配信情報はこちら
クラシックサクソフォンの第一人者であり、世界中のサクソフォン奏者の重要なレパートリーとなっている吉松隆の「サイバーバード協奏曲」の委嘱者でもある須川展也が、新たに委嘱したサクソフォン協奏曲をデジタルリリースします。
委嘱を受けたのは、NHK大河ドラマや数々の映画、ゲームなどで、その類い稀な音響センスとメロディーメイカーとしての飛び抜けた才能を発揮している菅野祐悟です。
菅野祐悟は、既に交響曲を2曲発表し、今後はチェロ協奏曲やヴァイオリン協奏曲の委嘱も受けており、現代の新たなクラシックを生み出すことができる作曲家として、注目されている存在です。
架空の神話的な森で、花が開き、葉が散り、様々な結晶が光る様子を、3楽章構成で表現している、日本的な抒情と宇宙的な感覚が共存している作品です。
作品について
サックスといえば一般的にはJAZZがポピュラーですが、クラシックのサックスはJAZZサックスとは演奏の仕方が異なり、とても魅力的な音色を奏でます。
クラシックのサックス奏者として日本を代表する須川展也さんは、人気、実力共に、現役でトップを走り続けているレジェンドです。その須川展也さんから、サックス協奏曲の作曲の依頼をうけました。
須川さんは過去にも有名な作曲家に作曲を依頼し、素晴らしい新曲を世に送り出してこられました。
特にサックス協奏曲の金字塔になっている吉松隆さんのサイバーバード協奏曲。
この楽曲は僕が協奏曲を書くにあたり意識せざるを得ない名曲でした。
クラシックの楽曲と映画音楽との違いは、クラシックの場合は作曲家自身で書くべきコンセプトを見つけなくてはなりません。まずそのコンセプト探しから始まりました。
様々なコンセプトや楽曲が出尽くした現代に何を表現するべきか。
この時代にしか表現できない事や、日本人でなければ表現できないことは何だろう。あるとき「見えない力」という一つのキーワードを発見しました。
コンセプトを深掘りしながら、2年間かけて作曲した曲を須川さんにはじめて聴いていただく瞬間は凄く緊張しましたが、とても喜んでくださりホッとした事を覚えています。
その後、オーケストレーションも完成しリハーサルを重ねて無事本番を迎える事ができました。
本番の演奏中には、もの凄い興奮と感動が込み上げ、客席で作曲家としての醍醐味を味わい尽くしました。
自分が想像していた完成系よりもはるかに素晴らしい音楽が目の前に現れた瞬間でした。
須川さんの譜面には鉛筆で細かくさまざまな感情が書き込まれていて驚きました。僕の想いを何倍にも膨らませて下さいました。
須川展也様、藤岡幸夫様、東京シティ・フィルの皆様、すべてのスタッフの皆様、ファンの皆様、このような機会を頂けたことに心から感謝申し上げます。
楽曲解説
Saxophone Concerto 'Mystic Forest'
I: Blooming Flowers
II: Falling Leaves
III: Crystal Forest
歳を重ねる毎に「目に見えない力」を感じる事が増えてきました。
特にCOVID-19が世界的に大きな脅威となって私たちの生活を一変させま した。人間の集団心理も目に見えませんが人間の生活に大きな影響を与えていると思います。 夢や希望、喜びや悲しみ、怒り、愛、信じる気持ちなど、感情は目には見えませんが、感じる事のできる生き物が人間だと思います。
その中でも日本人独特の感性から感じられる死生観や侘び寂び、季節毎に見える神秘的な森林から感じ取れる情緒などを音楽にしました。
音楽もまさに目には見えないですが生きる力になると信じています。
第一楽章
桜は華々しく咲き誇り、そして一瞬で儚く散る。まるで光り輝き消えていく流星群のように。
桜には人の心を捉えて離さない。そしてその美しさ死を感じさせます。
第二楽章
紅葉が散る直前に人の心を強烈に揺さぶるのは何故でしょう。
あのフォトジェニックな、圧巻の世界の裏側に日本人が感じる趣きがあります。 お寺などを巡りながらふと秋の気配を感じた時に、いつのまにか日本の歴史の深さを感じます。
第三楽章
日本の雪景色。銀色の世界から連想される雪の結晶。
ホワイトアウトした真っ白な世界の先にある漆黒の闇。その中にさす一瞬の光から生命の神秘やエネルギーを感じることがあります。そんな雪で覆われた神秘的な世界を表現しています。
八百万の神という言葉が示すように、日本独特の目には見えない神秘的な力に想いを馳せながら作曲しました。
菅野祐悟
Composer's Note
When people think about saxophones, jazz saxophone is generally first to come to mind, but saxophone for classical music is played in a very different way from jazz saxophone and produces quite attractive tones.
Nobuya Sugawa, one of Japan's leading classical saxophonists, is a legend who continues to be at the top of his game in terms of both popularity and ability. I was asked by Sugawa to compose a saxophone concerto for him.
In the past, Sugawa has commissioned well-known composers to write music for him, and he has delivered a number of excellent new pieces to the world.
In particular, Takashi Yoshimatsu's Cyber Bird Concerto, which has become a milestone in saxophone concertos.
This piece was a masterpiece that I had to be well aware of when I wrote my saxophone concerto.
The difference between classical music and film music is that in the case of classical music, the composer has to find the concept to write by himself. The first step for me was to find the concept.
In these contemporary times, when we already see so many different concepts and compositions out there, what should we express?
What is it that can only be expressed in this age and what can only be expressed by us Japanese? Then one day, I found an answer and discovered a key phrase: "invisible power".
I was very nervous when Sugawa first listened to the piece I had composed over the past two years while digging deep into the concept, but I remember being so relieved when he was very happy with the result of the piece.
Later, the orchestration was completed, and after many rehearsals, we were finally able to perform the piece successfully.
During the performance, I was filled with tremendous excitement and emotion, and I was able to enjoy the real thrill of being a composer listening from the audience.
It was a moment when I was presented with music that was far more splendid than the completed version I had imagined.
I was surprised to see the various details of emotions written in pencil on Sugawa's score. He was able to expand my thoughts and ideas many times over.
I would like to express my sincere gratitude to Nobuya Sugawa, Sachio Fujioka, the members of the Tokyo City Philharmonic Orchestra, all the staff, and all the fans for giving me this opportunity.
----------------
About the Program
Saxophone Concerto 'Mystic Forest'
I: Blooming Flowers
II: Falling Leaves
III: Crystal Forest
As I get older, I am more and more aware of the "invisible power".
In particular, COVID-19 has become a major global threat that has changed our lives forever. Human group psychology is also invisible, but I believe it has a great impact on human life as well. Dreams, hopes, joys, sorrows, anger, love, beliefs - such emotions are invisible to our eyes, but we humans can feel them.
Among them, I created music based on the Japanese people's unique sensitivity to life and death, wabi-sabi (beauty within simplicity and imperfection), and the emotions that can be experienced from the mysterious forests in each season.
I believe that music, though invisible to our eyes, can be a force for life as well.
The first movement
Cherry blossoms bloom spectacularly and then fall in an ephemeral moment. It is like a meteor shower that shines and disappears.
Cherry blossoms have a way of captivating people's hearts. And its beauty makes us aware of death.
The second movement
Why do autumn leaves so intensely stir people's emotions just before they fall?
Behind that photogenic, overwhelming and beautiful scene, there is a certain aesthetic that Japanese people appreciate. When visiting temples and such places, and when we sense the signs of autumn, we are often struck by the depth of the history of Japan before we realize it.
The third movement
Snowscapes in Japan. Snowflakes are evoked by the image of a silvery world.
The pitch-black darkness that lies beyond the pure white world. In a moment when the light shines through the darkness, we can feel the mystery and energy of life. This movement expresses such a mysterious world covered with snow.
As the word ‘eight million gods’ implies, I composed this piece while thinking about the invisible and mysterious power that is unique to Japan.
Kanno Yugo
須川展也(サクソフォン)
日本が世界に誇るクラシカル・サクソフォン奏者。長きにわたり、チック・コリア、ファジル・サイ、坂本龍一、西村朗、本多俊之、吉松隆、長生淳など名だたる作曲家への委嘱を継続。それらの中には既に楽譜が出版されレパートリーとして国際的に広まっている楽曲が多く含まれており、クラシカル・サクソフォンの領域への貢献は計り知れない。作曲家からの献呈作品も枚挙にいとまがない。
N響、都響など国内オーケストラのみならず、BBCフィル、フィルハーモニア管など世界各国の著名オーケストラや、デュトワ、A.ギルバートなどの名指揮者たちと共演。ウィーンのムジークフェラインをはじめ、世界各地の檜舞台でリサイタルを行っている。また、これまで30ヶ国以上に招かれ公演やマスタークラスを行っており、管楽器の魅力を若い世代に伝える活動を精力的に継続している。
東京藝術大学卒業。第51回日本音楽コンクール、第1回日本管打楽器コンクール最高位受賞。出光音楽賞、村松賞を受賞。98年JTのTVCM出演、02年NHK連続テレビ小説「さくら」ではテーマ曲を演奏。
これまでに約30枚のCDをリリース。最新CDは自身初の無伴奏作品となる「バッハ・シークェンス」(令和2年度文化庁芸術祭レコード部門優秀賞受賞)。2014年に自叙伝「サクソフォーンは歌う!」を、また2021年に「絶対!うまくな
る サクソフォーン100のコツ」を刊行。
89-10年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスター、07-20年までヤマハ吹奏楽団常任指揮者を務める。トルヴェール・クヮルテットのメンバー、東京藝大招聘教授、京都市立芸大客員教授。
使用楽器:ソプラノSax:YSS-875EXG アルトSax:YAS-875EXG(いずれもヤマハ株式会社)
オフィシャルサイト:
http://www.sugawasax.com
藤岡幸夫(指揮)
©青柳聡
英国王立ノーザン音楽大学指揮科卒業。「サー・チャールズ・グローヴス記念奨学賞」を特例で受賞。
1993年BBCフィルの定期演奏会が「タイムズ」紙などで高く評価され、翌1994年「プロムス」にBBCフィルを指揮してデビュー。以降ロイヤル・フィル、ロイヤル・リヴァプール・フィル等数多くの海外オーケストラに客演。2006年オヴィエド歌劇場ブリテン「ねじの回転」でスペインにオペラ・デビュー。その年の同劇場新演出作品のベスト・パフォーマンス・オブ・ザ・イヤーに輝き、2009年にR.シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」で再び脚光を浴びた。2016年にはブリュッセルでA.デュメイ、V.アファナシエフと共演。2017年5月にはアイルランド国立交響楽団にマーラーの第5交響曲で客演、聴衆総立ちの大成功を収めた。
マンチェスター室内管弦楽団、日本フィルを経て、現在関西フィル首席指揮者、および東京シティ・フィル首席客演指揮者。毎年40公演以上を共演し2020年に21年目のシーズンを迎えた関西フィルとの一体感溢れる演奏は常に高い評価を得、2019年4月に就任した東京シティ・フィルとの今後の活動には大きな期待が寄せられている。テレビ、ラジオへの出演も多いが、なかでも番組の立ち上げに参画し、指揮・司会として関西フィルと出演中のBSテレビ東京『エンター・ザ・ミュージック』(毎週土曜朝8:30〜)は番組スタートから8年目に入り、放送も350回を越えた。
2002年渡邉曉雄音楽基金音楽賞受賞。
東大阪市特別顧問,滋賀県長浜市文化観光大使,きょうと城陽応援大使。
オフィシャルサイト:
http://www.fujioka-sachio.com/
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
TOKYO CITY PHILHARMONIC ORCHESTRA
1975年、自主運営のオーケストラとして設立。現在、常任指揮者に高関健、首席客演指揮者に藤岡幸夫、桂冠名誉指揮者に飯守泰次郎を擁する。
年間100回を超える公演は、定期演奏会および特別演奏会の他、オペラ、バレエ公演やポップスコンサート、映画音楽、テレビ出演、CD録音、音楽鑑賞教室まで多岐にわたる。特にテレビにおいては、テレビ朝日『題名のない音楽会』でその新鮮な魅力溢れる演奏を披露し、日本全国で好評を博している。
また地域コミュニティでの活動も積極的に展開。1994年から東京都江東区と芸術提携を結び、ティアラこうとうを主な拠点としてティアラこうとう定期演奏会やファミリーコンサート、公開リハーサル、楽器の公開レッスン、音楽鑑賞教室、区内小学校へのアウトリーチ活動など、地域に根ざした音楽文化の振興を目的に幅広い活動を行っている。
2021年5月には桂冠名誉指揮者飯守泰次郎の傘寿記念として「ニーベルングの指環」ハイライト特別演奏会(演奏会形式)を開催。コロナ禍での開催ながら、海外から世界最高峰のワーグナー歌手陣を招き大成功を収めた。
これからの活躍が最も期待されているオーケストラである。