THE COLLECTORS HISTORY COLUMN

THE COLLECTORS HISTORY COLUMN

HISTORY PART 7 : 2003-2006

事務所閉鎖と闘病を経た、新章の始まり

『夜明けと未来と未来のカタチ』

 2003年早々、ザ・コレクターズは結成以来最大の危機を迎える。所属していた事務所の閉鎖が決まり、活動の基盤を失ってしまったのだ。ここであきらめて歩みを止めたら、バンドの歴史は終わっていたかもしれない。しかしマネージャー不在のなか、ブランクを置かずに素早く動いたのは、古市コータローだった。彼が自ら交渉に当たり、渋谷クラブ・クアトロでのマンスリー・ライブ開催が決定。このマンスリー・ライブが、これ以降のコレクターズ復活劇の起爆剤となったことは言うまでもない。
 過酷な環境の変化と心労がひきがねになったのだろう、この頃加藤ひさしはパニック障害を発症。「ステージで大きな音を浴びながら、まぶしい照明に照らされて歌うのが辛い」という、リード・シンガーにとってはあまりにも過酷な症状に悩みながら、それをどうにかやり過ごしてライブをこなしていった。
 忍耐の甲斐あって、翌2004年から次第に流れが好転し始める。まとめて紙ジャケ仕様で再発した旧作が思いのほか反響を呼び、これをきっかけにして「コロムビアで新しいアルバムを作ろう」という話が持ち上がってきた。苦境にあえぐバンドにとって絶好のチャンスだったが、体調不良が続いていた加藤は「果たして今の自分にアルバム1枚分の曲が書き上げられるのか?」と、重いプレッシャーを背負って製作に入ったという。
 年が明けて2005年1月にリリースされた『夜明けと未来と未来のカタチ』は、起死回生のアルバムだ。ジャケットのイラストをリリー・フランキーに依頼するなど、「今までやっていないことをやろう」という意志が初めて前面に出た本作は、この後に続く「開かれたコレクターズ」の序章として位置づけるべき作品だろう。闘病中の想いを投影した赤裸々な“未来のカタチ”や、余計な肩の力が抜けた風通しがいいビート・チューン“愛してると言うより気にってる”など、静かだが確実な変化が本作を覆っていた。

バンドをリフレッシュさせた2枚の企画盤

『BIFF BANG POW!』

 前作発売から半年ほど経た2005年8月には、洋楽カバーを中心とした企画盤『BIFF BANG POW!』をリリース。彼らのルーツである60sブリティッシュ・ビートやネオ・モッズに立ち返り、いかにも加藤ひさしらしいユーモア感覚溢れる日本語詞で新解釈をほどこした本作は、コレクターズというバンドの「根っこ」を理解する上で極めて重要な1枚だ。特に、ここ数作で彼らを知ったビギナーには強く推薦したい。今回ボックス・セット『MUCH TOO ROMANTIC!』には収められなかったが、オリジナル・アルバムと同等に扱うべき重要作だと思う。

『ロック教室』

 バンドを取り巻く空気が好転していくなか、デビュー20周年となる2006年には、これを記念したコラボ・アルバム『ロック教室~THE ROCK'N ROLL CULTURE SCHOOL~』を発表。同世代の真島昌利や奥田民生から、山中さわおなど縁のアーティストたち、サンボマスターやスネオヘアーなど当事の若手までが楽曲を提供し、アイディア賞ものの傑作が生まれている。特にアレンジと演奏にバンドが注力したことで、ダイナミックなバンド・サウンドの魅力が存分に引き出されたことは何よりの収穫だった。

『FESTIVAL OF KINGS~GLORY ROAD TO 20th MAXIMUM』

 同年10月22日、日比谷野外音楽堂で結成20周年ライブを敢行。ソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉がサポートを務めたこの日の乗りに乗った演奏は、DVD『FESTIVAL OF KINGS~GLORY ROAD TO 20th MAXIMUM』で追体験できるので是非観て欲しい。一度奈落の底に落ちたバンドが颯爽と野音に戻ってきた勇姿は、涙無しでは見られない。あの日、あの場所にいた人なら、誰もが同じような感慨を覚えると思う。

『ALL MOD GEAR』

 このアニバーサリー・イヤーには、DVDボックス『ALL MOD GEAR』も発売。後に分売もされたが、初期からの貴重な映像を詰め込んだ内容はファン必携と断言できる。このとき撮られた初の本格的なドキュメンタリー『HAPPENINGS 20YEARS TIME AGO AND NOW』を観てから、続けて『MUCH TOO ROMANTIC !』に収められた新しいドキュメンタリーを観ると、この特異なロックンロール・バンドの奥深さにますます魅了されるはずだ。

荒野政寿(CROSSBEAT)

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