PK shampooが7月17日、東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて、全国ツアー「PK shampoo tour 2026 -Planet Parade-」のファイナル公演を行った。
5月27日リリースのメジャー3rd EP『尊い偽星』を携えた本ツアーは、6月14日の福岡・LIVE HOUSE CBを皮切りに全国7都市を巡回。時速36km、トップシークレットマン、tricot、the bercedes menz、アフターソウル、9mm Parabellum Bulletを各地に迎えたツーマン形式で行われてきたが、ファイナルの東京公演のみ、ワンマンとして開催された。
『尊い偽星』というタイトルについて、ヤマトパンクス(Vo/Gt)はリリース時のオフィシャルインタビューで、「本物より質の高い偽物だってありうる」と話していた。なにより、尊い偽星とは、PK shampoo自身を示したものだ。偽物であろうとも、届かないと分かっている場所に向かって、届かないまま手を伸ばし続ける。その過程そのものに値打ちを見出すという態度が、このバンドの言葉には一貫してある。各地でツーマンを重ね、7都市を回った先の初となるZepp DiverCityワンマン。会場には多くの観客が詰めかけた。
開演前のBGMは、お馴染みの「ボレロ」。開演に近づくにつれて音量が上がっていき、楽曲が会場を満たしきった19時6分、暗転。大きな歓声と逆光の中、メンバーが一人ずつ登場。楽器をセットすると、刻むリズムから「還らざる光」で幕を開けた。『尊い偽星』のリード曲であり、2段構えのイントロではじまる本楽曲。サビ始まりの短い曲が主流の現在のシーンで、この構成の曲を開幕に置いたことは、PK shampooとしての宣戦布告でもある。
ヤマトが「PK shampooです、よろしくお願いします」と名乗り、お馴染みとなった、ビートたけしのモノマネから「天使になるかもしれない」へ。フロアの密度が上がり、観客たちの手が一斉に挙がる。手拍子の上で<天使になるかもしれない>の合唱が重なり、ダイバーが続出。「このまま天使になって銀河まで飛んでいってしまおう」と言い残して「SSME」へ。「東京でもっとも海の見える街、お台場」「ひとつ言っておきます。自転車の二人乗りはやめてください!」と前置きし、「君が望む永遠」へ。
MCのパートでは、マネージャーからヤマトに缶の緑茶ハイが手渡される。マイクにリバーブをかけたままプルタブを開けて飲むヤマト。切りすぎた前髪を、自ら「いじわるな猿」みたいといじりながら笑いをとる。メンバーもそれに乗っかりヤマトをいじるなど、PKらしいサークルのりの延長線のMCを発揮する。Zepp DiverCityという場所でも彼ららしさは変わらない。
「旧世界紀行」を演奏すると、「昔の話ばっかりしてても、振り返ってても、しょうがないので、僕たちみんなで新世界に行ってみたいと思います」と、「新世界望遠圧縮」へ。そのままシームレスに「翼もください」を乱反射するギターノイズのなかで鳴らした。
再びのMCでは、高松でthe bercedes menzの田中喉笛が「還らざる光」で号泣していたエピソードなど、ツアーを振り返る。仙台で福島カイト(Gt)がバーに行って「陰キャくん飲みます!」と言われてテキーラを飲んだ話をすると、ヤマトがカイトにギターテクニックを無茶振りし、その流れで彼らのルーツである『涼宮ハルヒの憂鬱』の劇中歌「God knows...」のギターリフを弾き始めた。すると、カズキ(Dr)もニシオカケンタロウ(Ba)もアンサンブルを奏で、ヤマトも歌い始める。そんなノリからはじまった演奏に、観客ではダイバーも続出する始末。そのまま2番に入ろうとするも自制し、「僕、昨日全然寝てないんですよ」と、前夜に朝まで飲んでいたことを明かすヤマト。「寝てない。だからかっこいい。お前らも憧れていいぞ!」と言って「善人は眠れない」を演奏した。
「いろんな選択肢、全部間違った方法を選んでしまってきました。でも、こんなに間違ったのに、この4人も、スタッフもそうですし、皆さん一人一人と出会えた。一般的に見たら、もっといいやり方があったやろ、って言われるかもしれへんけど、その選択をしてきた自分を、今はとても誇らしく思ってます」と語り、「Bad Boys Blue」へ。しかし、ドラムのスナッピーが切れて中断。仕切り直して再び演奏を始めるも、今度はPCが壊れてしまい音がズレてしまうハプニングに見舞われる。ヤマトは機転を効かせ、ギターを抱えたまま尾崎豊の「I LOVE YOU」を弾き語りで場をつなぐと、「何回でも間違いましょう。何回でもやり直せばいい!」と告げ、3度目の正直となる「Bad Boys Blue」を最後まで演奏しきった。<何度もし過去にかえってやり直しても 君と今ここにいることを どうせ叫んでるような気がして仕方ない>という同楽曲の歌詞が、リアリティをもって響く瞬間だった。
大阪・環状線の福島駅の話から、「今もまだ環状線みたいにぐるぐるぐるぐる回っています。抜け出せないでいます。それでいいとか悪いとかじゃない。同じところをぐるぐる回ってしまうのが僕の性分なんで、もうすいませんとしか言えません。そっちが慣れてください」と話して「第三種接近遭遇」へ。霧のようなフィードバックノイズに、<天使>と繰り返すヤマトのファルセットが重なった。「生まれて初めて書いた曲、やっていい?」。そう前置きして「君の秘密になりたい」へ。ニシケンの低音が効いた迫力のあるベース、カイトのエモーショナルなリフ、カズキのリズム、ヤマトの声がアンサンブルを奏でる。
今週誕生日を迎えたというヤマトは、自分が夏生まれであることから夏の話へ。夏が嫌いという人も多いと前置きしたうえで、夏は自分にとって地元みたいなものだから、その面白いところも、いいところも、やめておいたほうがいいところも、一つ一つ教えていきたいと話す。「これから来る夏だけじゃなくて、過去の夏も、今日この日も、いつかこの夏を思い出して、きっと泣いてしまう」と語り、「夏に思い出すことのすべて」へ。ミドルテンポのアンサンブルに、カイトの乾いたギターが重なり、エモーショナルな音響に包まれる。ヤマトにピンスポットが当たり、弾き語りで「断章」ワンコーラスを歌い終えたところでバンドの演奏が重なった。
「僕、星になりたいんですけど、偽物でいいんですよ。偽物の星になってみたいと思います」。そう言って「Viva la fake star」へ。続いて、カイトの歪んだギターイントロが鳴り、「京都線」へ。サビでは客席から大きな合唱が起こった。シームレスで始まった「夜間通用口」でダイバーが続出する客席に、ヤマトはギターごとダイブ、カイトはステージに寝そべって弾き、ニシケンはベースを弾きながらその場で曲を力一杯口ずさみ、カズキが後方からリズムを支える。アウトロから一転して「奇跡」へ。本編最後は、このツアーで続けてきたという「ヤマちゃんダディダディ」のコールを受けてヤマトが酒を飲み干し、観客を男女ひとりずつステージに上げて、コールの中、2人が交互にお茶割を煽る。「天王寺減衰曲線」の冒頭の<海が>という一節を観客たちが大声で合唱し、同楽曲を大音量で歌い上げた。カズキは椅子の上に立ってスティックを掲げ、フロアではダイブが続く中、本編は幕を閉じた。
客席から「ヤマちゃんダディダディ」のアンコールが起こるなか、再登場したメンバー4人。ヤマトは、11月28日開催の〈PSYCHIC FES〉に向けたイベント〈Road To PSYCHIC FES〉の開催を発表。10月16日(金)新代田FEVER、10月20日(火)名古屋R.A.D、10月21日(水)神戸太陽と虎の3公演を巡ることを伝えた後、ヤマトが話したのは自身の来歴だった。
中学も高校も帰宅部。勉強にも打ち込まず、世間を斜めに見て、そんな自分を俯瞰してかっこいいと思っていたという。「それは今でも思ってるし、変わってない」と照れ隠しも含んだ笑いを取りつつ、転機は大学だったと語る。成り行きで軽音部に入り、そこで初めて曲を作るようになり、この4人で活動をするようになった。ずっと一人で部屋の中でごにょごにょやっていた頃に比べれば、ギターとバンドがあってよかったと振り返る。
今週32歳になったことを明かしたうえで、話は現在に及ぶ。「これまで、売れるとか売れないとかは関係ない、売れているやつは全員ダサい。そのくらい穿った見方をしていた」と、これまでの自分のスタンスに触れつつ、Zepp DiverCityに大勢の人が来てくれるのを見ていると、それも悪くないんじゃないかと思えてくると続けた。
「やっぱりバンドっていうものに、僕がすごい今、感謝する感じになってきて。バンドをちょっとずつでも、1日でも1秒でも1分でも長く続けるためには……もしかしたら売れるから続くとか、売れててもやめちゃう人もおるし、それは難しい話なんですけど、でも、もし、ちょっとでも売れることで、このバンドが1秒でも長く続くのであれば、例えばTikTokで踊るんですか? わかんないですけど、踊ってもいいし、よろしくお願いします!ってあちこちに頭を下げることだって(厭わない)。もしかしたら今来てくれてる方が『PK shampoo最近ダサいな』みたいな、そのぐらいのことをやってもいいのかなって、僕、ちょっと最近そう思い始めました」
そして、ヤマトはこう続けた。
「売れることとかを恥ずかしがらず、それの努力を惜しまず、1日でも長く、そういう場をまた作っていけたらいいなと思ってます。だから、今日のヤマトは全然声出てなかったでもいいですし、ダサかったでもいいです。でもまた来てみてください。悪口言いに来てください。次(のステップとなる会場)はわかんないですけど、場所はどこでもいいんです。続けていこうと思いました。ありがとうございます」
斜に構えた態度は、これまでこのバンドの言葉の前提にあったものだ。ヤマトはインタビューでも、シーンとの距離の取り方を繰り返し言語化してきた。この日話されたのは、その距離感を保ったまま売れることを引き受ける側へ一歩踏み出す内容である。バンドを1秒でも長く続けるために。ひたむきであることを恥ずかしがらないと観客たちの前で宣言した。
そこから「ひとつのバンドができるまで」へ。メジャー1stフルアルバム『PK shampoo.log』の最後に置かれた、バンドの成り立ちを歌った曲だ。続く1st EP『再定義 E.P』のリード曲「死がふたりを分かつまで」をエネルギッシュに演奏し、大きな盛り上がりのままアンコールの2曲を終えると、客電がついても拍手は止まなかった。
それに応えて再登場したメンバーが演奏したのは「ひとつの曲ができるまで」。エッジの効いたバンドサウンドの上で、日記のように描かれた歌詞をシャウトしながら吐き出して歌うパンクソングだ。最後はカズキが客席にダイブし、公演は幕を閉じた。
この日鳴らされた3曲のアンコールは、いずれもタイトルが「まで」で終わる。「ひとつのバンドができるまで」「死がふたりを分かつまで」「ひとつの曲ができるまで」。到達点ではなく、そこに至る過程を指す言葉である。間違いをやり直しながらも、その過程を作品にし、バンドを1日でも1秒でも長く続けていく。PK shampooは、何度間違えても、やり直しながら続けていくことを選び、それを堂々と宣言した。まさに、バンドにとって大きなターニングポイントとなるツアーファイナルになったことは間違いない。
偽物の星であると自ら語る4人は、この夜、確かに強く輝いていた。
文:西澤裕郎
ライブ写真:かい
集合写真:佐藤瑞起
PK shampoo tour 2026 -Planet Parade- FINAL@Zepp DiverCity
1.還らざる光
2.天使になるかもしれない
3.SSME
4.君が望む永遠
----------------
5.旧世界紀行
6.新世界望遠圧縮
7.翼もください
----------------
8.善人は眠れない
9.Bad Boys Blue
10.第三種接近遭遇
11.君の秘密になりたい
----------------
12.夏に思い出すことのすべて
13.断章
----------------
14.Viva la fake star
15.京都線
16.夜間通用口
17.奇跡
18.天王寺減衰曲線
----------------
En1.ひとつのバンドができるまで
En2.死がふたりを分かつまで
----------------
WEn1.ひとつの曲ができるまで