうからと喜助に案内を求めるが、今度の喜瀬川の返事は、「死んだと言え」だった。ならば、墓に案内しろと言われた喜助は…
2.新・蝦蟇の油
大道でガマの油を売っている商人「さあさあ、お立ち会い、御用とお急ぎでない方は、寄って見ておいで…」と、刀で自分の腕を切り、そこにガマの油をつけて、ピタリと出血を止めて見せたので、飛ぶように売れた。一杯飲んだ後に、もう一儲けしようとガマの油を売りはじめたが、酔っぱらってしまって失敗ばかり…。
ボーナストラック:[家元の芸人五十選(二十六)木村派の浪曲師]
■第二十七集
1.のめる
「のめる」と言うのが口癖の男と、「つまらねえ」と言う口癖の男とが、互いに口癖を口にしたら金を出す賭けをした。何とか相手に「つまらねえ」と言わせたい男は、隠居の知恵を借りて、「大根を百本もらったけど、樽に百本詰まろうか?」と尋ねたり、絶対につめることが出来ない“詰め将棋”の問題を持って行ったりするのだが…
2.夫婦廓(原作:小松左京「売主婦禁止法」より)
すべての人間は、人口子宮で生まれる近未来の日本。一切の家事から女性は解放され、極端な男女同権とフリーセックス化が進み、婚姻制度は崩壊していた。「女性が求めて来たら、男は応じなければ法律違反となる」それが常識の時代で、月々のお手当と引き換えに、男の為に家事を行い自分の身体を使って出産する“売主婦”が登場した…
ボーナストラック:[家元の芸人五十選(二十七)木村松太郎と広沢瓢右衛門]
■第二十八集
1.蛙茶番
町内の連中で素人芝居の「天竺徳兵衛の忍術譲り場」をやることになり、旦那は役の割り振りに大忙し。皆いい役を演りたいので、役不足のものは休んでしまう。何とか蛙役は小憎を代役に仕立てたが、今度は舞台番の半次が来ない。そこで、半次が岡惚れしている
娘をだしに使って呼出した。有頂天の半次は、風呂屋に寄って行くのだが…
2.鼻ほしい
身分制度の厳しい江戸時代の話。町人相手の喧嘩で、鼻を切り落とされた武士。お役目をご免となり、寺子屋の先生をしていたが、音がすべて鼻に抜けてしまうため、子供たちからもバカにされる。引きこもっているところに、妻が心配して出かけるように勧めた。江戸をたった浪人は、馬に乗り馬子の禿げ頭を狂歌にしてからかうのだが…
ボーナストラック:[家元の芸人五十選(二十八)村田英雄と三波春夫]
■第二十九集
1.半分垢
巡業から久しぶりに帰った力士の家に、町内の者が訪ねて来た。女房が出て、「迎えに戸口に出たら、旦那の膝にぶつかった」と、旦那の体が大きいネタで様々な自慢話をする。後で、力士の旦那は女房の自慢を恥じ入る。旅先の茶屋で「富士山は大きい」と感心すると、茶屋の老婆が「半分は雪です」と答えた逸話を女房に話すと…
2.子別れ(下)
酒が原因で女房と別れ、女郎と暮らした大工の熊。今は、女郎と別れ、真面目に働いているところに、息子の亀吉とばったり出会う。亀吉の話では、別れた女房は独りで苦労して子供を育てていると言う。熊は反省して、「かあちゃんには、内緒だぞ」と子供に金を与え、ウナギを食わせるからまた会おうと約束する。その金が、母親に見つかって…
ボーナストラック:[家元の芸人五十選(二十九)女流浪曲師]
■第三十集
1.め組の喧嘩(上)(下)(作:藤浦敦)
品川宿で酔いが過ぎた力士達と、め組の若者とのいざこざが起こった。め組の頭・辰五郎は何とかその場をおさめるが、今度は「義経千本桜」の芝居の興行中に、再び力士とめ組の連中との揉めごとが起きた。その場も、座元の顔を立て何とか鎮める辰五郎だが、その諍いの火種は後に、芝の境内で大喧嘩の華を咲かせることになる…
ボーナストラック:[家元の芸人五十選(二十九)浪曲よいずこへ]
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