春フェス
――PK shampooは、5月だけで大型フェスに5本出演しました。もともとヤマトくんはフェスにあまり前向きじゃなかった印象があるのですが、どうして今年これだけ積極的に出演する形になったんでしょう?
ヤマト:ぶっちゃけ、話が来たから受けただけというのもあるんですけど(笑)、僕は大学軽音のややこしい価値観の中で音楽を始めたんで、そういう場所にはメジャーシーンとか、フェスで皆でコール&レスポンス、みたいな空気に対して反感を持つような磁場があったし、結成当初はその感覚を引きずっていたという今思うと情けない事情もありました。当時は4つ打ちのダンスロックが全盛で、そういうバンドがフェス文化をどんどん牽引していってた時代でもあって。僕としては、自分たちのようなバンドが仮に飛び込んでいったとしても、つまはじきにされるんじゃないかという不安もあったし、そもそも僕らは地下のライブハウスで不貞腐れているのがお似合いだっていう倒錯した選民思想のようなものもあったんです。どちらかというと、自分の中の精神世界とか、友達のやらかした馬鹿話みたいな、半径5メートルぐらいまでのことにしか興味がなかった時期でもあって。フェスに出ていって消費されてしまうのも、ガーっと売れていって自分の素行を問いただされるのも怖かった(笑)。自分たちが未完成な中でイメージだけが独り歩きしてしまうのも嫌だったし。表現やスタンスが固まってない中で、大きなステージにポンポン出ていくのが怖かったんだと思います。それで出演の話がきても突っぱねてたっていう(笑)。ガキですね。反省してます。
――それが2026年になって考え方が変わってきた、と。
ヤマト:メンバーも全員30歳前後になってきて、自分の中で1つ踏ん切りがついたというか。人間の完成なんていつまで待とうが一生来ることはないんだし、乱暴に逆を言えば最初から完成してるとも言えるわけで。バンドも人間が集まってやっている以上そういうものだと思うし、そもそも僕たちのようなバンドが完璧なものとか均整の取れたものに憧れていても仕方ない(笑)。さらに言うと、そういういびつな欠けた形を面白がってくれたり、味があると言ってくれる人もたくさんいることが体感でわかったので、ためらいが全く無くなったわけではないですけど、未熟でも恥ずかしがらずに堂々と、走っていく中で成長していこうって考え方になってきたというか。人生ってそんなに長くないし、周りのバンドもぼんぼん辞めていったりしている中で、いつまでも駄々こねていてもしょうがないなって。
――ヤマトくんと付き合いが一番長いケンくんは、考え方の変化とかバンド内の変化みたいなもので感じることはありますか。
にしけん:楽曲に関しても割とそうで、前まではもっと「複雑に複雑に」っていう傾向があったというか。作品の出来そのものというよりはどうやって作るか、とか何故歌うか、みたいな複雑な制作の過程そのものに重きを置いて曲を書いていたイメージだったんですけど、最近は「ここはもっと分かりやすくした方がいいんじゃないかな」とか、そういう意見を言うようになってきたんです。それはさっき言っていたフェスに出ていった方がいいんじゃないかって考え方の変化にも繋がるようなものかなと僕なりに思います。
――ちなみに今、ヤマトくんは東京で、3人は大阪・京都にいる状況じゃないですか。普段からどれくらいコミュニケーション取られているんですか?
ヤマト:暇だから連絡するとかはまず無いですし(笑)、僕が関西に滞在している間に「昼飯でも行こうか」みたいな話にもならないけど、前よりは会う機会が増えた気もします。
カズキ:どんどん仲は良くなってるかもね。
にしけん:スタジオに入る回数も増えましたし、曲を作るにあたってやり取りする回数は、前よりは格段に増えたっていうのはあると思います。
――カズキくんは「仲良くなったかも」って言いましたけど、どういう時に感じますか?
カズキ:たとえばツアーなんかでホテルに泊まる時でも、昔のヤマトさんは“繊細”だったんで……。
ヤマト:お前らが大雑把すぎるんじゃ(笑)。
カズキ:ヤマトさんは一緒のホテルに泊まりたくないと言って、別のホテルに泊まることも多かったんです。今回のEPの編曲をする時、珍しくヤマトさんが僕らの泊まっている所に来てくれて、一緒の空間でだらだら喋りながら曲作ったり、そういうところが懐かしいというか、仲良くなったというか。
――だいぶ久しぶりだったんですね。
ヤマト:確かに、俺の方が安い宿でいいし、俺の方が駅とかライブハウスから遠くなってもいいから、別のホテルとか、何なら違う駅で滞在させてくれと言っていた時期がありましたね。そういう文句を言ってると隣の部屋のいびきとか物音がうるさいから嫌なんだと思われがちなんですけど、僕はビジネスホテルの壁の薄さの中で自分が物音を立てるのが嫌なんですよ。自分の存在を察知されたくないんです。僕は隣の部屋で他人がいびきをかくのはむしろ嬉しいぐらいで。それって向こうが寝ちゃっているってことだから、気楽だなとすら思う。知らない人でもそうだけど隣の部屋が知ってる人間だったりすると余計に気を遣ってしまうというだけで、別に他人が嫌なわけじゃないです。
カズキ:僕たちはもともと大学の友達として集まったメンバーだったんですけど、バンドをやっていくうちに良くも悪くも「仕事仲間」みたいになってきた時期もあって。最近はいい意味で、昔の友達のような距離感をお互い掴めてきたかなって。近づきすぎても喧嘩するし、四六時中一緒におるわけじゃないから、話も弾むし、楽しい。その距離感を掴めたのかなって。
――カイトくんはどうですか。バンド内の変化みたいなものを感じる部分は。
カイト:やっぱり昔は仲が良すぎたんですよね。その貯金で、いまだに何かトラブルがあっても許し合えるみたいな側面はあるかもしれないですけど(笑)。バンド内での分業化というほどでもないけど、そういうところに対しての配慮みたいなものが、ふわっと生まれてきたかなっていう気はしますね。
――そんないい状態の中、春フェスにたくさん出てみての手応えはどうでした?
ヤマト:まあ、別にこれまで大きなフェスに出たことがないわけではないし、ステージの規模が何倍にもなったりしたわけでもないんでそんなに大げさな感想は無いんですけど(笑)。ただ、時代の移り変わりはやっぱりすごく感じましたね。出会った頃はただのガキンチョだった年下のバンドマンとフェスのバックヤードで会うことも増えてきて。僕たちは新人って言うほど新人でもないし、大きなイベントの小さい方のステージで気鋭の新人!みたいな子たちに混じってヘラヘラするばかりでなく、もうちょっと意識的にステップアップしていかなあかんなと感じました。結成当初、僕たちが初めて大きなイベントに出た時に同じ場所にいた人たちは、すごく上昇志向を持ってどんどん売れていったか、もしくは理想と現実の板挟みになって辞めちゃったか、だったりもするんで、時代が流れているんだなっていうのを実感するとともに、いつまでも責任から遠いところで昼行燈やってちゃいけないなとは思います。
――フェスに出るにあたって、セットリストは、どう考えているんですか?
カイト:基本的にセトリはいつも僕がたたき台を作って、そこからみんなで話し合う感じで作るんですけど、昔からある定番曲やテンション高めな曲を連発していくのか、静かな曲も僕らの1つの特徴でもあると思うんで、フェス向きじゃない曲をどれぐらいのバランス感で入れていくかは悩ましかったです。ヤマトさんの世間をナナメに見てるような部分は僕も好きだから分かりやすくウケたりはしないような曲も入れた方がいいなと思う反面「でも、そりゃ盛り上がった方がいいよね」ってバランスの調整ですね。
ヤマト:具体的には、「夜間通用口」をフェスのセットリストに積極的に入れろと主張してくるレーベルと入れたくない僕とで論争になったりして。そもそもあれは、世間で流れてる、サビ始まりで、ショートチューンで、切り抜きやすいフックがあって……みたいな曲に対してのアンチテーゼとして面白がってもらっている曲だと思うんですよ。今回リリースの「還らざる光」もそうですけど、2段階にわたってイントロがあって、ギターソロがギュンギュン鳴って、アウトロも馬鹿長くて、みたいな曲なので、それを現代のフェスで演奏するっていうのは普通に考えると逆張りになると思うんですけど、レーベルからは、「バンドの中で1、2番目ぐらいに有名な曲なんだから、それをあえてやらないのは逆張りでしょ!」「予習してきてくれる人たちに向けてそれをやった方がいいんじゃない?」みたいな意見も出て。逆張りな曲が前面に出てしまってる現状で、それを大きなステージでやるのは順張り?逆張り?っていう、ややこしい話になって。
――たしかに、かなりこんがらがった議論ですね(笑)。
ヤマト:僕自身、「夜間通用口」って曲自体にそれなりに飽きているっていうのもある(笑)。ああいう曲たちっていうのは僕がバンド始めたての頃に、初めてギターを手にした勢いで右も左もわからないままジャカジャカやりながら作った曲であって、逆張りでああいう編曲をしたというよりは単に構成が上手くまとまってないだけだと言えなくもないので。今見ると稚拙な部分も目立つし、最近の曲の方がクオリティとしては高いだろうという葛藤はあります。まあ最終的にはレーベル側にもある程度僕たちの意図を飲んでもらえたわけですし、どっちもその先を見据えた上で議論ができたわけで。そもそもサブスクとかで楽曲の上位に「夜間通用口」がずっとあることにも、うーんって思ったりするんですけど、僕自身、好きなアーティストが初期の曲をやってくれないのは寂しかったりするので気持ちもわかるし、まあ、結果がどうなるにせよメンバーやレーベルも含めてこのバンドの先を見据えた話ができていること自体に割と意味があるのかな、と思ってます。
――実際、お客さんの反応や反響的にはどうだったんでしょう?
カズキ:「夜間通用口」以外を聞いてくれる人も増えてきて。「君が望む永遠」とかも最近の曲ですけど、やっているうちに定番な曲になっていくんですよね。「天使になるかもしれない」なんかもそうですよね。ある時期から曲に入る前にヤマトさんが変なビートたけしのモノマネをやり始めて……。
ヤマト:あれはなんかあるとき変な勢いでやっちゃって、それが何故か定番化してるんですけど。専門用語というか、ジャーゴンというか、自分たちにだけ通じるミームみたいなものって、もちろん身内ノリと言われればそれまでなんですけど、誰でも盛り上がれる、誰でも簡単に参加できるものよりは、1段、2段障壁があるものの方が、中に入った時に嬉しいというか、留まりたいなと思えるかな、っていう。昔のライブハウスが怖かったみたいな話って今でもまことしやかに語られたりしますけど、それのめっちゃしょーもない版ですかね(笑)。
――PK shampooは学生ノリの延長を大切にされていると思うんですけど、毎回ケンくんのいじられみたいなのもあるじゃないですか? ケンくん的にはどう感じている?
にしけん:別にみんなが笑ってくれるならいいですけど、笑いにならない時はやっぱり辛い。「俺、何やってるんやろ」みたいな気分になります。「なんでやねん」って(笑)。
ヤマト:それはお前のボールの受け取り方もあるやろ(笑)。
にしけん:一時期、ひどかったんですよ。お客さんからも野次でいじられて。最近はお客さんも落ち着いてきて、本当にうれしいです(笑)。
ヤマト:最近の若い子ってモラリスティックというか常識的な子がすごく多いと思いますね。昔はフロアで殴り合いの喧嘩とか起きてましたからね(笑)。味園ユニバースのワンマンで物販の売り上げ盗まれて会場にめっちゃ警察来たこともあったし(笑)。すごく良い時代になってきているなと思います。個人的にはもっとめちゃくちゃでもいいんですが(笑)。
――フェスに出たことで新しい人に見てもらえたな、という感じはありました?
ヤマト:昨日も友達のバンドとそんな話をしていたんですけど、当たり前ながら、フェスに出ているバンドって、ザ・フェスに出てそうなバンド、って感じの人たちばっかりじゃないですか。興行なんだから当然だとは思うし、別に負け惜しみで言うわけじゃないですけど、そういうところと自分たちの親和性って難しいよなっていうのはあって。“野外フェス”とか“バズ”みたいな言葉とはあまり相容れないような活動を志向している身として、フェスやメジャー流通やSNSのような何らかのプラットフォームに乗っかって大勢の人前で演奏することを目標とするというよりは、大型連休の野外から平日の地下のライブハウスにどうやって導線を引くかを常に意識していかなあかんなと思います。もちろん自分たちのやっていることを崩したら意味ないわけだし、どうしたらいいんやろうなっていうのはすごく難しい。もしかしたら不可能かもしれない。でも、誰かに舗装された道を要領よく進むよりはそういう難題にチャレンジしていく方が面白いし最終的には高い山に登れるかなとも思います。たとえ最終的に失敗したとしても、チャレンジはしたんだしまあ仕方ないなと思えるかなと。
ツアー「PK shampoo tour 2026 -Planet Parade-」
――6月からは全国ツアー「PK shampoo tour 2026 -Planet Parade-」が始まりますけど、どうしてそれぞれの土地でゲストを呼ぶ形にしたんでしょう?
ヤマト:ツーマンにしたら演奏時間を半分にできてラクなんですよね……(笑)というのは冗談だとしても、前回のツアーでも刺激を受けて、盗ませてもらうこともたくさんあって。プロフェッショナルの方とか尖ったバンドから盗み取っていきたいなっていう意識ももちろんある。あとは、色んな地方でメンバーとずっと一緒にいると気が滅入るのでどうせなら友達と行きたいというのもあります(笑)。
にしけん:自分たちよりめちゃくちゃベテランの方もいれば若い方もいて。ヤマトさんが言ったように、いろんなものを吸収できたらなと思っています。それで、最後の東京Zepp DiverCityのワンマンで、学んできたものの成果を出して挑みたいな、と。
――対バンの相手と打ち上げとかで結構コミュニケーションは取られるんですか?
ヤマト:相手方の都合もあるので必ずしもとは言えないですけど、最近は4人とも参加してわいわいやるようになってきたかな。やっぱり人間的な距離の近さでライブのパフォーマンスも変わると思うんです。全然知らない人とか、好きでもない人とツーマン、スリーマンをやるヒリヒリ感も嫌いじゃないですけど、友達同士とか信頼し合っている関係同士で集まってやった方が演奏にも体重が乗るんですよね。昔は互いに尖ってぶつかってはじき飛ばし合うみたいなのが面白かったけど、最近はみんなで大きなひとつの彫刻になるような活動の方が面白いなって考え方になってきて。「勝った負けた」とか「俺はすごい、あいつはフェイクだ」とかっていうよりは、ひとりじゃ手に負えないような何か巨大なものをみんなで作り上げていこう、みたいな考え方に若干なってきています。成長ですね。
――カイトくんは今回のツアー、楽しみにしていることは。
カイト:ものすごくシンプルな話になるんですけど、EPの「還らざる光」と「Viva la fake star」が個人的にものすごく好きで。音源だけじゃなくライブでも化けるような曲だと思うので、それをお客さんにしっかり披露できるツアーにしたいですね。ライブ映えする楽曲やと思うので。
――ライブをやることによって新曲の完成度が高まっていくところはある?
カイト:やっぱり僕らって、めちゃくちゃ均整の取れた演奏技術で売っているバンドって感じではないし、ライブ特有のアレンジを結構入れるバンドやと思うんで、やればやるほど整っていくっていう点でも、ずっとこれから先も演奏していきたいような曲ができていると思っていて。今回のツアーでやっているのも見てほしいし、それ以降もどんどん良くなっていくやろうとは思います。逆に、既存曲もアレンジが変わったり、雰囲気が変わったりしているので、楽しみにして見てほしいなって。
――カズキくんはどうでしょう?
カズキ:対バンの皆さんと、めっちゃ仲良くなりたいですね。アフターソウルと時速36km以外、トップシークレットマンも、the bercedes menzも、9mm Parabellum Bulletも、イベントで一緒になったりしたことはありますけど、ツーマンはないので。やっぱツーマンって、ちょっと特別じゃないですか? せっかくやるからには仲良くやりたいです。色んな人を深く知って、リスペクトを持って、それでも負けないぞって気持ちを持った上でファイナルのZepp DiverCityに立ちたいなと思います。
ヤマト:お前は座ってるやろ。
3rd EP『尊い偽星』
――Major 3rd EP『尊い偽星』の話も伺いたいのですが、「Viva la fake star」という曲もあるように、「偽物の星」というテーマにした理由はどういうところにあるんでしょう?
ヤマト:今まで色んな曲で<星になるんだ>みたいなことをずっと歌ってきたんですけど、それって、自分たちが本当のスターであるはずもない、という観点から出発している言葉なんだなと今さら気づいたんです。野球選手から「将来の夢は野球選手です」なんて言葉は出てきませんから。そこから出てきたのが「尊い偽星」っていう単語で。それは例えば偶然キリスト本人に生まれることより「キリストのように高潔に生きたい」と考えて、凡人がなんとかキリストに近づこうとする意思そのものの方がもしかしたら尊いんじゃないかな、みたいな話でもあります。ブログにも書きましたけど、「キャベツ太郎」って、別にキャベツでもなんでもないし、たぶん成分としてもキャベツなんて混じってないのにキャベツ太郎と名乗っている。そういうよくわかんないお菓子の方が、僕は見ていて面白いな、というか。さっきカイトも言ったように、僕たちは決して演奏のうまいバンドじゃないし、クリックに合わせてミスなく音程もリズムも完璧なライブをやれ、って言われたら多分できなくて。その分、自分で言うのもアレですけど、いろんなギミック的な編曲だったり、ややこしいテーマをこねくり回してみたり、そこをマスキングするための、いろんな小技や、変なスタンスみたいなものの集積で面白い曲になったり、他にないバンドになったりしてきた部分はあると思う。そりゃ俺たちは偽物かもしれないけど、俺たちの方が本当のキャベツより面白いぞ!っていう。偽物って、質の低いって意味で使われがちな言葉だけど、本物より質の高い偽物だってあるよなっていう。かつてカリオストロ公国が作ってたゴート札みたいなもんですね(笑)。それを『尊い偽星』と呼んでみようかな、っていう感じでつけたタイトルです。
――「還らざる光」は、他のインタビューで、サザンオールスターズの「TSUNAMI」とか、くるりの「東京」をリファレンスにしたという話もありました。そういう作り方は今回が初めてですか?
ヤマト:ここまで意識的にやったのは初めてです。さっきの話とリンクしますけど、1回コピーするというか、近いものを作ってみて、そこから本家と違う部分を取り出してひとつの曲に繋げていくのは、結果的にですけど、EPのテーマとも合致しているなと今となっては思います。
――カイトくんが最初打ち込んでみて、そこからブラッシュアップしていったそうですね。
カイト:ヤマトさんからいきなり「一旦そのまんま『TSUNAMI』のカラオケを作ってくれ」って言われたんです。そこに自分なりに新しいメロディと歌詞を当てるからって。それで作って色々試したんですけど最終的に出来た曲を聞いて「これは『TSUNAMI』やな……」ってつぶやいてて、そらそうなるやろっていう(笑)。でもそこから、各所に色んな変更を加えて、を繰り返していく過程に、一旦オールドスクールなギターサウンドを前に出そう、みたいな過程があって、そこで出た名前がくるりの「東京」だったりして。
――かなり試行錯誤した末の完成形なわけですね。
ヤマト:カイトに「こういう風にやってみて」「やっぱ違う、やっぱこう」「それも違う、やっぱこう」っていうのを半年くらい延々とやってもらったんです。
カイト:編曲AIみたいなイメージです(笑)。何回もラリーをして答えが出るのを待つみたいな感じで最近の楽曲は制作していて。ヤマトさんが僕に思考パターンをめっちゃ投げて、最適なパターンを最後に残す、みたいな感じで色々やっています。
ヤマト:僕はものすごい飽き性なんで、自分の曲に触っている時間を極力減らしたいんです。飽きちゃうと世に出す前にボツらせてしまうんで。だから偉そうにアイデアとか文句だけみんなに丸投げする感じになるんですけど、最初はカイトもDTMは初心者だったし、「これやって」って言っても、パッとできないみたいなことがあったんですけど、最近は「こういうこともできるんですけど、どうですか?」って思ってもみなかったようなアイデアをぽろっと出してきてくれたりすることもあって。まあほとんどの案には「全然違う。そもそもお前は生き方からして間違ってる」とか言ってるんですけど(笑)、でもそれはその曲のその部分に合わないだけで、「こんなこともできるんだ」ってお互いが学習していれば、また別の曲で「この間見せてもらったあれなんだけどさ」って話に繋がるわけで。膨大な無駄を繰り返して、引き出しを増やして、いろんな発想を新たに創出していくことを延々とやっている感じですね。
――膨大な無駄をっていうのは、元々PK shampooが大切にしている部分ですよね。2人である程度やり取りをして、形が定まったところで、4人でスタジオに入る感じ?
ヤマト:そうですね。でも、ベースラインとかは本当に丸投げで。僕は元々ベーシストだったのにベースにあまりこだわりがないというか、審美眼がないんで(笑)。ベースラインの90パーセント以上はにしけんがひとりで作ってるかな。全任せにしすぎてミックスダウンの日にこいつがアボイドノート弾いてるの見つけてどえらい二度手間になったりしちゃうくらい任せきりですね。あと僕らの間で最近言っているんですけど、「カズキってドラムの天才なんじゃないか」って。練習量に対して、うますぎるんですよね。
一同:(笑)
ヤマト:世間のバンドのドラマーよりうまいとはもちろん言わないんですけど、この練習量にしてはうますぎる、っていう。
カイト:どこまででも行けるのよ、こいつ。
ヤマト:元となるドラムパターンを僕たち2人で考えて、それをスタジオに持っていくとカズキが「こんな複雑なフレーズは叩けない」って駄々をこねだす、みたいな展開が割とあるあるで。でもなんとか説得して2,3分練習させると、あっさり出来るんですよ。要はめちゃくちゃめんどくさがっているだけで(笑)。カイトは手数を詰め込む癖があるし、僕もベースと同じくドラムに関しては一旦ほったらかしているんですけど、そうすると「これは腕3本のやつしか叩けへん」とか、そんな話になりかねないんで。それを4人で、バンドという形にもう一度エンコードし直す、というイメージですね。ほったらかしだったくせに最終的に僕が「全然違う」と言い始めたりもするんですが。
――カズキくんは、練習量に対して天才なんじゃないか、っていう意見に関してどう感じますか?
カズキ:アザスーーー!!
一同:(笑)
ヤマト:そういう意味で言うと、基本4人とも、そういうタイプというか。努力の才能がないから「俺は天才だ!」と信じ込んて、俺はまだ本気出してない、って思いこんでる情けない部分がある(笑)。もうこれだけ大人になって天才もなにも無いだろって思いますけど(笑)。
――もう1曲の新曲「Viva la fake star」はどういうふうに生まれたんでしょう?
カイト:これに関しては、バンドメンバーでスタジオで大まかに「こういう展開とかこういう流れにしよう」って雰囲気をガチっと作って、そこから詳細を僕とヤマトさんで話し合ったり、パートごとに色々やり取りしながら、1個の曲としてまとめていきました。
ヤマト:近年TikTokやインスタでよく見る、パーンとバズってすぐ廃れてみたいな消費の早さ、ある意味で文化や人格を使い捨てみたいな形に捉える時代を歌おうと思った曲で。そういうテーマをパラフレーズするためには曲自体が短く速い必要があるだろうというところから着手していきました。単なるメロコアの踏襲にならないようにコード進行とかリズムパターンは多少ひねったんですけど、原型をみんなに渡したら、そこからはスタジオでするんと出来て。なんか嫌味な言い方になったらあれですけど、本当こういう曲をポンポン作れて出せたらどれだけ楽だろうか……ってめっちゃ思いました。自分で言うのもあれですけど、「還らざる光」みたいな、めんどくさい割にどっか切り取ってバズったりはしなそうな曲の制作が残っていて時間がないタイミングだったので、軽〜い感じで作ったんですけど、思ったよりいい感じになりました。こういう曲をもっとたくさん書けばいいものを、やっぱ気づくと大げさなものを作ろうとしてしまうんですよね。反省してます。
――「Bad Boys Blue」は、昨年に配信シングルとしてリリースされた曲ですが、印象的だったエピソードなどあれば、聞かせてもらえますか?
カイト:前回のツアーの時に、楽屋でめずらしくヤマトさんがギターをずっと弾いていた日があって。本番まで1時間ぐらい黙々とずっと弾いてたんですが、そこから冒頭のリフができたんです。他の曲と違って、メインの間奏のメロディとかがコーラスラインで構成されているのが面白い曲です。一風変わった空気感のアルペジオを際立たせつつ神秘的な雰囲気を作りたい、って構想したときにふっと出たもので。アレンジングしていて、すごく楽しかったなって。
ヤマト:僕は元々イントロからボーカルコーラスを入れたいなと思っていたんですが、カイトからもそのアレンジが出てくるかなと思って泳がせていたんです。
カイト:まんまと泳がされていたとは……(笑)。
ヤマト:この話で今日さっきまで入っていたスタジオの光景を思い出したんですけど、久しぶりに4人で演奏する曲があったので、フレーズを思い出すためにカズキがイヤホンをつけて自分たちの曲をずっと聴いていて。「カズキ、そろそろやるでー」って言っても、自分のドラムフレーズのシャドーイングに集中して聞こえてない状態で。それをにしけんが肩を叩いて止めようとしたので、「ちょっと待て」と。「カズキが練習しようとしている。こんなことは滅多にない」と(笑)。逆に言うと、他のタイミングでもメンバーにも「こいつ今集中してそうやから、ちょっと泳がせとこう」みたいなことがあると思うんです。名古屋クアトロの楽屋で僕がBad Boys Blueのイントロを考えていた時も、もしかしたら周りに泳がされていたのかもしれない。久しぶりにギターを弾いて楽しかったのと、ひどい二日酔いで誰とも喋りたくなかったので、「喋りかけてくんなオーラ」を出していたのもあるけど(笑)。あと、これは先日とあるラジオ番組で話したことなんですけど、「ヤマトさんにとってロックンロールとはなんですか?」って聞かれて、とっさにその場のアドリブで「逃避のことです」と答えたんです。要は、「学校が嫌だ」でも「この社会や時代が嫌だ」でもいいですけど、そういうものからいっとき逃げるための、現実を代替する理想的な生き方や考え方みたいなものを「ロック」と呼ぶんじゃないかな、みたいなでまかせを適当に言ったんですが、まさにそんな感じで、二日酔いから逃げるために無心でギターを弾いている状態から出てきた曲でもあります。歌詞もそのまんま学校から抜け出そう、的な内容なので、そういう意味で「ロックンロールそのもの」ですね、この曲は(笑)。
――ケンくんはこの曲に関して印象的な思い出はありますか?
にしけん:レコーディングをするまで短くて、急ぎでバーって録ったんですよ。フレーズも急いで作ったし、僕の中ですごく慌てていたイメージが強い。そうすると、クオリティって下がるのかなと思ったんですけど、全然良いものに仕上がったと思いますね。さっき言っていた集中みたいなのも繋がってくるのかな、と聞いていて思いました。
――カズキくんは、スタジオでの過集中みたいな部分をどう感じますか?
カズキ:今、泳がされていたのを知りました(笑)。1回集中しちゃうと、そればっかりってタイプなので。飽き性だけど、ハマるとそればっか考えちゃうんで……その集中がいつもドラムに向けばいいんですけどね。
一同:(笑)
――4曲目が「天王寺減衰曲線」の再録です。再録シリーズは今までもやってきていますけど、過去の曲を再録することで気づきとかあるんじゃないですか?
ヤマト:録音の話なんですけど、今回、最初は細かくテンポを決めてやったんです。「何小節めから何小節めまではBPMはいくつで、そこからここまではテンポダウンして、また再加速がいくつで」というように。録り始めて結構試行錯誤したんですけど、全然ダメで。ノリが良くないというか、ミスっているとかでもなく、全然面白くない曲になってしまった。一回もう、メトロノームとか全部外してやってみようって言って僕も一緒にマイクで歌いながら全員せーので一緒に弾いて、つまりライブさながらにやったら一発でほんまにつるんと録れたんです。曲によりますけど、特にこの曲はかっちりと決めて「こうやって叩こう」「こうやって弾こう」っていうよりは、はちゃめちゃな音の洪水の中で踊るように、走るように、駆け出すように演奏するのが向いているんだなっていうことに気がつきましたね。
――まさに、ライブさながらの録り方なんですね。
カイト:「天王寺減衰曲線」は録り方もそうなんですけど、ミックス面でもライブ想定で作られているというか。最初のアルバムでは、50本ぐらい、ありえん量のギターが入っていて、ぐちゃぐちゃになっている感じなんですけど、今回のレコーディングは、サウンド面でも、実際の録りじゃないところでもライブを想定していて。右側にリードギターで、左にバッキングギターが入っていて、ライブの正面から見た時の立ちを意識したミックスになっているんです。ライブ感のある楽曲として迫力があるかたちに仕上がっていて、それが聴いていてすごくいいなって。
ヤマト:僕は自分の音域が全く届かない音とか、弾けないフレーズでも思いついたらポンポン曲に投げ込んでしまうタイプなので、レコーディング時点でなんとかなっても、ライブでどうにもならないことがよくあるんですよね。楽曲を優先するがあまりに、実際の再現性を無視しているというか。作品前提で理想を追ってしまって、実際の技術は全然追いついていませんみたいなことがよくある。ただ、5年経ったら演奏技術が多少なり前進していて、もう一度録り直したくなることもあって。あとは、やっぱり再録を入れることで、とりあえず新曲を1曲作らなくてよくなるっていう(笑)。最初にややこしいものを作っておくと後で助かるっていうことを実感しています。今回の新曲2曲もいつか必ず再録します。
一同:(笑)
――延々とループしていく感じが、いいですね。
ヤマト:自分もそういう気持ちになることはあるから他人にあまり言えないんですけど、同じ曲でも昔のバージョンよりは、できるだけ新しいバージョンを聴いてほしいなと思います。全ての僕たちの曲は、新しい方を聴いてくださいっていうのをお願いしたいというか、まあ最悪自分が聴く分には仕方ないけど、誰かに勧める時とかがもしあったら、新しい方を勧めてください、と(笑)。
展望
――これまでの話を聞いて、バンドの状態がとてもいいのと、課題も見つかっているのが伝わってきました。現時点での、今後のPK shampooの展望を聞かせてもらえますか?
カズキ:僕は、早くドラムセットを回転させたいですね。アリーナでドラムセットを回転させたい!
――それは熱いですね。
カズキ:8年ぐらい言い続けています(笑)。
カイト:僕は役割的に楽曲に携わる比重が大きいと思っていて。いろんなトライアンドエラーを繰り返して、時間をかけていいものを作っていくのは活動当初から追求していることなんですけど、そのために守らなあかん、ある種のふわっとしたイメージは持っていて。PKらしさみたいなものを構成する要素って単純なコストやタイムのパフォーマンスとは無縁なもので、無駄になってもいいからひたすら「ああでもないこうでもない」と悩み続ける過程そのものが1番大事だと思ってます。そこだけはしっかり真ん中に持ちつつ、その中で既存の枠にとらわれない編曲、それこそストリングスとかでもそうやし、楽器やジャンルにとらわれず、かっこいいと思えるものとか、俺たちが聴いていて楽しいってなれる楽曲をずっと追求したい。そういう楽曲作りを1番真ん中において、かっこいい曲を作っていきたいなっていうのが、根本のバンドの展望かなって思います。
にしけん:僕はバンドをできるだけ長く続けたいですね。ずっと同じようなジャンルの音像で、主張も何もかも一貫しながら続けていくのってかなり難しいと思うんです。自分たちのそのとき、そのときの趣味だったり、考え方を柔軟に取り入れて、それぞれ弾いたり、歌ったり、かっこいいと思う音を出していきたい。そうなった時に、「PK変わったな」って言う人もいらっしゃると思うんですよ。だけど、そう思いつつも、どこかで「やっぱりPKいい曲書くやん」みたいな風に言われるようなバンドになっていきたいなと思っていて。長く続けるために、いい音楽を頑張るかなっていうところですかね。
ヤマト:僕は、うーん、一言でいうのは難しいんですけど……たとえば最近、以前からの縁で「りんご音楽祭」存続のためのクラウドファンディングに応援メッセージを寄せることになって、そこに僕は「『りんご音楽祭』がある世界とない世界、どっちが面白いと思う?」って書いたんですよ。「りんご音楽祭」を好きな人はもちろんですが、りんご音楽祭をあまりよく知らない人でも、何ならもしかしたらイベントに反感を持ってる人ですら、直接的に関わるかどうかは置いといてああいう個性的なイベントがある世界の方がおもしろいだろうねってことはわかるでしょ(だから余裕のある方はご支援を)、みたいな意味合いで言ったんですが。それと同じで、PK shampooを好きでいてくれている人とか、あるいは逆に反感を持っているような人でも、「PK shampooがいる世界といない世界、どっちが面白い?」って聞かれたら、「そりゃ、いる世界でしょうね」と即答されるような、そんなバンドになれたらいいなと思っています。好きな人間も嫌いな人間も、不良もオタクも銀行員もお相撲さんもミュージシャンも色んな人間がいる世界の方が絶対に面白いに決まってますから。正直、自分でも変なバンドだと思うし、俺が打ち上げとかで酔っ払って絡んでくるのとか、本当に鬱陶しいかもしれないけど(笑)、いてもいなくても大して変わらないような存在であるよりは、PK shampooがいるだけで世界がわずかにひとつでも多様性を獲得するような、そういう存在でありたいなって。みんながみんな、多様性に賛同してくれるわけでもない窮屈な世の中だけど、少なくとも僕はそういう世界に生きていたいし、そのために少しでも世界をそんな形に変えていきたいなっていうのは、僕なりの小さな目標の1つです。
インタビュアー 西澤裕郎(STORY WRITER)
カメラマン 佐藤瑞起

COCA-18328 ¥1,320 (税抜価格 ¥1,200)
<収録楽曲>
M1. 還らざる光
M2. Viva la fake star
M3. Bad Boys Blue
M4. 天王寺減衰曲線(再録)