1.モーツァルト:幻想曲
ニ短調 K.397
2.シューマン:幻想曲
ハ長調 Op.17
3.ラフマニノフ:幻想的小品集
Op.3 [1].エレジー
4.ラフマニノフ:幻想的小品集
Op.3 [2].前奏曲 嬰ハ短調
5.ラフマニノフ:幻想的小品集
Op.3 [3].メロディ
6.ラフマニノフ:幻想的小品集
Op.3 [4].道化役者
7.ラフマニノフ:幻想的小品集
Op.3 [5].セレナード
8.リスト:ソナタ風幻想曲
《ダンテを読んで》
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[録音:2006年1月10−12日、笠懸野文化ホール]
<記号>SACDハイブリッド盤・DSDレコーディング・2chステレオ
「シャコンヌ」「ラ・ヴァルス」という2つのトランスクリプション(編曲)アルバムで圧倒的な技巧とほとばしる音楽性を披露してきた広瀬悦子による初のロマン派王道プログラム。大曲をがっしりと掴み、熱く深い呼吸と千変万化のパレットでフレーズを紡いでいく、その音楽の豊かさは聴き手を惹き付けてやみません。ピアノを愛する方々すべてに是非お聴きになっていただきたいピアニストでありアルバムです。
■広瀬悦子の豊かな“ファンタジー”が刻印されたアルバム ――満津岡信育
すでに、『シャコンヌ』と『ラ・ヴァルス』という2枚のアルバムに収録されたトランスクリプション作品を通じて、音楽ファンに鮮烈な印象を与えた広瀬悦子の場合、その卓越した技巧に加え、原曲とはひと味異なる華を聴き手に納得さすに足る表現力を兼ね備えているのが印象的であった。その広瀬が、“幻想”という言葉を含む楽曲を集めた今回のアルバム『ファンタジー』も、持ち前の豊かな歌心と切れ味に富んだ表現力が、絶妙のバランスで均衡を保っているのが特徴だ。とりわけ、リストにおける難所を難所と感じさせない鮮やかなピアニズムをはじめ、シューマンにおけるのびやかで潤いに満ちた詩情が大きな聴きどころになっている。筆者がインタヴューした際に、ラフマニノフの楽曲への愛を披瀝し、「楽譜を読んでいくと、スタッカートやテヌートやアクセントなど、さまざまな指示が書き込まれていて、読めば読むほど、自ずと弾き方が理解できるし、彼独特の歌い回しを解き明かしていくのがとても楽しいです」と語っていた広瀬だけに、あまり取り上げる人がいない初期の作品から、みずみずしい響きと作曲者特有の強靱なうねりを同時に感じさせてくれる仕上がりになっている点も特筆物である。
往年のピアニストの録音をよく聴くという広瀬が、「例えばシュナーベルとか、ホルショフスキとか、とても端正で、小手先の工夫ではなく、ただ淡々と弾いているように見えて温かみのある演奏が好きです。それは、真似できるものではなく、真摯に音楽と向き合って、やっと得られるようなものだと思います」と語っていたことも印象に残っているが、今回の『ファンタジー』を耳にして、彼女がピアニストの王道を着々と歩んでいると感じるのは、筆者だけではないだろう。(ライナーノートより)