今年もまたPK shampooの熱い夏が始まった。5月27日にリリースされる
最新EP『尊い偽星』。ここには昨年11月にリリースした配信シングル『Bad Boys Blue』をはじめ、現ver.にて再録した『天王寺減衰曲線』、ほぼ2曲同時に作った新曲『還らざる光』と『Viva la fake star』の全4曲が収録されている。
彼らの過去は、よく知らない。でも、彼らの歌なら、よく知っている。轟音、泣きメロ、君と宇宙。さんざんバカをやり尽くして去った、あの街の匂いと温もり。神戸、大阪、京都ーー今作の制作期間中、地元・関西で過ごすことが多かったというヤマトパンクス(vo/gt)。跡形もなく消えてしまったタコ焼き屋の、お節介なおばちゃんの言葉とか。ブームに乗れない自分と、そのブームのド真ん中で盛り上がる天王寺・fireloopの景色とか。あるいは、両親がまだ揃って暮らしていた茨木の、おぼろげな部屋の記憶までも。偶然にしろ、必然にしろ、あらためて自分のルーツと向き合い、思い出したことも多かったようだ。
<なにもなかった>はずは、なかった。あったのに、見ようとしていなかった?であれば、なおさら。いつも以上に徹底した音作りへのこだわりや歌詞世界の描き方へと舵を取るのもわかる気がする。中学、高校、大学と、すべてを先延ばしにして生きてきた自分自身へのアンサーか。とくに、さわやかなコーラスワークが吹き抜ける『Bad Boys Blue』やサザンオールスターズの『TSUNAMI』を出発点に(いわゆる「利休道歌」における芸道としての精神作法)“守・破・離(しゅ・は・り)”で、とことんオリジナリティを突き詰めたという『還らざる光』は、その傾向が強いと感じる。
例えば、どちらも、歌としての聴き心地はきちんと担保する一方で、ギター・ワークやコード・プログレッションにおいては、かなりの複雑さを極め、作った本人たちですら「演奏するには難しい曲」と、苦笑いする。ただ、BPMも比較的ゆるやかな『還らざる光』は、『星』や『夜間通用口』にも通ずる2段階イントロを経て本編、間奏、アウトロと“曲全体に鳴る音をまるごと味わう”にはもってこいの曲。ヤマトの中の“勝手な女性像/女性らしさ”を引き出して書いた歌詞の筆致もかなり新鮮で。今後、長く愛されていきそうな予感がする名曲だろう。
ちなみに、これは勝手な見方にすぎないが、“俯瞰する視点”の高さからこの作品を楽しむこともできるのではないだろうか。例えばM1は東京・中野の空から一気に成層圏を超え、月の裏側、はちぶんぎ座、さらには<土星を過ぎます>とまで歌われる曲。まさに一方向にしか進まない“光”の“還らざる”決意の強さを感じる曲にもなっている。しかも光=星=スター(スーパースター?)とも取れ、もし、PK shampooが今後、めちゃくちゃ売れて、ドームクラスのアーティストになったときには、こんな心境にもなるのかなぁと、そんな楽しみかたもできそうだ(笑)。また、その壮大な視点がM2では、比較的地球に近いところから彗星、あるいは衛星といったものを観測しており、M3にいたっては、学校とその周辺。ラストM4では、もはや“天王寺”という定点へとカメラがグッと寄っていて、そのコントラストも面白い(しかも偶然なのか、曲の完成順で現在→過去という並びでは?!)。
さて、そもそもEPタイトルにある“尊い偽星”とは、なんなのかーー。響きとしては、若くして散っていった命に名付ける“犠牲”をも想像させるが、あえて“星”とすることで、“自分たちも含めて”FAKE STARだという立場を強調しているようにも思える。このことは『Viva la fake star』も同様で、彼らが(PHYCHIC FESの主宰といったことも含めて)常々、シーンの中でどう振る舞い、仲間たちとどう関係を築いてきたかが垣間見える。
「自分もいろんな失敗をして、人に嫌われたり、この先、二度と踏めないよってマスがたくさんあったりもする。でも、失敗したっていいじゃん!って。それはそれで、やってしまった過去はもうどうしようもないから。その失敗を受け入れて、じゃあここから、今ある手札で何をする?どこに進む?って。それこそ酒でも飲みながら、その失敗エピソードでゲラゲラ笑いながら、やっていくしかないんじゃないかなって。だから、フェイクだっていいじゃん。叩かれたって、やり直せばいいじゃん。FAKEバンザイ!ヤッホー!って(笑)。それこそ、世の中には僕みたいなやつもいるし、大丈夫だから。そう言ってあげることで、誰かの心の救いになればいいなとは思います」(ヤマトパンクス)
彼らの過去は、よく知らない。でも、彼らの歌なら、よく知っている。轟音、泣きメロ、君と宇宙。誰にも言わない傷痕(きずあと)の痛みをたやすく言い当てる歌。僕らが待ってるこの街で、彼らが始めたあの街で、永遠に繰り返される、青より蒼い夏の歌。6月には本作を携えた全国ツアーがスタートする。タイトルは、レコーディング初日が“6惑星直列”の日だったことにちなんで“Planet Parade”。オーラスの東京・Zepp DiverCity以外は対バン形式で、それこそ“盟友”と呼べるバンドの名前もたくさん連なっている。それぞれのバンドを惑星とするなら、この貴重な機会を逃す手はない。
なかしまさおり(office⭐︎ROCKETS)

COCA-18328 ¥1,320 (税抜価格 ¥1,200)
<収録楽曲>
M1. 還らざる光
M2. Viva la fake star
M3. Bad Boys Blue
M4. 天王寺減衰曲線(再録)
★Major 3rd EP『尊い偽星』発売記念イベント>>>