−山沢大洋とはナニモノか?−特別編−【Part2】
音楽評論家・能地祐子氏によるロング・インタビュー
――タイトルの『music tree』は、アルバムのコンセプトそのもの。
「ナニナニ系というくくりは、あんまり興味なかったですしね」
――大きくいえば、ジャンルは“音楽”! みたいな(笑)。
「そんな感じですね。ロックのファミリー・ツリーって、いろいろあるでしょ。
あれも、どんどん考えていくと最後は“音楽”というひとつの大きな木につながるんじゃないかな。音楽って、聞けば聞くほどいろんな発見があって、もっともっと知りたくなって、それでますます楽しくなって……。そういうものですもんね」
――そうやって自分の中でジャンルの壁を越えた世界を広げていくことは誰にとっても楽しいことですよね。年齢やマニア度に関係なく、すべての音楽ファンにとっての醍醐味。
「ぶっちゃけた話をしちゃうと、こういうコード進行で、こういうメロディで、こういうボーカリストを連れてきて、こうやったら“売れ線”になるよねっていうのは、だんだんわかってきちゃうじゃないですか。特に僕のような仕事をしていたら」
――そういう、何が何でもヒット曲を……みたいな依頼もあるわけでしょう?
「“オレンジレンジみたいな音にしてください”って言われて、やりきれなくて降りたこともあったけど(笑)。でも、そういう在り方に対して逆説的なことはできないだろうかっていうのは、今回すごく考えましたね。いいメロディラインを書くことよりも、いい刺激を与えたかった。派手なディストーションでガァーッとやるって意味の刺激ではなくてね」
――もっと、精神的な領域での刺激。
「それを、なんか、自然体でやりたかった。そういうチャレンジ精神はあるアルバムだと思うんですよ。ひそかに。で、このアルバムでフレッド・ウェズリーのトロンボーンが気になって、そこからJB'sを知って、ジェームズ・ブラウンを好きになって、いろんなソウルを好きになって。で、10年後にはもう、誰がどこでプレスしたかもわかんないような、ドロッドロにレアな黒人グループものを聞いてる、みたいな(笑)。そういうコがね、たとえ5人でもいいから、いてくれたらいいなぁ」
――アルバムに参加しているアーティスト、ミュージシャンには初顔合わせの方も多いですよね。意外でした。もっと、“山沢ファミリー総出演”でご自身の仕事を集大成するような作品になるのかなと想像していたのですが。
「そうなんです。例えばホール&オーツの全盛期みたいに、収録曲のうち半分は前のアルバムからの路線を継承して、で、残りの半分で新しいチャレンジをして、という形で彼らは新陳代謝をしていたじゃないですか。それって理想的なやり方だなと思ってて。自分でもそういうアルバムを作りたかったんです。あと、本来、僕は受け身なんですよね。基本的には。仕事柄、誰かから発注がないと音楽を作れない。だから、今回はふだん絶対に発注を受けないだろうというタイプの曲も作りたかった。たとえば僕、ビーチ・ボーイズも好きだし、ウィーザーも好きだし、同じくらいスライ&ザ・ファミリー・ストーンも好きだし。でも、そのどれかひとつの面に注目してもらうと、別の一面がこぼれ落ちちゃう。そうならないように、すべてをこの1枚に凝縮したいって気持ちはありましたね」
■ジャンル、そして世代をも超える音楽愛溢れるアルバムが完成!!
山沢大洋 presents 「music tree」(COCP-34572
¥3,150(税込))
2008.01.23発売決定!!
詳細はディスコグラフィーにて>>> |