俳優としてドラマや映画、舞台に引っ張りだこの一方、アーティストとして活躍するMORISAKI WINが、東名阪+広島をめぐる初のクアトロツアー『MORISAKI WIN JAPAN FLIGHT QUATTRO TOUR』を開催。最新EP『LOVE SONGS』の配信日でもあった10月15日に東京・SHIBUYA CLUB QUATTROで初日公演を行った。クラシック編成やアコースティック編成でのライブはあったが、バンドスタイルは久々となる約1年ぶりのツアーということで、昼夜2部制で行われたライブは両公演ともソールドアウト。デビュー時からWINを支えるバンドメンバーが阿吽の呼吸で繰り出すアンサンブルに乗って、時間と空間を共有できる“ライブ”の喜びを、満員のCREW(観客)と共に味わいつくした初日公演のうち、ここでは夜公演をレポートする。
マーチドラムにギター、ベースと音が加わり、心地よいバンドサウンドでライブの幕を開けたのは、映画音楽に焦点を当てて今年2月に発表された洋楽カバーアルバム『Win's Film Songs』からのチョイスとなる「Footloose」。溌溂としたジャケットスタイルでWINがステージに飛び出し、甘く、躍動的なボーカルを自由自在に放てば、ホールのレトロモダンな空気感も相まって、一気にアメリカのハイスクールへとトリップしたような心地になる。客席からは絶えずクラップと歓声が湧き、場内のボルテージはぐんぐんアップ。歌声の深い波動が心に沁みるデビュー曲の「パレード - PARADE」に、朗々たるロングトーンを響かせた「UNBROKEN WORLD」と、その後も卓越したボーカルスキルを存分に発揮しながら、CREWと共に手を振り身体を揺らして、文字通り“音”を“楽”しんでいく。
胸に秘めた確固たる覚悟をリズミカルに届ける「Live in the Moment」を挟み、MCでは「初めましての方」に自己紹介をして「目標はアジアツアー。自分の音楽を引っ提げて旅をするのが目標」と伝えると、湧き起こった拍手に「あったけぇな!」と破顔。1年ぶりのツアーに喜びを表し「ライブってさ、その瞬間にしか生まれないものってたくさんあるじゃない。同じセットリストでもCREWのみんなによっても変わってくるし、その瞬間が俺はライブの本当に大好きなところ」と語ってくれた。そして「ゆったりな空間に合う曲を持ってきました」と始まった「Rocket Man」では、まさに瞬間を愛しみ、慈しむように繊細なボーカルに、CREWは着席したままジッと耳を傾けた。一転「Perfect Weekend」になると立ち上がり、クラップしながら軽快な音に乗るCREWにWINは何度も「Thank you!」と声をあげ、ダイナミックなバンド演奏が壮大さを醸す「Blind Mind」では、赤いライトを浴びてエモーショナルなボーカルで激情を表出。フロアを惜しみない喝采で満たしていくのは圧巻だ。
珠玉のスタンダードナンバー「Stand By Me」をじっくりと聞かせ、今ツアーは公演でセットリストに変化を加えていると公表。また、サポートに入ってくれている面々を“クランプルバンド”と呼んで「クランプルは“揉みしだく”という意味。音楽を揉みしだいて、くしゃくしゃにして、そこからまた新たなものを作っていきたい」と、命名理由を説明してくれた。そしてバンマスの宮野弦士(G、Key)、武宮優馬(B)、油布郁(Dr)とメンバーを紹介し、現在、WINが出演しているミュージカル『SPY×FAMILY』のオケピットにも入っている油布郁はWINが演じるロイドについて「どんどん進化していってる」と賞賛。WINも「今年はいろんな変化の年で、やることの幅が広がった。今までやってきたものがいろいろつながった」と語り、「今日もド平日なのにCREWの皆さん集まってくれて! 今まで頑張ってきたことって、こうやって形になっていくんだなぁと。だから自分の歩んできた歴史を改めて振り返りながら噛みしめて、今一度感謝していきたいなと思って毎日過ごしてます」と真摯に伝える。そして多忙を極める毎日でも「CREWがパワーくれるよね? みんなが“WIN行け! お前ならできる!”って言ってくれたら、俺、できるのよ。だから、頼むよ!」とCREWに望めば、客席からは承諾の拍手が湧いた。WINとCREWの絆は、かくも強い。
「メジャーデビューしたときに出会った曲をお届けしたいなと思います」と2020年に発表した「WonderLand」をグルーヴィーに届け、2023年リリースのアルバム曲「Me, Myself and I」で“まずは自分を愛そうよ”と客席に歌いかけてから、ひとつのクライマックスとなったのが「BeFree」だ。飛び跳ねるCREWに「調子出てきたね」と、さらにギターソロを放つ宮野に「最高!」と声をかけたり、スピーカーに足をかけて歌ったりと、感情全開のパフォーマンスを展開。まさに“BeFree”を体現して「これだよ、ライブって! ダイブしたいな」と顔をほころばせる。
そして、本日10月15日にリリースされたEP『LOVE SONGS』について、W主演を務める日タイ合作のオリジナル映画『(LOVE SONG)』が10月31日に公開されるのを機に制作された作品であるとMC。収録4曲のうち完全新曲の「初恋(LOVE SONG)」は、自身が演じるソウタの映画を経ての気持ちも想像しつつ、けれどソウタの曲なわけでもないという曖昧なところを、デビューからお世話になっているEIGOと一緒に歌詞にしたと明かしてくれた。さらに「やっぱり愛が大きな平和を生んだり、いさかいをなくしていくことにつながっていくと思っていて。CREWと僕の空間も常に愛で包んでいきたい、包まれていたいなっていう想いを込めてEPを作っていました。それも感じていただけたらなと思います」と前置き、R&Bバラード「初恋(LOVE SONG)」を披露。切ない心情をエモーショナルに訴える姿は“歌う”というよりも“生きている”という形容をしたくなるほど、想いのすべてがさらけ出されていて、俳優としても活躍するWINの表現力の凄まじさを思い知らされた。
続いて「愛を語ったんで、次の曲はみんなから愛を聞きたい」と伝えてハイハットの音が鳴れば、CREWは一斉に「U」をタイトルコール。ステージを端から端まで移動しながらCREWとコンタクトして、今度は“歌う”というより“おしゃべりしている”ような和やかな空間を作り上げていく。“あなたの言葉を聞かせて”と歌えば“WIN!”と大きな声を返すCREWに「お前らホントに最高だ! I Love You!」と叫ぶと、「Move out」ではミラーボールが投げる光の中で歌い踊りまくり、ソロを弾く宮野の後ろでエアギターして大はしゃぎ。最後はCREWと一緒にジャンプして、熱狂のうちに本編を締めくくった。
熱気冷めやらぬ場内では当然クラップが鳴りやまず、アンコールでは上がりっぱなしのテンションのまま「ネバネバ」で拳を突き出し、ポジティブなリリックを歌い叫んで、ロングトーンを力の限り轟かせる。歌い終えると「ちょっと叫びすぎました…」とCREWを笑わせ、EP『LOVE SONGS』収録の「stay by my LOVE」についてトーク。一昨年のツアーを通じてCREWと制作過程を共有しながら作っていった楽曲であること、当時のタイトルは「stay by my side」だったが「僕の愛の輪の中に、愛の近くにいてほしい」という意味でタイトルを変えたことを話して披露されたのは、当然「stay by my LOVE」だ。「この曲は僕からCREWへの愛だと思って受け取ってくれたら」との言葉通り、温もりを感じるボーカルで“どんな時でも僕が守るから”と歌い、CREWに指ハートを向けて「みんな一緒に歌おう」と誘えば、場内には美しい合唱が。まさに愛に包まれた空間で、1年ぶりとなるツアーのスタートを切った。
現在、出演中のミュージカル『SPY×FAMILY』で年内いっぱい全国を回り、10月31日にはW主演映画『(LOVE SONG)』が公開と、俳優としても忙しい毎日を送りながらアーティストとしての自己表現に磨きをかけ続けるMORISAKI WIN。今後ツアーは10月30日の名古屋、31日の大阪、11月24日の広島へとバトンをつないでいく。役者として生きる数多の人生に彩られ、厚みを増した彼の音楽を、この機会にぜひ味わってみてほしい。
ライター:清水素子
カメラマン:ヨシハラミズホ
(2025/10/16掲載)
MORISAKI WIN JAPAN FLIGHT QUATTRO TOUR
スケジュール
【東京】2025/10/15(水)開場15:00/開演15:30 / 開場18:30 開演19:00
両SOLD OUT
SHIBUYA CLUB QUATTRO(
サイト▼)
【名古屋】2025/10/30(木)開場18:30 開演19:00
NAGOYA CLUB QUATTRO(
サイト▼)
【大阪】2025/10/31(金) (1)開場15:00 開演15:30 / (2)開場18:30 開演19:00
(2)SOLD OUT
UMEDA CLUB QUATTRO(
サイト▼)
【広島】2025/11月24(月・祝)開場15:00 開演15:30
HIROSHIMA CLUB QUATTRO(
サイト▼)
チケット代:¥11,000(座席有/指定席)
チケットぴあ受付ページ
出演者:MORISAKI WIN
宮野弦士、武宮優馬、油布郁